DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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こんばんは、TRです。

第17話になります。
とりあえず目標は、平均文字数5千字です。



第17話 巡回

「お、全員そろってるな」

 

布良さんの服談義が終えたころ、少し遅れて主任がやってきた。

 

「遅いですよ、主任」

「こっちはお前と違って、いろいろ大人の仕事があるんだ」

 

布良さんの咎めるような言葉に、主任は”大人”を強調しながら反論する。

 

「さて、六連悠斗。お前は今日から風紀班として働いてもらう」

「よろしくお願いします」

 

佑斗君の方に向き直って告げる主任に、佑斗君はお辞儀をする。

 

「この支部ではお前が俺の下につくことになっている」

 

そして、主任から風紀班の仕事内容について軽く説明がされた。

 

「と言うことで、重大な仕事をしてもらう」

「仕事、とは?」

 

本当にデジャブを感じるやり取りが今目の前で行われている。

たいていこういう場合の仕事は

 

「巡回だ」

 

巡回に限られる。

とはいえ、巡回は犯罪の芽を摘み取るのに非常に重要なものであることを、僕はひったくりの一件から悟った。

 

「だが、犯罪を未然に防ぐためにも巡回は欠かせない仕事だが、心配するな。お前一人で行けとは言わん。教育係も必要だしな」

 

(あれ、この流れって………)

 

主任の説明に、この後の展開が読めたような気がした。

おそらくは

 

「お前、矢来と布良に高月の中で誰と仕事をしたいかを選べ」

 

(ですよねー)

 

このように誰か一人を選ばせるのだ。

 

(って、今度は僕まで入ってるんですね)

 

確かに、入ってから日は経っているし、仕事事態はそつなくこなせるようになってきた。

でも、それは布良さんたちに比べれば月とすっぽんだ。

僕はいまだに半人前なのだ。

 

「嫌な質問の仕方をしますね」

「いいから、選べ」

 

不満を口にする佑斗君を一刀両断して、主任は選ばせる。

 

(あの時、布良さんたちもこんな感じだったのかな?)

 

妙に緊張するこの感じは、あまり慣れたくはない。

というより、このタイプの緊張はあまり味わいたくないのが本音だ。

そして、佑斗君は口を開いた。

 

「それなら、浩介でお願いします。仕事もそうですが吸血鬼としても半人前ですし」

「なるほど。確かに男同士の方がいいだろうな」

 

前に布良さんと巡回している際にお叱りを受けている半面、反論できる権利はないが、主任の言葉になんとなく背筋に寒気が走った。

 

「よし、矢来、布良。お前たち二人で巡回に迎え」

「了解(あい・さー)」

 

主任の指示に、返事を返すと2人は外へと向かう。

 

「それじゃ、頑張ってね2人とも」

「サボらないでよね」

 

それぞれが応援の言葉をかけて、支部を後にした。

 

(今のは完全に嫌味だったな)

 

前にそれをしてしまっているが、さすがに勘弁してほしい。

 

「さて、僕たちも出るとしようか」

「ああ」

 

そして僕も佑斗君と共に巡回に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、これからどうするんだ?」

「そんな大したことではないよ。主任の言っていた通り、少し威圧感を与えながら街を歩くくらいだよ。それだけでもある程度の犯罪の抑止効果はあるんだ」

「そういうものか?」

 

佑斗君の問いかけに答えると、佑斗君は首をかしげて納得しる。

 

「そういうもの。警備員とかそういう類のものだと考えてもらうといいかも。あれだって、定期的に見回っていれば”お前らを見張ってるぞ”と言う認識を与えることができるから」

「なるほど、なんとなく理解できた」

 

風紀班の巡回とはいっても、やっていることは警察で行うパトロールのようなものだ。

要するに、”見回っている”ことに意味があるのだ。

 

「まあ、そう思えるようになったのは、つい最近のことだけどね」

 

僕は冗談めかして最後に付け加えた。

 

「それで、具体的には何をすればいいんだ?」

「不審者がいないかを見て回ればいいんだよ。例えば、周囲をキョロキョロと見回していたり、挙動不審だったりとか」

「なるほど」

 

佑斗君の問いかけに、答えると納得したのか佑斗君は頷いて答えた。

 

「あと、暗がりのような場所も確認して。暗がりに連れ込んで……と言うことがある可能性もあるから。ちなみに、今の佑斗君の目なら、暗がりでも見えるはずだから」

「確かに……」

 

佑斗君は僕の言葉に、ためしにとばかりに付近の若干暗い場所の方を見るとそうつぶやいた。

 

「もし、そういった人がいたら僕に教えてくれる?」

「分かった」

 

佑斗君の返事を聞いて、僕たちは巡回を始めた。

最初は噴水広場から開発地区に飲食店が立ち並ぶ場所など回り、もう一度開発地区の方を見まわると、飲食店が立ち並ぶ場所へと戻ってきた。

 

「ここさっきも通らなかったか?」

「うん、通ったけど?」

 

