DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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第50話です。

とうとう50話まで到達しました。
あと50話分で100話となります。
それはともかく、キスの描写ほど、苦手なものはありません。
ですので、描写の甘さについては目をつむっていただけると幸いです。


第50話 パニックと宣言と

「もう、強引だよコースケ」

「ごめんね。でも、これくらいしか今はできないんだ。許してほしい」

 

強引にキスをしたことに、抗議の声を上げるエリナに、僕は素直に謝った。

一歩間違えれば犯罪になりそうな行為だった。

 

「許すも何も、コースケの気持ちはちゃんとわかっているし、理解もしているよ。でもね、いきなりキスをするなんてずるいよ。エリナ、まだ覚悟もできてないのに」

 

そういって頬を膨らませるエリナに、僕は不謹慎ではあるが可愛いと思ってしまった。

 

「だ・か・ら、ん~~」

「へ?」

 

いきなり目を閉じて顔を近づけてくるエリナに、僕は訳が分からずに、声を上げてしまった。

 

「だから、もう一回エリナにキスして」

「わ、わかった」

 

エリナにせがまれるまま、僕はもう一度キスをするべく顔を近づける。

 

(な、何だか無性に恥ずかしいよ?!)

 

自分でやっておいてあれだが、よく思い切ったことができたなと、自分で自分をほめたくなった。

 

「んぅ…ん……ちゅ…んむっ!?」

 

目を閉じてエリナと唇を合わせる僕は、さらに舌を入れる。

 

「はむ……ちゅぅぅぅ……んむちゅ」

 

エリナも一瞬驚きはしたものの、すぐさま受け入れてくれた。

 

(何だかとっても心地いい)

 

キスがこれほどまでにすごい物とは、僕は初めて知ることになった。

今、僕の五感は彼女しか感じない。

自分でも何を言っているのかがわからないが、まるで僕とエリナだけの世界にいるような錯覚を覚える。

 

「高月君、ちゃんとおとなしくして………る」

 

だからこそ、ふと聞こえてきた声も、僕にはただの雑音と化すのだ。

 

「に、にゃー!? いったいにゃにをやってるの二人とも!!」

 

(にゃ?)

 

一瞬聞こえてきた叫び声のようなものが、一気に本来の後漢を取り戻させる。

 

「布良先輩、大きな声を出してどうしたんで―――」

「莉音君は見ちゃだめだっ!!」

 

そして再び聞こえてくる声はニコラのモノだった。

 

「「ッ!?」」

 

何が起こっているかを理解した僕たちの行動は早かった。

慌ててエリナから離れた。

 

「大丈夫かどうか心配して戻ったらとんでもないのを見てしまったわね」

「お、俺は何も見てないぞ」

「ふ、二人とも、寮の中でエッチな行為はメッ、だよ!」

 

そこには布良さんや稲叢さんなど寮のメンバーが全員集合していた。

布良さんは、暴走した様子で僕たちに注意していて、美羽さんは興味深そうにこちらをちらちらと見ながら呆れた声を上げていた。

佑斗君に至っては顔を赤くして違う方向を見ていたり、ニコラは稲叢さんの目をふさいでいた。

 

「あ………ぁ」

 

その状況を理解した僕は、羞恥のあまりに声も出なかった。

 

(み、見られた? キスしているところを……)

 

「…………」

「コースケ?」

 

エリナが目を丸くして僕の顔を覗き込んでくる。

 

「キュ~~~」

 

僕は、それに答える余裕もなく、恥ずかしさのあまりに気を失うのであった。

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

「それでは、私はこれで」

「うむ、頼むぞ」

 

同時刻、公務室にて、元樹は小夜との話を終え、公務室を後にすべく背を向けた。

 

「小夜様、ひとつよろしいでしょうか?」

「なんじゃ?」

 

扉の前で立ち止まった元樹に、小夜は用件を促す。

 

「数か月ほど前、高月君が吸血鬼になるきっかけとなった件はご存知でしょうか?」

「無論じゃ」

 

当然だとばかりに頷く小夜に、元樹は険しい表情を浮かべながら告げた。

 

「高月君が血を飲んでしまった吸血鬼が先ほど亡くなったそうです」

「なんじゃと!?」

 

元樹の言葉に、目を見開いて驚きをあらわにする小夜に、元樹は言葉を続けた。

 

「悪魔が来る。助けてくれ。それが吸血鬼の最期の言葉だったそうです」

「悪魔……か」

 

小夜は視線を元樹から反らし、何かを考え込むようにつぶやく。

 

「あ奴の血は劇薬じゃ。その血を飲んだことによって」

「彼女は亡くなった……ということですね?」

 

やがて重い口を開いた小夜に、元樹は言葉を投げかける。

 

「待てよ……エリナの体調はどうなんじゃ?」

「アヴェーン君は至って健康体です。異変があればすぐに連絡するように言っていますので、大丈夫かと。ですが、解毒剤のようなものを用意した方がいいと思うんですが、作り方はご存じではありませんか?」

