DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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第54話です。

今回は少々短めです。


第54話 再会

「ん……んん」

 

目を覚ますと、部屋が若干薄暗く感じた。

 

(もう夕方なんだ)

 

時間がたつのは早いというが、これは睡眠中にも当てはまるのだろうか?

 

(今日は学院がないんだし、このまま寝るというのも手か)

 

なんとなくではあるが、体が重い。

それはまるで体中に重りをつけているかのような感じだった。

 

「すぅ……すぅ」

「エリナの寝顔を見ているのもいいかな」

 

そんな感覚も、エリナの寝顔の前では無へと化してしまう。

健やかな寝息をためながら寝ているエリナに、僕は思わず本音を漏らしてしまった。

 

(いや、違うよ!? これは、起こすのがかわいそうだからなんだ!)

 

そして、誰も聞いているわけがないのに心の中で釈明する。

何とも滑稽だった。

 

「にゃもにゃも……おー、ハラショ」

「それにしても、いったいどんな夢を見ればここまで幸せそうな寝顔になるんだろう?」

 

エリナのかわいらしい寝顔を見ていた僕は、ふとそんな疑問を抱いた。

 

「むふふ……コースケ」

「ん? 僕の夢を見ているのかな」

 

寝言で僕の名前が出たことに、喜んでしまう自分がとても恨めしかった。

きっととてもロマンチックでいい夢を見ているのかもしれない。

 

「もー、エッチなんだからぁ~」

「……………」

 

前言撤回。

エリナの夢は、ロマンチックかは知らないがあまりろくでもなさそうな内容のようだ。

いや、ある意味エリナらしくはありそうだけど。

……たぶん

 

「こんなに○して~。これじゃ、本当の夕○だ~」

「何で、寝言までもオヤジくさいの?」

 

一体、エリナの夢の中で、僕はどんな変態じみた所業をしているのだろうか?

あまり知りたくはないが

興味はある。

聞かないけど。

 

(と言うより、そのダジャレをよく思いつくよね)

 

夢とは記憶の整理と聞いたことがあるが、何をどうすればこうなるのか僕にとって永遠に解き明かせない謎だった。

 

「んみゅ……おー、コースケおはよう」

「おはよう、エリナ。気分はどう?」

 

目が覚めたのか、うっすらと目を開けて僕を見つけるとほほえみを浮かべながら挨拶をしてきたエリナに、僕は尋ねた。

 

「コースケの笑顔があったから、とてもいいよ」

「それはなにより」

 

エリナの放った一言に、思わず顔が赤くなりそうになるが、気合でこらえた。

いまだに、照れている表情を見られるのが恥ずかしかったりするのだ。

 

「もう起きる時間?」

「当然。そろそろ起きないとまた誰かが起きないことを心配して訪ねてくるよ」

 

きょとんとした表情で訊いてくるエリナに、僕は頷きながら答えた。

このままだとこの前の布良さんの時の二の舞になりかねない。

 

「そうなんだ。残念だけど、起きようかな」

 

残念そうに言うとエリナは起き上がろうとするが、何かを思い出したのかその動作を止めた。

 

「でもね、その前に。ちょーーっと確認したいことがあるんだよね」

「エリナが期待するようなことは全く起こっていないから『これが本当の夕○だね♪』って言おうとしても無駄だからね」

 

エリナのいたずらっ子のような表情と言葉に、想像ができた僕は、エリナが言いそうなことを想定して答えた。

 

「エリナが何で言おうとしていることがわかったの? これが以心伝心ってやつだね。素敵」

「ほ……本当に言う気だったんだ」

 

普通、思いついても言いそうにないと思うが……まあ、エリナだしあり得るかもしれない。

 

(それに何気に僕が前に思っていたのと同じセリフを言ってるし)

 

以心伝心の件が特に。

 

「でも、どうしてコースケは見せてくれないの?」

「強いて言うならエリナの寝言じゃない?」

 

エリナの問いかけに、僕は即答で返した。

 

「寝言? 何を言ってるかわからないけど、コースケが夕○を見せてくれないから、こうやって確認しようとするんだよ」

「いや、そもそもなぜにそこまで生理現象にこだわるの?」

 

