DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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第38話です。

今回も少々長めです。


第38話 異変

門まで出てきたところで、僕はエリナさんに声をかける。

 

「それで、実際のところ、どう?」

「実際?」

 

僕の問いかけの意図が把握できなかったのか、エリナさんは考え込むようなしぐさをしていた。

 

「教室では聞けなかったけど、この一連の不調の原因は体質と関係があったりするのかな?」

「分からない。エリナも、今見たいな感じは初めてだから」

 

困惑した様子のエリナさんの表情から、嘘をついているようには思えなかった。

 

「と言うことは、例の渇きの方はどう?」

「まだ渇いてる」

「その渇きに何か変化はなかった? 例えば、前よりひどくなってきたとか」

 

エリナさんの答えを聞いて、僕はさらに疑問を投げかける。

 

「うん、確かに、どんどんひどくなって行ってるような気がする」

「なるほど……」

 

そのエリナさんの答えに、僕は無性に後悔の念に駆られた。。

 

「ごめん」

「どうして、コースケが謝るの?」

 

エリナさんが驚いた様子で、謝罪の言葉を口にする僕に聞いてくる。

 

「だって、その兆候はすでに出ていて休むように言えたはず。それをしなかったんだ。友達とか言ってるくせに」

「それは、コースケが悪いわけじゃないよ。悪いのはエリナだよ」

「それだけじゃないんだ」

 

慰めてくるエリナさんに、僕はさらに言葉を続ける。

自分が許せなかったのは、それだけじゃなかった。

 

「自分にも落ち度があるのに、一瞬エリナさんを責めようとした自分自身が許せないんだ」

 

一瞬ではあるが、エリナさんを責めるような言葉が脳裏によぎったのだ。

口にしなくとも、自分勝手な言葉であることは確か。

そして、それが浮かぶということは、僕の本心と言うことでもあるのだ。

 

「ダメだね、僕は」

「ダメじゃないよ! だって、それだけ心配してくれたってことなんでしょ? だから、ダメじゃない。逆に心配してくれてうれしいくらいだよ」

 

ふとつぶやくように口にした言葉に反応したエリナさんの言葉は、僕の心にしみこんでいった。

 

「ありがとう」

「どういたしましてでいいのかな?」

 

弱気になっていた僕に喝を入れてくれたエリナさんにお礼を言いつつ、僕は話を続けることにした。

 

「でも、皆に心配をかけすぎるのもあれだから、早く元気にならないとだめだけどね」

「そうだね。そのためには今日は一杯寝ないとね」

「今日は、僕がちゃんと看病するから安心して」

 

僕の言葉に頷くエリナさんに、僕は安心させるように言う。

 

「え、本当に看病してくれるの?」

「当たり前でしょ。まさか、うそを言っているとでも思った?」

「そうじゃないけど、根回しの良さとかを見るとね」

 

そう言って苦笑するエリナさんに、僕はため息を漏らす。

 

「嘘なわけないでしょ。それに病人なんだから、今日くらいは甘えてもいいんだよ?」

「え、甘えていいの!?」

 

僕の言葉に目を大きく開いて聞いてくるエリナさんに、僕は頷くことで答える。

 

「それじゃ、お姫様抱っこ♪」

「いきなりハードルが高いッ!」

 

どうしてエリナさんはとてつもなく難易度の高い高度な技を要求するのだろうか?

 

「考えてみたけど、無理!」

「残念」

 

僕の返答に、エリナさんは本当に残念そうに漏らした。

 

「でも」

「どうしたのコースケ? 具合でも悪くなった?」

 

地面にしゃがみ込む僕に、病人であるはずのエリナさんが心配そうに声をかけてきた。

 

「違うって。おんぶだよおんぶ。それくらいならできるから」

「え? いいの?」

「もしかして、おんぶくらいじゃ満足できない?」

 

微妙な反応に、僕は不安になってエリナさんに尋ねる。

 

「ううん。十分だよ」

「それじゃ、早く乗って」

「分かったよ」

 

そのエリナさんの答えから少しして、背中に重みが加わった。

首元にはエリナさんの腕が回される。

僕は鞄の取っ手部分を腕に通して、両手でエリナさんの足をつかんで落ちないように支えるとゆっくりと立ち上がった。

 

「あ、本当だ」

 

多少の重さは感じるが、それほどきついものでもなくすんなりと立ち上がることができた。

 

「大丈夫?」

「うん。乗り心地はとてもいいよ」

 

(の、乗り物扱い!?)

