DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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第25話です。

なんだか読み返してみると、まえがきや本文でちらほらと誤字を見かけます。
これらの誤字は年末の大掃除もかねて、いっぺんに修正していく要諦です。



第25話 訪問者

あれから季節は流れてもう5月のゴールデンウィークだ。

世間では5月病が流行する時期らしい。

別に、それはウイルスによるものではない。

4月から始まる新たな生活に順応できず、大型連休が訪れて新たな環境に戻っていく際に起こるらしい。

詳しくは知らないが。

ともかく、今日は学院はお休みなのだ。

 

「………ぅぅぅ」

 

ぐっすりと眠っている僕の意識を浮上させたのは、けたたましく鳴り響く来訪者を告げるチャイムの音だった。

まるで嫌がらせのごとく鳴り響くチャイムの音は、いやがおうにも目覚めさせるのには十分だった。

だが、それはかなわなかった。

チャイムがぱたりと鳴りやんだのだから。

 

(これでもう一回眠れる)

 

若干戻った意識を手放すべく、寝返りを打つ。

 

「ね、寝てる……だと? まさか、一緒にいたのか!?」

 

次いで聞こえてきたのは、誰かの話声だった。

しかもわりと絶叫にも近い感じだ。

 

「………うるさい」

 

完全に意識が戻った僕は、悪態をつきながらベッドから出る。

まだ寝ぼけている状態で、体がふらついてしまう。

ちなみに、寝ぼけているつながりで、あの後の顛末を話しておこう。

稲叢さんがお風呂に入っていることを教える役割を得たはずの僕は、あろうことか居眠りをしてしまっていた。

それによって、佑斗君に忠告することはできずに、佑斗君は稲叢さんの裸を見てしまったのだ。

これを知った時、僕はかなり取り乱していたらしい。

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

時は戻り、佑斗が莉音の裸を見たことが梓達に知られた時に戻る。

 

「すみません、すみませんすみませんすみません」

「ちょ、ちょっと、落ち着いて! いきなりどうして土下座をするのよ」

 

どうやって起きたのかは定かではないが、佑斗が裸を見たことを知ったとたん、浩介は床に土下座をして何度も何度も謝罪の言葉を口にしていた。

そのただならぬ雰囲気に、怒気を纏っていた二人は浩介を落ち着かせようとする。

 

「佑斗君が裸を見たのは、僕が仕事を全うしなかったからなんだ! あぁ、僕のばか! 佑斗!」

「は、はい!?」

 

鬼気迫る浩介の様子に、佑斗は思わず声を裏返らせる。

そんな彼の様子などお構いなしに浩介は詰め寄る。

 

「僕を殴って! 原型をとどめないほどになるまで!」

「そんなことしたら死ぬって!」

「そうだ! いっそのこと死んで償うからっ」

 

佑斗の生死の言葉に、浩介はそう叫ぶとリビングを後にしてキッチンに向かおうとし始めた。

 

「ちょっとやめなさいっ! 反省していることはわかったから!」

 

その浩介を必死に止めようとする美羽だったが、徐々にキッチンの方へと近づいていた。

 

「布良さん!」

「う、うん。ごめんね、高月君っ」

 

美羽の呼びかけに、梓は佑斗へのお仕置き用に手にしていたハンドガンを構えると浩介に向けて撃った。

模擬弾ではあったが、見事に命中した浩介はそのまま崩れ落ちるように倒れた。

その後、病院に運ばれ元樹の検査を受け、精神状態に問題がないことがはっきりしてから、浩介は寮へと戻ることを許されたのであった。

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

「うぅ……眠い」

 

あの時のことを思い起こすと、迷惑をかけた申し訳なさに押しつぶされそうになるが、皆はもういいよと許してくれたので、僕は振り払うことにした。

 

(情緒不安定だったのも、血液パックを飲んでいないことだったなんて、笑えないオチだよ)

 

僕は改めて、血液パックの偉大さを思い知る羽目になったのだ。

それはともかく、今は騒がしいリビングに行くことが先決だったため、僕は着替えることなくふらつく体で部屋を後にする。

そしてリビングに向かうが、どうやら先客がいたようだ。

その先客はゆっくろとした動きでドアを開ける。

 

「ふぁぁ~。ドーぶらエ・ウートら」

「なぁにぃ~。騒がしいよ~」

「こんな時間から騒がないでほしいんだけど」

「六連、先輩、どうかしたんですか?」

「一体何時だと思ってるんだよ」

 

ニコラを除く寮メンバー全員が、騒音の原因となっているリビングに来ていた。

 

「お、おい佑斗。このかわいらしい方たちは?」

「この寮に住んでいる人」

 

見れば、見知らぬ青年の姿があった。

黒髪のオールバックと言う髪型に水色のジャケットを羽織っていた。

 

「バリバリの勝ち組じゃねえか!」

 

何だかその青年は、叫んでいた。

 

「はぁ……着替えてくるわ」

「わたしも~」

 

美羽さんのため息交じりの一言がきっかけで、皆はぞろぞろと着替えるためにリビングを後にする。

僕もそれに続いて着替えるために自室に戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「倉端直太です。よろしくお願いします」

