DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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奇跡のもう一話投稿。
本当に奇跡です。

とはいえ、急展開な話ですが。


第12話 疑問と答え

「あ、おはようございます。高月先輩、布良先輩」

「おはよう、稲叢さん」

「おはよう莉音ちゃん」

 

この日、いつものように稲叢さんに挨拶をしながら共有スペースのリビングに向かう。

 

「お、おはようコースケ、アズサ」

「おはようエリナちゃん」

 

いち早く起きていたのか、私服姿のエリナさんが出迎えてくれた。

 

「あれ、美羽ちゃんは?」

「ミューだったら、さっき出て行ったよ」

 

布良さんの問いに、表情を変えることなく答えるエリナさん。

ちなみに、わかっているとは思うが”ミュー”とは、美羽さんのことである。

 

「あれ、ニコラは?」

「まだだよ。私は今日は休みだけど、ニコラは仕事だから」

 

僕の問いに、エリナさんは苦笑いを浮かべながら答えた。

 

「そういえば、まだ起きるには早いもんね」

 

布良さんの言うとおり、ニコラが起きるのは少し後の時間だ。

 

「皆さん、朝食ができましたよ」

「おぉー、今日もおいしそう」

 

稲叢さんが運んできた料理に感嘆の声を上げるエリナさんをしり目に、僕は先ほどまで座っていた席を立ちあがる。

 

「配膳手伝うよ」

「私もー」

「ありがとうございます。高月先輩、布良先輩」

 

僕と布良さんは配膳を手伝うべくキッチンへと向かうのであった。

ニコラが起きていない状況での朝食だが、この日は出勤が早いため、食事も早めに取らなければいけないのだ。

 

(ごめんね、ニコラ)

 

僕は心の中でニコラに謝るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから三日ほど過ぎた。

美羽さんは時より、風紀班の支部に来るのが遅れてくる日が多くなった。

おそらくは被害者へのお見舞いだろうと思いつつも、日々の巡回任務をこなしていた。

だが、この日は少し様子が違った。

 

「それじゃ、巡回行ってきます」

「おい高月」

 

いつものように巡回に向かおうとする僕を、主任が引きとめた。

 

「なんですか?」

「悪いが、お前さんに呼び出しがかかっている」

 

主任のばつが悪そうな表情に、嫌な予感がした。

あの報告書のことがばれてしまったのだろうか?

 

「あの、呼び出しって誰からですか?」

「市長かららしい」

「市長?」

 

主任の答えに思わず首をかしげてしまった。

どうして市長が僕を呼び出すのであろうか?

僕は陰陽局の偉い人かと思っていただけに、疑問だった。

 

「市長って……小夜様ですか!?」

「小夜様?」

 

驚きのあまりに叫ぶ布良さんに、僕は布良さんに聞いていた。

 

「荒神小夜様。この都市の市長で吸血鬼さんなんだって。吸血鬼さんで知らない人がいないほどすごい人なんだよ」

「そんな人が、僕にいったい何の用が」

 

僕はそのようなすごい人と面識もなければ、会うコネもない。

報告書の件にしては、かなり荒々しすぎる。

 

「それはわからん。だが、高月に来させるようにとの言伝もある。だから、巡回ではなくこれから市長の方へと向かってくれ。場所はここに書いてある」

 

そういって手渡されたのは、一枚の用紙だった。

そこには市長がいるであろう場所の位置が知りされていた。

 

「ついでだ、生き方ぐらい覚えてくるようにしろ。今後も何かと市長のもとに向かう機会も多いはずだ」

「あの、私もついて行っていいですか?」

「それはダメだ」

 

布良さんの申し出に、主任は即座に切り捨てた。

 

「市長様は高月一人で来ることを望んでいる。それに、巡回の方を手薄にはできない」

「うぅ、分かりました」

 

主任の言葉に、布良さんはしぶしぶと言った感じに頷くと、僕の方へと向き直る。

 

「それじゃ、頑張ってね」

「そっちも」

 

僕の言葉を受けて、布良さんは一人で巡回に向かっていった。

 

「そうだ。今日は市長様にあった後は直行で帰ってもらっても構わない」

「分かりました。それでは」

 

僕は主任に一礼すると、更衣室に向かって着替えてから市長がいるであろう場所へと向かうのであった。

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

公務室では、三人の人物がこれから来るであろう人物の到着を今か今かと待っていた。

 

「そろそろじゃの」

「そうですね」

 

小夜のつぶやきに答えるように元樹は相槌を打つ。

本来であれば、アンナがその場にいるはずだったが、本人の希望でこの日は席を外すことになった。

 

