DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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こんばんは、第60話です。

此処から話は急展開を始めます。
ちなみに先の展開も、原作の展開を取り入れていたりしますので、ご了承のほうをお願いします。
とはいえ、できる限り少なく済むように努力はしますが。

それでは、どうぞ


第60話 知ってしまった真実

浩介が入院することになって四日が過ぎた夕方の月長学院第二寮。

 

「今日で面会謝絶も四日目か」

 

夕食を食べながらふとそうつぶやいたのは佑斗だった。

 

「こうも長くなると、ちょっと心配になっちゃうよね」

「そもそも、本当に過労なのかしら?」

 

心配そうな表情で梓が相槌を打つ中、疑問を口にしたのは美羽だった。

 

「どういうことですか? 矢来先輩」

「過労になるほどの仕事なんて、やっていたのかが気になっただけよ」

 

首をかしげながら美羽の口にした疑問について尋ねる莉音に考え込みながらそう答えて話を終わらせた。

 

「エリナ君、大丈夫かい? さっきから、浮かない顔をしているけど」

「だ、ダイジョーブ。ただ会えなくて体が恋しくなってるだけだから」

 

暗い表情をしていたエリナにニコラが声をかけるが、エリナはすぐに元の明るい表情に戻して応えた。

 

「にょわ!? 食事中の下ネタは禁止ーっ!」

「にっひっひー、エリナは別に体が恋しくなると言っただけで、下ネタなんて言ってないよ」

 

エリナの言葉に反応した梓が叫ぶが、まるでいたずらっ子のような顔で笑いながら梓に言い返した。

 

「へ?」

「くふっ。布良さんったら、いったいどういう風に考えたのかしらねぇ」

 

さらにエリナに続いて美羽もにやにやと笑いながら追い打ちをかける。

 

「と、とにかくっ。この話はおしまいっ! 寮長命令!」

「それって、若干職権乱用のような気が……」

 

梓の言葉に、佑斗が小さい声でつぶやくがそれに気にすることなく再び和やかな雰囲気に包まれていくのであった。

 

「…………」

 

そんな中、エリナはあることを思い続けていた。

それは先日の病院でのことだった。

 

 

 

 

 

「んく……ぢゅるる………ぷはぁ。もういいよ、ありがとうコースケ」

「気にするな。王女見習いの世話は、王たる私の務めだからな」

 

浩介が入院している病室にて、いつものように吸血をしたエリナに、浩介はそっけなく返した。

 

「も、もしかして怒ってる?」

「何でそう思う?」

 

上目づかいで浩介に訊くエリナに、浩介は目を細めて聞きかえした。

 

「だって、とっても怖い顔をしているから……」

「あのね……」

 

エリナの答えに、浩介は眉をひくひくと動かすとエリナを見つめた。

とはいえ、見つめるというよりは睨みつけるに近いものであったが。

 

「アヴェーン君、高月君はこれがもともとの顔つきなんだ。不機嫌などではないんだよ」

「そうなんだって、ちょっと待って」

 

浩介の代わりに答えた元樹の言葉に頷きかけたエリナはふと、疑問を投げかけようと口を開く。

 

「どうして元樹が答える」

「それを僕に訊くのかい? まったく、罪な人だよね」

「気持ち悪い芝居してないでさっさと言え」

 

笑みを浮かべながら返事をする元樹に、浩介は冷たい言葉で答えを促す。

 

「それはもちろん、僕は高月君の愛人だから――――きゃんっ!」

 

頬を赤らめて答える元樹だったが、それを遮るようにして浩介はベッドに横になったまま点滴がついていない方の腕を上げると正面突きのごとく元樹に向かって拳を軽く押し出したのだ。

それによって元樹は、軽く久野時になりながら後ろに吹き飛ばされる。

 

「王女の前だ。言葉には気をつけろ」

「はい、すみません」

 

浩介の叱咤に、元樹は素直に謝罪の言葉をかける。

 

「ということで、くれぐれも変な誤解をしないように。……分かったか?」

「も、もちろんだよ」

 

王としての人格と接して数十日程度の時間経っているが、いまだに慣れる様子は見られなかった。

 

「それにしても、今どうやって元樹を吹き飛ばしたの?」

「空気を圧縮してそれを元樹の方に吹き飛ばしただけ」

 

エリナの疑問に、浩介はエリナの方に視線を向けると簡単に答えた。

 

「そ、そうなんだ」

 

本人が理解できたのかどうかは別であるが。

 

「さて、アヴェーン君もそろそろ戻った方がいいんじゃないかな?」

「え、でも……」

 

元樹の帰宅を促す言葉に、エリナは渋った様子で浩介の方に視線を向ける。

その視線を受けた浩介は、面倒くさそうではある物の口を開いた。

 

「別にこれで一生の別れではないのだ。明日も会えるのだから、帰るとよい。なぜここで入院をしているのか……その意図を忘れるな」

「分かったよ。それじゃ、また明日」

 

浩介の言葉に、そう頷くしかなかったエリナは、浩介に明日また来るという言葉をかける。

 

「ああまた明日だ」

 

それに浩介も手を振って応えると、エリナはそのまま病室を後にする。

 

(本当に、大丈夫なのかな?)