 

私服姿に着替え終えた僕たちに、倉端君は人当たりのいい表情で自己紹介をする。

 

「よろしくー」

「……どうも」

「よろしく、お願いします」

「こちらこそー」

 

倉端君の自己紹介に、僕たちも返すが声の覇気が全くなかった。

 

「あれあれ、どうしてみんなはテンションが低いのかな?」

 

寝ている最中にたたき起こされたからと言うことはできずに、何も言い返せなかった。

と言うより眠い。

こんな状態でテンションが上がるわけもない。

そんな中、佑斗君は布良さんと何かを話しているようだった。

 

「と言うより、こんなかわいい子と一緒にいるだなんて。本当に佑斗は幸せ者だな」

 

何だか倉端君から変なオーラが見えたような気がする。

 

「そういえば、ニコラは?」

「ニコラなら、まだ寝てると思う。眠りが深いタイプだから」

 

佑斗君の問いかけに、若干目が覚めてきたのかエリナさんが答えた。

なんとなくうらやましく思える僕は、きっとおかしいのだろう。

 

「お、おい。まだ一緒に暮らしてるやつがいるのか!?」

 

信じられないとばかりに倉端君が声を上げると、佑斗君の耳元で何かを言っていた。

 

「マジでか!?」

「男の割には」

 

佑斗君のその言葉で、倉端君が何を尋ねていたのかが想像できてしまった。

 

「なんだ、男か。ならいいや」

「ものすごく露骨に態度を変えたね」

「ここまでくると清々しささえ覚えるよ」

 

男であることがわかった時の態度の代わりように僕と佑斗君はジト目で倉端君を見ていた。

 

「それで、俺の生活状況もわかっただろうし、寮の皆の紹介も終えたし、どうするんだ?」

「なんだか、一刻も早く帰ってほしいという風に聞こえるんだが」

「さすがに僕もフォローできないよ」

 

佑斗君の問いかけに、疑いのまなざしを向ける倉端君に僕は佑斗君にそう告げた。

さすがに、今のは露骨すぎだと思う。

 

「いや、ここにはゲームの類もないし」

「そうなのか? でも、今度は純粋にこの海上都市でしかできないことをしたいんだよ」

 

佑斗君の説明に、倉端君も食い下がっていく。

 

(まあ、本土の人にとっては、ここに来る機会なんてほとんどないんだから、観光なりなんなりはしておきたいのかもしれないね)

 

「風俗には一人で行け」

「お、おいバカっ。そんなことをこの場で言うなよ。冗談ですからね、俺はそんな人間じゃありませんからね」

 

佑斗君の辛辣な一言に、倉端君は慌てた様子で佑斗君に言うと僕たちに釈明してきた。

 

(あながち間違いじゃないかも……ん?)

 

そんな時、ふと頭の中で何かが引っ掛かった。

 

「あっ、思い出した。あなた、佑斗とこの前一緒にいた人」

「よくよく見れば、あの時のご主人様ではありませんか!!」

 

2人の会話で、美羽さんは面識があったのかはっとした表情で声を上げると、倉端君の方もいすまいを正した。

ただ、気になると言えば

 

(何故にご主人様?)

 

倉端君の美羽さんに対する呼び方だったりするのだけど。

 

「よく覚えてるな」

「ご主人様は俺の恩人だからな」

 

(一体、何があったというんだ?)

 

事件事故関係と思ったが、特に思い当たる事案はなかったはず……

 

(あ、一つあった)

 

ふと、脳裏に佑斗君が吸血鬼となるきっかけになった事件と、一緒になっていた報告書の内容が蘇ってきた。

佑斗君が吸血鬼となるきっかけとなったおとり捜査の裏で、もう一つの事件が起きていた。

それが”身分詐称”だった。

なんでも成人を装ってここに不正に入島したらしい。

ちなみにそれが発覚したの理由は本人が何らかの犯罪を目撃したようで、警察に通報した際に本名を名乗ってしまったからという物だったらしい。

その人物の名前が倉端君だった。

 

(確か、初犯だったことと、犯罪を通報しようとした点から、退去処分という軽い処罰になったって書いてあったけど)

 

おそらく、初犯だったことで入島審査に通ったのだろう。

とはいえ、風俗街の方では彼の名前は要注意人物(ブラックリスト)になっているので、当分は行くことはできないだろうけど。

 

「だったら、皆で一緒に遊びにでも行きませんか?」

「ん?」

「え? 私たちも?」

 

そんなことを考えていると、話は進んでいたようで布良さんが若干驚いた様子で首をかしげていた。

 

「皆は、この都市に詳しいんですよね? ご主人様も前に案内してくれましたし」

「まあ、確かに案内できなくもないけど」

「平然と『ご主人様』を受け入れるなよ」

 

倉端君の『ご主人様』を平然と受け入れている美羽さんに佑斗君がツッコんだ。

 

「とはいっても、俺たちは仕事があるしな」

 

そういえば、僕も今日は風紀班の仕事がある日だった。

佑斗君の言葉がなければ、完全に忘れていたため、心の中で佑斗君にお礼を言った。

 

