DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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本日も加速度200%でお送りします。
ちなみに、まだまだ明らかになっていないことがあったりします。
勘のいい人は分かっていると思いますが。


第13話 正体

「それで、小夜様と高月君とはお知り合いと言うことでよろしいんですか?」

「まあ、そうじゃな」

「間違いはない」

 

元樹の問いかけに、二人は肯定するように答える。

 

「さて、時間もないことだし本題に入るとしようか」

「そうじゃな」

 

浩介の提案に、小夜が頷く。

 

「分からないという顔をしてるな。なに簡単なことよ」

 

浩介と小夜の言葉の真意がわかっていない様子の元樹に気づいたのか、浩介は片目を閉じながら説明を始める。

 

「私が前に出ているとき、能力を行使するたびにヴァンパイアウイルスが減少する体質だということさ」

「なんだって!? そんなこと、検査では全く」

 

驚きをあらわにするのも無理はない。

元樹は浩介の主治医であり、血を採取して検査済みなのだから。

 

「そりゃそうさ。把握するには、能力を行使している最中に血液を何度か採取する必要がある。それ以外であればこまめに血を採取する必要があるし……ちなみに言うがお断りだからな」

 

答えながらも、血を採決される可能性を考えたのか即座に拒否する浩介。

 

「ついでじゃ、どうしてお主の人格があるのじゃ? 昔、わしは確かにお主の人格と記憶を消したはずじゃ」

「確かに、私もびっくりするほどの消去術だったよ。まあ、消したとしても100%消せたわけではないが」

 

小夜の問いかけに、浩介は表情を変えずに答える。

 

「それはつまり」

「そういうこと。消去した際に生まれた私の記憶や人格の断片的な情報が、何の因果か私の持つ因子に張り付いてしまっただけ。だからこうして私は出ることができるが、ちょっとした条件がある」

 

確認するように相槌を打つ小夜に、浩介は静かに頷くと答えた。

 

「それが、吸血鬼からの吸血」

「正確には『一定濃度以上のヴァンパイアウイルスの摂取』だけどね。もちろん濃度が高ければ高いほど私が前に出ている時間は長くなる」

 

つぶやく元樹に補足するように、浩介が口を開く。

 

「あの濃度ならば、私が出ていられるのはあと数分程度だろう。だから、話があるなら早く頼むよ」

「それじゃ、単刀直入に行くとするかのう」

 

浩介の言葉に小夜はそうつぶやくと咳払いを一つする。

 

「此度の一件、そなたがやったことか?」

「確保のことを指すのであれば、答えは”YES”だ。布良から銃を借りて確保した。久々の狩り物にしては、なかなかにいいものではあったぞ」

 

小夜の問いに浩介は不気味な笑みを浮かべながら答える。

 

「だが、吸血のことを指すのであれば答えは”No”だ。あれは私の意思でも、彼の意思でもない」

「では誰の意思と申すか?」

「”体”の意思だよ」

 

その答えに、一瞬沈黙に包まれる。

 

「お主よ、まじめに話をする気はないじゃろ」

「ところがどっこい。これは大まじめな話。前に言ったとおり、記憶と人格を消しているが、いくら完璧に消したところで体の記憶までは消せない。記憶喪失の人間が歩けるようにね」

「つまり、”無意識的な行動”を体が覚えているために、体が勝手に動く……と言うことでいいのかい?」

 

浩介の話を聞いた元樹は、ようやくして尋ねる。

 

「さすがは医者だ。僕の言いたいことをしっかりと拾うな。まあ、そういうところだ。吸血鬼から吸血をしたところは、本人は覚えちゃいないはずだ。無意識の行動は本人の知覚外になるからな」

「すまぬが、わかりやすく言ってはもらえんじゃろか? 先から遠回し的な言い回しでばかりしておるが、さすがのワシでも把握するのに疲れる」

「僕にもあまりわかってないということを察してくれ、小夜。第一、この体は私の支配権ではない。ヴァンパイアウイルスに刺激されて因子と共に私が前面に出るが、それは一時的なもので永遠ではない」

