DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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第41話です。

本来は投稿する時間ではありませんが、これもクリスマスの奇跡ということで。


第41話 過去

「これで、今日の学園は終わりだ。仕事がある者は仕事へ、ないやつは問題を起こさないように。以上、解散」

 

枡形先生の号令で、クラスメイト達は教室を後にしていく。

 

「浩介、俺たちも行くぞ」

「分かった」

 

佑斗君に促らされるまま、荷物をまとめて席を立った僕は風紀班の支部の方に向かうことにした。

 

「おい、六連、高月」

 

そんな僕を呼び止めたのは枡形先生だった。

 

「お前ら、今日は出勤だったな?」

「はい、そうですけど」

「何か問題でも?」

 

枡形先生の問いかけに、僕たちは困惑しながらも返事を返す。

 

「いや、そういうわけではないが、今日は出勤しても巡回には出ずに俺が来るのを待ってろ」

「何か特殊な仕事ですか?」

「しかも、先生自らと言うことはかなりの危険な任務の内容なのでしょうか?」

 

先生の指示に、佑斗君と僕は思わず身構えた。

 

「高月、お前は俺をなんだと思ってる。危険なものではない、特殊なことには変わりがないがお使いのようなもんだ」

「了解しました」

「同じく」

 

先生に呆れたような視線を向けられた僕は、一体どんな仕事なのかが気になって仕方がなかった。

 

「佑斗に浩介。行くわよ」

「もしかして今日は行かないの?」

「いや、俺たちも出勤だから行くよ」

 

しばらくボーっとしていたところに、美羽さんと布良さんが声をかけてきたため、僕たちは風紀班の支部へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、佑斗は私と」

「高月君は、私とだね」

 

支部に到着した僕たちは、更衣室で制服に着替えると今日の巡回の組み分けをされていた。

 

「いや、今日は僕と佑斗君は巡回がないみたいなんだ」

「え? でも、今日は突入するような案件はなかったよね?」

 

そんな彼女たちに、僕が巡回がないことを告げると、不思議そうな顔を浮かべた。

 

「主任から、今日は巡回に行かずに待つようにって言われてるんだ」

「何か言われてなかったの?」

「いや、ただ特殊なお使いのようなものだとしか」

「そう。主任がそういうのならそんなに危険なものではないと思うけど……念のために言うけど、もし危険だと感じたらすぐ私たちに連絡をして頂戴」

 

佑斗君の答えに、美羽さんは少しばかり口を閉じると、そう言ってくれた。

 

「すぐ駆けつけてくれるから」

「ありがとう」

 

(男としてのプライドはここでは捨てるべきなのかな?)

 

佑斗君がお礼を言う中、僕はそんなことを考えていた。

 

「それじゃ、行ってきます」

「気を付けて」

「二人とももね」

 

いつもの巡回に行こうとする二人に声をかけると、苦笑しながら美羽さんに言われてしまった。

そして二人はいつもの巡回へと向かっていった。

残った僕は椅子に腰かけて主任が来るのを待つことにした。

 

(今頃エリナは小夜様にあってるのかな?)

 

ふと考えるのは、やはりそんなことだった。

そんなこんなで数分が経過した頃、主任が姿を現した。

 

「すまない、遅れた」

「それで、仕事とはなんですか?」

「こいつを荒神市長のところに届けてほしい」

 

遅れてやってきた主任に、佑斗君が尋ねると主任は大きめの茶封筒を取り出してそれを僕たちの方に差し出した。

 

「これは?」

「お前たちも覚えてるだろ? 例の薬に関する報告書だ。事の重大性から市長自ら確認したいと申し出があった」

 

どうやら、これがあの薬(確か”L”と言った名前だったはず)についての報告書のようだ。

終わりの方まで全く知ることができていなかった僕としても、読んでみたいのだが、確実に怪しまれるため我慢することにした。

尤も、知って得するようなことではないのだが。

 

