DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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ちょっとばかり強引だったかなと思いつつも投稿します。
とはいえ、まあいいんじゃないかなと思っていたり。


第5話 入寮

”この島で過ごす。”

そう扇先生に告げたのはつい先日のこと。

病院に入院をしてはや三日ほどたった。

 

「うん。もう安定してきているようだし、明日あたりには退院できそうだね」

「そうですか。それは良かった」

 

扇先生の検診の結果を聞いた僕は、安どの声を漏らす。

本当に良かった。

なぜなら……

 

「僕としては残念だ。この姿を高月君に見てもらえないのかと思うと」

「気持ち悪いことを言わないでください」

 

扇先生の服装が裸白衣だからだ。

他にも定期検診の時には必要でもない場所の診察をしようとしてくる等々、精神的に限界が近づきつつあった。

 

「気持ち悪いだなんて。高月君はツンデレなんだね」

「…………」

 

扇先生から視線を外した僕は考え事をしていた。

 

(あれから布良さんは来ていないな)

 

彼女にフォローをするという重要な課題があるだけに、かなり困っていた。

どこにいるのかもわからずに、頼りになるのは名前だけと言う絶望的な状況だ。

待ち行く人に聞いて回るというローラー作戦をかけるのも手だが、ちょっとだけ恥ずかしいと思ってしまう僕は、もう救いようがないほどのヘタレなのだろう。

 

「……放置プレイはお手の物と言ったけど、できれば反応してほしいと思うんだけどね」

 

扇先生が何か言うがぼくはスルーすることにした。

付き合うとロクなことにならない。

最近貞操の危機を感じる場面が多々あるのだ。

 

「さて、ここからはまじめな話をしよう」

 

ようやくまともな状態になったため、僕は扇先生の方に視線を戻す。

 

「前も言ったとは思うけど―――」

「僕が吸血鬼になったのは特異な例なので隠しておくこと………ですよね?」

 

扇先生の言葉を遮って、僕は前から何度か言われている注意の言葉を口にした。

扇先生も頷いている。

 

「分かっているようなら大丈夫だね。後、これを渡しておこう」

 

そう言って手渡されたのはカードのようなものだった。

 

「これはなんですか?」

「身分証だよ。君がこの年に登録されている吸血鬼であることを証明するID。何かあった時に必要になるから常に持ち歩くように」

「分かりました」

 

扇先生の言葉に頷きながら、とりあえずベッドわきの台に置いておくことにした。

 

「僕の愛情もたっぷりと詰め込んでいるから……って、言ったそばから落としちゃダメだよ」

「すみません。体が条件反射的に動いてしまったので」

 

放り投げた身分証を拾うと、僕に手渡した。

今度はそれを受け取ると、放り投げるように台に置いた。

 

「やれやれ、モテるのも罪だね」

「別に僕はあなたに気なんて全くありませんので、ご安心を」

 

僕はびしっと扇先生に告げるが、先生はさらに笑みを強くすると

 

「その素直じゃないところ、ますます好きになりそうだ」

 

などと言い放った。

これも明日までの我慢だ。

僕は心の中でそう自分に励ましの言葉をかけるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間とは経つのが早いものだ。

もう、退院の時間なのだから。

 

(やっと解放された)

 

変態医師の烙印を押された扇先生は、『君とはずっと一緒だ』などと捨て台詞を吐いていた。

できれば当分会いたくない。

 

(で、僕はどうすればいいんだ?)

 

退院できたものの、僕には住む場所がない。

当然だが、家賃を払う余裕もない。

 

「高月くーん!」

「あ」

 

僕を呼ぶ声がすると思って声がした方を見ると、そこには手を振って自分の位置を知らせる布良さんの姿があった。

僕は少し早足で彼女のもとに向かう。

 

「三日ぶりだね」

「ああ。一体どうして布良さんがここに?」

「今高月君、住む場所がなくて困ってるよね?」

 

エスパーなのかと思いたくなるほど先ほどまで悩んでいたことを指摘され、僕は驚きながら頷く。

 

「そんな高月君に朗報。実はね高月君は月長学院の寮に入ることになったんだよ」

「り、寮?」

 

布良さんの口から出た単語に、僕は思わず聞き返してしまった。

 

「そうだよ。寮にいるのは女子なんだから性別の方でちょっと問題があるけど、プライバシーはちゃんと守れてるし、特殊な事情を考えるとその方がいいっていう結論になったの」

