DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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第58話です。

先日は、大変失礼しました。
実は、半分は完成していたんです。
妊娠と誤解される話を書こうとしたのですが、気づくと置き換えただけの話になっており、どう考えてもそうとしかとられない感じになってしまったため、一から書き直すことにしました。
なので、かなり話が飛んでいますので、ご了承のほうをお願いします。

そんなこんなで、ここから話は大きく動き出します。


第58話 暗号と暗躍と

数日ほど経過し、ボランティアの処分と謹慎が解けた僕たちは、晴れて学院に通いだした。

これでいつもの日常が訪れることとなった。

 

「浩介」

「ん?」

 

この日僕たちは、風紀班での仕事が思いのほか早く終わったため、一足先に戻っていた。

そして共有スペースでくつろぎながらあることをしている僕に、佑斗君が声をかけてきた。

 

「何をやっているんだ?」

「暗号を作ってるんだ」

 

僕の手元にある、書きかけの用紙を覗き込みながら聞いてくる佑斗君に、僕は筆を進めながら答えた。

 

「暗号? この数字と”/”だけのやつがか?」

「うん、そうだよ。ある法則に基づいて構成された暗号文。さあ、佑斗君。これを解読してみて」

 

理解できないとばかりに首をかしげている佑斗君に、僕は完成した暗号文が書かれた用紙を佑斗君に手渡した。

そこには『1//22/3』と書いてある。

 

「してみてって……出来るわけないだろ」

「だよね。それじゃ、種明かしするね」

 

分からなくても当然の無茶ぶりだったため、僕は佑斗君から暗号の書かれた紙を苦笑しながら受け取ると、そう告げた。

 

「この数字は携帯電話とかにあるテンキーを基に作っているんだ。例えば”う”と打たければ、1を三つ、他の文字も同様に書いていく。一文字ごとに”/”で区切るようにしていく」

「なるほど、ということは……」

 

僕の説明に感心した様子で頷くと、佑斗君は再び暗号の書かれた紙を覗き込む。

 

「最初は1が一つだから……”あ”で、次が2が二つだから”き”ということか」

「違うよ」

 

佑斗君の解読の間違いを、僕は首を横に振りながら指摘した。

 

「何?」

「区切りの”/”が二つ書かれているときはその後ろの数字はダミー文字。その数字を無視して次の数字の方を読み解いていけばいいんだ」

 

”//”はダミー文字。

万が一にも、数字の法則がばれた時にも大丈夫なようにするための措置である。

 

「なるほど、暗号が解読されそうになってもこれがあれば正確には読み取れないだろうしな。ということは3が一つで”さ”だから、『あさ』ということか」

「正解♪」

 

正解にたどり着いた佑斗君にサムズアップしながら応えた。

 

「あ、ちなみにその暗号は僕の自作だから、探しても無駄だと思うよ」

「まあ、そうだろうとは思ったけどな」

 

このテンキー暗号は、暇な時間をつぶすための僕のちょっとした遊びの産物だった。

 

「浩介、そんなことをする暇があるんなら、エリナと一緒にいたりしなくていいのか?」

「…………迎えに行ってくるっ」

 

呆れた表情で諭す佑斗君の言葉に、僕は慌てて寮を飛び出す形でエリナを迎えに職場の方に向かう。

 

「やれやれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな佑斗君の声を聴きながら、僕はただただかけていくのであった。

 

「それで、迎えに来てくれたんだ」

「うん。ごめんね、本当ならもっと早くに気が付くべきだった」

 

僕が職場であるホテル『オーソクレース』に着いたとき、既にエリナはホテルから出てくるところであった。

あと少し遅ければ、大変なことになっていたことだろう。

 

「いいよ別に。こうして一緒に帰れるだけでも幸せだから」

「それならよかった」

 

エリナと手をつないで歩くのもなんのその。

ひと月ほど前の僕ではできないような行動を平気で行えるようになっていた。

 

「あ、そういえばデートとかしていなかったような」

「……おー! 本当だっ」

 

一緒に帰るというフレーズに、ふと浮かんできた”デート”という単語で、僕たちはまだそれらしいことをしていないことを思い出した。

 

「コースケって、今週の日曜仕事ってあるの?」

「いや。今週の日曜は運よく非番だよ」

「だったらコースケ。今週の日曜にデートしよ♪」

 

僕の答えを聞いたエリナが、笑顔で提案してくれた。

 

「そうだね。でも、プランはどうしようか?」

 

エリナの提案は非常にうれしいものであったが、今からデートをするとなると準備の方が間に合わなくなってしまう。

何せ、日曜は明日なのだから。

 

「それならダイジョーブ。エリナに任せてよっ」

「そ、それじゃあプランについてはエリナ、お願いしてもいい?」

 

エリナの自信満々な返事に、僕はいったいどんなプランができるか、楽しみなのと不安な気持ちが複雑に絡み合う心境だった。

 