 

何だか微妙にショックを受ける僕だが、それを振り払う。

 

「それじゃ、行こうか。ノンストップで寮まで」

「うん♪」

 

そして、僕はゆっくりと寮に向かって歩き始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にひ、にひひ」

「だ、大丈夫? 今何かとてつもなく不気味な声が聞こえたけど?」

 

少し歩いたところで、耳元で聞こえたエリナさんの不気味な声に、僕はエリナさんに声を変えた。

 

「不気味とは失礼な。これは、エリナの嬉しくて漏れ出る声だよ」

「それは失敬。で、その邪悪……笑い声がどうして出てくるの?」

 

一瞬邪悪と言いそうになるのを必死にこらえてエリナさんに問いかけた。

 

「こうして優しくしてくれるからだよ」

「それだけなの?」

 

その答えに、僕は思わず意外に思ってしまい聞き返してしまった。

 

「それだけじゃないよ。今までこうして優しくされたことがなかったから、だから嬉しいの」

「そうなんだ」

 

エリナさんの言葉には、底知れぬ重さがあった。

 

「でも、これくらいは当然のことだと思うけど」

「それでも、コースケはとても優しいことを自覚しないと。フラグが立ちまくりだよ」

「ふ、フラグ?」

 

僕のつぶやきに反論するエリナさんに、疑問形で返してしまった。

フラグというのは旗と言うことでいいのだろうか?

 

「そうだよ。もう立ちまくって、こうしちゃうくらいに」

「ッ!?」

 

エリナさんが言い切るのと同時に背中に感じた独特の質感に、僕は飛び上がろうとするのを必死にこらえる。

 

「な、何当ててるの!?」

「エリナのお礼だよ」

 

そう言って恥ずかしさをみじんも感じさせないで答えるエリナさんに、僕は脱力しそうになるのをこらえた。

 

「当てなくていいから!」

「そうはいっても気持ちよさそうな声を出してたよ? 本当は嬉しい癖に~」

「うっ!?」

 

エリナさんの指摘に、僕は反論ができなかった。

自分でも気づかぬうちに出しているという可能性があったからだ。

 

「ということで、うりゃ、うりゃ」

「~~~~~~っ! お願いだから、やめて!」

 

さらに押し付けてくるエリナさんに、僕は少しだけ強い口調でやめるように言った。

 

「そうなの? それじゃ、代わりに耳を甘噛みするね。はむ」

「うひゃ!?」

 

背中に感じていた質感がなくなる代わりに、今度は耳元が暖かくなった。

それはエリナさんが甘噛みをしたからで、背筋に寒気が走った。

 

「甘噛みしなくてもいい。というより、どうして体を使ったお礼方法ばかりなの!?」

「それじゃ、エリナはどうやってお礼をすればいいの?」

 

僕のツッコミに、エリナさんは困惑した声色で聞いてきた。

 

「別に、お礼なんていいよ。病人を助けるのにお礼なんて必要はないんだから」

「そういうものなの?」

「そういうものなんです」

 

僕はエリナさんの疑問に即答で返した。

でも、強いて言うのだとすれば

 

「僕にとっての一番のお礼は、早く元気になってくれることだよ」

「コースケ……うん、早く元気になれるように、エリナ頑張る」

 

ちょっと気障っぽいかなと思いつつ、僕はエリナさんの言葉を聞いていた。

 

「あ、そう言えばコースケ」

「なに? エリナさん」

 

ほんの少しだけ続いた沈黙を破るようにして声をかけてきたエリナさんに、僕は用件を尋ねる。

 

「それだよっ!」

「え?」

 

突然大きな声を上げたエリナさんに、僕はそれしか口にできなかった。

 

