DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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ここから原作の話へと移っていきます。
とはいえ、視点を浩介から佑斗に変更することはあまりありませんが。


第14話 新たな入寮者

「はぁ………」

 

公務室を後にして市長のいる建物を後にした僕は、思わず深いため息を漏らした。

その理由は、当然のことではあるが、先ほど市長たちから知らされた僕のことに関する話だ。

 

(僕が、吸血鬼を喰らうライカンスロープと言う存在で、吸血鬼の血を吸わないとヴァンパイアウイルスが活性化しないだなんて)

 

復唱してみると、到底正気とは思えない内容だ。

できれば、性質の悪い冗談だと思いたい。

だが、そうは思えない材料が多いのもまた事実。

例えば、意識を失うことがあること。

そして、体が勝手に動くこと。

何より、布良さんの血を吸ってもそれほどの変化がなかったのが証拠になりはしないのだろうか?

あの時は、初めて血を吸ったので、そういうものかと思ったが市長たちの話を聞いた後では、それにもいささか疑問を抱いてしまう。

 

(とりあえず、気を付けよう)

 

本能が変なときに出てきたら、万事休すだ。

全ては終わる。

そのためには市長からもらった血液パックをちゃんと飲もう。

 

(今夜寝る前にちゃんと飲もう)

 

僕は心の中でそう決心した。

それが自分のため・周りのみんなのためでもあるのだから。

 

(でも、美羽さんはもしかしたら僕がライカンスロープであることに気が付いてるのかもしれない)

 

思えば初めて血を吸った日、彼女は確かに口にしていた。

『吸血鬼喰い』と。

だが、もし気が付いているならば特に変わりのない態度が不自然だ。

 

(もしかして、気が付いていないで、ただ口にしただけ……とか?)

 

ふとそんな可能性が出てくるが、それでも気は抜けない。

何せ、これは希望的観測でしかないのだから。

 

(とりあえず、今後は十分に気を付けよう)

 

どうなのかは判断できないが、これから先で十分注意すればいいだけの話。

しっかりと血液パックを飲んで、青いラベルの血液パックさえ不用意に口にしなければ、ばれることはほとんどないはずだ。

 

(あれ、そういえばどうして市長は僕が意識を失って、本能が前に出たことを知ってるんだろう?)

 

あの時は、突然の衝撃の事実の連続に気が動転していたが、よくよく考えればおかしいことだった。

報告書は、僕と布良さんで当たり障りのない内容を書いているので、そこから知られることはない。

だとすれば、実際に見ていたとしか考えられない。

 

(…………やめよう)

 

考えても答えが出ず、逆に失礼にあたるような気がしたため、僕はそれ以上考えるのをやめた。

 

(そういえば、出た後に扇先生の悲鳴のようなものが聞こえてたんだけど、大丈夫かな?)

 

そんな疑問が頭をよぎる。

とはいえ、扇先生のことだから大丈夫だろうと思ってしまえば、そこで心配するのは終わるのだが。

 

(まあ、とりあえずは僕がライカンスロープであることは絶対に隠そう)

 

寮の皆には特に。

寮にいて、他の人よりも接する時間が多い分気づかれる可能性は高い。

そして、ばれた時の反応が一番想像したくない相手なのだ。

 

(帰ったらさっそく血液パックを飲むことにしよう)

 

僕はそう心の中でつぶやくと、いつの間にか到着していた月長学院寮のドアノブに手をかける。

 

(もうみんな帰ってきてるかな)

 

腕時計で時刻を確認してみると、今の時間帯は、そろそろ皆が帰ってくる頃だったはずだ。

 

「ただい―――――」

「破廉恥だよ、セクハラだよっ!!」

 

寮に足を踏み入れるや否や、布良さんの叫び声が聞こえてきた。

 

(なんだ?)

 

明らかにいつもと違う感じの寮の雰囲気に首をかしげながらも中に足を踏み入れる。

 

「どうして納得しかけちゃうの!? 大人=恥じない、ていう認識はおかしいよ! あと六連君も、本気でそんな風に思ってるの!?」

 

何だか知らないが、修羅場になりかけている。

 

(ん? ムツラ?)