「でも、それまで抱き合ったり手をつないだりするのは禁止ね」

「へ?」

 

エリナから出された条件に、僕は間の抜けた声を上げてしまった。

 

「我慢した分、当日が楽しくなれるしちょっとでもそれっぽいことをしたいからね」

「分かった。ちょっと難しいと思うけど、頑張る」

 

エリナの口にした理由も一理あるため、僕は素直に受け入れた。

 

「あ、もちろんオ○○ニーもダメだからね」

「しませんっ!」

 

自然な形で挟んできた下ネタに、僕はびしっと返事を返していた。

 

(それにしてもデートか……楽しみだな)

 

何せ初めてのデートなのだから、楽しみに思うなと言う方が無理があるというものだ。

そんな浮き足立つ足取りのまま、僕とエリナは寮へと向かうのであった。

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

同日、明け方。

佑斗たちが生活をしている”月長学院寮第二”前付近。

そこには怪しげな人物の姿があった。

黒髪に長身の背丈、さらに黒いスーツを着込んで顔にはサングラスをかけるという、確実にその筋の人だと思われる風貌の男性であった。

その男性は、ふと携帯電話を取り出すとそれを耳に当てる。

 

『私だ』

「隊長。例の二人の定時連絡です」

 

電話に出た隊長と呼ばれた男に、男性は用件を告げる。

 

『話せ』

「はっ。対象に目立った動きはありません。こちらの動向には気づいていない物と」

 

隊長格の男の促す言葉に、男性は隊長でもある男の求めている情報を告げた。

 

『ご苦労。彼は”世界を統べし王”だ。何が何でも手に入れなければならない。そうだろう?』

「はい。現在有効な計画を立てている最中です。そちらも近日中に整うかと」

 

男性たちの狙いは世界を統べし王、浩介を手に入れることであった。

 

『よし。では――――――』

「隊長、すみませんノイズがひどいようです。もう一度お願いします」

 

隊長の男の言葉を妨げるようにとぎれとぎれに漏れ出したノイズの音は、やがてスノーノイズのようにノイズの音が鳴り響き始めた。

 

「電話の調子がおかしいのか? いったいどうなってる」

 

突然の通信以上に、男性は舌打ちをしながらぼやいていた。

 

「教えてやろうか?」

「っ?!」

 

対応を考えているとき、返ってくるはずのない場所から聞こえてはいけない声が、男性にかけられた。

その声に、思わず身をこわばらせるのは当然の反応でもあった。

 

「どうした? 王が許すと言っているのだ。ありがたく聞く準備をしろ」

「き、貴様は、タカツ――――ぶぎゃ!?」

 

男性は、背後に立っていた人物が先ほどまで話の議題に上がっていた人物の、浩介であることに気づくと目を見開かせ、驚きに満ちた表情を彼に向けた。

 

「思い上がるな、下等動物」

「ッ!?」

 

たった一言。

そう、たった一言口にしたはずが、それは男性から様々な気力を奪った。

逃げる気力、立ち向かう気力。

その男性にできたのは、ただ浩介の問いに答える程度のことだった。

 

「おい下等動物。貴様ら、最近私の後をつけたりして監視しているようだが、私に何ようだ?」

「………………………」

 

監視に気づいていたことが明かされてもなお、男性は口を固く閉ざし続けていた。

 

「なるほど、王である私の問いを無視するか………ならばよい。実際に貴様の体に訊くまでだ」

「な、何をする気だ!」

 

ゆっくりと男性のもとに歩み寄る浩介に、男性は後ずさりしながら問いただす。

 

「何をするかは下等動物、お前が一番詳しいだろう」

「わ、私の口をふさいだりしても無駄だ。既にお前が”世界を統べし王”でライカンスロープであることは本国に報告されている」

 

浩介の返答に、男性は後ろに下がりながら抵抗を見せる。

だが、その声は震えていた。

 

「やはり、ロシアの手のものか」

「なっ! なぜそれを!?」

 

男性の驚きに満ちた声に、浩介は口をの端を歪めた。

 

「愚か者め、ブラフに決まってるだろ」

「っ!?」

 

浩介の馬鹿にしたような笑みに、男性は自分の失態に気づき慌てて自分の口をふさぐ。

 

「さて、それでは洗いざらい話してもらうことにしようか」

 

浩介はそう口にすると徐に一本のサバイバルナイフを取り出した。

 

「っぐ!」

 

それを自身の右腕に突き立てると、一気に切り裂いた。

右腕からは赤い鮮血が吹き出す。

 

「馬鹿め! 自分で自分を斬るとは、気でも狂ったかっ!」

「黙れ下等動物よ」

 

突然の浩介の行動に、狂乱したように叫ぶ男性に、浩介は目を細めて黙らせた。

 

「なっ!?」

 

目の前の光景を目にした瞬間、男性は驚きのあまりに口をパクパクさせた。

 