「どうしてコースケはワタシのことを”エリナさん”って、呼んでるの?」

「え? だって、呼び捨てなんて失礼でしょ?」

 

エリナさんの問いかけに、僕は”常識だよ”と思いながらそう返した。

 

「でも、ユートはエリナのことを呼び捨てで呼んでいるけど、ワタシは文句とか言ってないでしょ?」

「……確かに」

 

エリナさんに指摘された通り、佑斗君は彼女のことを呼び捨てにして呼んでいる。

でも、当の本人は嫌そうなそぶりを見せていないようにも見えた。

 

「せっかく仲良くなれたのに、コースケが今まで通りにさん付けで呼んでいるとちょっと悲しい」

「ごめん」

 

悲しげなエリナさんの言葉に、僕は謝罪の言葉を口にしていた。

 

「だ・か・ら~。これからはコースケもエリナのことを”エリナ”って、呼ぶこと」

「……分かったよ、エリナ」

「うん♪」

 

エリナさん……エリナのことを呼び捨てにして呼ぶと、嬉しそうに返事を返してくれた。

 

「それにしても、コースケから良いにおいがする」

「そう? 香水とかつけてないんだけど」

 

エリナさんの言葉に、僕は首をかしげながら訊き返した。

もしかしたら汗臭いのかもしれない。

 

「とても、甘くておいしそうな匂い」

「そんなもんなのか……おいしそう?」

 

普通に応えようとしてたところで、エリナの口か出ていた言葉に引っ掛かりを覚えた。

いくらなんでも”おいしそう”と言うのはおかしい。

 

「うん、とてもおいしそうな匂い……れるん」

「ぴゃー!?」

 

突然首筋に走る感触に、間抜けな叫び声をあげてしまった。

 

「というより、首を舐めないで!」

「ダメ、かもしれない。れろ……れるん」

 

僕の抗議を無視するように、エリナは首筋を舐め続ける。

 

「コースケ……はむ」

「ヒィッ!?」

 

舐めるのをやめたかと思えば、今度は甘噛みをし始めた。

 

「だから、甘噛みもだめだって!」

「はむ、あむ………コースケ……はむ」

 

僕の言葉に返事をせずに、うわ言のように僕の名前を口にしながら甘噛みするエリナ。

 

(なんだかおかしいよ)

 

その様子に、僕は悪乗りをしているとは思えなくなっていた。

 

「ちょっと、エリナ! しっかりしろ!!」

「………あ、あり? どうかしたの、コースケ?」

 

大きく体を揺らしながら必死にエリナに声をかけると、魔の抜けたようにエリナが声を上げた。

 

「ちょっと、大丈夫?」

「ダイジョーブって、何が?」

 

そのエリナの答えに、僕は違和感を感じた。

 

「もしかして、覚えていないの?」

「何を? エリナ、確かコースケの背中に甘えてたんだよね?」

 

(……これはまずい)

 

記憶にないとはいえ、彼女の行動は正常なものではないのは明らかだ。

特に、意識がないのがその証拠だ。

 

「ちょっとペースを上げるよ!」

「うわっ!? 速い速い! ごーごーごー!」

 

速度を上げたことにはしゃぐエリナの声を聴きながら、僕は寮に急いで向かう。

 

(横になるだけで良くなるといいんだけど)

 

そんな不安を感じながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エリナ、鍵は?」

「はい、これ」

 

寮に到着した僕は、腕に通していた鞄を床に落としてエリナが僕の眼もとに掲げた鍵を受け取った。

 

「部屋に入らせてもらうけどいい? もちろん、できる限り見ないように心がけるけど」

「ダイジョーブだよ。コースケだったら見られてもへーきだから」

 

部屋に入る了承をエリナからもらうと、エリナの部屋のドアのかぎを開けて中に入る。

 

(意外ときれいだ)

 

何だか失礼なカニがするけど、その通りだった。

部屋は白を基調とした感じでたんすや本棚に机などが白色で統一されていた。

さらにきっちりと整理整頓されている。

 

(っと、あまりじろじろ見るのは失礼だよね)

 

