DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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第53話です。

最初のほうでいろいろと飛ばしています。
あの続きを書くと確実にアウトになりそうだったので、苦肉の策です。


第53話 疑念と話と

主任が回してくれた車に乗って訪れたのは扇先生が務める病院だった。

 

「それで、どんな印象を受けたかな?」

「優しそうな人に見えますけど……」

 

唐突に尋ねてくる扇先生に、僕は思った感想を口にした。

 

パッと見ではとても友好的な感じはしたが、エリナとの面会を遠慮してもらった時の雰囲気は、ただの研究者ではないことを思わせるのに十分であった。

 

「あれはきっと本性を隠してるよ! これだから女は!」

「それ、絶対に、個人的感情……私怨ですよね?」

 

前者はともかく後半の方に関しては、完全に個人的な私怨にも思えたぼくは、ジト目で扇先生追求する。

 

「そ、そんなことはないよ。別にこれを機に女性に対する疑念を植え付けようだなんて思惑は、全くないんだからねっ!」

「分かりました、もういいです」

 

これ以上ツッコんでもロクなことになりそうにない(と言うより話を進めたかった)ため、僕は追及するのをやめた。

 

「とにかく、エリナのこと、よろしくお願いします」

「それはもちろんだよ。アヴェーン君の治療に関してはしっかり行うことを約束するよ。それに、僕の方も気を抜けない状況になってきたしね」

 

扇先生にお願いをする僕に、扇先生も表情を引き締めながら答えた。

 

「それよりも問題なのはアヴェーン君の方だよ」

「問題、というのは?」

 

エリナの問題と言う言葉に、想像ができなかった僕は、扇先生に詳細を訊く。

 

「あのソフィーヤと言う女性とアヴェーン君を接触させることは現時点では考えていない。だが、必ずしも接触させられないと断言できるわけではない」

「………」

 

扇先生の説明に、ようやく問題と言う言葉の意味が理解できた。

確かに、いくら扇先生が監視をしていたとしても、必ず接触させ内容にすることは不可能。

だからと言って監禁するわけにはいかないため、強引に会おうとした際に止めることはほぼ不可能。

接触させてはいけないが、だからと言って過剰な拘束はできないという、一種のジレンマのような状態になっていた。

 

「分かりました。エリナの方には僕の方で話をしておきます」

「申し訳ないね。いやな役回りを押し付けて」

 

苦渋の決断だが、話しておいた方がいいと判断した僕は、扇先生に答えると、申し訳なさそうな表情で謝ってくる扇先生に、僕は首を横に振りながら口を開いた。

 

「大丈夫ですよ。これでもエリナの恋人ですから」

 

僕にとってエリナは大事な恋人、ならば僕が悩んでいても仕方がないのだ。

 

「ちぇ。ラブラブをアピールして……やはりねらい目は倦怠期か?」

「聞こえてますよ。それにもう付き合い始めているんですから、あきらめてくれればいいのに」

 

小さな声でつぶやいてはいるものの、恐ろしい野心を抱いている扇先生に僕は無駄だと思いつつもつぶやくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とは言ったもののねぇ」

 

病院から風紀班の支部に戻ってきた僕は、通常の事務仕事をしながら頭を抱えていた。

内容はもちろん、エリナのことだ。

ちなみに、事務作業の方は滞りなく進んでいる。

 

「エリナにこのことを話していいものか」

 

正直に話して彼女に変な不安を与えるのではないかと、僕は危惧していた。

何より、一番気になるのがあの時のヂェーヴァさん(何だか言いづらいからソフィーヤさんでいいか)の言葉だった。

 

『タカツキ君、前に私と会ったことはありませんか?』

 

当然だが、答えはNoだ。

僕の覚えている中では、そのような記憶は全くなかった。

 

「あら、可愛い恋人に隠し事?」

「前田さん」

 

終わりのない疑問に頭を抱えながら悩んでいるところに、声をかけてきたのは、前田さんだった。

 

「ダメよ、かわいい恋人を泣かせるようなことをしちゃ」

「やっぱりだめですよね」

 

微笑みながら諭すように注意してくる前田さんに、僕はそう返した。

 

「そうよ。しかも、まだ付き合って間もないんでしょ? 隠し事をしていると信用を失うわよ」

 

前田さんの忠告は、とても重かった。

 

「それは恋愛に関係がなくてもですか?」

「そうよ。男の人って、よくよくくだらないことで嘘をつきたがるのよね。見栄を張りたいとかじゃなくて。そういうくだらない嘘でもねどんどん積み重なっていくものなのよ」

 

僕の疑問に頷くように、話す前田さんの言葉には、とても説得力があり重みもあった。

 

「さすが、人生経験が豊富ですね」

「それって褒めてるの? 何だかババア扱いされているような気がするんだけど?」

 

僕の感想に前田さんは戸惑ったような表情を浮かべる。

 

(さ、さすがに今のはまずかったかな)

 