 

小夜の申し出に、浩介は困ったような表情を浮かべて断る。

 

「体内に増えたヴァンパイアウイルスが一定レベルまで低下すれば元に戻るし、彼と記憶を完全に共有しているわけではない。せいぜい私が前に出る5分ほど前までが精いっぱい……私にできるのは、体を動かしたり能力を使ったり、こうして話すことくらいだ」

「自分の体のことまで把握はしきれないということじゃな」

 

浩介の言葉を聞いた小夜の相槌に、浩介は頷くことで答えた。

 

「だから、今僕がどうなっているのかを一番よく把握できるのは、元樹のはずだ。それと情報を一つ。記憶と人格を消しただけで、私自身の体質は変わっていない。つまり昔の私の体質のままだから……これ以上は言わなくてもわかるはずだ」

「吸血鬼から血を吸わなければ反応しない特異体質は健在……と言うことじゃな」

 

小夜が一番問題とするのはそこであった。

浩介は人間から血を吸っても反応が弱いのだ。

その代わり、吸血鬼から血を吸うことで、最大限の反応が起こる。

それこそが、梓の血を吸血した時に浩介が感じた違和感の理由であった。

 

「でも、僕に吸血鬼の血を吸わせることはできない。そうだろ?」

「その通りじゃ。お主は厄介な特異体質に加えとんでもないものを持っておるしのう」

 

ため息交じりに頷く小夜に、浩介は頷いて答えた。

 

「で、本題は?」

「お主の体のことを告げようと思うんじゃが、そなたはどう思うかの意見を聞きたいと思うての」

「さあ?」

 

小夜の口にした言葉に、浩介は肩をすくめながら答える。

 

「僕は亡霊のような存在。すべての決定権はそちら側にある。事実を告げることが最善の策だと思うのであれば告げればいいし、そう思わないのであれば告げなければいい。簡単な話だ」

「それが難しいから聞いておるのじゃろう」

 

浩介の答えになっていない答えに、小夜はため息交じりに返す。

 

「大方、僕を説得できれば止まると思ったようだが、それは大間違いだ。これは体が覚えているものだ。私には止められない。だが、しっかりと話をすれば、”知覚範囲外”から範囲内となり、一連の行動にある程度の抑止を掛けられる」

 

”そのメリットとデメリットを考慮すれば、答なぞ簡単だろ?”と浩介は最後に締めくくった。

 

「言うにしても、私のことは他言無用だ」

「なら、なんと説明させる気じゃ? お主に似てあ奴はたいていの説明では納得せぬぞ」

「知るか。そんなもの”本能”とか適当に言えばいい。間違ってもいなければ嘘も言ってないんだしな。それに、そこをどうにかするのが医者や市町の役割なんじゃないのか?」

 

小夜の抗議を一蹴すると、おもむろにデスクの上に置かれたグラスを手にすると、歩き出した。

止まった位置は、浩介が意識を失った場所とほぼ同じであった。

 

「そろそろ私は眠る。お前らも早く先の表情を浮かべなければ悟られるぞ」

 

徐々に近づきつつある、浩介の眠る時間に、小夜は心の中で舌打ちしながら表情を元に戻す。

 

「まあ、なんだ。彼は大丈夫だ。私に似て強いんだし、どのようなつらい事実でも時間はかかるが、しっかりと受け止めるはずだ」

「アドバイスするんじゃったら、最初からアドバイスせぬか。馬鹿者が」

「え?」

 

ため息交じりにつぶやいた小夜の言葉に反応したのは、浩介だった。

だが、その声の感じはいつものようにおとなしい感じへと戻っていた。

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

「アドバイスするんじゃったら、最初からアドバイスせぬか。馬鹿者が」

「え?」

 

なぜかいきなり怒られた僕は、思わず首をかしげた。

 