寝言のことを完全に覚えていないのか(当然だけど)不満げな表情で言ってくるエリナに、僕はそもそもの疑問をぶつけてみた。

 

「だって、寝ているのに○つっていうのに興味があるからだよ」

「なるほど」

 

ある意味至極もっともな答えが返ってきた。

いや、それ以外の理由だったほうが驚きだけど。

 

「さ、本当に名残惜しいけど起きて。でないとまずいから」

「うぅー、本当に残念」

 

渋々と言った様子で起き上がるエリナはそのままベッドからはい出た。

 

「別にいいじゃない。今日で最後なわけじゃないんだから」

「それもそうだね」

 

僕とエリナは笑いあうのであった。

これが朝の一幕でもあった。

 

「高月君は、今日はどうするの?」

「え?」

 

夕食を済ませ、共有スペースでのんびりとくつろいでいる中、布良さんが尋ねてきた。

 

「その、昨日で……ふ、不純異性交遊……の謹慎が解けて、しかも久しぶりにお仕事が休みでしょ?」

「あ、そういえば」

 

不純異性交遊の噂に伴う謹慎・ボランティア処分は先日で終了となった。

しかも、今日はもとから学院は休みと言うことも相まって、完全にフリーとなっていた。

 

(それにしても、不純異性交遊のどこに言いよどむ予想があるんだろう?)

 

そんなどうでもいい素朴な疑問を頭の片隅に追いやることにした。

 

「今日はエリナと一緒に出掛けようと思ってる」

「わぁ、デートですね!」

 

僕の答えを聞いた稲叢さんが、目を輝かせながら口を開いた。

 

「厳密には違うけどね。病院に行くだけだから」

「でも、二人で一緒に行くからデートでも間違いはないよね」

「いや、だから厳密にはっていったんだけど」

 

エリナの相槌に、僕は苦笑しながら返した。

今日病院に行くのは、ある人物に会うためである。

その人物はもちろん、ロシアの研究所から来たソフィーヤ・イヴァ―ノヴナ・ヂェーヴァさんに会うためだ。

というのも、エリナのデータを開示する条件に、エリナの様子を確認させてほしいと告げてきたかららしい。

向こうの言い分では”本当に開示が必要な状態なのかを確かめるため”というもので、事情を知らなければ、簡単に応じそうな理由だった。

エリナと一緒に病院を訪ねた際に、その話を受けたのだ。

 

「向こうは何が何でも治療に食い込んでくるだろう」

 

治療に食い込めば、遅かれ早かれエリナの現在の症状を知られることになるのは言われなくても想像ができた。

 

「一番安全なのは、データの開示をあきらめることなんだけど……」

「でも、それだと治療が遅くなるんだよね?」

 

扇先生が言わんとすることを悟ったエリナの言葉に、扇先生は景気の悪そうな表情を浮かべながら頷くことで答えた。

 

「だったら、こうしない? その人はエリナと面識があるんだよ?」

「だと思う。本人がそう言っていたから」

 

そんな扇先生の様子に、何かを思い立ったエリナは、提案してくると僕に聞いてきた。

 

「なら話は早いよ。その人に会って信頼できる人かどうかを見ればいいんだよ」

「確かにその方が簡単だけど……本当にいいのかい?」

 

エリナの提案に、扇先生は心配そうな表情を浮かべながら問いかける。

この方法はエリナにとってはかなりリスクのある作戦だ。

それを心配する扇先生は、ある意味正しい反応でもあり、僕が取らなければいけない物でもあった。

 

「ダイジョーブだよ。エリナに何かあってもコースケが守ってくれるから♪」

「ええ、エリナのことは僕が守ります」

 

だからこそ、エリナの笑みを浮かべた表情での言葉に、僕は頷きながら返したのだ。

 

「それならいいんだけど。くぅ……何だか前より仲が良くなっちゃって」

 

そんな扇先生の悔しげな表情を一緒に思い出してしまったが、今日がその面会日なのだ。

 

「というわけで、ちょっと留守にしなくちゃいけないんだ」

「何かあったら携帯によろしくね」

 

少し前のことを思い起こした僕は、そう話を締めくくった。

 

「それじゃ、エリナ。そろそろ」

「あり? もうそんな時間なんだ」

 

僕が促すと、エリナは驚きながら返事を返してきた。

 

「行ってらっしゃい、エリナちゃん。高月先輩」

「行ってくるね」

「行ってきます」

 

稲叢さんの見送りの言葉に、返事を返した僕たちは寮を後にするのであった。

戻った時に、とんでもないことになっているとも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい加減にしてください!」

 

(ん?)