「でも、普通こういうのはネット上のやり取りなのでは?」

「普通はそうだ。だが、市長はあのような形でも数百年も生きているからな。紙媒体でないと嫌がるんだ」

 

僕の疑問に答える主任の表情には、どこか苦労を感じさせられるような感じがした。

 

「それに、お前たちの顔もできる限り見せるようにと言われている」

 

(つまり、書類も届けられて、顔見せもできるから一石二鳥と言うことか)

 

「そういえば、六連は車の免許を持っていたな」

 

口にしたら確実に怒られるであろう内容を心の中でつぶやいていると、主任が佑斗君に声をかけていた。

 

「はい。アルバイトで必要だったので」

「よし。なら、車の貸し出しを申請して班の車を使え」

「分かりました」

 

こうして、僕と佑斗君は市長への報告書の運送の任を受けるのであった。

それから数分で貸し出しの手続きを済ませた僕たちは、風紀班で支給されている車が置かれている場所に向かった。

 

「久しぶりの運転だな」

「お願いだから、安全運転でお願い」

 

車を前に表情が緩む佑斗君に、僕はお願いする。

 

「安心しろ。俺はもとから安全第一だ」

「ならいいんだけどね」

 

できれば、アクロバット運転を体感しないことを僕は心の中で祈るのであった。

ちなみに、結果から言うと言葉通り安全運転だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それではどうぞ、お入りください」

「ありがとうございます」

 

受付で簡単な手続きを済ませた僕たちは、この間と同じように大きめのドアの前に移動すると佑斗君はドアをノックした。

 

「六連です。例の”L”に関する報告書をお持ちしました」

「うむ、入ってよいぞ」

 

中から入室の許可をもらった僕たちは、ドアをかけて公務室に足を踏み入れる。

 

「「失礼します」」

 

公務室には小夜様の姿があった。

机の上に広げられている資料は今まで仕事をしていたことを感じさせる。

 

「こちらが、”L”に関する報告書です」

「ご苦労」

 

僕の手から報告書が入った茶封筒を受け取った小夜様は、僕たちに労いの言葉をかける。

 

「ところで、例の件の進展具合はどうですか?」

「その件じゃが、全く進展しておらんのじゃよ。知っているであろう人物も行方をくらませておってな」

 

(例の件ってなんだろう?)

 

二人の会話を聞きながら、僕は首をかしげるが思い当たる節はなかった。

 

(人間に戻るため……だとしたら扇先生だろうし)

 

だとしたら、いったい何なのだろうか?

 

(まあ、いいか)

 

僕はそれ以上考えることをやめた。

それはあまり人の知られたくないことを詮索するのは相手にとって失礼だと感じたからだ。

”人の話したくないところまでは踏み込まない”

それが、この都市での暗黙のルールだからだ。

 

(何だか、すっかりと僕もこの都市になじんでるよね)

 

「ところでじゃ、高月浩介。お主に聞きたいことがある。悪いが小童は、外の方に出て行ってはくれんか?」

 

どうでもいいことを心の中でつぶやいている僕に、小夜様はそう口にすると佑斗君に外に出るように告げた。

 

「分かりました。それじゃ、俺は車で待ってる」

「うん。ごめんね」

 

そして佑斗君はそのまま公務室を去っていった。

 

「さて……」

 

それを見届けた小夜様はそう口にして、疑いのまなざしを向けてきた。

 

「お主、エリナに何かしたのか?」

「はい?」

 

小夜様の問いかけに、僕は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。

 

「こう、若さゆえの欲望をむき出しにしたりとか」

「いったい僕をなんだと思ってるんですか!? と言うより、エリナがそう言ってたんですか?」

 

身に覚えのない疑いに、僕は思わず小夜様にツッコミ口調で反論してしまった。

とはいえ、本能が出ている間にしていればもう決定的ではあるのだけれど。

 

「いいや、エリナはそのようなことは言ってはおらぬ。守護もはっきりとしてはいなかったが”怖い”と口にしておったのでな」

「怖い……僕が」

 

エリナが口にした”怖い”とは、一体何を指しているのだろうか?

