DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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第27話です。

今回も少々長めです。


第27話 進展

「ふぃぃ、疲れた~」

「ねむぅいぃ~」

 

寮につくと、布良さんを筆頭にエリナさんも疲れた様子で声を漏らした。

 

「でも、今から寝たら中途半端な時間になるわよ?」

「確かに」

 

美羽さんの言葉に、僕は頷いた。

今から寝れば昼夜ならぬ、夜昼逆転状態になりかねない。

 

「皆、付き合わせて悪かった」

「何言ってるの。行くって決めたのは私たちなんだから」

 

申し訳なさそうに謝る佑斗君に、布良さんは笑顔でフォローの言葉をかけた。

 

「ちょっと疲れたけれど、いいリフレッシュにもなったわ」

「私は泳ぐ練習もできましたし」

 

それに美羽さんと稲叢さんが続く。

ちなみに、稲叢さんは泳げなかったため、プールで泳ぐ練習を大房さんたちとしていたらしい。

 

「それに楽しかったし」

「僕も。プールがこんなにいいものなんて知らなかったよ」

 

僕自身驚きだったのは、プールサイドどころかプールに入っても体調が悪くなるようなことがなかった点だった。

やはり、吸血鬼になったことで、体の調子が良くなったのだろうと僕は解釈することにした。

もしそうだとすれば、吸血鬼様様だ。

 

「そう言ってもらえると助かる」

「まあ、勝手に人をテクニシャン扱いにしたのはあれだけどね」

「う゛!? そのことについては謝る」

 

僕の嫌味に、佑斗君は頭を下げて謝ってきた。

 

「もういいから、早く中に入ろう」

「そうだな」

 

そして、僕たちは寮の中に入るのであった。

 

「ふぅ~。それじゃ、エリナは先に寝るね。スパコイナイ・ノーチ」

「スパ?」

 

エリナさんの口から出た聞きなれない単語に、佑斗君が首をかしげる。

おそらくロシア語だとは思うが。

 

「違うよスパコイナイ・ノーチ。おやすみってこと」

「でもいいですね。スパ」

 

”スパ”の部分に反応した稲叢さんが感想を漏らすと、美羽さんたちにお風呂に入るかどうかを尋ねた。

 

「そうね。疲れている体にはよさそうね」

「それじゃ、私も」

 

美羽さんに続いて布良さんとエリナさんがお風呂に入ると返事をしていく。

 

「それじゃ、共同浴場の方を使いましょうか」

「ちなみに、六連君と高月君。お風呂をのぞいたら撃つからね」

 

女子全員がお風呂に入ることが決まり、お風呂の支度に向かう稲叢さんをしり目に、布良さんが疑いのまなざしを僕たちに向けてきた。

 

「だからあれは事故だって何度説明すれば分かってもらえるんだよ?」

「何故に僕まで信用が失墜してるの!?」

 

同じ男と言う括りにしては少々理不尽にも思えた。

 

「布良さんの銃でいっそのこと股間を打ち抜いてみただどう? そうすればそういう衝動はなくなるのじゃないかしら」

「あの、お願いだからそんな物騒なことは言わないでもらえるとありがたい。いくら冗談とはいえ……冗談だよね?」

 

何だか二人の目が据わっているような気がするため、数歩後ずさりをしてしまった。

 

「それはかわいそうだよ」

「頼むエリナ。言ってやってくれ」

 

そんな中、さっそうと現れた救世主であるエリナさんに、佑斗君は一途の望みを託した。

 

「まだ新品なのに使えなくなったらかわいそうでしょ」

「やっぱりかい!」

 

ある意味想像はできていたが、まさかきわどい個所まで言及するとは、思ってもいなかった。

 

「な!? にゃ、にゃにを言ってるのエリナちゃん! そういうことじゃないでしょ!」

「あ、そうだよね。ごめん」

 

布良さんの半ば叫ぶような指摘に、エリナさんは布良さんの言わんとすることが通じたのか納得した様子だった。

 

「オ○○○ーぐらいはやってみるもんね。だから、新品ではなく中古品だよね」

「そういうことじゃないいよ!」

 

言い直されたのは呼称の方だった。

 

(今日も下ネタ全開だよね)

 

「………それじゃ、新古品?」

「言い方の問題じゃないから!」

「論点が違うっていう意味だよっ!」

 

分からない表情でつぶやくエリナさんに、思わずツッコみを入れると布良さんもそのあとに続いた。

 

「もう変な話はおしまいっ!」

「生物としては大事な話だと思うよ」

 

エリナさんが若干不満げに声を漏らす。

 

「TPOぐらいは考えたほうがいいっていう意味じゃないか?」

「だって、ミューが」

 