 

布良さんの叫び声の中に、知らない人物の名前があったことに首をかしげる。

その疑問を早く解決させるため、そして手にある荷物を片づけたいために、僕は共有スペースに足を踏み入れる。

 

「おーおー、修羅場ってるな」

「あ、浩介おかえり」

「おかえりなさい、高月君」

 

できる限りフランクな感じで、声をかけると、美羽さんはいつもの様子で声をかけてくれたが、布良さんだけ若干低い声色だった。

 

「おかえりー、コースケ」

「ただ今エリ―――ぶっ!?」

 

ふと違う方向からかけられた声に、その方向を見ながら返そうとした僕は、思わず吹き出しそうになった。

なんと、エリナさんが裸姿だったのだ。

それでは語弊がある。

正確には、タオル一枚だったのだ。

 

「お、コースケはちゃんと反応してくるんだねー」

「なんでもいいから、早く服を着なさいっ!」

 

感心感心と言いたげな表情を浮かべるエリナさんに、僕はそう叫ぶ。

刺激が強すぎる以前に、破廉恥だ。

 

「そうだよ。いつまでもそんな服装でいちゃダメ。これは寮長命令!」

 

布良さんの伝家の宝刀の”寮長命令”が下される騒ぎになってしまった。

 

「ほーい。それじゃ、ユートまたね」

 

布良さんの寮長命令が効いたのか、それとも満足が行ったのかそう言って、エリナさんはリビングを後にしていった。

 

「で、そろそろその人物の紹介をしてほしいんだけど」

「あ、そういえばしてなかったね」

 

彼女が去っていくのを見届けた僕の言葉に、布良さんが反応した。

 

「六連 佑斗君。今日から新しくここに住む人だよ」

「六連 佑斗だ。よろしく」

 

そう言って差し出された手。

六連佑斗と名乗る青年を軽く観察する。

細い目が若干怖いが、とても優しい青年のような感じがする。

僕よりは断然いい人だ。

 

「高月浩介。呼び方は任せるよ。こちらこそよろしく」

 

僕は彼の手を取り握手を交わす。

これで男性の数がまた一人増えた。

それは、僕にとっては非常に喜ばしいものであった。

 

「さて、それじゃ浩介に佑斗。話し合いを始めましょうか」

「あのー美羽さん。今、僕の名前が聞こえたような気がしたのは、僕の聞き間違いでしょうか?」

 

今僕の名前が聞こえたような気がしたため、僕は美羽さんに確認する。

 

「間違いではないわ。あなたとも話し合いが必要のようだしね」

「なぜっ!?」

 

話し合いをするようなことは一切していなかったため、僕は抗議した。

 

「高月君、エリナちゃんの裸見て鼻の下伸びてた」

「え゛っ!?」

 

布良さんの指摘に、僕はカエルがつぶれたような声を発してしまった。

と言うより、僕にそんな実感はなかった。

 

「さあ、始めましょう?」

「………」

 

僕はもう何もかも諦めた。

こうして、新たに男性の入寮者が増えたこの日、僕と彼は”話し合い”をするのであった。

この時のことは、願わくば思い出したくないし、二度と味わいたくもない思い出となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗闇の中、僕は走る。

何から逃げているかはわからないが、僕は逃げていた。

でも、後ろを振り向かない。

なぜなら振り向けばそこにいるのは……

 

「整理の鬼婆がっ!?」

 

”整理整頓しろ~”と言いながら、手には刃物のようなものを持って追いかける人の姿があったからだ。

 

僕はとにかく逃げる。

逃げ続ける。

 

「頼むから、消えてくれ! 整理の鬼婆―――ぐえっ!?」

 

突如感じた痛みに、僕はあたりを見回す。

そこは、どこかで見たような場所だった。

そして、そんな僕を見る……いや、睨みつける人物が一人。

 

「誰が、”生理の鬼婆”よ!」

「………」

 

目の前に立つ少女が、怒り心頭で僕に怒鳴りつける。

その姿はまるで、

 

「鬼悪魔?」

 

鬼の悪魔に見えた。

 

「がふっ!?」

「怒るわよ」

 

殺気がこもった声を聴きながら、僕の意識は再び闇に沈む。

 

「まて~~~」

「く、来るなぁ!!」

 

再び始まる追いかけっこ。

今度は刃物ではなく銃を持って追いかけてくる。

 

――どうしたの?――

 

何だか声が聞こえた。

 

「おい、追いかけてくるんだっ!」

 

誰に対してかはわからないが、僕は助けを求める要領で叫んでいた。

 

「”ツルペタ”の鬼婆――――アルペジオ!?」

 

再び頭に感じた痛烈な痛みで、僕は目が覚めた。

 

「あれ……布野ひゃんに……エレナしゃん?」

「布野じゃなくて布良!」

「エレナじゃなくてエリナだよ!」

 

寝ぼけた頭に二人の声が響いてくる。

 

「ごめん……ちょっと寝ぼけてた」

「ところで、コースケはどんな○夢を見てたのかな?」

「悪夢だよ」

 

いまだに痛む頭を押さえつつ、僕は下ネタ前回のエリナの問いに答えた。

 

