DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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第36話です。

久々に0時ちょうどに投稿できたような気がします。

3:14分追記。
大変失礼しました。
気づかずに読みやすくしないまま投稿しておりましたので、読みやすいように修正いたしました。


第36話 夢と予兆

「はぁ……」

 

自室に戻った僕は、深いため息をつきながらベッドに横になる。

 

「疲れたぁ」

 

体を襲う強い疲労感に、僕は両目を腕で覆いながら思わず口に出てしまった。

疲れた要因は、風紀班の仕事だけではない。

もちろん、それもあるのだが。

一番の要因は

 

「今日はエリナさんに振り回されっぱなしのような気がする」

 

エリナさんだったりする。

別に迷惑だとか、嫌だとかは思っていない。

僕としても、前以上に仲良(たぶん)慣れたことはとてもいいことだと思う。

だが、仲良くなるレベルが異常なほどに高くなっている気がするのは、おそらく僕の気のせいではないだろう。

 

(いきなり”あーん”をされたりしたりするとは思わなかった)

 

今思い出しただけでも、恥ずかしさに悶えそうだ。

 

「はぁ……寝よ」

 

もう一度ため息をついた僕は、そうつぶやいて寝間着に着替える。

汚れ物を洗濯機に入れて自室に戻ると、ドアの鍵を閉めておいてベッドにもぐりこむ。

 

(まだご飯とか食べてないけど、いいや)

 

食欲よりも眠気が勝ったため、僕はそのまま目を閉じる。

そして、いつもより早めに僕は眠りにつくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は立っていた。

 

(あれ?)

 

その場所に、首をかしげる。

そこはどこかは分からなかった。

白い建物で、清潔感がありそうな通路が奥まで続いていた。

周りには無機質なドアがあるだけと言う殺風景なものでもあったが。

 

(うわっ!?)

 

突然動く視界に、僕は思わず叫んでしまったが、口から声が出ることはなかった。

 

(そうか、これは夢なんだ)

 

感覚的に、僕は今見ているものが現実ではないことがわかった。

僕はずんずんと歩いていく。

だが、どちらかというと堂々としたものではなく、しきりに周囲に視線を配っているのでこっそりとと言ったほうがいいだろうか。

 

(止まった)

 

そして、あるドアの前で、僕は動くのをやめる。

ドアを眺めた僕は、躊躇なくドアを開いた。

 

「……あ」

「……モルモットが一人か」

 

そこは誰かの部屋なのだろうか、無機質な地面に申し訳程度に置かれた小さな絨毯に

明らかに寝心地が悪そうなベッドのみと言う、非常に最悪な環境の部屋だった。

そんな中に、ポツリと座ってこっちを見る銀色の髪の女の子の目には、”何もなかった”。

感情のようなものも見えなければ、無表情と言うおまけつき。

正直に言えば恐怖を感じさせるような姿だった。

 

(どことなく、エリナさんに似ている)

 

何か根拠でもあるのかと聞かれれば、そんなものはない。

だが、なんとなくそう感じてしまう(・・・・・・)のだ。

それよりも気になったのは、僕が初めて口にした言葉だった。

もちろん、僕の意思ではない。

 

(モルモットってどういう意味だろう?)

 

動物の名前だというのは間違いないのだが、おそらくは隠語のようなものだろう。

しかも、一番当たってほしくない隠語。

 

(実験動物っていう意味じゃないよね?)

 

思わず自分にそう尋ねてしまう。

当然だが答えなどあるはずもない。

 

「おい嬢ちゃん。名前は?」

「…………―――――」

 

僕の問いかけに、女の子は名前を口にするが、その声は聞き取ることができなかった。

 

「ふんっ。つまらない小娘が」

 

その一連のやり取りに、なぜそうなったのか僕は不機嫌な声を上げると踵を返す。

そして振り返ることなくその部屋を後にした。

 

(一体どうしてなんだ?)

 

つまらないとは、どういうことなのか?

色々と分からないことがあるが、それに対する答えなどは全くない状態だった。

 

「貴様っ! ここで何をしている」

「っち」

 

この建物の人だろうか、見つかった僕に向かって白衣を着た二人の男の人は、怒鳴り声を上げながら駆け寄ってくる。

その手にあるのは一丁の拳銃だった。

 

(って、拳銃!?)

 

男の人たち宛にする物騒なものに、僕は叫び声を上げるがそれが口から出ることはない。

そんな物騒なものを目の当たりにした僕は、逃げるどころかゆっくりと男たちの方へと足を進めだした。

 

「死ねっ!」

 

こちらに銃口を突き付けた男は、僕に向かって躊躇なく銃を撃った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はッ!?」

 

僕は慌てて目を開いた。

そこは、いつもの寝室であった。

何もおかしなところはない。

あるとすれば、ちょっとばかり鼓動が速いくらいだ。

別に何の問題もない。

 

(一体なんだったのだろう、あの夢)

 

僕は自分に問いかける。

夢というのは、記憶の整理をしている際に見る物だと言われている。

だとすれば、僕の見たあの夢は、一体なんだったのだろうか?

