今回もまた規制が大変でした。
あまりにもあれすぎて『―――』表記になっているところもあります。
ちなみに、地味に平均文字数が5千字を突破しました。
それでは、どうぞ
この都市で受ける初めての授業。
どういったものだろうかと身構えていたが、普通の学院とそれほど大差はなかった。
とはいえ、少々都市びいきになっているような気もしなくはないが。
まあ、それはご愛嬌と言うものだろう。
やがて、授業は終わり昼休みを迎えた。
(って、ここでは深夜休みの方がいいのかな?)
今の時間は午前0時。
ちょうど新しい一日を迎える時間帯だ。
やはり深夜休みの方がいいようだ。
(そういえば、昼食……夜食はどうするんだろう?)
さっきからどうも時間帯の言葉で間違うことが多い。
本当に何とかしなければ。
それはともかく、夜食用のお弁当は稲叢さんから手渡されていない。
当然と言えば当然だが、それでもどうすればいいか戸惑ってしまう。
こういう場合は、大抵が食堂でご飯を食べると相場で決まっている。
とはいっても、その場所を僕は知らない。
(とりあえず外に出るか)
ここにいても話は始まらないと思い、僕は教室を出る。
「で、どっちに行けばいい?」
教室に出てさっそく左右どちらに向かえばいいかの選択を迫られることになった。
(迷路で迷った時は右に進めば出口にたどり着けるというが……)
ここでいう出口が食堂にあたるのかが微妙なところだが。
「あれ? 高月君」
「布良さんに……誰?」
そんな僕に声をかけたのは布良さんだった。
僕は思わず布良さんの隣に立っていた、青い短めの髪の女子学生に問いかける。
「大房ひよ里です」
「えっと、同じクラスの人……で合ってるかな?」
僕の少しばかり失礼な聞き方にもかかわらず、女子学生は顔色一つ変えないどころか丁寧な自己紹介をしてきた。
「はい、大丈夫ですよ」
どうやら間違えてはいなかったようだ。
もしクラスメイトでもないのに、クラスメイトだと言ってしまったらそれは失礼にあたる。
こうして聞いておくのもある意味正解だったのかもしれない。
「それで、高月君はこんなところで何をしてるの?」
「えっと、昼……夜食を食べに食堂に行こうとしたんだけど」
「場所がわからなかったんだ」
僕の口から出る言葉に予想ができたのか、布良さんが代弁してくれた。
僕は布良さんの完全に図星の指摘に、頷くことで答えた。
「でしたら、ご一緒に行きませんか?」
「2人が迷惑でなければぜひ」
僕にとっては願ったりかなったりの提案だったため、すぐに食い付いたが2人が迷惑なのであれば無理強いはできない。
とはいっても、諦めた後どうするのかは全く考えていないが。
「い、いえ。迷惑なんてことはありません」
「そうだよ。それに人数が多いほうが楽しいし」
僕の言葉に、大房さんは若干驚いたように目を見開かせながら否定し、布良さんは楽しそうに頷いた。
「それじゃ、お願いします」
そして僕は二人に連れて行かれる形で食堂に向かうのであった。
もちろん、場所を覚えながら。
食堂は、普通の学院とさほど変わらなかった。
物々しい雰囲気でもなければ、コウモリが飛び交う光景などもない。
少しばかり上品さが感じられる場所であった。
「あそこの自動販売機で飲み物が買えて、その隣のカウンターで注文をするんだよ」
「なるほど」
お手本とばかりに大房さんと布良さんは厨房のおばさんに料理を注文し、代金を支払う。
「はい、次の人ー」
「えっと……カレーの甘口で」
僕は何を頼むかに悩み、とっさにカレーが出てきた。
ちなみに、僕は甘党だ。
中辛でもいけるが、甘口の方がしっくりとくるのだ。
ためしにと激辛を食べた時があったが、地獄を見たのはあまり思い出したくない。
代金を支払い(400円だった)注文した料理を受け取った僕たちは、開いている席を探す。
「席は……あ、あそこにあった」
まるで僕たちに座ってくださいと言わんばかりに開いている席に僕たちは腰かける。
僕の対面に布良さんが、その隣に大房さんと言う形だ。
「ちょっと待っててね、あと少しで美羽ちゃんたちが来ると思うから」
「分かった」
僕たちは、いまだに来ていない美羽さんたちが来るのを待つことにした。
「そういえば、大房さん」
「はい、なんですか? 高月君」