(寝ぼけてるのも大概にしないとだめだよね)

 

僕は自分を戒めることにした。

このままだとそう遠くない未来に、また始末書を書く羽目になるのは目に見えていたからだ。

 

「あ、私は今日仕事がお休みですので、案内できますよ」

「私も休みだから一緒に案内してあげるよ」

「本当ですか! いやー、いい人たちだな」

 

稲叢さんとエリナさんが名乗りを上げたことに喜ぶ倉端君。

 

「むぅ」

 

そんな中、佑斗君は難しい顔をして唸っていた。

おそらくは、”初対面の男性を女性二人に任せて自分たちは仕事に行くのが憚られる”みたいなことを考えているのかもしれない。

実際に僕もそうなのだから。

 

「ちょっと休めないか確認してくる」

 

佑斗君はそう告げると、主任に電話をして確認するためリビングを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数分後、佑斗君は再びリビングへと戻ってきた。

 

「OKが出た」

「おっ、まじで!?」

「一体どんなマジックを使ったんだろう?」

 

無理かなと思っていただけに、思わず追及の声を漏らしてしまった。

 

「それと浩介に美羽、布良さん」

「何?」

 

いきなり呼びかけられたため、少し驚きながらも用件を尋ねる。

 

「三人とも休みにしておくと伝言を預かった」

「嘘っ!?」

「まあ、前々から休むようにって言われてたわね」

 

僕たちまで休みになり、驚きのあまり叫ぶ僕をしり目に、美羽さんは思い出すようにしてつぶやいた。

そういえば、僕も最近は休んで(検診の日は別として)なかったので、休みにされるのも当然の結果なのかもしれない。

 

「でも、いきなり休みにされたらやることがなくなっちゃうよ」

「だったら、皆も一緒にどうですか?」

「うーん、そうしようかな」

 

倉端君の誘いに、布良さんたちも頷くことで参加となった。

 

「マジでか? こんな俺に案内をしてくれるだなんて。もしかしてひとりぐらいは俺に一目ぼれをしていたり」

「人の好意を過剰に捉えてると、いつか痛い目見るぞ」

 

やはり、友人なのだろうか、倉端君に対して少しばかり遠慮がないツッコミを入れているとそう思えてくる。

 

「それで、浩介はどうするんだ?」

「僕?」

 

突然こちらに問いかけられ、僕は思わず聞き返してしまった。

 

「えっと、倉端君が迷惑でなければ」

「直太、別にいいよな?」

「もちろんだ」

 

佑斗君の問いに、頷いたことで、僕も参加となった。

 

「あの、皆さんで行くのでしたらニコラ先輩やひよ里先輩をお誘いしてもいいですか?」

「僕に聞かれても……ただ、こんな時間だけど大丈夫なのか?」

 

僕が提案者ではないだけにどう答えればいいか悩んでしまう。

それに、この時間だとまだ寝ている時間。

そんな時に、たたき起こすようなまねをしてもいいものか悩んでしまうのも答えに困っている理由の一つだった。

 

「それだったら、ヒヨリにはメールだけしておいて返ってきたら誘うっていう感じでいいと思う」

「そうだね。それならいいかもしれない」

「それで、どこに行くんだ?」

 

徐々に決まっていく話に、僕はどこに行くかを尋ねることにした。

 

「やっぱみんなで楽しめるところとかがいいよな」

「だとしたらカラオケ?」

「でも、カラオケだったら本土にでもあるから、この島特有のものではないよね」

 

佑斗君の提案は布良さんに却下された。

こういった場合、僕は提案ができなくなる。

人づきあいがないため、そういった場所に行ったこともないというのが理由だけど。

 

(今までの自分っていったい)

 

これ以上考えると余計なダメージを受けそうだったので考えるのをやめた。

 

「だったら、オーソドックスにカジノかしら?」

 

(カジノ……)

 

地味にあの10連敗がトラウマになっているようで、あまりカジノにはいきたくなかった。

と言うよりは少々抵抗が出てしまった。

でも、逆転勝利したいというばかばかしいようなプライドもあるので、もしかしたら行く日があるのかもしれないけれど。

 

「後はボーリングとかプールとかがあるけど、これも本土にもあるから除外――」

「プール! いいな、それプールにしよう」

 

エリナさんの言葉を遮って倉端君はものすごい勢いで食い付いてきた。

 

「え? でも、プールはこの島じゃなくてもどこにでもあるんですよ?」

「やっぱりみんなで楽しめる方がいいし。それに水着だし」

 

(今、何か変なのが混じってなかった?)

 

不安そうに尋ねる稲叢さんに堪える倉端君の言葉に、一瞬変なものが混ざっているような気がしたが、気のせいだと思うことにした。

 

「それにプールなんて久々だから行ってみたい。それに水着だし」

「清々しいほどに本心ダダ漏れだな」

 

やはり聞き間違いではなかったようで、倉端君がプールを選んだ理由がなんとなくわかってしまった。

エリナさんや稲叢さんたちも特に異論はないようで、行き先はプールと言うことで決まった。

こうして、僕たちは突然やってきた訪問者、倉端君と共にプールへと向かうのであった。

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