DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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第56話です。

遅くなりすみません。
ある方の『ただ人物を置き換えただけの駄作』というご指摘に、目を覚めたような感じがしました。
おそらく、このご指摘がなければ、此処まで書き直すことはなかったかなと思います。
今後は、少しでも楽しんでもらえるよう、さらに精進していきたいと思います。

とはいえ、後半のほうがものすごい惨状になっていますが。


第56話 ライカンスロープ

「こっ、これは本当にエリナのヴァンパイアウイルスなのですか!?」

 

ソフィーヤさんと扇先生による採血が行われ、扇先生が持ってきたエリナの資料と、ソフィーヤさんが開示したデータをの資料を照らし合わせた瞬間、ソフィーヤさんが驚きの声を上げる。

 

「体質の変化と聞いた時に、まさかとは思いましたが、まさかこんなことになっているだなんて」

「僕もいささか驚きました。これは、過去の資料を見なければ気付けなかったことでしょうね」

 

驚きに満ちたソフィーヤさんの言葉に頷いて、扇先生も口を開いた。

 

「え? どういうことなの、ソーニャ」

「エリナのヴァンパイアウイルスが変異しているのよ」

 

首を傾げるエリナに、ソフィーヤさんがエリナの現状の状態を口にした。

 

「元々エリナが人間ではなく吸血鬼にしか反応をしないのは、ヴァンパイアウイルスが特殊なものだからなのよ。吸血鬼全員はヴァンパイアウイルスを保有しているわ。能力などの差はウイルスの差とも言われているの」

「そうなんですか」

 

初めて知る吸血鬼のことに、僕は舌を巻きながら相槌を打った。

 

「そのアヴェーン君のヴァンパイアウイルスが高月君の血にしか反応を示さなくなった」

「もしかしなくても、原因は僕ですよね」

 

自分の体質についてはほぼ把握しているつもりだ。

ライカンスロープと言う体質を。

ならばそれが、エリナの身体に対して何らかの悪影響を与えたという可能性も否定はできないのだ。

 

「コースケ?」

 

僕の口にした言葉に、エリナが僕の方を見る。

 

「エリナとの恋心が原因……だったらロマンチックかもしれないけれど、私は科学的なアプローチをしなければいけないの」

 

それは、ソフィーヤさんが一研究者だからだ。

僕も同じ気持ちだった。

エリナとの恋心がきっかけでウイルスが変化したのなら、それはどれほどいいことか。

 

「エリナのヴァンパイアウイルスはいわば捕食型なのよ。相手のヴァンパイアウイルスを体内に吸収することでウイルスを取り込むの」

「ということは、エリナのヴァンパイアウイルスが取り込めないほどの何かが、僕のヴァンパイアウイルスにあった……ということですね」

 

ソフィーヤさんの説明で、ほとんど確定してしまったような気がした。

いや、もうすでに確定したも同然なのだが。

 

「現状、それしか考えられないね。ほかにも原因として思い当たることはあるんだよ。例えば、ウイルスの相性とか」

「ですが、これではまるでウイルスが侵食されているみたい……これは相性ではない別の要因があると考えたほうが」

 

扇先生の言葉に反論するソフィーヤさんだったが、扇先生の様子から何かがあると悟ったようだった。

 

「Dr.オウギ。まだ私に何か隠していることがありませんか?」

「………」

 

その問いかけに、扇先生は目を閉じて無言を貫いた。

 

「まだ私を信頼してくれないという気持ちは分かります。もし同じ立場でしたら、私もそうだったかもしれません。ですが、この状態を解決するためには今ある資料では難しい……ですが、アナタならその原因に心当たりがあるのでは?」

「え? どういうこと……コースケ?」

 

今の状況が把握できていないエリナは不安そうな表情を浮かべながら僕の方に視線を向ける。

 

「高月君、このことは僕の口から勝手に説明することはできない。だから、君が決めてくれないかな」

「私のエリナを救いたいというこの気持ちに、嘘はありません。だから、話してくれない?」

 

ものすごい選択を迫られている。

自分の体質を隠すか隠さないかと言う次元の話ではない。

僕が、ソフィーヤさんを信じることができるか否かの話だ。

ならば……

 

