DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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第42話です。

気づけばUAも1万を超えました。
5万を超えることができるよう、さらに良い小説を書いていきたいと思います。


第42話 自分の成すべきこととツンデレと

風紀班の支部で合流した僕たちは、報告書を書き上げたのちに解散となったので、一緒に帰路に就くこととなった。

その途中、巡回の結果や任務のことなどを話していると気づけば寮の前にたどり着いていた。

 

「ただいま」

「おかえりなさい」

 

中に入ると、既に戻ってきていた稲叢さんが出迎えてくれた。

 

「おかえり」

 

そしてそれに遅れて共有スペースでくつろいでいたニコラも声をかけてくれた。

 

「今、朝食を用意してますので、ちょっと待っててくださいね」

 

稲叢さんのはエプロン姿だったため、今朝食を作っている最中なのだろう。

 

「いつも稲叢さんばかりに用意させて悪いな」

「そうね、つらい役割を押し付けてしまって申し訳ないわ」

「でも、莉音ちゃんのご飯はとてもおいしいんだよねー」

「確かに、僕も稲叢さんほどおいしいご飯は作れないと思うよ」

 

そんな稲叢さんに、佑斗君たちは労いと感謝の声をかけていく。

 

「そんなに言われると照れちゃいますよ~」

「四人とも着替えてきたらどう?」

「そうだな、そうさせてもらうよ」

 

佑斗君たちの言葉に、頬を赤くしている稲叢さんをしり目に、ニコラが提案すると佑斗君がそれに頷いて答える。

 

「あ、そういえばエリナは?」

「エリナ君だったら、もう帰ってきて着替え終わっているはずだけど」

 

ニコラの返事に、僕は”そう”とだけ答えた。

いまだに、自分がどうすればいいのか答えは決まっていなかった。

ただ言えるのは、エリナを受け入れるということだけ。

でも、それをどうやって伝えればいいのか、その方法が思い浮かばなかった。

 

「……コースケ」

「ただいま、エリナ」

 

やはり避けられているのか、よそよそしい態度で声をかけてくるエリナに、僕はできる限り普通の態度で返事をする。

 

「おかえり、コースケ。……お仕事お疲れ様」

「そっちもね。ちゃんと仕事には戻ったんでしょ?」

 

若干たどたどしい笑顔を作りながら労いの言葉をかけるエリナに、僕は聞きかえした。

 

「うん。さすがにニコラに押し付けるわけにはいかないからね」

「その約束を守る真面目なところはいいと思うよ」

 

僕はそう相槌を打ちながらエリナの頭に手を乗せると撫でた。

 

(ッ! やっぱりこの感覚が来るか)

 

「あっ」

 

突然の僕の行動に、エリナは驚きの声を上げるが特に抵抗するようなそぶりは見せずに、僕の手を受け入れた。

ただ、体が硬直していたが。

 

(これは悪手だったか)

 

自分らしくないうえに、びりびりとした痛みに加えて鼓動まで早くなっていくような感覚がしたため、僕は頭を撫でていた手を放した。

すると、先ほどまで僕を襲っていた妙な感覚もまるで夢のように消えていった。

 

「ゆ、佑斗君。僕たちも着替えに行こう!」

「あ、おい! 押すなって」

 

僕は半ば強引に佑斗君の背中を押すと共有スペースを後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさまでした」

「はい、お粗末様です」

「浩介も、早く食べ終えろよ」

 

一足先に食べ終えた佑斗君が、茶化すように僕に声をかけてきた。

 

「分かってるよ。それにもう終わりかけているし」

 

稲叢さんが布良さんたちと話をしているのをしり目に、僕も朝食を食べ終える。

 

「にしても、浩介が食事中に考え事をするなんて珍しいというかなんというか……まだ、解決してなおのか?」

「……」

 

意外だといわんばかりの佑斗君だったが、途中で声を潜めて僕に聞いてきた。

僕はそれに無言で頷くことで答えた。

 

「俺にはなんていえばいいかはわからないけど、とにかく頑張れ」

「ありがと。それだけで十分だよ」

 

僕が頑張らなければいけない。

エリナが避けている理由は、僕が彼女から離れると思い込んでいるからだ。

ならば、それ自体を解消させるしかないのだから。

 

「あ、高月先輩ありがとうございます」

「いや、いつも料理を作ってもらっているんだから、これくらいはしないと」

 

食器を運び終えると、稲叢さんがお礼を言ってきた。

 

「あの、もしよければ、こちらを」

「これは?」

 

渡されたのは何の変哲もない紙パック型のジュースだった。

絵柄から察するにリンゴジュースだろう。

 

「さっき高月先輩宛に届いていました」

「そう? それじゃ、お言葉に甘えて」

 

よくよく考えれば、差出人が分からない状態で送られてきた飲み物を飲むというのは自殺行為に等しいが、薬などが効かないのだから、それほど問題はないのかなと自分で思い込むことにした。

それに、もしかしたら小夜様が送ってきた血液パックなのかもしれないし。

 

「いつもごめんね、本当に稲叢さんにはお礼を言っても言い切れないよ」

 

僕は稲叢さんから紙パックを受け取るとストローを刺して中に入っている血液を飲んでいく。

 

(ん?)