 

エリナはふとそんな疑問を抱く。

”もしかしたら、このまま別れることになるのではないか”そんな疑問が彼女に重くのしかかっているのだ。

 

(ダイジョーブだよね。ダイジョーブ)

 

そう自分に言い聞かせながら、エリナは寮に戻る。

だが、時折彼女はふと考えてしまう。

 

(本当はワタシがコースケをあんな風にさせちゃったのかな?)

 

自分がすべての根源であるということを。

 

「エリナちゃん?」

「え? あ、ごめんね。すぐに食べちゃうね」

 

また箸が止まっていたのか、不安そうな様子で声をかける梓にエリナは笑顔を取り繕いながら若干急いで夕食を口にしていく。

そんなこんなで、また一日が幕を開けるのであった。

一方、同時刻とある場所。

 

『私だ』

「定時連絡です。あれ以降、対象に目立った動きはありません」

 

ロシア風の男がとある場所と連絡を取り合っていた。

相手は声からして男性のようだ。

 

『連絡の途絶えたやつはどうなった』

「はい。あの人物ですが、動向がつかめません。おそらくはそちらが想像されている通りの事態が起こったのかと」

 

電話口の男の言葉に、ロシア風の男性は言葉を濁す。

 

『そうか。となると、例の報告は正しいということになるか』

「ええ。手に入れれば、我が国はおろか世界をもあなたの手の内に」

 

ロシア風の男性のその言葉に、電話口の男は”ほぅ”と唸る。

 

『しかし、大丈夫なのかね? 言われた通り、例の組織とコンタクトを取りすでに海上都市についているが、アラガミサヨの支配下だ。それに、病院で入院をしているではないか。手を入れようにも難しい』

「ご心配には及びません。その点についてはいい考えがあります」

『ほぅ、では聞こう』

 

ロシア風の男性の返事に、興味を持った電話口の男は内容を促す。

こうして、一日が始まる裏の方では徐々に暗躍が進んでいくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コースケ、起きてるかな」

 

学院が終わったエリナは、その日のカジノでのシフトが休みだったため、いつもより早めに病院を訪れていた。

 

(今日は何の話をしようかな~)

 

浩介が入院する病室までの通路で、エリナは話のネタに考えをめぐらせていた。

深夜休みに、ニコラが魔王ネタを披露していたことや、自分が口にした下ネタの佑斗たちの反応等々、エリナには十分すぎるほどのネタがあった。

 

(でも、コースケに下ネタの話をすると怒るんだよね)

 

もしかしたら、あれは自分にかかった嫌疑を晴らしたいために取った暴挙だったのではないかと考えたエリナだが、同じような鉄槌を喰らうのが怖いためエリナは下ネタをいったん封印することにしていた。

 

(まさか、コースケはワタシにもあんなふうにしないよね?)

 

自分に問いかけるエリナだが、なんとなく浩介がそのような配慮をすることができるような性格には思えなかった。

 

(あのコースケもなんだかんだ言って優しいんだけどね)

 

自分の話にはちゃんと返事をして、随所随所でちゃんと相槌を打っていたり、自分を気遣ったりしている優しさを知っているだけに、エリナは苦笑せざるを得なかった。

そんなこんなで、話すネタがそれほどまとまらぬ内に、浩介が入院している病室前にたどり着いてしまった。

 

(起きてるかな?)

 

一応ノックをしておこうと、右手を挙げた瞬間だった。

その話し声がエリナの耳に聞こえてきたのは。

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

「ぅ……」

 

私にとって目覚めはいつものごとく最悪だ。

いや、いつもこういう状態なのではない。

ここ最近は目覚めるのが億劫になっていたりする。

それもこれも、体調不良が原因だ。

起きるたびにけだるさが体を襲うのだ。

今点滴されているのが聞いているのか、めまいはないが倦怠感がついて回る。

最近は体を動かすたびに、意識が薄くなっていくような感覚も出てきた。

 

(はは、これはそろそろまずいかもな)

 

体の違和感は、私に終わりの時を告げていた。

 

「お目覚めのようだね」

「元樹か。ああ、この通りお目覚めだよ」

 

横になった姿のまま、私は病室に入ってきた元樹を出迎える。

 

「このような姿で申し訳ない。本来であれば起き上がって警戒態勢を敷いたうえで出迎えるんだがな」

「そっちの方がひどくないかい?」

 

元樹とこうやって軽口を言い合うのも、習慣となってきた。

やはり、この場では本当の私を前に出せるのだろう。

王でも最凶でもない吸血鬼としての私を。

 

「それもそうか。だが、お前の場合は寝込みを襲われそうでな、怖くて怖くて」

「失敬なっ! 僕は双方の合意のもとでするよ!」

「そんなことは聞いとらんわ!」

 

相変わらずどうでもいいことを話す人だ。

まあ、それもいいと言えばいいのだが。

 

「それで、体調の方はどうだい?」

 

ふざけているかと思えば、すぐに真剣な面持ちになるのは少々あれだが。

 