 

「にしてもどうしてこんなような夢を」

 

そう思っていたところで、ふと誰かのぬくもりを感じた。

 

「んみゅ……すぅー……はみゅ」

「………またか」

 

隣を見てみると、昨日と同じようにして眠るエリナさんの姿があった。

 

(もしかして、これのせい?)

 

一緒に寝ていた人の夢が他人の夢に干渉して、おかしな夢になってしまうという話を昔聞いたことがある。

ありえない話ではあるけど。

 

「にしても、どうしよう……」

 

今の自分の状況を考えると、やめるように注意をしたところで

 

(にっひっひ~。コースケだって嬉しい癖に)

 

などと言われてしまうのがオチだ。

どうしてそうなるのかと言うと、男としては避けては通れない生理現象のようなものだ。

それが何かは……察してほしい。

 

「ん……オーチン……ハラショー……にゃもにゃも」

「お、オーチン?」

 

聞きなれない寝言(おそらくはロシア語だろう)に首をかしげる。

 

(一体どういう意味なんだろう?)

 

「これは本当にロシア語用の辞典を買う必要があるかな」

 

僕は本気でそんなことを考えていた。

ロシア語を勉強しておかないといけないような気がしていたのだ。

 

「すぅ、すぅ……はふ」

「にしても、本当に気持ちよさそうに寝てるね」

 

僕の落ち着かない気持ちをよそに気持ちよさそうな寝息を立てているエリナさんが何だかとてもうらやましく思えてくる。

 

「ンぅ……おー。コースケ、おはよう」

「おはようエリナさん」

 

ようやく起きたのか、挨拶をするエリナさんに僕は返した。

 

「どういうつもりなの? 二日連続で潜り込んできたのは。もしかしてまた眠れなくなったとかじゃないよね?」

「大正解だよ、コースケ」

 

笑みを浮かべて答えるエリナさんに、僕はきっぱりと注意することにした。

 

「あのね、これでも僕は男だよ? 男のベッドに潜り込むのはあまり芳しくない」

「おー、もしかして夕○ちしてるの!」

「……」

 

僕の苦言に、なぜか変なベクトルで反応するエリナさんに、僕は何も言えなくなってしまった。

 

「とにかく、もう起きる時間だから出て」

 

僕はエリナさんにそう促すと、エリナさんは素直にベッドから出た。

 

「ふぅ……コースケのおかげで良く眠れた」

 

(僕は安眠剤?)

 

「とはいえ、男の人のベッドに潜り込むのは問題があるよ」

 

伸びをしながら気持ちよさそうに声を出すエリナさんに、どうでもいいことを思いながら、声を上げた。

 

「だって、眠れなかったんだもん」

「眠れないにしてもほかにもいろいろと方法はあるはずだよ。それに寝苦しい夜も一人で乗り切れるようにしなくちゃダメ」

 

そうきっぱりと言い切ると、エリナさんの表情が曇っていった。

 

(このパターンは!?)

 

「コースケはやっぱりエリナみたいな女の子と―――」

「ストップ」

 

僕のよ曽於通り、お決まりの文句を口にしようとしたエリナさんの言葉を遮った。

 

「それを脅迫の材料に使うのはなし。それをされると僕には反論することができなくなるから」

「にひひ、ちょっと卑怯だったね。ゴメンね」

 

本人も自覚してたのか、苦笑しながら謝ってきた。

 

「ともかく、前から何度も言ってるけど慎みは持つべきだと思う」

「成程、コースケは慎みがる女性が好みなんだね。覚えておくよ」

「ぜひともそうしてください」

 

反映されるかはわからないけど、僕は心の中からそう願うのであった。

 

「………でもね、その……」

「何か、問題でもあるの?」

 

先ほどまでの様子とは一変したエリナさんの様子に、僕の表情も自然と引き締まる。

 

「実はね、昨日の夜からずっとのどが渇きっぱなしなの」

「何か飲み物でも用意しようか?」

「ありがとう。でも、水分はちゃんと取っているんだけど、のどが渇いてる状態なの」

 

飲み物を取ってこようとした僕を止めるように口にしたエリナさんの言葉に、僕はある可能性を見つけ出した。

 

「それって風邪とかじゃないの?」

 

風邪ならばのどが渇いて仕方ない状態なのも納得がいく。

だが、僕の推測にエリナさんは首を横に振ってこたえた。

 

「それはないと思うよ。ヴァンパイアウイルスの活動が弱まった時も、風邪と同じ症状になるから」

「そうなんだ。だとすると、エリナさんの症状は……」

 

おそらくは吸血鬼関連の話になるだろう。

 

「別に体調が悪いわけじゃないの。ただ、なんていうのかな……体が変と言うか……体が渇くというか………ゴメン、ちゃんと説明できないよ」

「それと、ベッドに潜り込んできたのと一体何の関係が?」

 