「刃物を持って”整理整頓しろ”と言って追いかけてくる鬼婆に、額に”ツルペタ”と言う文字の入ったハチマキをして銃を乱発しながら追いかけられる夢を見たんだ」

「それは何とも凄まじいね~」

「何でか頭が痛いんだけど、どうして?」

 

先ほどからずきずきと痛む頭をさすりながら、エリナさんに聞いてみる。

 

「と言うより、どうして布良さんとついでに美羽さんは僕をにらんでるの?」

「自分の胸に手を当てて考えてください!」

 

まったくわからなかった。

 

「何?」

「浩介、寝言で”生理の鬼婆”とか言ったり、”ツルペタの鬼婆”と口走ってたから、それじゃないか?」

「うげっ!?」

 

佑斗君のニュアンスで、どっちの”せいり”なのかがわかった僕は、引きつった表情を浮かべているはずだ。

ならば、この凄まじいほどに感じる殺気に満ちた視線は納得がいった。

 

「本当にすみませんでしたっ!!」

「はぁ……もういいから、土下座はやめて」

 

理由が分かった僕は素早くその場で土下座して二人に謝った。

そんな僕に、美羽さんはため息交じりにそう言ってくれた。

 

「もうすぐ夕食ができますから、待ってくださ―――あれ、高月先輩はどうして土下座をしているんですか?」

「それは、とても悪いことをしたからだよ」

 

寝起きから、疲れた僕は力がこもらない声で稲叢さんの疑問に答えた。

 

「と言うより、僕はいつ寝たの?」

「俺が気づいたころには、もう寝てたけど」

 

佑斗君が僕の疑問に答えてくれた。

疲れでもたまっていたのだろうか?

 

「あり? そういえばニコラはまだなの?」

「さっき声を駆けたら返事があったから、そろそろ来ると思うよ」

 

リビングにいる僕たちを見渡したエリナが口にした疑問に布良さんが答えた。

 

「ちなみに、ニコラは紹介済み?」

「いいえ。昨日は結局会っていないから。ただニコラには佑斗がこの寮で済むことは伝えてあるわ」

 

僕の疑問に美羽さんが答えるが、僕にはまったく知らせてくれなかったのは、何かあるのだろうか?

 

「やあ諸君。おはよう」

 

そんな時、ドアが開く音がしたかと思えば、渦中の人物が姿を現した。

 

「今宵の月も美しい、いい夜だ」

「うわー今日も強烈だな」

 

あれな言葉に、僕はよく毎日できるなと感心しながらつぶやいた。

僕だったら半日も持たない。

そんなニコラに、皆は挨拶をしていく。

 

「部屋の中でマントをばさばさしないの。埃がたつでしょ」

「マントじゃない! 漆黒の(ヴェール)だ!」

 

布良さんの注意に、ニコラは指摘するが、こだわるところがある意味間違っているような気がする。

そして、佑斗君はニコラと無事(?)に挨拶を交わすことができた。

そんなニコラに、僕は違和感を感じていた。

それは、

 

「あれ、ニコラ目の色がいつもと違うけどどうしたの?」

「え、嘘っ!? 忘れてたっ!」

 

目の色のことを聞くと、ニコラは慌てた様子でリビングを後にしたかと思うと、戻ってきていた。

 

「ふ、ふん。吸血鬼たるもの、目の色を自由に変えることなど造作もない。べ、別にコンタクトをし忘れたわけじゃないんだからね」

 

(なぜにツンデレ?)

 

ツンデレ口調で否定するニコラに、思わず心の中でツッコンでしまう。

 

「コンタクトなのか?」

 

ニコラの言葉に疑問を持ったのか、美羽さんに尋ねていた。

 

「ええ。度なしのカラーコンタクトよ」

「なぜにそんなものを」

 

至極もっともな反応が返ってきた。

たしかに普通は、カラーコンタクトをするにしても度なしのカラコンはあまり必要ないはずなんだけど。

 

「本人いわく、『そうすれば吸血鬼っぽく見えるから』だそうよ」

 

美羽さんの説明に、佑斗君は思わず言葉を失っていた。

前に聞いたときも感じたが、そこまでする努力はすごいと思う。

尤も、その努力を少し違う方向に向けてほしいんだけど。

いや、そもそも

 

「本物の吸血鬼が、吸血鬼のコスプレをするって……」

 

ニコラの境地には到底たどり着けないなと悟る僕なのであった。

その後、僕たちは新たに寮に入ってきた新人”六連佑斗君”を迎えての初めての夕食を摂るのであった。

 

(あ、血液パックを飲むの忘れてた)

 

昨日の夜に飲んでおこうと思っていただけに、さすがにまずいなと感じたが、食後に部屋で飲めばいいかと言う結論に至った。

だが、僕は知らなかった。

この夕食後に、思わぬ襲撃者が現れることになるとは。

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