DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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完全に飛ばしすぎたような気が……。
ちなみに、この話は何気に重要なものだったりします。


第22話 特異

「ん……」

 

目が覚めると、そこはある意味見慣れた天井だった。

 

「逆戻り、か」

 

僕は苦笑しながらつぶやいた。

そう、ここは僕がついこの間(とはいっても2,3週間ほど前ではあるのだが)までいた病室だった。

もっとも、ここが僕がいた病室と同じ部屋なのかはわからないが。

 

「う……」

 

起き上がろうとした瞬間、めまいのようなものが僕を襲う。

 

「おや、お目覚めのようだな」

「扇先生」

 

もう一度横になったのと同じタイミングで扇先生が姿を現した。

 

「高月君、君は四日間も寝込んでいたんだよ」

「え!?」

 

扇先生の言葉に、僕は驚きを隠せなかった。

体に鞭を打つように背もたれに寄り掛かるようにして上半身を起こすと、扇先生はデジタル時計を僕に見せてくれた。

確かに四、五日ほど日にちが過ぎていた。

 

「まったく無茶をするね。車の突進を二人かかりとはいえ手で止めるだなんて」

「気づいたらそうしていたんです」

 

あの時は本当に何も考えることはできなかった。

 

「そういえば、佑斗君たちは?」

「大丈夫。六連君は右腕を骨折したけど全治一週間。おそらく君が車を止めようとしたから、彼の方に行く負荷が減ったようだね」

 

佑斗君は骨折程度で済んだようだ。

安心してはいけないのだろうけど、重症じゃなくてよかった。

 

「ついでに言うと、彼女も傷一つないし、車との接触はなかったと言っているから無事だ」

「そうですか」

 

今度こそ、僕はほっと胸をなでおろすことができた。

扇先生の言う”彼女”が布良さんであることは十分に推測ができた。

 

「で、後は君の方なんだけど……」

「あまり芳しくないんですか?」

 

一瞬雲る扇先生の様子に、僕はそう尋ねた。

 

「高月君の血中のヴァンパイアウイルスの濃度が少し薄くなっているんだ」

「それって、人間に戻っているということですか?」

 

扇先生の言葉に、僕は人間に戻れるのではと思い、そう尋ねるが扇先生は首を横に振る。

 

「それはない。ヴァンパイアウイルスが減少したり濃度が薄くなったとしても、ヴァンパイアウイルスは増殖するから、人間に戻ることはない。そこは人の細胞分裂と同じだよ」

「そうですか」

 

扇先生の言葉に、それほど絶望は感じなかった。

それはきっと、この吸血鬼としての生活に不自由していないという証なのだろう。

 

「それで、高月君は特異な体質であることを話したはずだけど、それは覚えているね?」

「はい。僕がその……ライカンスロープであることと、吸血鬼の血を飲まないと反応が起こらないことですよね」

 

今でも信じられないが、僕はそれを受け入れつつもあった。

 

「そう。人間から血を吸っても活性化はするけど、それはごく微力。そして、君にはあと二つの特異体質があるんだ」

「それはなんですか?」

 

険しい表情で、告げる扇先生だが、僕はもう何を言われても驚かないと思う。

驚くような体質がすでに二つほど言われているからなのだが。

 

「まず一つは、ヴァンパイアウイルスが能力を使用するごとに減少していくこと」

「減少?」

「正確には、”一定の条件”を満たした際に起こる現象だ」

 

首をかしげる僕に、扇先生はわかりやすいように説明をしてくれた。

 

「その一定の条件っていうのはなんですか?」

「それがもう一つの特異体質だよ」

 

どうやら話はつながっていたようで、僕は先を促した。

 

「一つは、本能が前に出ている間。そしてもう一つが、君は”吸血をしなくても能力を行使することができる”体質なんだよ」

「……はい?」

 

扇先生の口から出た突拍子もない言葉に、僕は思わず聞き返してしまった。

 

「つまり、高月君は吸血をしなくても能力を使うことができるんだ」

「でも、それっておかしいですよね? 普通は吸血をしなければ能力と言うのは使えないはずですし」

 

普通がどういうものなのかは新米吸血鬼の僕には断言はできないが、そういうものであると理解している。

 

「その通り。だが、これは真実だ。君は吸血をしなくても能力を行使することができる。ただし、デメリットが大きいがね」

「デメリットっていうのは?」

 

僕はデメリットについて扇先生に尋ねる。

すると扇先生は険しい表情をしたままメガネを軽く持ち上げると、その口を開いた。

 

「吸血をした時よりもパワーが低いこと」

 

”そしてもう一つ”と扇先生は言葉を続ける。

 

「ヴァンパイアウイルスが減少することだよ」

 

それはある意味想像ができたはずだ。

出なければ、話をつなげるようなことはしないはずだし。

 