 

飲んでいくうちに、違和感を感じたが僕は気にせずに飲み干していくのであった。

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

(なぜ?)

 

私は、疑問を感じずにはいられなかった。

何故疑問を感じているのか?

それは……

 

(どうして私は前に出た)

 

私が覚醒状態にあるからだ。

 

(とにかく、落ち着こう)

 

状況を私は整理することにした。

”彼”の記憶によれば、仔羊……稲叢から手渡されたリンゴの絵柄の紙パックに入っている血液を口にした。

つまりは

 

(あれは覚醒用の血液と言うことか)

 

当然だが、稲叢には何の落ち度はない。

おそらくは彼の知らない間に届き、それを何も知らない彼女が出したのだから。

そう、ただ間が悪かっただけ。

とはいえ、今私が非常に窮地に立たされているのは確かだ。

なぜならば、周りには”彼”を知る者が多くいるからだ。

 

(もし、私と”彼”のことが知られれば非常にまずいことになる)

 

それだけは何としてでも避けたかった。

 

(ほんの数分間、演技すればいいだけだ)

 

私が少し演技をするだけで、この窮地は抜け出せる。

少しだけ疲れるが、数分程度ならばまったく苦にはならないだろう。

……たぶん

 

「あの、高月先輩。さっきの言葉は本当ですか?」

「さっき?」

 

稲叢……さんの問いかけに、何を指しているのかがわからず私は首をかしげる。

 

(直前の言葉と言うと、感謝しているというやつか)

 

「ああ、もちろん本当だよ」

「毎日料理をしている私って、えらいですか?」

「日ごろからいろいろお世話になっているし、わ……僕としては感謝してもしきれないくらいだ」

 

一瞬、”私”と言いそうになったが何とか誤魔化すことに成功した。

気を抜くとすぐにぼろが出そうだった。

 

「その感謝というのは、どんなふうにですか?」

「はい?」

 

稲叢さんの言葉に、私は思わず聞き返してしまった。

一体彼女は何を言いたいのだろうか?

 

「褒めたいんだったら褒めさせてあげてもいいんだからね。具体的には頭を撫でさせてあげてもいいんだからね。さあ、どうぞっ」

「さあ、どうぞって……」

 

ツンデレのテンプレート的な言葉に、私は思わず目を瞬かせる。

”彼”の記憶の限りでは、彼女はこのような人格ではなかったはずだ。

 

(気でもおかしくなったのか?)

 

そう思っていたが、恥ずかしさが故か悶えていた。

 

(恥ずかしいんなら、やらなければいいのに)

 

そしてどこからともなく視線を感じるが、とりあえずそっちに関しては一旦おいておくことにした。

問題なのは、誰が彼女にこのようなことをさせているかだ。

 

「ふっ。さすが莉音君。素晴らしいツンデレっぷりだ。もうボクが教えることは何もない」

「お前の仕業か。一体彼女に何を吹き込んだ」

 

稲叢さんを満足げな目で見ながら頷くニコラを私は問いただす。

 

「なにって、男の夢とロマンのセリフさ」

「何が夢とロマンだ。彼女はツンデレとは対極に位置する存在だぞ」

 

ニコラの返事に、私はあきれた口調で話すと指摘した。

 

「だが、そのギャップに萌えるんじゃないか」

「さいですか」

「どんと来いです」

 

再度彼女の方を見ると、そう言って胸を張っていた。

普段の稲叢さんを知っているものからすればその姿は

 

「可愛い」

「だろう」

 

そういう結論に至る。

 

「とはいえ、変なことを吹き込むのはあまりいただけない」

「ちょっと誤解してるよ。確かにツンデレのことを教えたのはボクだけど、頭を撫でてほしいと思っているのは莉音君自身だ」

 

私の苦言にニコラは不服そうな表情で反論してきた。

 

「そうなのか?」

「は、はい……じゃなくて、別にエリナちゃんが頭を撫でてもらっているのを見てうらやましかったわけじゃないんだからねっ!」

「………」

 

確実に稲叢さんは無理しているのがわかっていた。

彼女にツンデレは合わない。

 