 

はっとして慌てる小夜の問いかけに、元樹は眼鏡を上げながら答えると疑問を投げかけた。

 

「残念じゃが、いくらワシでもそれは知らんのじゃよ。知っておるのはあ奴のみじゃ」

「それでは、近いうちに彼に尋ねてみます」

 

小夜の答えに、元樹はそう告げると一礼をして公務室を後にした。

 

「やれやれ………あ奴の一番厄介な性質は変わってはいない……ようじゃな」

 

ため息にも似たその言葉は、誰もいない公務室にむなしく響くのであった。

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

「………うぅ」

 

気が付くとそこは自室だった。

誰かが運んでくれたようだ。

服装も制服のままなので、あのままずっと気を失っていたのだろう。

 

「嘘、もう夕方なの?!」

 

窓から差し込むほのかに赤みかかった日の光に、僕は時計を確認すると確かに夕方の刻限を迎えていた。

どうやら、あのまま本格的に眠っていたようだ。

 

「それにしても、いい天気だな~」

 

窓を開けて外の景色を眺めた僕は、思わずそうつぶやいてしまった。

若干現実逃避をしているような気もするが、まさしくその通りの状態なのだ。

先日、僕とエリナがキスをしているところを寮の皆(稲叢さんは違うけど)に見られてしまったのだ。

皆の視線が怖い。

 

「………男だし、潔く腹を括ろう」

 

僕は、崖から飛び降りるような覚悟を決めて自室を後にした。

 

「おはようございます。高月先輩」

「おはよう、稲叢さん」

 

共有スペースに入ると、いつものように稲叢さんが僕を出迎えてくれた。

そんな稲叢さんに、ほっと胸をなでおろそうとしたが、心配していた視線がすぐさま僕に突き刺さった。

 

「お、おはよう、高月……君。ポッ」

「お願いだから、顔を赤くしないで」

 

先に来ていたニコラが挨拶をしながら頬を赤く染めたのを見て僕は必死に頼んだ。

 

「そ、そんなの無理だよっ」

「ですよね」

 

必死に反論してくるニコラの様子に、僕はそう頷かざるを得なかった。

僕だって、見られたときに恥ずかしさのあまりに失神してしまったのだから。

 

「ぷいっ」

 

だからこそ、布良さんが顔を赤くしながらそっぽ向くような態度をするのも当然なのかもしれない。

心配してわざわざ深夜休みを利用して様子を見に戻ってきたら、全力で僕とエリナがいちゃいちゃしていたのだから。

ただ布良さんの態度に一瞬、子供かと思ったがこれは永久封印をすることにしよう。

僕は自分でそう決めた。

 

「おはよう、変態」

「うぐっ!?」

 

美羽さんからの軽蔑のまなざしは、これまでで一番精神的なダメージが大きくのしかかってきた

それは思わず身を縮めてしまうほどに。

 

「浩介も、美羽にだけは言われたくないんじゃないか? 興味深そうに浩介達のキスシーンを見ていたし」

「なっ!? あ、あれはただの学者的興味であって………とにかくっ! こんなところでキスをしている浩介達の方に問題があるのよ!」

 

佑斗君の指摘に、美羽さんは顔を赤くしながら反論してきた。

 

「はい、まったくもってその通りです」

 

僕は、それに頷くしかなかった。

全ての原因は僕たちにあるのだから。

 

「それにしても、いきなり倒れた時はビックリしたぞ。まさか深夜休みから重労働をするはめになるとは」

「本当に、ご迷惑をおかけしました」

 

どうやら、僕を運んでくれたのは佑斗君だったようで、僕はさらに小さくなるような心境で謝り続けた。

そんな時、ドアが開く音が聞こえた。

どうやら、もう一人の渦中の人物(ある種の元凶とも言えなくもない)が来たようだ。

 

「おはよー」

「……」

 

正直に言うと、今僕は唖然としていた。

いつものように入ってくるエリナの姿にだ。

いや、いつも以上に元気かもしれないエリナは、まったく気にも留めていない様子だった。

 

「あり? みんなどうかしたの? 何だか空気が変だよ」

「いや、それ僕たちのせいだから。と言うより、よく平気だよね。僕だってものすごく恥ずかしいのに」

 

まったく気にも留めておらず、逆に僕たちがおかしいと言った様子で聞いてくるエリナに、僕は尋ねずにはいられなかった。

 

「そりゃ、エリナだって恥ずかしいよ。皆にあんな姿を見られちゃったんだもん」

 

そう答えるエリナの頬は恥ずかしさのあまりに赤くなっていた。

 

「でもね、おかげでエリナにとってコースケが特別だなっていうことがわかったの。あの時、コースケの優しさや愛情、温かい心をエリナは感じることができたんだもん」

「な、なんだかそう言われると照れるね」

 

エリナの言葉に、頬が熱くなるのを感じていたのでそれをごまかすように笑った。

 

「にっひっひ~、それは良かった」

 