「そして、ヴァンパイアウイルスが減少すると、貧血もしくはヴァンパイアウイルスの活動が弱まった時のような症状が発生する」

「それじゃ、もしかして今僕が感じている倦怠感のようなものは」

 

僕の推測を肯定するように、扇先生は頷くことで答えた。

 

「その可能性は高いだろうね」

「つまり、あの時僕は能力を行使した」

 

頭の中が真っ白になって何も考えることはできなかったが、三人がかりで止めたとなれば、能力を僕も使っていたとみるべきだろう。

 

「高月君が倒れたのは、急激にヴァンパイアウイルスがなくなったことで、貧血のような状態になったからだ。体の方が急激なヴァンパイアウイルスの変化についていけなかったんだろう」

「そうだったんですか」

 

つまり、僕が倒れたのはヴァンパイアウイルスが減少したことによるものだったということなのか。

 

(これは気を付けなければ)

 

「今もまだ、君の体のヴァンパイアウイルスは非常に減少している状態だ。君の場合は増殖スピードが極端に遅いのもその一因なんだ」

「それじゃ、僕はどうすれば」

 

何だか、すごいことをさらりと言われたような気がしたが、僕は対処法を尋ねる。

 

「これを飲んでもらえるかな」

「これって……血液パック?」

 

扇先生から手渡されたのは、赤い液体だった。

おそらくは血液パックなのだろう。

 

「さあ」

「あ、はい」

 

僕はその血液パックに口をつける。

 

「うっ……!?」

 

量はそれほどはなかった。

それを飲み干すと、強いめまいのようなものが襲ってくる。

だが、それもすぐに収まった。

 

「どう?」

「あ、少し楽になりました」

 

扇先生の問いかけに、自分の体調を確認すると先ほどまで感じていた体の重さはまるで嘘のようになくなっていた。

 

「応急処置として、ヴァンパイアウイルスがかなり濃い血液だよ。あと一日ほど様子を見て、大丈夫そうなら明日退院だからね」

「そうですか。ありがとうございます」

 

どうやら、今のは薬のようなものだったらしい。

 

「分かってると思うけど、これからはあまり無茶をしたらダメだよ」

「はい」

 

扇先生の忠告に、僕は素直に頷く。

 

「女の子に欲情しちゃだめだよ」

「………」

 

時々フェイトのように変なものを混ぜてこなければ、とてもいい人なんだけど。

 

「ちぇ。流れで行けると思ったのに。でも、そういうところ、僕は好きだよ」

「……人呼んでもいいですか?」

「つれないな。最近僕につめたくないかい? はっ! まさか僕と六連君の間のことを嫉妬しているのか! はぁ~、僕は何て罪深い男なんだ」

 

最近思うのだが、扇先生の変態加減がさらに加速してきたような気がする。

このままだといつの日か人様に迷惑を駆けそうで怖い。

 

(あれ、これ事件の報告書だ)

 

扇先生の欲望丸流しの寸劇には目もくれず、枕元の代に置かれた報告書の書類を手にする。

そこには”早く元気になってね”と言う布良さんの署名入りの手紙が添えられていた。

 

(退院したらお礼を言っておこう)

 

そう思いながら、報告書に目を通していく。

事件の内容は、あの金脇氏の事件のようだった。

僕はその顛末を確認する。

 

(所持していた薬はED治療薬?!)

 

どうやら、あの錠剤は違法ドラッグではなくただのED治療薬だった。

取引をした売人は、どうやら本土でも手広くルートを広げている違法ドラッグの売人だったようだ。

最初は健全な薬を格安の値段で売り飛ばし、次第に違法ドラッグを買わせるのが手口らしい。

今回は、風俗街のところで対処に声をかけ、あの薬を手渡したようだ。

 

(だったら、どうして逃げたんだ?)

 

ED治療薬を持っていたからと言って問題があるというわけではない。

もちろん、特許法などの問題はあるだろうけど。

報告書によれば『恥ずかしかったから』とのこと。

 

「って、スルーは堪えるから反応をしてもらえないか」

 

(違法な無修正DVDも押収されているようだし、まったくの無駄骨と言えなかったあたりが不幸中の幸いかな)

 

大きな事件はできるだけ起こらないでほしい。

それは当然のことだが、佑斗君のことを考えるとどうしても不謹慎なことを考えてします。

 

「いつっ!?」

「大丈夫か!? もう駄目だよ。両手首骨折してるんだから」

「………それ、今初めて知りました」

 

そういえば、両手首が動かしづらいと思ったら、どうやらギブスのようなもので固定されていたようだ。

 

(と言うか、気づけよ)

 

思わず自分にそう突っ込んでしまった。

 