佑斗君の問いかけに、僕は佑斗君の方を見ずに周囲を注意深く見まわしながら答えた。

 

「もしかして迷ったか?」

「失敬だよ。ちょっと追っているヤマがあるから、この辺を重点的にみているだけだよ」

 

一度迷ったことがあるだけに、強く否定はできないが今回は迷っているわけではない。

 

「そのヤマっていうのは?」

「類似店詐欺の摘発」

 

僕が直接担当することになる初めての事案がこれだった。

ちなみにひったくり事案については、布良さんと一緒に引き受けた(言い渡された)ため、数に入れていなかったりする。

 

「類似点詐欺?」

「”類似”はそのままで、”点”は点数の点じゃなくて、お店の”店”の方だよ」

 

目を細めながら首をかしげる佑斗君に、僕は漢字の説明をすることにした。

 

「そんな詐欺の名称聞いたことがないぞ?」

「まあ、僕が勝手に作った名前だからね」

 

来るであろう佑斗君からの指摘に、僕は苦笑しながら答えた。

 

「どんなやつなんだ?」

「簡単に言うと、既存店に似せた店名を書いた大幅に割り引きを謳うチラシを配り、食い付いた客を飲食店に連れて行き法外な料金を請求するぼったくり飲食店の手口だよ」

 

佑斗君の問いかけに、僕は簡単に説明をする。

 

「それは悪質だな」

「そう。特に許せないのは自分の店名は全く違うから被害者が怒鳴り込んだり騒ぎを起こしたりするのは関係ない既存店と言う部分だ」

 

客だけではなく関係のない飲食店までもを巻き込むのこの手口は、かなり悪質だ。

佑斗君も、僕の説明に顔を歪める。

 

「僕が二三回ほど通っているカフェバーでも同じことが起きて怒鳴り込んできたんだよ。その時に僕がいたからカフェバーの経営者から直接この詐欺を行う人の摘発を頼まれたというわけ」

「それで、浩介は具体的に何を見てるんだ?」

「見ているのは客引きをしている人がいるかどうか」

 

絶えず周囲を見渡しながら佑斗君の疑問に答える。

 

「特に客引きがチラシを配っていたらそのチラシも重点的に」

「なるほど、ここなら客引きをする意味はあるかもしれないな」

 

人でごった返しているわけではないが、人通りが少ないというわけではない。

そこそこ激しい人通りと言うのが最適だろう。

時より客引きの姿も見かけるし。

 

「それにしても、平和だな」

「確かにそうだけど、ここは一応観光地だからね。歩いていて事件に出くわすようじゃ、観光客は来ないでしょ」

 

佑斗君のつぶやきに、僕は思わず指摘してしまった。

とはいえ、佑斗君から返ってくる言葉がある程度想像できてしまう。

 

「俺は、ここに来て早々に事件に巻き込まれたんだけど」

「ま、まあ。そういうのは本当にたまにしか起きないんだよ……たぶん」

 

ひったくり事案の件を考えると、自信を持って言えなくなる自分が情けなかった。

 

「まあ、新人吸血鬼同士、頑張っていこうよ」

「そうだな……って、ん?」

 

僕の励まし(かどうかはわからないけど)の言葉に頷く佑斗君だったが、何かに引っかかったのか目を細めていた。

 

「どうしたの?」

「今浩介、”新人”って言わなかったか?」

 

そんな佑斗君に僕は首をかしげながら尋ねると、佑斗君から問いかけられた。

 

「あれ、言ってなかったっけ? 僕も佑斗君と同じ()人間だってこと」

「な、なにっ!?」

 

僕の答えに佑斗君は少し大きな声で驚いた。

 

「し、しーっ。人間から吸血鬼になったことは、誰にも話しちゃいけないって言われたでしょっ」

「わ、悪い」

 

僕は慌てて周囲を見回すが、特に誰もこちらを見たり反応していたりする人はいなかった。

そのことに、僕はほっと胸をなでおろした。

 

「それで、本当なのか?」

「本当だよ。そのあたり、布良さんか美羽さんにでも聞いてみるといいよ。話してくれると思うし。吸血鬼になったきっかけや経緯も、佑斗君とほとんど同じと言うおまけつきだから」

 

我ながら、偶然と言うのはあるものなんだなと思ってしまったほどだ。

 

「マジで?」

「マジで」

 

佑斗君の問いに、僕はそのまま返す。

 

「まあ、そんなことは置いといて。こういう場所は時より想像もつかない事件とかの温床になっていたりするから、二番目に重要な場所なんだよ」

「飲食店とかもあるしな」

 

佑斗君の相槌に”そういうこと”と返す。

 

「日常単位で起こることと言えば……」

「お兄ちゃん。人にぶつかっておいて謝らねぇとは、ひっく……どういうことだ? あん」

 

僕がこれから言おうとすることを具現化したように前で酔っぱらい同士の件かが発生した。

 