「約束してください。決して裏切らないと」

「分かっているわ。アナタの秘密は誰にも洩らさない」

 

僕の言葉不足によって、間違えた解釈をしたソフィーヤさんの答えに、僕は首を横に振る。

 

「そうじゃなくてですね、エリナをです」

 

そう言って僕は隣で困惑した様子のエリナの方に視線を向けるが、すぐにソフィーヤさんの方に戻した。

 

「……誓います」

 

ソフィーヤさんの即答に近い回答に、僕は彼女をまっすぐに見つめる。

それで視線をそらすようなことがあれば、それは信用してはいけないことを意味している。

だが、ソフィーヤさんは僕から視線をそらすことはなかった。

力強い目でまっすぐに僕を見つめ返していた。

 

「……分かりました。信じます。あなたのエリナを思う気持ちと、エリナのソフィーヤさんを信頼する気持ちを」

「ありがとう」

 

僕が頷くと、ソフィーヤさんは軽く頭を下げてお礼を言ってくれた。

僕はそれをしり目に、扇先生の方に視線を向ける。

 

「すみませんが、扇先生の方から説明していただけませんか? こういうことは僕よりも扇先生の方がよさそうなので」

 

ただでさえ自分のことがよくわかっていない状態なのだ。

そんな僕がうまく説明をする自信があまりなかったため、扇先生に説明をお願いすることにした。

 

「……高月君がそう言うのであれば、分かったよ。ミズ・ソフィーヤ、こちらを」

「こちらは?」

 

あらかじめ用意していたのか、やや厚めの資料のようなものを扇先生はソフィーヤさんに手渡した。

 

「高月君の血に関するこれまでの調査結果です」

 

扇先生の答えを聞いたソフィーヤさんはその資料に目を通し始める。

資料を読み進めていくたびに、その顔がみるみる驚きの表情に染まっていった。

 

「そんな………これは本当にタカツキ君の血なんですか? この特徴はまるで」

「まるで、なんなの? ソーニャ」

 

僕は状況についてこれずに疑問の声を上げているエリナの前に立ちふさがるように移動した。

 

「その疑問には、僕が答えるよ。これが、僕の最後の隠し事……言うことができなかったこと」

 

僕はエリナにそう告げて、言葉を止めた。

 

(この期に及んで何を恐れてるんだ?)

 

自分のことを話そうとしたするのを拒むように、声が出ない自分に叱咤する。

だが、確かにこの緊張感は凄まじい者だろう。

数秒後には自分を見る目が変わるかもしれないという恐怖。

これは、当事者にしかわからないことなのかもしれない。

 

(そういう面で見れば、本当に僕の恋人は強いよ)

 

あの時、僕に自分の体質を告げてくれた時も、エリナはこんな感じだったのだろうか?

それはエリナのみしか知る由がないことだが、今僕にはっきりわかっているのはたった一つ。

エリナの恋人として、この恐怖に打ち勝つことだろう。

 

「僕は……複数の能力を使うことができるんだ」

「え………それって、ライカン……スロープの特徴、だよね?」

 

実際に”ライカンスロープ”の名を口にすることができなかったが、それでも僕の告げた特徴からその名前を知ることができたのか混乱した状態で僕に尋ねてきた。

 

「嘘だよね?」

 

僕の告白が冗談だと思われたのかエリナが言葉を口にするが、僕は首を横に振って冗談ではないことを告げた。

 

「で、でもおかしいよ。だって、少し前までは人間だったのに」

「ヴァンパイアウイルスに感染して、ワクチンの効果もない……確かに、これはおいそれと話せるような内容ではありませんね」

 

エリナの疑問に同調するように、ソフィーヤさんも頷いていた。

 

「確かに、人間だったのなら(・・・・・・)不思議かもしれないね」

「え? モトキ、それってどういうこと?」

「その口ぶりですと、タカツキ君はもともと人間ではなかった風に聞こえますが?」

 

扇先生の言葉に、エリナとソフィーヤさんが不思議そうな表情を浮かべて訊いた。

それは僕も同じ心境だった。

 

「その通りですよ、ミズ・ソフィーヤ。高月君は、人間ではありません。最初から吸血鬼だったんです」

「…………え?」

 