 

病院についた僕たちは、扇先生の病室に向かっていたのだが、近づいた瞬間中から怒鳴り声が聞こえてきた。

その怒鳴り声はソフィーヤさんのものだった。

 

「エリナ・オレゴヴナ・アヴェーンのデータ開示を求めてきたのはそちらのはずです。それなのに、どういうことですか? しかも本人との面会もかなわない」

「それは、こちらにもいろいろとありまして……とにかく、こちらでは私の指示に従っていただきます」

 

中から聞こえる言い合い……と言うより扇先生が責め立てられる様子の声に、中に入っていいかどうかを躊躇ってしまう。

 

「あり? この声って……」

「エリナ?」

 

そんな中、隣でその様子を聞いていたエリナが、首をかしげた。

 

「とにかく、中に入ってみよう」

「うん、わかった」

 

エリナの言葉に応じるように、僕はドアをノックする。

 

「高月です」

『どうぞ』

 

中からやや困り気味の扇先生の声が返ってきた。

 

「あら、アナタは確か、出迎えてくれた時に――――――――――――」

 

こちらを見たソフィーヤさんの表情が突然固まった。

それはエリナの姿を見た時でもあった。

驚きのあまり、目を見開かせていたソフィーヤさんは口をパクパクとしていた。

 

「あ……あぁ。もしかして、エリナなの?」

「やっぱり、ソーニャだ!」

 

ソフィーヤさんの問いかけに、エリナは笑顔で声を上げると彼女のもとにかけていった。

 

「な、何? 何事?」

「さ、さあ? 知り合いとしか」

 

突然の状況に困惑する扇先生に、僕も同じように困惑していた。

知り合いであることは分かっていたが、それがどうしてここまで嬉しそうな表情を浮かべているのか。

 

「エリナ、アナタ拘束させられてるんじゃなかったの?」

「拘束? 何のこと、ソーニャ。あ、でもぉ~愛の鎖でなら拘束されてるかも」

「っ!?」

 

エリナの言葉に、思わず声をあげそうになるのを必死にこらえた。

 

(ど、どうしてきわどいことを言うの!)

 

心の中でそうツッコミを送るしかなかった。

 

「愛の鎖? いえ、そんなことよりも。いきなりエリナのデータの開示を要求してきたかと思えば本人と合わせてもらえないから、てっきり実験とかをされているのだとばかり」

 

ソフィーヤさんもエリナの言葉に首をかしげるが、すぐにそれを頭の片隅に追いやったようだ。

 

「さっきから何を言ってるの、ソーニャ? エリナは変な実験とか受けてないよ。あ、でも~拡張実験とかはされたかな」

「ちょっと、何を言ってるの?!」

 

頬を赤くしながら下ネタに近いことを口にするエリナを、僕は止めた。

 

「にしし、でも嘘は言ってないよね?」

「そうかもしれないけど、いろいろと誤解を招きそうだからやめて」

 

エリナの言う”拡張”が何を含んでいるのかは、考えない方がいいかもしれない。

 

「………ほぇ?」

「…………」

 

そんな僕たちのやり取りを見て、自分が考えていたのとは何かが違うと感じたのか、ソフィーヤさんは間の抜けたような声を上げた。

 

「あのー、これはいったい?」

「ええ、わかっています。我々はお互いを誤解しているようです」

 

困惑した様子のソフィーヤさんに、頷きながら扇先生は言葉を返した。

 

「ここはひとつ、冷静に話し合いましょう」

 

その扇先生の提案で、二人は話し合いを始めるのであった。

そして、その様子を僕たちはただただ静かに見守っていくのであった。

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