「酔っぱらい同士の喧嘩か?」

「そういうこと」

 

佑斗君の問いに、僕は頷きながら答えた。

 

「ちなみにあれは、止めたほうがいいのか?」

「当然。僕は酔っぱらいの方を相手にするから、佑斗君はもう一人の方を頼める?」

「了解。とりあえず頑張ってみる」

 

佑斗君の疑問に答えつつ、役割分担すると僕と佑斗君は酔っぱらって喧嘩を始めた男性の方に近寄る。

 

「はいはい、ストップストーップ!」

「なんだ? お前達は」

「関係ないやつはすっこんでろ」

 

突然の僕たちの登場に、二人の男性は睨みつけるように僕たちを見る。

 

「そうだ。お前らは関係ないっ」

「何をするんだ!」

 

酔っぱらった男性が相手の体を強く押し飛ばしたことに、相手の男性は不快そうな表情を浮かべながら食って掛かる。

 

「はいはい。喧嘩しないの」

 

もめごとがひどくなる前に、僕と佑斗君とで二人の間に割って入り、取っ組み合いができないようにした。

 

「なんなんだよ、お前ら」

「なんだ、特区管理事務局の連中か」

 

しつこいほど食い下がる僕たちに、相手の男性が声を荒げる中酔っぱらった男性は僕たちの正体に気づいたのか、鬱陶しそうな声を上げる。

 

「風紀班のものです」

「―――っ!」

 

佑斗君が所属を口にした瞬間、相手の男性が息をのんだ。

 

(これは、まさか……いや考えるのはあと。まずはこの酔っ払いを何とかしよう)

 

「ちょっとあちらでお話ししましょう」

「なんだよ、俺にかまうなよ」

 

文句を言いながらも、僕の指示に従うように酔っぱらった男性は僕の導く方向へと足を向ける。

 

(頑張って、佑斗君)

 

僕は心の中で佑斗君にエールを送りながら少し離れた場所へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

酔っぱらった男の人を離れた場所に案内するのまでは良かったが、僕はある問題に直面していた。

 

「――――なわけだよ。まったく困っちまうなぁ。あはは……ひっく」

「そ、そうですね」

 

それは、男の人と意気投合してしまったことだ。

そのため、話を切り上げることが出来なくなってしまったのだ。

 

(適当に相槌を打っていただけなんだけど、どうして?)

 

思わず首をかしげてしまいたくなった。

とはいえ、このままだと巡回ができなくなってしまう。

どうすればいいだろうか?

 

「そうだ! おじさんと一緒に飲もうじゃないか。おごるぞ」

「いや、結構です。仕事中ですから」

 

今度は一緒に飲まされそうになったため、僕はあたりさわりのないことを言って断る。

 

「そんなこと言わないで、行こうじゃないか」

「あの、ですからね――うわ!?」

 

断ろうとする僕の腕を酔っぱらった男性がつかむ。

 

「いい加減にしてもらえませんか?」

「なんだ? お前は」

「佑斗君」

 

そんな時、僕に助け舟を出してくれたのは佑斗君だった。

 

「彼と自分にはまだ仕事がありますし、断っている人を強引に連れて行くのはよろしくないと思いますよ」

「な、なんだよ」

 

佑斗君から放たれる威圧感に、酔っぱらった男性は尻込みしていく。

 

「今日のところは諦めていただけませんか?」

「分かったよ、もう行く。それでいいだろ?……たく、これだから最近の若いもんは」

 

佑斗君の言葉に、酔っぱらった男性はぶつぶつと理不尽な文句を呟きながらも去って行った。

 

「はぁ……」

「大丈夫か?」

 

思わず深いため息を漏らす僕に、佑斗君が声をかけてきた。

 

「大丈夫。人に嫌われるよりは好かれる方がいいけど、あそこまで行くとどう対応していいかわからなくて困るよ……」

「それも、浩介の仁徳だと思うけど」

 

僕のボヤキに、佑斗君がフォローしてくれた。

 

「はぁ……って、それは何?」

「ああ、これか?」

 

もう一度大きく息を吐き出した僕は、佑斗君が手にする小袋に気づいた。

 

「素面の男が落としていったやつだ」

「落としたって……声はかけたのか?」

 

佑斗君の説明にちょっと気になったため、僕は佑斗君に問いかける。

 

「ああ。だけど、そのまま逃げるように去っていったんだ」

「…………」

 

佑斗君の言葉を聞いて、僕はある可能性について考えた。

それは、この間のひったくり事案の時と同じような状況なのか否かだ。

 

「浩介?」

「あ、ごめん。とりあえずいったん支部に戻ろう。中身を見るにも主任たちがいるところの方がいいと思うし」

 

いつまでも無言の僕に佑斗君が怪訝そうな表情を浮かべながら声をかけてきたため、僕は佑斗君にそう提案した。

 

「そうだな」

 

佑斗君が頷いたため、僕たちはいったん支部の方へと戻るのであった。




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