 

誰が結論を出したかは聞かない方がよさそうだ。

勘がそう告げている。

 

「変な人はNGで大丈夫そうならOKと言うことに寮の皆とは話がついたんだけど、高月君ならたぶん大丈夫そうかなって」

「何だか、評価されてるような気がするんだけど」

 

自分でもいうのはあれだが、僕は普通の評価だと思っていたのだ。

 

人より性格がいいとは言えないし、逆に悪すぎるとも言えないからだ。

 

「高月君は自分に自信を持った方がいいよ。だって……」

 

そこまで言うと、布良さんの明るい表情が曇る。

 

「移動しながら話さない?」

 

このままここに立ち止まるのもあれなので、僕はそう提案すると布良さんは頷くことで応じた。

そして僕は病院前から移動するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ布良さん」

「何かな? 高月君」

 

道中無言だった僕たちだが、それを打ち破るようにして僕は布良さんに話しかけた。

 

「布良さん、もしかしてあのことで自分を責めてたりする?」

「ッ!」

 

僕の直球過ぎる問いかけに、布良さんは肩を震わせる。

 

「僕が言っても説得力がないけど、布良さんは何も悪くないよ。だって、勝手に自分でまきこまれただけだし」

「でもっ。私がちゃんと確保できていれば高月君は……」

「布良さんはできる限りのことをしていたじゃないか。だから責任を感じる必要なんてないんだよ」

 

できる限り優しく布良さんに言葉をかけるが、あまり反応は良くない。

 

「それに、布良さんが自分を責めているのを見ると僕まで悲しくなる。だから、できれば責めないでほしい。ふんぞり返ってお礼を言う用に強要しろとまでは言わないけどね」

「高月君……できるかはわからないけど努力してみる」

 

それが布良さんの答えだった。

 

(願わくば一つのミスに後悔するだけじゃなく、前に進める力になればいいんだけどね)

 

そこまで期待するのは酷だろう。

でも、今は偽りとはいっても布良さんに笑顔が戻っただけでもよしとしよう。

それほど長い付き合いではないが、布良さんと言う人物には笑顔が一番似合うと感じたのだ。

 

「それじゃ、月長学院寮に向かうよ」

「了解」

 

そして再び布良さんに先導される形で目的地へと向かう。

少し歩いたところで、布良さんが足を止めた。

 

「ここが私たちの住む寮だよ」

「ここが……」

 

布良さんの言葉を受けて僕は学院寮を眺める。

外観は少しばかり高級マンションのようなしっかりとしたつくりになっており、誰もここが寮であるとは思いもしないだろう。

 

(ついに、来たか)

 

ほとんどが女子の場所のため、心臓の鼓動が早まる。

できるだけ気を引き締めて、変なことがないようにしよう。

 

「それじゃ、入るよ。ただいまー」

 

僕が決意を固めるのを待っていたかのタイミングで、布良さんはドアを開いた。

そして僕は未知の領域へと足を踏み入れる。

 

「おかえり」

「おかえりなさいです」

 

布良さんにかけられる言葉には、暖かさのようなものを感じた。

そして僕はその声を発した少女たちの前に立つ。

 

「彼が、布良さんの言っていた」

「うん。今日からこの寮に入ることになった――」

「高月浩介です。よろしく」

 

長く伸びた赤い髪の少女の問いかけに答えようとする布良さんの言葉を遮って、僕は自己紹介をした。

やはりこういうのは本人の口から直接した方がいいと思ったからだ。

 

「私は矢来 美羽。美羽で構わないわ。よろしく」

「よ、よろしく」

 

いきなり下の名前で呼んでもよいと言われたが、たぶん呼ばないと思う。

理由としては、恥ずかしいからだったりもするけど。

たぶん呼んでもさん付けかなと心の中で思う。

 

「私は稲叢 莉音です。よろしくお願いします」

「よろしく」

 

続いて自己紹介をしたのは紫色と赤色が混ざったような髪に、後ろの方で黄色いリボンをつける少女だった。

 

「次はワタシの番だね。ワタシはエリナ・オレゴヴナ・アヴェーン。よろしくね、コースケ」

「よ、よろしく」

 

何だかフランクな人だなと思いながら、少女を見るとどこかであったような気がする。

 