「元樹、目が輝いておるが何かよからぬことを考えておるのではあるまいな?」

「いいえ、全く。どのようなプレイをしようかなんて考えて――ごほっ!?」

 

小夜の問いかけに答える元樹の言葉を最後まで聞かずに、小夜は元樹の腹部にボディブローを決める。

 

「いきなりボディーはやめてください」

「お主がバカなことを言おうとするからじゃろう。此度の件、お主がしっかりせねばならぬことをわかっていうのか?」

 

いきなりのボディ攻撃に抗議をする元樹に、小夜はそう告げる。

 

「分かってますけどね。高月君からあふれる魔性の魅力が! 愛が、僕を狂わせるんです!」

「そんなこと知らんわ!」

「おぼぁ!?」

 

元樹の抗議に、小夜は大声で叫ぶと再びボディブローを決める。

 

「だから、痛いですから、やめてください。ご自分の力の強さを考えてください」

『小夜様。高月様がいらしていますが、どうしますか?』

 

そんな二人の耳に、女性からの声が聞こえる。

 

「構わぬ、そのまま通せ」

『かしこまりました』

 

そこで秘書の声は途絶えた。

 

「で、元樹」

「はい、わかりました。頭を仕事モードに切り替えますから」

 

小夜の視線に圧されるように、元樹は唸るように答える。

それから間もなくしてノックの音が公務室に響き渡るのであった

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

「では、お入りください」

「ありがとうございます」

 

市長がいるであろう大きな建物に足を踏み入れそこで受付を済ませた僕は、秘書と思わしき女性に入るように促らされると、僕は一礼して大きな扉の前に立つ。

 

「………」

 

そして深呼吸をすると扉をノックする。

 

「高月です」

『うむ、入れ』

 

僕の呼びかけに、中から入るように促す女性の声がする。

 

「失礼します」

 

そして僕は大きな扉を開け中に足を踏み入れた。

その一室は市長がいる部屋であると思わせるのに十分なほどの雰囲気があった。

そんな部屋に扇先生と和服を着た小学生くらいの少女2人の姿があった。

 

(もしかして)

 

「どうしたのじゃ? 入ってもいいんじゃよ」

「それでは……」

 

一つの仮説が頭をよぎる中、僕は少女に促らされるまま中に足を踏み入れた。

 

「自己紹介といこうかの。ワシがこの都市を治める市長、荒神小夜じゃ」

「市長……」

 

一見すると子供のようにも見えなくもない少女が市長であることに、僕は言葉が出なかった。

 

「お主、今失敬な事を考えておるんじゃないだろうな?」

「い、いえ。別に」

 

市長の鋭い問いかけに、僕は慌てて否定した。

思っていたことがわかると地獄を見そうな気がしたからだ。

 

「失礼ですが、子供ではないんですか?」

「あたりまえじゃ。どこの世界に子供を市長に担ぎ上げるところがあるというのじゃ?」

「でも、近年は子供○長と言う言葉もありますし」

 

市長の呆れた様子の問いに、僕は最近巷で良く聞く言葉を口にした。

 

「高月君。この方はね、このような姿だけど、この都市一番の老婆なんだよ」

「ろ、老婆っ!?」

 

扇先生の言葉に僕は驚きを隠せなかった。

どこから見ても子供にしか見えない。

 

「まあそうじゃな。ワシ以上に長生きな吸血鬼などそうはいない……って、誰が婆じゃ、しばき倒すぞっ!」

「これは、失礼」

 

市長の鋭いツッコミに、扇先生はさわやかに謝罪の言葉をかける。

 

「あの、ひとつお聞きしてもいいですか?」

「お、なんじゃ? 年とか『すりーさいず』はダメじゃよ」

 

僕の言葉に、市長は快く許可を出してくれた。

尤も後半の方で殺気にも似た視線を向けられながら釘を刺されたけど。

 

「本土で、自分の家の税金や手紙を出していたのは、貴方ではないですか?」

「……なぜそう思うのじゃ?」

 

僕のぶつけた疑問に、市長は理由を聞いてくる。

 

「理由は二つあります。まず一つが、貴方の口癖です」

「ワシの口癖じゃと?」

 

僕の挙げた理由に、市長は驚いたのか目を少し見開かせる。

 

「ええ。手紙には語尾に『じゃ』というのが、記されていました。そして市長も語尾に『じゃ』とつけていらっしゃいます」

「………」

 

僕の指摘に、市長は押し黙る。

最初に受け取った便せんに書かれた一文『これは手土産じゃ。受け取るとよい』と、次に受け取った携帯電話入りの手紙が市長が差出人であることを決定づけさせる。

 

「最後が、異様なほどの対応の早さです。いくら特異例だったとしても、編入手続きを済ませ、さらには風紀班で働く手続きを済ませておく手際の良さは、市長だからこそできると私は考えてます」