僕はついじっくりと見ようとしていた自分を戒めつつ、ベッドの方へと歩み寄る。

 

「それじゃ、ベッドに降ろすよ?」

「了解だよ」

 

僕は細心の注意を払って、エリナをベッドに降ろしていく。

 

「ふぅ……」

 

ベッドに降ろして、体にかかっていた重みがなくなると、無意識に息が漏れた。

 

「それで、改めて調子の方なんだけど」

「ン………」

 

軽くエリナの額に手を当てると、少々暖かく感じた。

 

「高いから、とりあえずおとなしく寝て」

「了解だよ」

 

僕はエリナに寝るように促すと、僕はさらに問いかける。

 

「そういえば、血液パックはどうしてるの?」

「それだったら冷蔵庫の方に二つほどあるはずだよ。サヨに特別なパックを用意してもらっているんだ」

「それじゃ、それをまずは飲むこと。ちょっと冷蔵庫を開けるね」

 

やはり市長からもらっていたのかと思いながら、僕はエリナにコトワリを入れてから冷蔵庫を開ける。

中には確かに血液パックが二つほど残っていた。

パッケージを見ると、僕の持っている血液パックや市販されている合成血液パックとは異なるものであったため、少し違うのかなと思いながら血液パックを手にエリナのもとに戻ると、それを手渡した。

 

「それで、これからどうするかだけど……人の風邪の時と同じ対処法でいいのかな?」

「こういう時って、どうするものなの?」

「えっと……」

 

エリナの疑問に、僕は風邪の時の対処法を思い起こす。

 

「まずは、熱がこれ以上上がらないように汗を拭いて……あとは頭を冷やしながら寝る……だったような気がする」

「それじゃ、その通りにやってみよう。エリナが準備を―――」

「ちょっと待った」

 

ベッドから立ち上がろうとするエリナを僕はすかさず止めた。

 

「エリナは病人なんだから、準備くらいは僕の方でするよ。だからエリナはこれを飲んでおとなしくしていること。分かった?」

「ダー。了解だよ」

 

僕の有無も言わせぬ物言いに、エリナは素直に頷いたので、僕は体をふくための準備をするためにエリナの部屋をいったん後にした。

 

(えっと、タオルと洗面器は……これでよし)

 

洗面台から洗面器を拝借して、それにお湯を入れる。

 

(そういえば、病人用の食材とかあったっけ?)

 

僕はふと疑問に思ったため、キッチンに向かうと冷蔵庫の中を確認する。

 

(これくらいだったら大丈夫かな)

 

今ある食材なら簡単なおかゆを作ることは十分に可能だった。

そして食材の確認をした僕は、お湯の入った洗面器とタオルを手にエリナの部屋に戻る。

 

「エリナ、戻ったよ」

「おー、おかえり、コースケ。ちゃんと……おとなしくしてたよ。にしし」

 

部屋に戻った僕を出迎えるようにかけられた声は、とても苦しそうなものだった。

心配させまいと笑顔を無理やり作っている姿を見ていると、胸が締め付けられる思いだった。

 

「大丈夫……ではなさそうだね」

 

空のパックがあることから、血液パックはちゃんと飲んだようだ。

 

(おかしい、もう効果が出ていてもおかしくないはずなのに……)

 

症状が改善する様子がないことに首をかしげるが、効き目が出るのに個人差があるのかもしれないと自分に納得させるように語りかける。

 

「これがタオルと洗面器だから、後は汗を拭くだけ」

「了解だよ」

 

そう答えると、何を思ったのかエリナは突然服を脱ぎ始めた。

 

「って、ちょっと待った! 体をふくのは自分でやって!」

「えー、なんでも頼んでいいって言ったじゃん」

 

僕の制止の言葉に、エリナが不満の声を上げる。

 

「それとこれとは別。とにかく体をふくのは自分でやること」

「コースケのうそつきー。はぁ……はぁ」

 

不満の声を上げるエリナだったが、先ほどから息が絶え絶えになっている。

まるで全力疾走をしたかのような感じに。

 

「着替えとかはどこにある?」

「そこの……棚に」

 