そして、僕とエリナは笑いあった。

……周囲から向けられる冷たい視線にさらされながら。

 

「えー、コホンコホン。いい加減にしてくれないかな?」

「全然反省していないでしょ?」

「ごめんなさい」

 

一瞬本当に彼女たちの存在を忘れかけていた僕は、刺々しい目で非難の声を上げる布良さんたちに謝るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、昨日のあれはいったいどういうことなの?」

「だからね、ディープキスをね―――」

「だ、だからそういうことを聞いてるんじゃないんだってばっ! もうっ」

 

布良さんの問いかけに、エリナが好意の説明を始めようとするのを遮るようにして叫んだ。

 

「その……二人はディープキスをしていたことで、間違いはないんだよね」

「うん、間違いないよ」

 

もうここまで来て認めないのは往生際が悪すぎるので、僕は素直に認めた。

 

「ずいぶんとはっきりと言うのね」

「いや、だってもう見られているわけだし。それに、こういうことは隠したくないんだ」

 

ジト目で見ながら嫌味を言う美羽さんに、僕はきっぱりと言い切った。

ちなみに”こういうこと”というのは、付き合い始めたことである。

間違ってもキスをしたりするような行為ではない。

 

「にょわ!? 隠さないとダメだよ! 人に見られながら……とか、そういうのは隠すべきだよ!」

「どーどー、落ち着いて布良さん。考え方がエリナみたいになってるわよ」

「と言うより、そういう意味じゃないからね」

 

やはり、間違った解釈をしたようで、布良さんが大きな声でまくしたてるのを美羽さんが抑えてくれた。

 

(しかし、隠れてすればいいの?)

 

そういう問題ではないような気もしなくないが。

 

「それで、二人は付き合ってるということでいいのか?」

「うん。そう受け取ってもらえて十分だよ。僕とエリナは、恋人関係だから」

 

佑斗君からの問いかけに、僕は頷くことで答えた。

 

「やん♪ もぅコースケったら」

 

僕のはっきりとした宣言に、エリナは照れた様子で笑っていた。

 

「そうなんですか。おめでとうございます」

「ということはつまり、噂で流れているせ、セ○○は本当だということ?」

 

僕とエリナが恋人関係であることを、純粋に祝ってくれる稲叢さんをしり目に、美羽さんが追及してきた。

 

「いや。あれ自体は嘘だよ」

「そーだよ! コースケは○漏じゃないもん!」

「にょわー!? だから、そういうことまでは聞いていないんだってばっ!!」

 

僕の答えに続いて前と同じことを言うエリナに、布良さんが目を回しながら叫んだ。

その気持ち、ものすごくわかる。

 

「矢来先輩、顔が赤いですけど大丈夫ですか?」

「へ、平気よ。せ、セ○ス程度の単語、全く気にもしてないわ」

 

そんな中、顔が赤い美羽さんに、稲叢さんが心配そうに尋ねていた。

 

「ところで、○○クスって、なんですか?」

「え、えっと……学院内はもちろんだけど、ところ構わずしてはいけないようなことだって覚えてればいいと思う」

 

稲叢さんの疑問に、ニコラは頬を赤くしながら応えていたが、稲叢さんは良くわからないという表情を浮かべていた。

稲叢さんがどういう意味なのかを知る日は来るのかと、どうでもいいことを考えてしまっていた。

 

「とにかく、そういうことは配慮をしてほしいかな。共同の場所とかはとくに」

「本当にごめんなさい」

 

僕は本日何度目になるかわからない謝罪をする。

今回のことは、僕は非常に反省している。

キスをしたことは当然として、その前に繰り広げられた摩訶不思議な理屈に関して、僕はどう対処すればいいのかがあれだけど。

 

「とにかく、僕が皆に言いたいのは……僕とエリナが恋人関係になったっていうことなんだ。かなり遅いとは思うけど」

 

僕は話を変えるようにエリナとの恋人関係のことを告げた。

どのような反応が返ってくるのかが怖かったが、僕の予想に反して皆は普通の笑みを浮かべていた。

 

「そう。おめでとう」

 

口火を切った未海さんに続いて布良さんや稲叢さん、ニコラたちが次々に祝福の言葉をかけてくれた。

 

「あ、ありがとう。にひひ……何だか、照れちゃうね」

「僕も。てっきり反対されるかとばかり」

 

一斉にかけられた祝福の言葉に、頬を赤くしながら照れているエリナに頷きながら僕は口を開いた。

 

「反対する必要なんてあるわけないだろ?」

「それに、エリナちゃんと高月君が付き合うことはとてもいいことだと思ってるよ。ただ、節度はちゃんと守ってほしいんだけどね」

「……肝に銘じます」

 

佑斗君の言葉に続いて、釘をさすように苦笑しながら注意してきた布良さんに、僕はそう返すのであった。

そんなこんなで、いろいろとハプニングはあったものの、僕とエリナの恋人関係になったことをみんなに祝福されるのであった。

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