「最悪だ。これが死ぬという気分なのか」

「縁起でもないことを」

 

僕の答えに、元樹が複雑な表情で怒るが、完全に怒りきれていない。

 

「自分自身でもよくわかっている。今日が最期の日と言うことぐらいはな」

「…………」

 

私のその言葉に、元樹はまるで自分を責めているように目を閉じていた。

 

「王女に血をささげる。それはヴァンパイアウイルスの量の減少を引き起こした。私の増殖速度の遅い体質も相まって、それは深刻なダメージとなる」

「確かに。でもそれは血を吸ったからそうなったということは言えない」

 

私の言葉に相槌を打つように、真剣な面持ちのまま元樹が口を開いた。

どうやら、この茶番にも似たやり取りに付き合ってくれるようだ。

それは、一度やってみたかった自分のことについて話すということであった。

これまで私は、自分の気持ちを多かれ少なかれ隠して生きてきた。

その反動で、無性にこういう風なやり取りをしたくなるのだ。

 

(本当にあれな性格だ)

 

自分の性格に、苦笑しつつも、私は言葉を続けた。

 

「そう、これを引き起こした要因の一つに王女が湯水のごとく飲み干したことがある。毎日一定量のヴァンパイアウイルスを減少し、それに満たない増殖量でウイルスは目減りしていく」

「ということは、もう一つの要因は高月君自身が自分の体調の管理をしていなかったことと言うことか?」

 

私の説明に、元樹は鋭い指摘をしてきた。

 

「その通りだ。体質は知っていても、その症状がヴァンパイアウイルスの不足と言うことに気づかなかったことが最大の要因とも言えよう。今回倒れたのも、生存できるぎりぎりのヴァンパイアウイルスの量にまで低下したための防衛システムのようなものが大きい」

「そして、この数日も彼女に血を提供していることで、それは致命的になったということを言いたいのかい?」

「そうだ」

 

元樹の言葉に、私は頷くことで答えた。

 

「とはいえ、王女が悪いとは言えない」

「ということは、君自身と言うこと?」

 

目を若干大きく開きながらの元樹の問いかけに、私は首を横に振る。

 

「誰も悪くないのさ。悪いのはこういう風にした運命と言うものだろうよ」

 

まったくもって、自分で何を言っているのかと思うほど恥ずかしいセリフだ。

 

「ところで、聞かせてくれないかな」

「何をだ?」

 

唐突に話題を変えてきた元樹に、私は首をかしげながら訊いた。

 

「アヴェーン君に、本当のことを言わない理由をだよ」

 

またそれかと私は心の中でつぶやいた。

 

(まあいいか)

 

最期くらい、言うのもいいのかもしれない。

何より、本人に元樹が説明をしてくれるかもしれないのだから、言っておくに越したことはないだろう。

私のその言葉に、言葉を失った元樹をしり目に僕は時間を確認する。

 

(この時間であれば、王女はまだ来ないな)

 

今はまだ仕事の最中だろう。

なので、直接聞かれる心配もない。

 

「理由は単純さ。あの王女のためさ」

「アヴェーン君の? それはいったい……」

 

僕の口にした理由の真意がわからないのか、元樹は首をかしげていた。

 

「もし、私が倒れた理由の一つに王女が関わっているとしたら、彼女はどういう風になると思う?」

「それは……自分を責めるだろうね」

 

私と考えていることは同じだったようで、私が言いたいことをそのまま口にしてくれた。

 

「だからこそ、隠しておきたかったのだよ。私はね、目の前で愛する……自分が認めた者が悲しむ姿を見るのは苦手なのだよ。だからそうさせたくないのであれば、嘘でもなんでもつくさ」

 

一瞬、なぜか”愛する者”と口にしかけた私は、慌てて言い換えた。

 

(慣れというのは恐ろしい)

 

元々は自分の身体だったのだが、心までは私の思い通りにはいかないみたいだ。

 

(私が心の底から愛するのは”あいつ”だけだ)

 

それは今でも声を大にして(できれば小さい声で)言えることだ。

 

「まったく、そろいも揃っていちゃいちゃして」

「頼むから、私を一緒くたにするな」

 

元樹の恨めしそうな視線に反論した時だった。

外の方から走り去るような音が聞こえてきたのは。

 

(っち。私の馬鹿者が! よりにもよって王女の気配をも悟れぬとはっ)

 

「子供かな? まったく、廊下を走ってはいけないと言っているはずなんだがね」

「元樹、ひとつだけ調べてもらいたいことがある」

 

自分の未熟さに舌打ちをしながらも、私は元樹に一つの指示を出すことにした。

 

「何かな?」

「私が”世界を統べし王”であることを説明した病室を徹底的に調べろ」

「い、いきなりどうしたんだい?」

 

唐突な私の指示に、目を丸くする元樹に、私はさらに続けた。

 

「至急だっ! 私の推測が正しければあるはずだ」

「何があると言うんだ」

「何が? ふんっ、そんなもの決まっているだろ」

 

見え透いた元樹の疑問に、私は鼻で笑いながらそこにある物の名を口にする。

 

「――――”盗聴器”だよ」

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