「なんでもない。こちらの話じゃ」

「そうですか」

 

何か腑に落ちないが、僕は頷くことにした。

 

「それで、話してくれませんか? 私は何者なのかを」

「………」

「それなら、僕から話そう」

 

無言を貫く市長に代わって、扇先生が口を開いた。

 

「元樹!」

「私は医者です。医者は真実を患者に伝える義務がある。それにこれが――――――」

「ッ!?」

 

大きな声で叫ぶ市長だったけど、扇先生がいつになくまじめな表情でかっこいいことを言うと、市長は息をのんだ。

後半の部分が聞き取れなかったけど、聞かない方がいいかもしれない。

 

「勝手にするがよい」

「では。ゴホン」

 

市長の言葉を受けて、扇先生は咳払いをすると僕の方へと向き直る。

 

「君からとらせてもらった血液を調べた結果、ある因子が検出された」

「ある因子? それってなんですか」

 

僕は扇先生にさらに説明を求める。

 

「ライカンスロープの因子だよ」

「ラ、ライカン……なんですか?」

 

聞きなれない言葉に、僕は首をかしげながら訊き返した。

 

「ライカンスロープ、別名『吸血喰い』、『能力喰い』という異名を持つ普通の吸血鬼とは一線を画し特別視される伝説の吸血鬼のことだよ」

「特別……にしては、呼び名が物々しいんですけど」

 

扇先生の取り上げた呼び名は、凶悪さを感じさせるようなものだった。

 

「なぜそう呼ばれておるのかは、考えるまでもない。名が体を表しておる」

「………」

 

市長が引き継ぐようにして口にした説明に、僕はすぐに答えにたどりついた。

”ぐい”とは、やはり”喰い”のことを指しているのだろう。

だとすれば

 

「ライカンスロープはな、喰らうんじゃよ。比喩でもなく同胞をな」

「……」

 

市長の言葉に、僕は何も言えなくなった。

手が震えるのが自分でもわかる。

 

「そしてその力を自分に取り込む。それが伝説とされる吸血鬼、ライカンスロープじゃよ」

「ライカンスロープの特徴は、能力を複数使うこと。その理由は小夜様が説明したとおり、能力を自分に取り込み使えるようになるからなんだ。そして、それは吸血鬼を喰らったことを意味している」

 

(僕が、ライカンスロープ?)

 

とうてい信じられなかった。

そもそも、大きな疑問がある。

 

「でも、僕はこれまで一度も吸血鬼を喰らったことなんてありませんし、複数の能力だって使ったことは」

「前者については僕の方からは何とも言えない。もしかしたら人間だった時からあって、それが吸血鬼化する際に活性化したのか、それとも別の何かがあったのか……」

 

僕の疑問に、扇先生は困ったような表情を浮かべながら答えた。

どうやら、、本当にわかっていないようだ。

 

「後者についても同様じゃ。じゃが、お主記憶が途切れたりすることがあるじゃろ?」

「はい。まさか、それがっ!?」

 

僕の推測を肯定するように市長は頷いた。

 

「高月君のライカンスロープとしての本能が前に出ている状態なんだよ」

「本能、ですか?」

「大まかには違うんだけど、便宜上”本能”と言わせてもらってるだけだよ」

 

いきなり告げられたアバウトな名称に首をかしげる僕に、扇先生はそう説明してくれた。

 

「本能が前に出る条件は、確証はないけど吸血鬼を喰らう衝動に駆られた時と、吸血衝動に駆られた時の二つ」

「吸血……でも、前に布良さんから血を吸った時には何も起こりませんでしたよ?」

 

布良さんから始めて血を吸わせてもらった時のことを思い出す。

変な感覚はあったが、意識を失ったりすることはなかったはずだ。

 

「その理由が、君の体質に起因しているんだ」

「体質って、ライカンスロープのですか?」

 

僕の疑問に、扇先生は首を横に振る。

 