不満げなエリナさんに、佑斗君は疑問形ではあるが布良さんの言わんとすることを口にした。

 

「どう考えても、エリナの拾い方がおかしいのよ」

 

美羽さんはジト目でエリナさんの異論を切り捨てた。

 

「ともかく!」

 

そんな中、佑斗君は大きな声を上げて注目を集める。

 

「俺は覗くつもりはない。昨日のあれは事故なんだ!」

 

そう言って、佑斗君はキッチンの方に向かうと、冷蔵庫から合成パックを取り出した。

 

「僕も寝ようかな。疑われないように」

「おやすみ、コースケ」

「うん。おやすみ」

 

エリナさんに挨拶を返しつつ、僕は疑われないようにするために、自室へと戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自室に戻り、寝支度を整えている中、携帯電話にメッセージが入ってきていることを告げるランプが点灯していた。

 

「あれ、主任からだ」

 

何だろうと首をかしげながら、僕はメールを開いてメッセージを確認する。

 

「『本土の方で噂の方を確認してみたが、それらしい薬の情報や噂の類のものは手に入らなかった』」

 

それが、主任からのメールの内容だった。

 

(情報がないということは、本土では出回っていることはないということか)

 

寝る準備のことはすでに頭の片隅へと追いやられ、僕は先ほどのメールから得られた情報を整理していく。

 

(と言うことは、まだ出ていない新作なのか、それとも海上都市ではないといけないということか)

 

そうでなければ本土の方に噂なり情報なりが少なからず存在するはずだ。

 

(しかし後者だとすれば、いったい何なんだろう?)

 

その”何か”さえ、分かれば、捜査は大きく進展するはずだ。

 

「あ、血液パック飲んでおこ」

 

変に情緒不安定になったり、意識がなくなって本能が出てきたりするのを避けるため、僕は備え付けの小さめの冷蔵庫から赤いラベルの血液パックを取り出すとそれを口にする。

一口飲み干すたびに、若干感じていた喉の渇きはなくなっていく。

 

「やっぱり、血液パックは今の時代の吸血鬼にとっては必需品だよね」

 

そうつぶやきながら僕はさらに飲んでいく。

 

(ん?)

 

そんな時、ふと引っかかることがあった。

 

(吸血鬼にとっては、合成血液は必要なもの。そして、それはここ海上都市にしかない)

 

僕は、先ほど自分が出した仮定を思い起こしながら考えてみた。

すると、条件にぴったりとあてはまる。

 

「そうだ。考えてみれば簡単なことだったんだ!」

 

僕は慌てて自室を飛び出すと、リビングの方に向かった。

佑斗君に僕の考えを話すために。

結果から言えば、佑斗君も同じ結論に至っていた。

佑斗君の方が早い段階で疑問を持っていたらしいが。

勝ち負けは関係ないかもしれないが、大発見したかのように一人ではしゃいでいた自分に少しではあるが、恥ずかしくなったのはここだけの話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、確かにそれだったら情報が出て来ないのも頷ける」

 

翌日、風紀班の仕事のため支部に向かうと、佑斗君が先日の仮説を主任に説明した。

主任もその仮説に頷いていた。

 

「それなら、私たちの情報網に引っかからないのも頷けますね」

 

僕たちは今まで”人間用の薬”を探してきていた。

ならば、”吸血鬼用の薬”が情報網に引っかかるはずがなかった。

 

「だが、一番厄介な事態だ」

「ですね」

「でも、普通の薬では吸血鬼さんたちには効果がないんだから、そういうのには興味がないはずですよね?」

 

いつにもなく険しい表情をして漏らす主任の言葉に、美羽さんが頷くと布良さんは首をかしげながら疑問を投げかけた。

 

「その逆だ。むしろ、効果がないからこそどのような効果があるか、興味を持つ奴が多い」

「酔えない人が、酔える人をうらやましく思うようなものですか?」

 

佑斗君の分かりやすいたとえに頷いて答えた。

 

「しかも、興味本位に効くかどうかを罰ゲーム感覚で試す人もいそうですね」

「そうだ。蔓延する前に対策が必要になる」

「とりあえず、萌香さんに連絡してみますか?」

 

美羽さんの言葉に頷く主任に、布良さんが尋ねた。

確かに萌香さんだったら情報収集には適任なのかもしれない。

 

「それはもう昨日の時点で頼んである。じきに連絡があるはずだから俺たちはこっちの方面で調査するぞ」

「「「了解」」」

 

こうして、僕たちは吸血鬼用の薬について調べ始める。

その方法は過去の捜査資料を読み返すというものだ。

意味がないと思われるかもしれないが、時には過去の資料を読み解くのも重要なことだ。

中にはとんでもない証言などや真実が隠されているのだから。

 