「ちなみに、治るのにどのくらいかかりますか?」

「そうだね。君の場合はあと4,5日で治ると思うから、退院してから少ししたらそれを外しに来てもらうことになるけどいいかな」

「ええ、もちろん」

 

両手首骨折したものの、それほど長期間ギブスをつけずに済むようなので、ほっと一安心していた。

 

「さて。それじゃ、僕は用事があるから失礼するけど、退院までは絶対安静だからね。ベッドから出たらダメだよ」

「分かりました」

 

扇先生に強く押されるが、僕とてまだ体が少し重いような気がするのだから動きたくはなかったので、頷いた。

そして、扇先生は病室を後にするのであった。

 

(それにしても、いったい僕はなんなんだろう)

 

誰もいない病室で、僕はふと考え込む。

いや、ライカンスロープであることは分かっている。

だけど……

 

(それにしては、何かがおかしい)

 

”本能”にしても、特異体質にしても。

だが、それを調べることは自殺行為にも等しい。

 

「結局、手詰まりってことか」

 

もしかしたら、僕は知らなくていいことなのかもしれない。

ならば、無理して調べる必要はない。

もしかしたら、手掛かりがひょんなことで手に入るかもしれないからだ。

 

「にしても、2人は大丈夫かな?」

 

一番の心配要素は美羽さんと佑斗君だ。

 

『吸血鬼喰い』

 

その単語と疑惑が佑斗君の方に向けられているのだ。

ライカンスロープは、それだけで恐れられる存在だ。

もし、二人の関係が悪くなれば、寮内の雰囲気にも影響を及ぼす。

それだけは避けたかった。

それに何より、

 

(もし、佑斗君がライカンスロープならば、僕の”仲間”になるわけだし……お互いに協力できることがあるのかもしれない)

 

同じ境遇に立たされた人だから分かることもある。

佑斗君は吸血鬼になりたてだ。

尤も僕もそうだが。

多少は先輩である僕が、佑斗君の道しるべになれるのかもしれないと言うのが大きかった。

 

(でも、もしそうだとして佑斗君は誰を喰らったんだろう?)

 

そもそも彼はもとは人間のはず。

そんな彼がライカンスロープと言う存在になるはずがない。

それを言うなれば、僕にも当てはまるのだが。

ただ、僕の場合は記憶がない時期があるため、もしかしたらその時期が謎を解く鍵なのかもしれない。

 

「まあ、とりあえず退院までのあと一日は、おとなしくしておこう」

 

僕はそうつぶやくと、報告書の方に目を通すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二日後、太陽があたりを明るく照らし出す中、僕は扇先生の許可をもらい(本人はかなり渋っていたが)退院することができた僕は、寮の前に立っていた。

 

「あー、なんだか太陽が恨めしい」

 

そう思えるのも吸血鬼として仕方がないのだろう。

 

(どうやって入ろう)

 

変に六日間も入院生活を送っていたため、どうやって入ったものかと悩んでしまう。

 

(まあ、いいか)

 

「ただいま」

「あ、おかえりなさい。高月先輩」

 

結局いつものように入ることにした僕を出迎えてくれたのは稲叢さんだった。

 

「体調は大丈夫なんですか?」

「ああ、この通り。心配かけてごめんね」

「いえいえ」

 

心配かけたことを謝ると、稲叢さんは笑顔で答えてくれた。

 

「あ、朝食はどうしますか?」

「あー。今食べると、中途半端になりそうだからいいよ。夕食の時に食べられなくなりそうだし」

 

一瞬変なことを考えそうになるのをこらえ、僕は稲叢さんに答えた。

 

「そうですか。それじゃ、夕食は腕によりを掛けますね」

「あはは……まあ、ほどほどに」

 

腕まくりをしながら答える稲叢さんに、僕は苦笑しながら言葉をかけると、自室へと向かうのであった。

 

「あ、そうだ。主任に連絡しないと」

 

自室に戻った僕は、主任に隊員の連絡をすることにした。

 

『枡形だ』

「高月です。先ほど退院しました」

 

少しして電話口に出た主任に、僕は退院の旨を伝えると、出羽口から深いため息が聞こえてきた。

 

『お前な。六連煮も伝えたが、そのまま行くと、いつか死ぬぞ』

「ご心配おかけしてすみません。本日から復帰できますので」

 

まだ両手首にギブスがある状態だけど、何とかなるだろう。

……たぶん

 

『まあいい。早速だが、今夜大捕り物があるから、そのつもりで』

「了解」

 

主任の言葉に、そう返した僕は、電話を切る。

 

(さっそくハードだな。本当に)

 

思わず笑えて来てしまうが、それを必死にこらえる。

 

「とりあえず、大一番に備えて寝るか」

 

僕は大捕り物で失敗しないように、荷物を片づけて寝間着に着替えると眠るのであった。

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