エリナさんの一連の行動の理由に対する話の流れが読み取れず、僕はエリナさんに改めて疑問を投げかけた。

 

「それがね、その体の渇きがコースケと一緒にいて甘いにおいをかいでいると嘘のようになくなって楽になったから」

「潜り込んできたというわけね」

 

エリナさんが頷いたことで、事の経緯がなんとなくわかった。

つまりは、こうだろう。

なぜか体の渇きの症状を感じたエリナさんは、なんだかんだで僕の部屋に訪れ、楽になったために一緒にベッドに潜り込んで眠ることにしたようだ。

 

(しかし、となると疑問なのは)

 

エリナさんが感じた症状ということになる。

 

「エリナね、こういうのは初めてなの」

「それは、ベッドに潜り込んで一緒に寝たこと? だったら、僕もそうだけど」

 

エリナさんのつぶやくようにして放たれた言葉に首をかしげながら相槌を打つ。

自分で言っていて情けないが、ベッドで添い寝をしたという経験は全くない。

ちなみに、男でもないということをここに言っておこう。

さもないとまたおかしな嫌疑をかけられそうだから。

 

「にひひ。コースケの初めてゲット~♪ エリナも男の人と一緒に寝るのは初めてだけど、そういうことじゃないの」

「それじゃ、なんなの?」

 

何かおかしなベクトルに反応したエリナさんは喜びながら声を上げると、首を横に振って僕の言葉を否定した。

 

「ワタシね、この都市に来てから自分の体のことを隠していたから、自分の体のことを知ってくれる人が一緒にいてくれることがとてもうれしくて」

「……」

「嬉しいから、一緒にいられるだけで幸せに思えるの」

 

その言葉は、なぜか僕の心の中にしみこんできた。

 

「だからね、その………あ、ありがとうと言うことでね………な、何だか照れるね。にひひ」

「えっと……どういたしましてと、返した方がいいかな?」

 

自分の言葉に頬を赤く染めて、照れ隠しに笑うエリナさんに、僕は疑問形で聞き返していた。

エリナさんも笑いながら頷くことで答えてくれた。

 

「とにかく、理由は分かったけど、でもね日本には”男女七歳にして席を同じうせず”と言う言葉もあるんだ」

「セキをドウジュセズ?」

 

言葉の意味が分からないのか、首を傾げて頭には”?”を浮かべているエリナさんに、僕は分かりやすく説明をすることにした。

 

「つまりね、わかりやすく言うと、年頃の男女がそう簡単に一緒に寝る物じゃないという意味なんだけど。でも、病気で苦しんでいるんだから仕方がない………のかな?」

 

自分で言っていてしまりがなくなってしまった。

確かに、言葉の意味をくみ取れば、ダメなのだが病気で苦しむ人を助けるために一緒に寝るのはだめだと、一言で切り捨てていいものだろうか?

 

「ところで、その渇きの方はどうなの?」

「それはダイジョーブ。コースケと一緒にいたからまったくなくなったよ」

 

話を変えるべく、疑問を投げかけると、エリナさんは明るい表情で答えてくれた。

だが、それでも心配だったため、僕はエリナs何位提案をすることにした。

 

「病院に行った方がいいんじゃない?」

「でも、体調は悪くないんだよ。ちょっと体が渇くだけなの」

 

口にはしていないけれど、行きたくないという意思が強かった。

 

「だったら、いいんだけど」

「心配かけてごめんね。そろそろ着替えないといけないから部屋に戻るね」

 

そう言葉を残して部屋を後にするエリナさんを、僕はただ見送るだけだった。

 

「はぁ……」

 

そして口から出てきたのは、深いため息だった。

 

「何をやってんだろ。僕は」

 

病院に行くように言っていた僕は、どうにかして行かせようという方法を考えていた。

 

(ここまで、するのはどうしてだろう?)

 

自分に問いかけてみるが、答エはなかなか思い浮かばない。

 

(もしかして、僕と重ねてるのかな?)

 

僕と同じ(厳密には違うけど)吸血鬼から血を吸う吸血鬼と言う体質上、親近感がわいているからなのかもしれない。

 

(これじゃ、もし理由を聞かれても答えることなんてできないよね)

 

とはいっても、自分でも理由がわからないのだから仕方がない。

 

「にしても、一緒にいるだけで幸せ、か」

 

エリナさんの言葉が、今でも心の中で反響している。

僕にも言えることだった。

吸血鬼から血を吸う体質で、なおかつライカンスロープと言う存在の僕には。

 

(もし、エリナさんがこの事実を知ったら、どう反応するのかな?)

 

ふとそんなことを考えてみた。

 

「はぁ……着替えよ」

 

考えても埒が空かないと感じた僕は、制服に着替えることにするのであった。

先ほどのエリナさんの言葉が、今後起こるであろう事態の予兆であることも知らずに

この時僕は、間違った対応をしていたのだ。

無理やりにでも、エリナさんを病院に連れて行くべきだったのだ。

それがわかったのは、そう遠くない未来のことであった。

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