(しかし、数が多いな)

 

薬関連の捜査資料は膨大で、調べるのは困難を極めたが、やらないことには始まらない。

僕は、弱気になる自分の心に喝を入れ過去の捜査資料を調べるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、佑斗君が見つけた売人に対する供述の資料を基に、主任がその売人に再聴取を行わせるように指示を出していた。

 

「分かった」

 

少ししてかかってきた電話に、主任はそう答えると受話器を置き僕たちに頷いて返した。

 

「その反応だと、何か情報が入ったんですね?」

「ああ」

 

布良さんの問いかけに頷き、主任は先ほどの電話での内容を話し始めた。

 

「確かに、少し前に薬を買わないかと勧められたようだ。だが、相手と取引をしたこともなくまた吸血鬼用の薬と言う胡散臭さから相手にはしなかったようだが」

「知らない相手に、薬を売ろうとしたんですか?」

 

主任の話に、布良さんは驚いたような表情を浮かべる。

それは無理もない。

薬の売人などは、信用第一だ。

互いに互いを信用できると思ったら売買契約を結ぶというのが従来のやり口だ。

尤も、これは薬の売買に限ったことではないのだが。

 

「新規参入でも狙てたんでしょうか?」

「分からん。だが、もしかしたら売人が吸血鬼の可能性も」

 

僕の問いかけに答える主任の仮説に、否定の声は出なかった。

吸血鬼用の薬を扱うのが吸血鬼であってもおかしくはないからだ。

いわゆる”餅は餅屋”と言うものだ。

 

「とりあえず、その売人に連絡を取るしかないな」

「主任がですか?」

「馬鹿を言うな」

 

主任の言葉を聞いた佑斗君に、主任は一刀両断で切り捨てた。

 

「『こちら、風紀班のものです。おたくでは違法な薬を扱っていませんか?』などと聞けるわけがないだろう。相手は薬の売人だぞ」

「確かに。それで”YES”と答えるのは挑発か、馬鹿かのどちらかですしね」

 

前者だった場合は、かなり難しくなりそうではあるが。

 

「それでは、どうするんですか」

「風紀班で動く。その方法は限られるだろ」

 

その主任の答えを聞いた瞬間、佑斗君の表情がこわばった。

 

「潜入捜査……ですか?」

「淡路に連絡をして、疑われずに済むルートで接触を試みる」

「あ、そうだ。主任、たまには淡路さんにも労ってあげるべきです」

 

主任の方針を聞いた佑斗君は、思い出した様子で主任に言った。

 

「突然なんだ? 報酬でも支払えとでもいうのか?」

「そういう問題ではなく、心遣いとしての問題だと思います」

 

突然の指摘に主には戸惑った様子で口を開く。

 

「主任、いつも萌香さんにお願いごとをしてお礼の一つも言ってないですよね?」

「あまり無粋なことをしていると、後ろから刺されますよ」

 

そんな主任に、布良さんと美羽さんが追撃をかける。

確かに、主任は萌香さんにお願いごとをたくさんしている。

僕が知っている限りで2,3回ほど。

お礼を言っているかどうかまではわからないけど。

というよりは、

 

「僕としては、萌香さんは刺す以前に、隠したいことを公にされる方がしっくりくるんだけど」

「なっ、なんだ、突然。これも仕事だ」

 

そんな僕たちに、慌てた様子で反論する主任。

いつもの険しい表情を作ろうとしているが、いつもの険しさはなかった。

そんな主任に、佑斗君たちはあきれたような視線を向けていた。

 

「今なんとなく、主任と付き合って泣いた女性の姿が見えてきたような気がします」

「あ、私も」

「私も見えたわ」

「僕も」

 

佑斗君の言葉に、僕たちはうんうんと頷く。

 

「主任、記念日とかを忘れて怒られるでしょ? 主にそのフォローを間違えて」

「買い物も一人で行かせて怒らせる。そして相手が起こってもなぜ怒っているのか、その理由が理解できない」

「そして最後には『ついていけない』、『疲れた』と言って別れ話を切り出される」

「…………」

 

布良さんと美羽さんに続いて僕の言葉に、主任は無言を貫いていた。

だが、それは答えをはっきりとさせるのに十分だった。

 

「黙ってるということは、図星なんだ~」

「っち……男尊女卑とでも言いたいのか?」

 

布良さんの笑顔に、主任は舌打ちをすると恨めしそうな表情で口を開いた。

 

「性別ではなく、人としての気遣いの問題です」

「とにかく、今回の一件で連絡したらお礼を言うこと。いいですね?」

 

そう言って主任に促す二人を見ていると、

 