僕はそんな中、気になっていたことを大房さんに尋ねることにした。
「前に一度会いませんでしたか? いや、学院以外でですけど」
「はい、一度。この前お越しいただいたカフェバーでお会いしております」
一歩間違えればナンパにもとらえかねない質問に、大房さんは頷くと答えてくれた。
「………あ、あの時の!」
「その節はお世話になりました」
その言葉で、僕は数日ほど前に出会っていたことを思い出した。
彼女は僕が類似店詐欺が発生していることを知るきっかけとなったカフェバー『アレキサンド』で働いていたウエイトレスの人だった。
「いや、こっちもおかげで姑息な犯罪を未然に防げたんですから」
「それじゃ、どっちもどっちと言うことで」
このままでは話がまとまらないため、大房さんの提案に頷くことにした。
「へい、Ms.ケイト。夕日差し込みたる聖なる金色の雪原をよろしく頼む!」
そんな時、誰かの注文する声が聞こえてきた。
しかもその声はニコラに似ていたような気が。
「ねえ、布良さん」
「何かな? 高月君」
僕はひと月になることがあり、布良さんに尋ねることにした。
「『夕日差し込みたる聖なる金色の雪原』ってなに?」
「えっと、確か……カレーだったと思うよ」
やはりニコラだ。
言い回しが特に。
「カレーって言ったほうが早いのに」
「ま、まあ、それだったらとっくに普通にしているはずだけどね」
僕の指摘に、布良さんは苦笑しながら返した。
確かにそうではあるけど。
何より驚いたのは……
(厨房の人に通じていることだよね)
ちゃんとカレーらしきものを出されているあたり、厨房のおばさんの脅威のスキルに、僕は舌を巻いていた。
「六連くーん! こっちこっち」
そんなことを思っていると、布良さんは佑斗君たちを呼ぶのであった。
その後、佑斗君に大房さんが自己紹介をする。
「ひよ里ちゃんはね、私と同じで吸血鬼さんじゃないんだ」
「でも、ここに通っているということは、吸血鬼の存在は」
「はい、知ってます」
布良さんの説明を受けて掛けた僕の疑問に、大房さんは頷くことで答えた。
「と言うことは、陰陽局の人?」
「いえいえ。私には荷が重いですよ。父が局員なんです」
佑斗君の問いかけに、首を横に振りながら苦笑を浮かべ否定した。
「と言うことは、家族みんなで?」
僕の問いに頷いて答える大房さんだが、僕は若干うらやましいなと思っていたり。
両親に会ったことがない(もしかしたら物心つく前には会っていたのかもしれないけれど)僕としては、それだけでもうらやましかったのだ。
(ここでわざわざ思い出さなくてもいいか)
場の空気が白けるため、僕はそれ以上考えるのをやめた。
「それで、お二人は寮から通っているんですよね? 学院の」
「ええ。2人はつい最近まで病院で入院してたんだけど、退院するときに住むところがなくて困っていたのよ」
大房さんからのいきなりの質問に、動揺することもなく、美羽さんが答えていく。
「高月君の場合は元々編入することが決まっていて、六連君の方は美羽ちゃんが寮を紹介してくれたんだよね」
「ま、まあ、そんなところかな」
布良さんの視線に促らされるように、佑斗君が相槌を打つ。
嘘は言っていない。
まあ、一部分伏せて入るけど。
「それで、身体の方は大丈夫なんですか?」
「う、うん」
「定期検診とかがあって通院する必要はあるけどな」
大房さんの問いかけに、僕に続いて佑斗君が答える。
「あ、コースケにユート見ーっけ!」
「先輩方もお揃いで。よろしければご一緒にしてもよろしいですか?」
そんな中、声をかけてきたのはトレイを手にしたエリナさんと稲叢さんの二人だった。
稲叢さんの言葉に、布良さんが頷くことで、寮のメンバー+αの集まりで夜食をとることとなった。
それからは和やかな会話が続いた。
カレーから辛さの話になり、稲叢さんの料理がうまいという話になったり。
ちなみに、大房さんが辛党だったのはある意味驚きの事実であった。
布良さんの場合は、予想通りと言えばそう言えるわけだけど。
理由については察していただきたい。
だが、そんな食事風景は一変することになる。
「エリナは料理とかしないのか?」
その佑斗君の問いかけがすべての始まりだった。
「うん、エリナちゃんは食べる専門だもんね」