扇先生が真剣な面持ちで告げたその言葉に、嘘はないのは分かる。

だが、信じられなかった。

 

「何を言ってるんですか。僕はここに来た当初から人間でした。それは扇先生が説明してくれたことじゃないですか」

 

『ちなみに言っておくと、この島に入るまでは君は人間だった。それは血液検査の結果が証明している』

 

それが、僕が扇先生と会った際に説明された言葉だった。

 

「それに関しては謝らしてもらいたい。君の血液検査の結果をそういう風に説明するように指示されていたんだ」

「………」

 

申し訳なさそうに謝罪の言葉をかける扇先生に、僕はふと小夜様の姿を思い浮かべた。

確証はないが、おそらく小夜様ぐらいしか、そのようなことができる人が思い当らなかった。

何せ、本土にいたころから色々と援助をしてくれていたのだから。

 

「それじゃ、コースケが嘘をついていたってこと?」

「いいや、本人は嘘はついていない。何せ彼にはここに来る三日ほど前(・・・・・)までの記憶がすべてなくしている状態なんだからね」

「三日前!?」

 

扇先生の言葉に、僕は何度目かも分からない衝撃を感じた。

 

「そんな馬鹿な………僕が覚えているのは約一年くらいの記憶ですよ。三日ほど前だなんて、そんなこと……」

「それがあるんだよ。高月君、君はとある事情で記憶や人格すべてを破壊されたんだ。それが誰であるかは……もう分かっているはずだよね?」

 

衝撃の事実だった。

ただの記憶喪失ではないとは思っていたが、まさか記憶と人格を破壊されていたとは。

 

「だとすると、本能というのは、まさかっ」

「そうだよ。破壊される前の、君の人格だ。それが覚醒しているために、高月君の記憶には本能が前に出ているときのことが残らない」

 

つまり、本能からすれば、僕が偽物にあたるのかもしれない。

 

「高月君。君だって思い当たる節があるはずだよ。普通の吸血鬼(・・・・・・)になりたての人では、ありえない感覚を感じたことをね」

「………」

 

扇先生の言葉に、僕は押し黙るしかなかった。

確かに、思い当たる節はいくつもあった。

例えば布良さんから初めて吸血した時。

そしてなぜか天井に逃げる変な癖。

それがもともと吸血鬼で、消された人格が行っていたからと言われれば納得ができた。

 

「ねえ、コースケ。どういうことなの? コースケはもともと吸血鬼でライカンスロープっていうことなの?」

 

僕以上に混乱していたのは、もしかしたらエリナかもしれない。

今まで聞いていた情報がすべて否定されて、後は信じられない話のオンパレード。

これで混乱するなと言うのが無理かもしれない。

 

「アヴェーン君、それにミズ・ソフィーヤ。その件については僕が説明しよう。その責任が僕にはあるからね」

「分かりました」

「分かったよ」

 

扇先生の宣言に、二人は頷いて答えた。

 

「高月君も、いいかな?」

「はい。僕も本当のことが知りたいです。それに、隠し事はしたくないですから」

「コースケ」

 

僕の受け答えに、エリナがポツリと声を漏らした。

 

「それじゃ、説明させてもらおう。高月君の正体を」

 

そして、いよいよ扇先生から真実が告げられる。

 

「その前にアヴェーン君の携帯に、いたずら電話をした人が、なんて名乗っていたのか教えてもらえるかな?」

「え? 別にいいけど」

 

扇先生の予想外の言葉に、僕は思わずこけそうになってしまった

 

(何故にこのタイミングなのだろうか?)