「いえ、そんなわけでは。とにかく、話してみようと思います」

「頑張ってね」

 

前田さんは、深く追求せずに応援の言葉を残して、去っていった。

これは僕の問題でもなければエリナの問題でもない。

二人で乗り越えなければいけない問題なのだ。

ならば、ちゃんと話しておくことに越したことはない。

それに、下手にかくして信用を失うよりはましだ。

前田さんと入れ替わるようにして、主任が僕の方に近づいてきた。

 

「おい高月。もう上がってもいいぞ」

「あれ? まだ前より速いですけど」

 

時間的にはまだ勤務中の時間帯だったため、僕は主任に疑問を投げかけた。

 

「今日は早かったからな。その分だ」

「それじゃ、これお願いします」

 

主任の答えに相槌を打った僕は書類一式を手に立ち上がると主任に手渡した。

 

「確かに受け取った。お疲れさん」

「お疲れ様でした」

 

主任のねぎらいの言葉に、一礼をして応じた僕はそのまま支部を後にした。

途中、前田さんからエールを送られた僕は、軽く頭を下げて応じるた。

そして、更衣室で私服に着替えた僕は、外に出るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、この時間だとエリナはまだ仕事か」

 

時計を確認すると、エリナが上がりの時間までかなりあるようだった。

このまま、エリナの仕事場に向かうのはかなりあれだ。

エリナの仕事はディーラーだ。

つまりカジノに行く必要がある。

ここに初めて来た際に、カジノをやってまさかの10連敗という不名誉な記録を上げてしまったため、あまり行きたくない場所となってしまった。

 

(まさか、あれがここまでトラウマになるなんて)

 

賭け事の才能がないことがわかっただけでもよしと思えればいいのだが、自分の軟弱さに呆れかえってしまいそうだった。

我ながら情けないが。

 

(出入り口の方で待っていればいいか)

 

カジノに入る場所ならばそれほど邪魔にはならないし、何より必ず誰もが通る道なためエリナを見つけることも容易だ。

 

「よし、それじゃ、行くか」

 

思い立ったら即実行とばかりに、僕はホテル『オーソクレース』へと向かった。

そしてカジノがある階まで移動した僕はカジノには入らずに、ロビーに置かれたベンチに腰掛ける。

 

(にしても、かなり賑わってるね)

 

カジノの方から聞こえてくる音に、僕は思わず感想を漏らした。

とはいえ、カジノ特区はこの都市の目玉の一つのため賑わっていない方が問題なのだが。

 

「ふぁ~」

 

座っているためか、あくびが漏れた。

それどころか、だんだん瞼が重くなっていくような感じがした。

それに抗おうとしたところで、僕の意識は闇に落ちた。

 

「―――スケ」

「ん?」

 

ふと、闇の中で声が聞こえてくる。

その声に呼応して、どんどん意識がはっきりしてくるのを感じた。

 

「コースケ」

「エリナ?」

 

目を開けると、そこには僕の顔を覗き込んでいるエリナの姿があった。

 

「やっと起きた。も~、寝坊助さんなんだから♪」

「ごめん、抗えなかったみたい」

 

笑みを浮かべながら口を開くエリナに、僕も苦笑しながら返した。

 

「エリナのことを待ってくれたの?」

「そんなところ。それよりもエリナの方はもう大丈夫なの?」

 

先ほどまでの笑みを消したエリナの問いかけに、肯定すると僕はそう聞きかえした。

 

「うん、ダイジョーブだよ。さっきシフトが終わったところだから」

「そう。それじゃ、帰ろっか」

 

僕の提案に、エリナは僕の手を取るとそのままその場を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寮までの帰路につく中、僕はエリナに話しかけた。

 

「そういえば、体調の方はどう? 主に血の方で」

「朝にコースケの血を吸ったからへーきだよ」

 

下ネタで返されるのが嫌だったため、一歩突っ込んで聞くとそんな答えが返ってきた。

 

「そう。それは何より」

 

そう答えたものの、僕は話の突破口をつかめずにいた。

早めに話した方がいいのは分かっているのだが、きっかけがつかめない。

 

(こうなったらやるしかないか)

 

「エリナ、ちょっと大事な話があるんdあ」

「なに?」

 

突破口がつかめない以上、僕は強引に笑いを変えることにした。

 

「エリナのデータをロシアの方に問い合わせるって話をしたのは覚えてる?」

「うん。あり? もう問合せとかはしたんだよね?」

 

僕の当然の問いかけに、首をかしげながらも応えてくれたエリナは僕にそう尋ねてきた。

 

「そうなんだけどね、実はちょっと動きがあったんだ」

「……それってどんな?」

 

一瞬エリナの表情に影が現れるが、言わなければいけないため僕はついにそれを口にした。

 

「ロシアから研究所のスタッフがここに来た」

「………そうなんだ。やっぱりね」

 