僕の問いかけに、エリナは苦しげに棚の方を指差しながら教えてくれた。

 

「寝間着とかはこっちで用意するけど、下着は自分で用意してね」

「はぁ……はぁ」

「エリナ?」

 

僕の言葉に返事が返ってこなくなったため、僕は寝間着を取り出すのをいったん止めてエリナのもとに駆け寄る。

 

「大丈夫じゃないのは分かるけど、大丈夫?」

 

エリナの目は焦点が定まっておらず、意識も朦朧状態だった。

明らかに異常だった。

 

「エリナ、症状を教えて」

「体が、熱くて……胸が苦しい。体が疼く」

 

(疼く?)

 

現在の症状を教えてくれたエリナの症状に、僕は疑問を抱いた。

明らかに普通の風邪ではない。

 

「もう……ダメ」

「え、エリナ!?」

 

それを考えようとした瞬間、エリナがこっちに倒れてきた。

受け止めることには成功したが、エリナの体中が熱くなっていることが感じることができた。

 

「はぁ……はぁ……コースケ」

「僕はここにいるから、大丈夫」

 

息も絶え絶えのエリナを安心させるように、僕は言葉をかけ続ける。

 

(やっぱり無理やりにでも病院に連れて行こう)

 

「コースケの匂いがする。はぁ、はぁ……甘くて、良い匂いが……本当においしそう」

「おいしそう?」

 

病院に連れて行こうとした僕の耳に、あの時と同じ言葉が聞こえてきた。

僕は、その言葉の意味を考えることはできなかった。

なぜならば

 

「ッ!?」

 

首筋に走る感覚によって考えることができない状態になったのだから。

その感覚を、僕は過去に二回ほど味わっている。

 

「んぐ……ずずず」

 

そう、血を吸われる吸血の感覚だった。

 

「エリナ、いったい何を」

「じゅるる……ぢゅる……コースケ、あむ……んぐ」

 

僕の疑問に答えることなく、エリナはただひたすらに血を吸っていく。

何も考えることはできない。

抵抗しようと体が動きそうになるのを、必死にこらえるので精いっぱいだった。

きっと、ここまで必死になって血を吸うことには何か理由があるはず。

ならば、抵抗してはいけない。

それに、死ぬまで吸われるわけではないのだから。

 

「んぐ……ずずず」

 

吸わないよね?

 

「んぐ……んん!? ぷはっ、ワタシは一体何を?」

 

今までとは違う声を上げたかと思うと、エリナは僕から離れて混乱した表情を浮かべる。

 

「やっぱり意識がないんだ」

「コースケ? まさか、ワタシ、コースケの血を」

 

もしやと思い声をかけると、やはり意識がなかったようだったがそれで何があったのかをエリナは知ってしまった。

 

「問題ないよ。それよりも、血を吸って体調は落ち着いた?」

「う、うん。さっきより少し楽になった」

 

その答えに、僕はほっと胸をなでおろした。

どういう原理かはわからないが、とにかく症状が改善してくれたことはとても喜ばしいことだった。

 

「で、でもワタシコースケの血を……ご、ゴメン、ゴメンね。エリナそんなつもりは全く」

「だから、落ち着いて。エリナには意識がなかったんだから」

 

困惑したように叫ぶエリナの肩をつかんでそう声をかけると、エリナは若干落ち着気を取り戻したようだった。

 

「えっと、体をふくお湯は……ちょっと覚めてるから、今入れなおして―――」

「入れなおさなくていい、それでいいから早く出て行ってッ!」

 

覚めてしまったお湯を入れなおそうと洗面器に手をかけようとする僕に、エリナは叫ぶようにして声を荒げた。

 

「いや、言われなくてものぞくつもりはないって」

「そうじゃないの。……ゴメン」

 

その様子に、僕は悟ってしまった。

何かに怯えているのだということを。

 

「分かった。でも、何かあったらすぐに呼んで。一応看病する約束なんだし」

「うん。……ありがと、コースケ」

 

エリナのお礼に、僕は後で何か食べる物を持っていくことを告げて部屋を後にするのであった。

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