「何なのだっ、それはっ!!」

「何なのだとはおかしなことを言うな。これは万能の武器だ。見てわからぬか?」

 

震える声で浩介を指差しながら叫ぶ男性に、浩介はあきれた様子で応えた。

その浩介の右腕は、もはや原形をとどめてはおらず、まるで煙のような赤いそれは風に揺らいでいた。

 

「さあ、終わりの時だ下等動物」

 

そう告げるや否や、浩介は右腕を振り上げるようなしぐさで赤い煙状の物を動かす。

 

「王の力。その一端を見せてやる」

 

そう宣言した浩介の意思をくみ取ったのか、赤い煙のような物はまるで爆発するように上空に向かって吹き上がると、それは男性のそばの地面に降り注いで、次々に無数の赤い模様が円形状に浮かび上がらせる。

 

「なんだっ!? これはいったい………」

「さあ、括目せよ下等動物! これが世界を統べし王の力だっ!」

 

さらに後ろに後ずさりを始める男性に、浩介は声高らかに宣言した。

その次の瞬間、それは起こった。

 

「ヒィッ!?」

 

それを見た瞬間、男は恐怖に染まる。

突如として、地面に浮かび上がった円形状の赤い模様から人が現れたのだ。

次々に現れた人の姿は非常に醜いもので、言うなればゾンビのような存在であった。

 

「さあ者ども、審判の時だ」

「な、何をする気だ………この化け物(サッカー)がっ!」

 

後ろに下がろうとしたが、見えない壁のようなものに阻まれた男性は後ろに下がることができなくなった。

さらに進路をふさぐように全方向からゾンビと化した者たちが押し寄せる。

 

「案ずるな、貴様のような下等動物を私の栄養にするだけだ。なに、死ぬわけではないただ無限の地獄を味わうだけよ。終わりも死もない地獄を、な」

「やめろっ! 来るな、クルナァァァァ!!!」

 

浩介の宣告に、真っ青になった顔で自分に歩み寄るゾンビ達に喚き散らすが、そのようなものが聞くはずもなく一瞬にして男性はゾンビたちにの姿で見えなくなった。

 

「―――――――――――――ッ!!!」

 

上がったのは声にならない断末魔。

それを確認した浩介は、歪んでいた口を動かす。

 

「もう良いぞ。ご苦労であった。我が内で休むとよい」

 

まるでそれが合図だったかのようにゾンビたちは、その姿を赤い煙のような物に変えると浩介の方に向かって戻っていった。

それは浩介の体に取り込まれていった。

 

「ゴミ掃除は終わりか」

 

それを見届けた浩介は、静かに口を開く。

 

「どうやら、動き出したようだな」

 

浩介は、先ほどまで男性が立っていたところを眺めるが、男性の姿はどこにもなかった。

まるで”最初からそこにいなかったかのように”消えていた。

 

「下等動物よ、貴様の無価値な命を、私が有効利用してやるのだ。ありがたく思え」

 

この場にいない男性に、浩介は言葉をかけると右腕があったところから存在する赤い煙のような物を来ていたマントで覆うことで隠すと、パチンと指を鳴らした。

その瞬間、浩介の周辺の空気は一変する。

先ほどまでの殺伐とした雰囲気は鳴りを潜め、いつもの和やかな雰囲気へと変わっていた。

 

「ふっ!」

 

それを確認することもなく浩介は一気に跳躍すると、寮の屋根に着地した。

 

「まさか、小夜に頼んでおいた予めラベルを張り替えておいた血液パックで、このようなものを吊り上げるとはな」

 

”世の中ままならない”と苦笑しながらつぶやいていた。

浩介は、寝る前に飲んでいた合成血液パックによって世界を統べし王の人格が前に出てしまったのだ。

その際に、浩介を見張る不審な気配に気づき、誰にも気づかれないように男性の背後に忍び寄ると、自身の力で結界を構築したのだ。

それが、突如として電話にノイズが走った理由だった。

そして、空間を隔離する結界の能力もまた、他の吸血鬼の能力だったものを喰って手に入れた物であった。

そして、血液パックにも仕掛けがあり、浩介が前もってラベルと中身を入れ替えるように言っていたのだ。

だからこそ、浩介によるいたずら電話の時も王としての人格が出てしまうことになったのだ。

だが、それも最後の一個。

残った血液パックはすべてラベル通りの効能となっている。

 

「もう猶予はない。これは試練か、それとも罰か」

 

風に棚引く赤い物体をしり目に、浩介はそう言葉を漏らした。

その言葉の真意を知るのは浩介のみであろう。

 

「まあ、それもまた一興か」

 

その言葉を最後に、浩介の姿はうっすらと周囲を照らし始めた朝日に溶け込むように掻き消えた。。

 

 

 

 

 

それはいわゆる予兆のようなものであった。

”それ”が起こったのは日曜日の夕方であった。

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