一瞬思いつめた表情を浮かべたエリナは気丈にも笑みを浮かべようとしながら口を開いた。

とはいえ、笑みを浮かべられていないのだが。

 

「やっぱりって……予想していたの? こうなることを」

 

それよりも気になった、エリナの言い方に、僕は疑問を投げかけた。

 

「なんとなくはね。研究所に連絡したらこうなることはなんとなく想像がついてたから」

「……ごめん」

 

そのエリナの言葉を聞いて、僕は説明のできない罪悪感に襲われ謝罪の言葉を口にしてしまった。

 

「あり? どうしてコースケが謝るの?」

「ロシアの方に連絡したらこうなることを全く想像してもいなかった。考えればそうなることは容易に考えられたのに」

 

僕の謝罪に、不思議そうな表情を浮かべるエリナに、僕は謝った理由を話した。

 

「そんなことはないよ。それを承知でエリナも頷いたんだもん。それにね」

 

僕のその言葉に、エリナは首を横に振りながら声をかけてくれた。

 

「そういう甘くて優しいところもコースケのいいところだと思うよ。だからエリナはコースケのことが大好きなの。だから、気にしない気にしなーい」

「……ありがと」

 

エリナの励ましの言葉に、僕は素直にお礼を言った。

なんとなくではあるが、気持ちが楽になったような感じがした。

 

(何だか、エリナを励ますはずが僕が励まされてるね)

 

それが無性に滑稽だった。

だが、それでもいいのではないかと思えてくる。

 

「ということは、研究所の人と再会してもなんとも思ったりしないの?」

 

僕はふと思い浮かんだ疑問をエリナに投げかけてみた。

 

「うーん。研究所で特に嫌な思い出とかもないし、それに検査ばっかりだったからとくに思い出もないんだよね。だからかな。研究所の人と会うことに何も感じないんだよ」

「そういうものなんだ」

 

いろいろ問題がありそうな気もするが、微妙な感じの返答だった。

 

「だから、心配しなくてもダイジョーブだよ。それに、お迎えに来てくれたのはとてもうれしかったし。にっひっひ~」

「……」

 

迎えに来た理由までばれていた。

別に隠す気はなかったが、もう少し悟られないようになりたいものだ。

と言うより、それをするにはまず以心伝心だと心の中で喜んでいる自分自身を変える必要があったりするが。

 

「それにね、エリナにはとても暖かーい、言葉があるからへーきだよ」

「へぇ、そんな言葉があるんだ。僕もぜひ聞きたいものだ」

 

エリナがここまで自信満々に言うのだから、きっとすごくいい言葉なのだろう。

そんな僕の返答に、何が不満なのかエリナは頬を膨らませてきた。

 

「その言葉を贈ってくれたのはコースケなんだけど」

「ぼ、僕が? 本当に?」

 

思い起こしてみても、該当する記憶が出てこない。

 

「む。その反応はなんだか腹が立つ」

 

そんな僕の反応に、さらにエリナは機嫌を悪くさせたようで、さらに頬を膨らませた。

 

「あのね、コースケはエリナにこう言ってくれたんだよ」

 

そして、エリナは僕に話してくれた。

それは初めてエリナと病院に言った『もちろんだよ。頼りないかもしれないけど、ちゃんと守る』と『だから言ったでしょ、謝るのは無しだって。それに、エリナを助けることができて、恋人にもなれたんだから、首の怪我なんて痛くもかゆくもないよ』の二つだった。

言われてみればそのようなことを言っていたかもしれない。

 

「それなのに、コースケにとっては忘れちゃうくらいのモノなんだ?」

 

エリナは不満げに唇をとがらせていた。

 

(これはまずい)

 

何だか知らないが、地雷を踏んでしまったようだ。

 

「ごめん。言い訳になるかもしれないけど、あの時とエリナがことが好きだという僕の言葉に、嘘はない。今だって同じことを言える」

 

忘れていたわけではない。

嘘をついているわけでもない。

そう、言うのであれば

 

「ただね、僕にとってはそれが当然すぎて思い当たらないというか……よく説明はできないけどそういう感じなんだ」

「本当に? 今考えた言い訳とかじゃない?」

 

自分でもよく説明できない言い訳に、エリナから疑いのまなざしが向けられる。

 

「本当だよ。それに、そんなことでごまかせるほど、僕は器用でもないし」

 

実際”ではこの話題に関しての誤魔化し方を考えてください”と言われて、すぐに誤魔化すセリフを口にできる自信はなかった。

 

「そ、そうなんだ。面と言われると照れちゃうね。にひひ」

 

僕の表情で嘘ではないと感じたのか、エリナは照れた様子で笑みを浮かべていた。

 

(そうだ。僕が守ればいい)

 

今までこんな簡単なことを思い浮かばなかった自分が恥ずかしい。

だが、そうと決まれば話は早い。

 

(何があっても守るんだ。エリナのことを)

 

僕は新たな決意を胸に、エリナと共に寮まで歩いて帰るのであった。

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