「うむ。ツンデレを使いこなしている。これなら十分に武器になるよ」

「ありがとうございます。じゃなくて、別に褒められてうれしいわけじゃないんだからねっ」

 

ニコラの評価に対するお礼にも、稲叢さんはツンデレ風のセリフで返していた。

 

「とにかく、高月先輩っ!」

「は、はい!?」

 

稲叢さんの一瞬はなった希薄に押されるような形で、私は声を上ずらせてしまった。

 

「私の頭を撫でさせてあげてもいいんだからねっ」

「分かった。分かったから、そのツンデレセリフはやめて。見てて惨めになってくるから」

 

無理をしている彼女を見てくると、あまりの惨めさに悲しくなってくるため、私は頭をなでることにした。

本来であれば、時間切れを待つ方がいいが、致し方がない

 

「あっ……」

「どうかしたか?」

「あ、ううん。なんでもないよ」

 

彼女に手を伸ばす私に、エリナが声を上げるが、作り笑いの表情を浮かべてそう答えた。

私は特に追及することもなく、稲叢さんの頭に手を乗せると適当に撫でた。

「ふぁ……あ……」

「頼むから、変な声を上げないでもらえる?」

 

知らない人が聞けば確実にワタシに変態の烙印が押されかねない。

 

「そんなこと言っても……高月先輩に撫でられると、自然に声が出るんです」

 

(私はテクニシャンか何かか?)

 

自分でも自覚のないスキルに頭をかしげる。

 

「これでいいか?」

「はい。ありがとうございました」

 

時間にして数十秒ほど頭を撫でた私は、稲叢さんの頭から手を放した。

 

(と、そろそろ時間だな)

 

突然襲ってくる入れ替わりの合図でもある眠気のようなものに、私は素早く身を委ねた。

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

「ところで、浩介君」

「な、何?」

 

いきなりニコラに話しかけられた僕は、用件を聞く。

 

「僕の頭も、なでてみない?」

「お断りしますっ!!」

 

まったく話の筋がわからない状態ではあったが、口を告いで応えていた。

 

「そんな即答をしなくても」

 

完全に落ち込むニコラに、僕はどうフォローすればいいのか困り果てていた。

そんな時、僕の背中に向けられている視線のようなものを感じた。

だが、その視線の強さは”向けられている”と言うレベルではなかった。

そう、それはまるで睨み付けるかのような強い感じだった。

その視線の素をたどると、そこには浮かない表情のエリナの姿があった。

 

「どうかした?」

「え? あ、ううん。なんでもないよ」

 

そう言って答えるエリナだったが、その表情はどこか苦しげだった。

 

「もしかして、体調が悪いのか? もしそうだったら遠慮なく言ってくれてもいいんだよ」

「ううん。そういうのじゃないから気にしないで」

 

僕にそう答えると、エリナは近くにいた布良さんと二言三言話をして、共有スペースを小走りで去っていった。

だが、僕にはそれが慌てているような気がしてならなかった。

 

(本当にどうなってるんだろう)

 

そのエリナの姿に、僕はそう心の中でつぶやくことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、こんなものか」

 

一通り予習復習を終えた僕は、伸びをしながら立ち上がった。

時間もいい感じに過ぎており、そろそろ女性陣がお風呂から出た頃合いだろう。

 

(もう少し時間を置くか)

 

佑斗君のように鉢合わせになるというラッキー何とかにならないようにするため、僕はさらに時間を置くことにした。

あの時の佑斗君に下された天誅は、今思い出しても恐ろしい。

 

「そうだ。ちょうどいいから、聞いてみるか」

 

ふと扇先生に話を聞くことを思い出した僕は、ちょうどいい機会だということで扇先生に相談をすることにした。

もちろん、内容は僕の体についてだが。

 

「とりあえず、勝手に入ってこれないように鍵はしておくか」

 

不用意に部屋のドアが開けられて話の内容を聞かれるのはまずい。

普通に電話をしているだけでも、話の内容が聞きとられる可能性は十分にあるが、それでもドアが開けられる状態なのと開けられない状態なのとでは、大きな差があるのだ。

そして僕はドアのかぎを閉めると、ドアから距離を取ってから扇先生の番号に携帯で電話をかける。

扇先生が出たのは、数コールほどしてからだった。

 

『これは、高月君じゃないかい! いやー、こうしてまた君に電話をしてもらえるだなんて嬉しいな。もう嬉しすぎて、思わず全裸に―――――』

 

なぜかテンションが異常に高い扇先生の話を最後まで聞くことはなく、僕は電話を切った。

 

「相変わらずだよね。扇先生も」

 

僕は、思わずそうつぶやくのであった。

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