「主任の威厳が台無しですね」

「やかましい。あいつなら電話一本で調べてくれるとは思うが、一つ問題がある」

 

僕の言葉に鬱陶しそうに答えると、主任は話の内容を変えた。

 

「誰が接触するかだ」

 

主任の話によれば、他の隊員たちはそれぞれ別のヤマを抱えているらしい。

このままだと比喩ではなく寝る間もなくな離婚後の業務に支障が出るらしい。

だとすると残るのは

 

「自由がきくお前たち学生組なんだが」

「もしかして、私の出番ですか?」

 

主任の言葉に、布良さんは嬉しそうに不敵の笑みを浮かべながら主任に問いかけた。

 

「薬の売人だぞ? お前には無理だ」

「その反応はいささか失礼だと思います!」

 

そんな布良さんの提案を切り捨てたため、布良さんは猛抗議する。

 

「事実だ。お前みたいな子供、誰が薬の売人だと信じる?」

「信じますよ! 若くてやんちゃ盛りだってみんなもう信じまくりですよ! だよね? 六連君、高月君」

 

主任のいつにもまして冷たい言葉に、布良さんは佑斗君と僕の方に聞いてきた。

 

「…………すまない」

 

佑斗君はそう一言漏らして視線を逸らした。

そしてこちらをじっと見てくる布良さん。

 

「………」

「………」

 

期待を込められたようなその視線に、僕は答えることができない。

 

「で、では、主任にはどうでしょう?」

「なっ!? う、裏切者―っ」

 

堪らなくなって、布良さんの問いかけを切り捨てるような形で主任に問いかけると、恨めしそうな叫び声が上がった。

 

「今は時期が悪い。最終段階のヤマが二つほどある。一応、主任の肩書があるからな」

 

もしかしなくても、主任はさっきの僕の言葉を引きずっているのではないかと思ってしまう。

 

「だが、放置できる山ではないから、早急に手を打ちたいわけなんだが………」

 

そういいながら、主任の視線は佑斗君に注がれる。

 

「六連、お前やってみるか?」

「俺ですか?」

 

佑斗君に、潜入捜査の白羽の矢がたった。

 

「異議ありっ! 六連君も十分子供っぽいと思います!」

「何気にひどいことを言ってるよね。布良さん」

 

主任の采配に異議を唱える布良さんの言葉に、僕はポツリとつぶやいた。

 

「分かってる。だが、こいつは吸血鬼だ。それに学生では学生のやり方もある」

「若者の火遊びみたいな感じですか?」

「それもあるが、学院で売り飛ばせるアピールにもなる。もちろんお前ひとりでは心配だから、もう一人つけるが」

 

佑斗君のたとえに、頷きながら主任が答える。

 

「今度こそ、私ですね」

「だから、お前じゃ無理だって」

 

期待していたのだろうか、胸を張って名乗り出る布良さんを、主任は容赦なく切り捨てた。

 

「……うぅーーーー」

「拗ねない拗ねない。オバサンっぽいって言われるよりましじゃない」

 

二度も切り捨てられ、不服そうに唸り声を上げていた布良さんにフォローする。

 

「拗ねていません。私は大人だから拗ねていませんー」

 

そういって頬を膨らませる布良さんだが、そういうところが子供だと言われるような気がする。

とはいっても、それを口にしたら火に油を注ぐようなものだから言えないが。

 

「それじゃ、私ですか?」

「いや、お前は上品すぎる。もっとこうすれた感じがほしい。できれば六連の足りない部分を補えるような」

 

美羽さんの予想も切り捨てた主任だが、

 

「そういう人っていますか? ちなみに僕はすれてませんよ?」

「分かってる。高月では少々無理がある」

 

自分で言っている分にはいいが、本当に言われるとショックがでかい。

 

「とりあえず、そっちの方はこっちで何とかするから、お前たちは六連の変装用の衣装を用意しろ。できれば顔に威圧感がほしい」

「変装?」

 

主任の指示に首をかしげる佑斗君に、主任はさらに続けた。

 

「そんな大げさなものじゃなくてもいい。私服姿が普通すぎる。もう少し悪ずれした物を用意させろ」

「了解です」

 

主任の指示に美羽さんが答えた。

ちなみに布良さんはいまだに拗ねていたりする。

 

「あ、領収書はもらって来いよ」

「あれ、でも洋服は経費では落ちなかったような気がしますけど」

 

どこかでそのようなことを聞いたことがある僕は、主任に声をかけた。

 

「……まじか?」

 

主任の驚いた様子を見ると、おそらくは僕の間違いの可能性が高そうだ。

そんなこんなで、佑斗君の潜入捜査が決まるのであった。

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