「普通、吸血鬼は人間から吸血することによってヴァンパイアウイルスを活性化させるんだ。だが、高月君の場合は、人間ではなく”吸血鬼”の血を吸わないと活性化しないんだ」

「………ッ!」

 

扇先生の説明を聞いた時、僕は再び衝撃を受けた。

こうも普通でないことが色々分かると精神的に来るものがある。

 

「もちろん、人間から血を吸ってもある程度活発化させることができるけど、それは吸血鬼に比べると微々たるものなんだ」

「そして、吸血鬼から血を吸わない限り衝動は起こるじゃろうな」

 

それは、僕がこれからも頻繁に意識を失うことを示唆していた。

 

「ということは、僕は誰か吸血鬼から血を吸わなければいけないってことなんですか?」

 

その問いに、扇先生と市長は首を横に振って否定した。

 

「それをやると、混乱が起こるんじゃよ。分かっておるとは思うが、ライカンスロープの印象はあまりよくない。もし吸血鬼の血を吸って活性化したりするところを見られたり、複数の能力を行使したらどうなるかはわかっておるじゃろ?」

 

大きな騒ぎとなって僕を無力化しようとする人が出ることは容易に想像できた。

いや、それよりももっとひどいことが起こるかもしれない。

 

「では、僕はこらえればいいんですか?」

「それは無理じゃろうな。じゃから、こうして対策を用意しておる」

 

そういって僕に差し出されたのは血液パックだった。

だが、それは合成パックとは似て非なる代物であった。

 

「この血液パックは、お主専用の特殊なものじゃ。これを飲んでおれば、少なくとも吸血鬼から吸血する衝動にはかられずに済む。とはいえ、それを飲んでも能力は使えぬが」

 

市長はそれをどこから取り出したのか、紙袋に詰める。

 

「これを二日ないしは三日に一度飲むんじゃ。そうすれば、ある程度は抑えられるはずじゃ」

「ありがとうございます」

 

市長から差し出された紙袋を、お礼を言いながら受け取る。

そして、紙袋の中をのぞいてみると、ある違和感に気づいた。

 

「あの、赤いラベルと混ざって、青いラベル血液パックがあるんですけど、これってなんですか?」

「それはじゃな、青いラベルの血液パックを飲むと、本能が呼びさまされるのじゃよ」

「はい!?」

 

市長の答えに、僕は思わず叫んでしまった。

 

「本能も、それほど危険なものではない。それは、お主が一番知っておるはずじゃ」

「……」

 

確かに、よくよく考えてみれば、本能が前に出たからこそあの吸血鬼二人を確保できたとみるのが最適だろう。

布良さんの話では、槍に串刺しになる前に僕が念動力で止めたらしい。

つまりは、本能が出たからこそ布良さんは大きなけがをせずに済んだ。

 

「それに、本能が前に出ていた状態で死者は出ていないことを見ても、本能が出る=死人が出るということは言えない」

「そのことから、本能も最終手段にするのはどうじゃと思ったのじゃよ。とはいえ、あまり多用はしてもらいたくはないのじゃがな。本当に切迫した状態のみ、青いラベルのパックを口にするようにするのじゃ」

「分かりました」

 

市長からの忠告に、僕は頷くと紙袋に青色の血液パックを戻した。

 

「こうしてみると、夜の世界も悪くはないであろう?」

「ええ。確かに」

 

行動時間が逆転しただけで、それほどの不自由は感じていない。

 

「ま、よき吸血鬼生活(ヴァンパイアライフ)を楽しむとよい。そのためにならわしは労力を惜しまん」

「ありがとうございます」

 

市長の心強い言葉に、僕は少しではあるが心の重みが和らいだような気がした。

 

「それと、血液パックが少なくなったら必ずわしに連絡するのじゃぞ。早めに新しい血液パックを用意させるからの」

「ありがとうございます」

 

僕は、市長の好意にお礼を言うと、もう一度頭を下げて公務室を後にするのであった。

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