「………どうやらお主はわしが思っておる以上に鋭いようじゃの」

 

その一言は、僕の推測が正しいことを確信させるものであった。

 

「教えてください。どうして、私をここに呼んだのか。そして私が何者であるのかも」

「………」

 

僕のお願いに、市長は何も答えない。

 

「お願いします。このままじゃ僕、わけがわからなくて気が変になりそうなんです」

「別によいがの……前者はすまぬが教えられない」

 

それは市長が口にした初めての拒否の言葉だった。

 

「前者だけはわしの一存では決められぬのじゃ。許してほしい」

「し、市長。頭を上げてください! 私がわがままを言ってるだけですから! 後者だけでもいいですから!」

 

市長が頭を下げたため、僕は慌てて市長に頭を上げるように促した。

ここまでさせても市長を問いただすことができるほど、僕は心が曲がっていない。

……たぶん。

 

「そう言ってもらえると助かる」

 

そう口にした市長は木製のデスクの上に三つほど置かれたグラスに、どこから取り出したのか赤い液体を注ぐ。

 

「あの、それは?」

「これはわしの自慢のワインじゃよ。せっかくじゃし一緒に飲もうではないか」

 

市長にワインを振舞ってもらうという、何とも恐れ多いことになってきたが、断ることもできず僕は市長が差し出すグラスを受けとる。

さらに市長はグラスを扇先生にも手渡した。

 

「それじゃ、乾杯じゃ」

 

市長の音頭で、僕は二人よりワンテンポ遅れてグラスを傾けワインを飲み干す。

 

(なんだか不思議な味)

 

感じたのはとても不思議な味だった。

とてもまろやかな味のするワインだった。

 

(あれ? 何だか、だんだん眠くなってくる)

 

ワインを口にした瞬間、一気に眠気が襲う。

 

(そんな、ちゃんと睡眠はとったはずなのに)

 

疑問が頭の中に渦巻くが、答えを出すよりも早く意識が途絶えた。

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

「……………」

「小夜様」

 

公務室が沈黙に包まれる。

小夜と元樹の視線は、項垂れるようにして立ち尽くす浩介に向けられている。

 

「ワシの考えが間違いでなければ、効果は出ているはずなんじゃが……」

「やはり、何か混ぜてやがったか」

 

元樹の声に答えるようにして口にした言葉に、今まで無言だった浩介が口を開いた。

だが、その口調は先ほどまでのおとなしい感じから一変し挑発的であり、傲慢な口調で声を上げた。

 

「「ッ!?」」

「一体何を混ぜた? 吸血鬼の血ではないようだが」

 

吸血鬼状態であることを示す赤い目の浩介は、小夜に問いかける。

 

「濃度の濃い、ヴァンパイアウイルスを入れておいただけじゃよ。ワシの予想通りお主が姿を現したようじゃがな」

「なるほど」

 

小夜の答えに、浩介はふと口元に笑みを浮かべた。

 

「久しいの、浩介」

「ああ、久しいな。こうして話すのはいつ以来だ?」

 

グラスを近くのデスクに置きながら、浩介は小夜に問いかける。

その口調は、古くからの友人……もしくは盟友のような感じであった。

 

「あの時以来じゃから、数十年ぶりになるのう」

「なるほど。かなり時は流れているようだな」

 

何かを懐かしむように、浩介は小夜の答えに相槌を打つ。

 

「にしても、お前は相変わらずツルペタだな。もはや笑いがこみ上げるぞ」

「あははは~、久しぶりに会ってそれか。頭かち割るぞ」

 

浩介の禁句に近い言葉に、小夜は笑い飛ばしていたが、さっきを全開にして浩介にドスの利いた声を浴びせる。

 

「おぅ~、こわ」

「まったく、お主は何も変わっておらぬようじゃの」

 

普通の吸血鬼であれば卒倒しそうなそれを受けてもなお、浩介はあっさりと受け流した。

そんな浩介に、小夜はあきれたような目でつぶやいた。

 

「それはお互い様だろ」

 

そう返す浩介の言葉に、小夜は『それもそうじゃな』と相槌を打つ。

 

「ワシだって好きでこの姿になっておるんじゃないわい。『ぶらじゃー』だってしてみたいし」

 

小夜は続けてぼやくように声を上げる。

 

「自分で胸をこうむにゅむにゅー……って、誰が無乳だ、しばき倒すぞ!」

「その華麗なノリツッコミ、どこで覚えてくるんだ?」

「やかましい!」

 

浩介の疑問に、小夜は吠えた。

それからしばらくの間、公務室が騒々しくなったのは、当然の結果であろう。

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