 

「あの、小夜様」

「ん? なんじゃ」

 

それをはっきりさせるためにも、僕は小夜様に問いかける。

 

「自分に、エリナの過去のことを教えてくれませんか?」

「……なぜワシに頼む?」

 

僕のお願いに、小夜様は目元をきつくして僕を射抜くような感じで問いかけてきた。

 

「エリナから血液パックを小夜様から頂いていると聞きました。つまり、小夜様自身もエリナの過去について知っている可能性があると思ったからです」

「………鋭い分析じゃ」

 

僕の理由を聞いた小夜様は、感心したように声を漏らした。

 

「じゃがな、人の過去をおいそれと話すわけにはいかんのじゃよ」

「そうですか……」

 

考えてみれば当然の答えだった。

市長と言う立場になれば、またそれ以外の立場だったとしても、小夜様はおいそれと他人の秘密を暴露したりはしない。

だからこそ、ライカンスロープの僕もこうして平穏に過ごせて行けているのだから。

 

「じゃがな、ワシも年じゃ。ふと昔のことに思いをはせたくなる時もある」

「はい?」

 

話は終わっていなかったようで、小夜様の言葉の意図がわからずに、思わず首をかしげてしまった。

 

「あれはそうじゃな……まだ連合だった時代じゃったか」

 

そして突然語り始めた小夜様の言葉を、僕は聞き漏らすまいと耳を傾ける。

小夜様の話を要約するとこうだ。

エリナは幼少期を研究施設で過ごしていた。

そして、小夜様は施設にとらわれた吸血鬼たちを解放させようとしていたらしく、色々あったものの無事に解放させることに成功した。

その時にエリナを日本の海上都市に招き入れることとなった。

 

「ふぅ……話した話した。やはり懐かしいのぅ」

 

全てを話し終えた小夜様は息を吐き出しながらそう口にした。

 

「一応言っておくが、研究施設では肉体的苦痛は受けてはおらん。じゃからその手のことで同情しようものなら、逆に傷つけることになる」

「分かりました」

 

小夜様の忠告に、僕はそう答えた。

 

(でもなんだろう、この気持ち)

 

小夜様の昔のエリナの話を聞いていた僕は、懐かしさを感じていた。

僕の記憶では全く経験がないはずだが、まるで自分もその場にいたような錯覚を感じていた。

 

「ワシはのう、エリナとはそこそこ長い付き合いじゃ。それでも、初めてみる。あのような笑顔は。最初のころはもっと無表情無感情の、小童じゃったんじゃが」

 

小夜様の言葉を聞いて、僕はの脳裏に前に見た夢の内容がフラッシュバックのようによぎった。

 

「じゃが、今はややおかしな正確ではあるが、ちゃんと感情を取り戻しておる。ワシは、エリナには笑顔でいてほしい……それはお主と同じ考えじゃよ」

「……」

 

だが、僕の思考は小夜様のその言葉で止められることになった。

 

(でも……)

 

なんとなくではあるが、小夜様の話を聞いたことで、ばらばらだったピースが一つにはまったような感じがした。

エリナの今までの自虐的な言動や自分でも驚くほどの食べさせあいをさせようとした時の代わりようは、秘密を共有する人が現れたことで今まで抑えていたものが吹っ切れたからだろう。

僕だったら、きっとエリナと同じような状態になるだろう。

嬉しくて、それでもいつかは離れていくのではないかと言う恐怖に振り回されながら。

 

「ひとつ聞いてよいか?」

「はい、なんですか?」

「どうして、お主はエリナの力になろうとするんじゃ?」

 

小夜様のその問いかけは、僕の心に突き刺さった。

 

「それ……は」

 

すぐに答えることができなかった。

僕はどうしてエリナにこうまでして力を貸そうとしているのだろうか?