 

「えっと『世界を統べし王』だったような」

「なんですって!?」

 

エリナの口にしたいたずら電話の犯人の名前に反応を示したのは、意外にもソフィーヤさんだった。

 

「どうしたの? ソーニャ」

「恐ろしいわ………エリナ、アナタその人物にケンカを売ったの?」

 

ソフィーヤさんはエリナの疑問に若干震えた声色で、逆にエリナを問いただし始めた。

 

「え? 知らないよ」

「あの、その『世界を統べる王』っていうのは、いったいどんな人物なんですか?」

 

当然だが心当たりがなく、エリナが首をかしげながら答えるのをしり目に、僕はソフィーヤさんに尋ねた。

今まで知りたかったことだったため、自然と口調も厳しくなってしまうが、それよりも今はその人物のことを知りたいという考えの方が勝っていたのだ。

 

「”世界を統べし王”。読んで字のごとく、世界を統べることができるまさに王様的存在の吸血鬼のことよ。ライカンスロープ同様恐れられている存在だけど、そのレベルは全く異なるの。その理由が人間でも吸血鬼の味方でもなく、ただ自分の敵には容赦をせずに殲滅することからきているわ。その王の前には、どのような吸血鬼も歯が立たないと言われているほど、恐ろしい存在なのよ」

「ちなみに、補足するとその王はね、色々呼び方があるんだ。たとえば、”最強にして最凶の吸血鬼”とかが有名かな」

 

扇先生の補足説明に、まるで言葉遊びのような呼び名だと感じてしまう僕は、ある意味すごいと思う。

とはいえ、恐ろしいことは分かっていたが、その予想をさらに大きく上回る恐ろしさに声も出なかった。

 

「そして、そのいたずら電話をした人物が………君だよ、高月君っ」

 

扇先生の言葉に、病室の空気が凍りついた。

 

「…………え?」

 

誰かが驚きに満ちた声を上げる。

僕は驚きのあまり、言葉も出ない状態だった。

 

「それは……つまり」

 

ようやく口に出た言葉は、全く要領の得ない物であった。

 

「そう、つまり高月君。君が”最強にして最凶の吸血鬼”そして、世界を統べし王の異名を持つ吸血鬼だよ」

「………」

 

いきなりすぎてまったく理解ができなかった。

だが、なんとなくわかったような気がする。

おそらく、僕の人格と記憶を破壊したのは、危険な存在である僕を無力化するためだったのかもしれない。

しかし、そこには数えきれないほどの疑問点がある。

その一つに”どうして危険なはずの僕をこの都市に迎え入れたのか?”というものがある。

 

「エ、エリナ?」

 

僕が一番気になったのは、エリナの反応。

もはやこれまでかという底知れぬ絶望しか感じられなかったが、僕は覚悟を決めてエリナに声をかけた。

もしこの後に拒絶されたらどうしようなどと考える余裕はなかった。

 

「ごめん、ちょっと待ってくれる? 整理したいから」

「分かったよ。僕も覚悟を決める」

 

エリナのお願いに、僕はこの後来るであろう拒絶の言葉を予想してショックを和らげるように準備をした。

とはいっても、実際に言われたらまったく意味をなさないとは思うけど。

それからどれほどの時間が過ぎたのだろうか?

 

「うん、決めた」

 

エリナのその言葉によってついに、審判の時が訪れた。

 

「あのね、コースケがその王様っていうことにはとても驚いたよ。でもね」

「うわっ!?」

 

エリナが言葉を区切った瞬間、僕は凄まじい衝撃を感じた。

それはエリナが僕にいきなり抱きついてきたからだった。

 

「そういうことをすべて受け入れられるくらいに、エリナはコースケのことが好きなんだよ♪ だから、ダイジョーブ」

「あ………」

 

エリナの告白とも取れる温かい言葉は、僕の胸を貫いた。

それはまるで、暗闇にを照らし出す一筋の光のようにも感じた。

 

「ありがとう、エリナ」

「それに、コースケが王子様だったらエリナは王女様だね♪」

「そういえば、エリナはそういう童話が好きだったわね」

 

嬉しそうに付け加えるエリナに、ソフィーヤさんは優しい声色で相槌を打った。

 

「もー、ソーニャ。それは内緒だって」

「うふふ、ごめんなさい」

 

頬を膨らませながらエリナがあげた声に、ソフィーヤさんはおしとやかに笑いながら謝っていた。

 

「でも、こんなにすんなりと受け入れていいの? 僕が言うのもあれだけど」

 

いくら何でも、二つ返事で受け入れられるような内容ではないため、僕はエリナに尋ねた。

 

「コースケだって、エリナが体質のことを打ち明けた時、こんな感じだったよ」

「あ……」

 

エリナに言われて、自分も同じ感じだったことを思い出すのであった。

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