「えっと、アヴェーンさん。もしかしてどこかで会いませんでしたか?」

「た、高月君!? いきなりナンパはメッだよ」

 

なぜか怒られてしまった。

確かに、今の聞き方はナンパにも聞こえなくない。

 

「んー? おー、昨日カジノで10連敗した人だ!」

「そ、そうだよ」

 

10連敗したのはかなり精神的なダメージが強いためにあまり言ってほしくなかったのだが……。

 

「それと、ワタシのことは”エリナ”でいいよ。ワタシもコースケって呼ぶから。いいよね?」

「ああ、問題はないよ」

 

とりあえずカジノの話からはそれたようだ。

 

「最後はボクだね」

 

そういって前に出たのは、あえて気にしないようにしていた人物だった。

金髪の髪に左右で目の色が違うオッドアイ。

そしてマントを羽織っているという派手な服装だった。

この寮の人の中ではかなり異質な存在だった。

 

「もう、マントを部屋の中でパサパサしないの。埃がたつでしょ」

「マントじゃない! 漆黒の(ヴェール)だ」

 

布良さんの注意に、反論するが、反論するのはそこなのか?

 

「ごほん。君が新たなる魔界の洗礼を受けし者だね。我が名はニコラ・ケフェウス。闇の住人だ」

「………」

 

ケフェウスさんが自己紹介をするけど何を言っているのかがさっぱりだ。

いや、意味はなんとなくはわかるけど。

 

「えっと、なんて言ってるの?」

「要は『コースケがここにすむ人だね。僕の名前はニコラ・ケフェウス。吸血鬼だ』だよ」

 

僕の疑問に答える形でエリナさんが翻訳してくれた。

 

「同じ魔界の住人として覇道の道を歩もうではないか。君にはボクの真名を呼ぶことを許可しよう」

「『同じ寮にするんだから、仲良くしようね。ニコラって呼んで構わない』だって」

 

律儀に翻訳してくれるエリナさんに感謝しつつ、僕も返すことにした。

 

「ど、どうも。ニコラ卿と言ったほうがいい?」

「おぉ、君も魅力がわかるんだね!」

「何だか食いつかれたっ!?」

 

試しにとばかりに言ってみただけど、反応があることに驚いてしまった。

 

「えっと、もしかしてニコラって」

「ええ、中二病という不治の病よ」

 

僕の推測に矢来さんは頷きながら肯定した。

中二病と言う言葉は聞いたことはあるが、まさかそういう人物を間近で見るとは思ってもいなかった。

 

「それで、どうかな?」

「私は問題ないと思います」

「私もよ」

「ワタシも大丈夫」

「もちろん大歓迎さ」

 

布良さんの問いかけに稲叢さんに続いて美羽さんにエリナさんやニコラが応えていく。

 

「でも、ここって学院寮だから、僕が済んだら問題じゃ」

「え? でも、高月君は月長学院に通うっていうことになってるけど」

 

(いつの間に)

 

僕の知らないところで決められていたことに、驚きを隠せなかった。

 

「まあ、学院が始まるまで日もあるから、それまでにこの都市のこととか説明をしていくね」

「よろしくお願いします」

 

こうして僕は、月長学院の寮で住むこととなり、都市のことを教わることとなった。

この都市の地理などを頭に叩き込むところから始めるのかなと思っていた。

 

「それじゃ、ご飯にしましょう」

 

そんな稲叢さんの言葉に皆は料理を運ぶのを手伝ったり、席に着いたりと行動し始めた。

 

「僕も何か手伝うよ」

「ありがとうございます。高月先輩」

 

何だか居心地が悪くなった僕は、手伝うことを申し出ると稲叢さんはお礼を言ってきたが、引っかかる単語があった。

 

「へ、先輩?」

「あ、莉音ちゃんは一つ後輩なの」

 

首をかしげる僕に、布良さんが説明してくれた。

 

(僕、てっきり先輩か同学年だと思ってたけど)

 

「布良先輩、これお願いしますね」

「分かったよ」

 

(うそー)

 

てっきり後輩だと思ってたばかりに衝撃も大きかった。

 

「今何か失敬な事考えなかった?」

「いえ、別に」

 

顔に出てたのかジト目で問いかけてくる布良さんに答えつつ稲叢さんからお皿をもらい配膳するのであった。

こうして、初入寮日は何とかいい感じで始まるのであった。

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