友人だからなのか、それとも同じ寮に住んでいるからなのか。

自分でもはっきりとした理由が見当たらない。

 

「なるほど……」

 

そんな僕に、小夜様はあきれた様子でつぶやいた。

 

「まあ、理由はいずれちゃんと聞かせてもらうとするかの」

「あの、一つお願いしたいことが」

「なんじゃ?」

 

僕はここに来たもう一つの要件を小夜様に切り出すことにした。

 

「自分用の血液パックがなくなったので用意してもらいたいんですが」

「おっと、もう無くなったのか? 分かった。じゃがすぐには用意できる故、とりあえずパックはそっちの方に送ることにしよう。なに、心配するでない。ちゃんとわからないようにしておくからの」

「お願いします」

 

もとより、心配する要素はないので、僕は小夜様にお任せすることにした。

 

「それでは、失礼します」

「届いた箱は捨てずに取っておくのじゃぞ」

 

小夜様からそんな注意をされながら、僕は公務室を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道、佑斗君の運転する車に揺られながら、僕は考えに耽っていた。

 

(どうして……か)

 

その内容はエリナのことだった。

どうして自分はエリナに力を貸そうとしているのか。

それが、自分でもわからなかった。

友人のためと言えばそれまでだ。

でも、それだけではないような気がする。

 

(それに、僕は彼女にどう接すれば)

 

なまじ過去のことを知ってしまったために、僕はどう接すればいいのか、その距離感がわからなかった。

ふつうに接するにしても、避けられている時点で普通ではないような気がする。

普通にしろと言われても、僕にそのような芸当ができるはずがない。

すぐにぼろが出るだろう。

 

「何か悩み事か?」

「え?」

 

そんな時、運転している佑斗君が僕に声をかけてきた。

 

「何だか、思いつめたような表情をしているからさ」

「……佑斗君はさ」

 

僕は自然に、佑斗君に口を開いていた。

 

「もし、知り合いのつらい過去を知ったら、どういう風に接する?」

「いきなり難しいな………そうだな」

 

僕の問いかけに、苦笑しながら漏らすと、考え込むように言葉を止めた。

 

「自分の赴くままにするかな」

「何それ?」

 

佑斗君の答えに、僕は思わず聞き返していた。

 

「どんな言葉をかけても、それはただの上辺になる。だったら、自分が思うように接すればいいんじゃないか? その方が自然でいいと思うぞ」

「自分が思うように……」

 

佑斗君の言葉は、僕の中にあるもやもやを取り除いてくれたような気がした。

 

「ありがとう。少し楽になったよ」

「まあ、役に立ったんならいいんだけどな」

 

僕のお礼に、佑斗君はそう答えると再び口を閉じた。

僕は流れゆく景色を見つめる。

 

(でも、どうしてエリナはああなったんだろう?)

 

素人の僕には理由がわからないが、どうしても疑問に感じてしまう。

 

(これはやっぱり)

 

「ライカンスロープのせい?」

 

ふと口をついで出たその単語。

僕がライカンスロープが為に、エリナに悪影響を与えてしまったのではないかと言う仮説ができてしまう。

 

「うわぁ!?」

 

その時、車が大きく横に揺れた。

 

「佑斗君! 安全運転で!!」

「わ、悪いっ」

 

大きく横に揺らした張本人である佑斗君に、僕は抗議した。

 

(まあ、そんなわけないよね)

 

僕は自分の中にできた仮説を否定した。

もしそうならば、吸血鬼である佑斗君や、美羽さん、そしてニコラにも何がしらかの変化があるはず。

それがないということは、僕のこの仮説は誤りと言うことになる。

 

(それじゃ、いったい何なんだということになるんだけどね)

 

結局、僕の疑問は最初の方に戻ってしまった。

こうして僕は、支部に到着するまで永遠に、その疑問を解消しようと試みるのであった。

ちなみに結果は、全て無駄に終わったが。

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