「何言ってるのアズサ? ワタシは別に食べる専門じゃないよ」
布良さんの答えに、不服そうに答えるエリナさん。
「ワタシは夜は食べられる側だよ。草食系女子……マ○○ロ女と呼ばれるぐらいだと自負しているよっ」
「……………………」
その瞬間、時間が止まったような錯覚を覚えた。
それは、手に持っていたスプーンを落としそうになるくらいに。
「……今なんて?」
「だから○ロ女だって」
布良さんが確認するように問いかけるが、布良さんはもう一度同じ単語を口にした。
「マ○女?」
「あり? もしかして知らない?」
首をかしげる稲叢さんに、エリナさんは目を見開かせる。
「そうだね……草食系女子に次ぐ魚類系女子と言う新カテゴリーかな」
「説明しなくていいよ。と言うより、生臭そうなカテゴリーだね」
変な化学反応ではないけど、どんどんとおかしな方向に進みだす話を止めようとするが、一度始まったことはそう簡単には止まらない。
「しかし、それはいったいどんな二つ名だろう。聞いたことがないけど」
「そうだね……その場の空気を凍らせて相手の気力を削ぐものじゃないかな?」
変な方向に食いついてきたニコラに、僕は首をかしげながら答える。
「と言うことは、『えりなは ふしぎなおどりを おどった!』みたいな感じかい?」
「いや、どちらかというと」
なぜだか旧式のRPGゲームの呪文効果のような感じで話を始めた佑斗君とニコラをしり目に、僕は佑斗君の隣に腰掛ける美羽さんに話しかける。
「美羽さん」
「何かしら?」
「エリナさんは正気を失っているの? そのマ……なんとかって平気で言ってるけど」
言い方は悪いけど正気の沙汰とは覚えない。
「いいえ。彼女は正気よ。ただ、もう分かってると思うけど彼女、少しあれなのよ」
美羽さんの答えに、なんとなく納得してしまったのは仕方がないことだろう。
何せそれほどまで、しっくりくるのだから。
「あれ、か。美羽にまで”あれ”扱いされるようじゃ、ちょっと残念な感じだな」
「ちょっと、今何か聞き捨てならないことを言わなかったかしら?」
佑斗君のつぶやいた言葉に反応した美羽さんは鋭い視線を佑斗君に向ける。
「でも、得てして間違ってはないよね」
「潰すわよ」
ぽつりとつぶやいたつもりが、本人の耳にはしっかりと聞こえていたようで、その眼を見た人全員がしっぽを巻いて逃げるような威圧感を出しながら言ってきたため、僕は視線を逸らした。
(そ、それにしても高らかにそんなことを自称する人がいたなんて)
ある意味驚きだった。
「私も目指そうかな、魚類系女子」
「はい?!」
そんなことを思っていると、ついに飛び火してほしくはないところに飛び火してしまった。
「あの、稲叢さんは言葉の意味を分かってるのかな?」
「分かってないと思うわ。彼女、純朴だから」
僕の口にした疑問に、美羽さんがため息をつきながら答えた。
「純朴だからって、知らな過ぎるのはどうかと思うが」
「だったら、懇切丁寧に佑斗が教えてあげれば? もっとも、まずは○○スから教えることになるだろうけど」
佑斗君のもっともな意見に美羽さんはすごい単語を口走りながら答えた。
顔を赤らめて。
「あの、言いたくないんだったら言わなくてもいいと思うけど」
「馬鹿にしないで。子供じゃないんだからセ○○なんて平気で言えるわ。―――、――――、―――、―――ほら、言えてるでしょ?」
僕の言葉に、負けず嫌いの火でもつけたのか、美羽さんは何度もあれな単語を口にしだした。
しかも顔をさらに赤らめて。
(何も言わない方がいいよね)
これ以上何か言うと危なくなりそうだ。
「ダイジョーブだよ、ヒヨリ。そういう時は男の人がちゃんとリードするから、ね? コースケ」
「ね? と言われて僕は何て答えればいいんだ? と言うよりジェントルマンなんだから女性をリードするのは当たり前だと思うけど?」
一体どうしてこうなってしまったのだろう?
結局この後、あまりのあれな話に布良さんの我慢の限界に達したらしく寮長命令と言う伝家の宝刀によって、話はお開きとなった。
とはいっても、一番大変だったのは
「うにゃ~~~。もう私別の場所で食べてくる!」
美羽さんのからかうような言葉で起こってしまった布良さんをなだめることだったりするが。