DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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お待たせしました。
いよいよ最終話になります。
もちろん”エリナルートの”です。

本作はまだまだ完結いたしません。
途中見にくい個所がありますが、お読みいただけると幸いです。


最終話 特異体質を持ちし者

「あ、おかえりなさい……って、皆さんどうされたんですか?」

「なんだか、魔王に乗っ取られたような顔をしているけど」

 

寮に戻った(というより、小夜によって送り届けられた)美羽たちの表情から、何かがあったことを悟った二人は、美羽たちに声をかけた。

 

「浩介が」

「浩介君がどうか……まさか!?」

 

美羽が浩介の名前を出しただけで、ニコラは何があったのかを悟ったのか、目を見開かせて驚きをあらわにした。

 

「そんな……高月先輩」

 

それは莉音も同じだったようで、悲しげな表情を浮かべていた。

 

「う……うぅぅ」

「エリナ君、つらいとは思うけど、元気を出して。彼もきっとそれを望んでいると思うから」

 

地面に崩れ落ちるエリナに、ニコラは優しく言葉をかける。

それにエリナは答えることができなかった。

 

「あのー、ちょっといいかな?」

「何よ、佑斗」

「どうかしたの? 佑斗君」

 

そんな面ぐるしい雰囲気の中、手を上げて声を上げる佑斗に美羽とニコラ空気を読めと咎めるように声を上げた。

 

「その浩介のことで、手紙を預かってるんだ」

『えぇっ!?』

 

佑斗の衝撃の言葉に、驚きを隠せない美羽たちは叫び声にも似た声をあげた。

それは、先ほどまで床にうずくまっていたエリナも同じだった。

 

「これが、その手紙だ」

「ちょっと失礼」

 

美羽は佑斗が差し出した一枚の便箋を半ばひったくるように手にすると、それに目を通し始めた。

 

「僕も失礼」

「ワタシも」

「私も……って見えない!」

 

さらに、美羽に群がるようにニコラたちが覗き見る。

一名手紙が見れなかった人もいたが。

 

『えぇぇぇ!!?』

 

そして、その手紙を読み終えた美羽たちは、先ほどとは違った意味合いの驚きの声を上げた。

 

「なるほど、あれはそういうことだったのね。……あのバカタレ」

「な、何だか驚きすぎてどれに驚けばいいのかが混乱してきたよ」

「私はあんまり見れなかった」

「コースケ……良かった」

 

手紙を読み終えて、怒りをあらわにする者、内容についていけずに混乱した様子の者、手紙自体を見ることができなくてしょげている者、ほっと胸をなでおろしている者と、その反応は様々だった。

浩介が綴った手紙には、こう記されていた。

 

 

『この手紙を読んでいるころ、おそらく安全な場所にお前らはいるだろう。

その場には、本事案と関係のない者もいるはずだが、この手紙に目を通してほしい。

さて、聞いたかどうかは知らないが、私は死んでいる。

―――わけあるか! この私は生きている。

それを最初に宣言しておこう。

私は、ある事情によりある国に追われている。

そこの連中がお前たちを巻き込むという類の脅迫をしているのだ。

それゆえ、その連中の大元を何とかしない限り、ただのトカゲのしっぽ切りにしかならないだろう。

そのため私は、あることを実行することにした。

それが、偽装自殺である。

どうして狙われることになったのか、そのきっかけはここに記せない。

どうしても知りたければ、三名の仔羊と王女より話を聞くとよい。

ということで、私達はしばらくこの地を離れることになる。

だが、いつか必ず戻ってくることを約束しよう。

もっともこの私のことを聞いて、受け入れるのであればだが。

拒絶するのも一手だ。

こちらにはその場合の代替えの住居のあてもある。

多少面倒ではあるが、そこに移るだけだ。

もちろんだが、その場合にお前たちを逆恨みをすることもなければ、復讐などとバカげたことをすることはないと、約束しよう。

ともかく、私は生きており長期間この島を後にする。

期間は分からないが、帰る日が決まり次第小夜を通じて連絡を入れる故、その際に答えを聞かせてもらいたい。

追伸:この手紙を以って、王女に指令を与える。

4時44分に、西側開発地区2番倉庫前の堤防より、海に飛び降りられたし。

なお、時間を守らなければ命の保証はできなのであしからず。

以上』

 

 

それが、手紙の内容だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午前4時40分ごろ、徐々に夜明けを告げる朝日の光が周辺を照らし出す頃、西側開発地区の第2倉庫前の海に一隻の小型船があった。

だが、それは誰からも見ること(・・・・)ができない状態ではあったが。

 

「来るかしら?」

「さあ? これば儲けもんと言ったところだろ」

 

そんな状態の小型船の上で空(正確には堤防の方だが)を見ながら話す金髪の髪の女性……ソフィーヤに肩をすくめながら相槌を打つ青年……浩介の姿があった。

 

「それにしても、海に飛び込んでも平気だなんて、本当にすごいわね」

「平気ではない。今だって体が少しだるいくらいだ」

 

ソフィーヤの呆れたような感心したような言葉に、浩介は首を横に振りながら返した。

その表情には、若干ではあるが疲労した様子が見られた。

浩介は海水に対して強い耐性を持っている。

海水を浴びても、若干体が重くなる以外何も症状が出ないのだ。

その重い感じも、海水を洗い流しさえすれば消えてしまうため、弱点にもならなかった。

 

「それにしても、本当に外部からは見えないのよね?」

「そうだが……心配だったら堤防にでも上って確認してみるか?」

 

不安そうに周囲を見渡しながらつぶやくソフィーヤに、浩介はからかうような笑みを浮かべながら提案した。

 

「無理に決まってるでしょ。こんな高さを飛び上がるなんて」

「だったら、信じろ」

 

堤防の高さは、小型船上で立つソフィーヤの半分ほどの高さがあるため、上がるのも大変なものだった。

 

「不可視の能力によって、この船は見えないようになってるんだ。すでに実証済みだ」

「実証済みって、アナタはいったいどんなことをしたのよ」

 

浩介の言葉に、呆れた口調で疑問を投げっ変えるソフィーヤに、浩介は不敵な笑みを浮かべた。

 

「あんたと初めて会ったときだ。あの時は、不可視の能力を解いちまったから見つかったけどな」

「まあ、それがなければこうして話す機会も、エリナが自由になる機会もなかったわよね」

 

浩介の答えに、ソフィーヤは少しばかり遠い目をしながら相槌を打った。

そんな彼女を見た浩介は、いたずらっ子のような笑みを浮かべると

 

「その言葉、まるで年を取ったばあさんみたいだな」

 

と、口にした。

 

「なんですってっ! その発言を撤回しなさいっ!」

 

浩介のその暴言に、ソフィーヤは大声で怒鳴り散らした。

 

「冗談はともかく、ロシアとここと往復できる燃料はあるのか?」

「……それは十分よ。嵐でも来ない限り、問題はないはずだから」

 

そんなソフィーヤの反応に満足が行ったのか、それともこれ以上いうのはまずいと判断したのか、浩介は別の話題を彼女に振っていた。

 

「でも、どうしてロシアに行く必要が? このまま数か月ほどおとなしくしていれば、少なくとも本国の干渉は無くなるはずよ」

「だろうな」

 

ソフィーヤの問いかけに、浩介は海を見ながらつぶやいた。

 

「だがな、性分と言うものだろうか。そういうのは嫌なんだよな。それに、いつまた干渉が入るかが若rな愛状態で、安心して過ごすことは不可能だろう。だからこそ、直接敵地に赴き黒幕を叩くんだ」

 

浩介が行おうとしていたのは、ロシア本国に向かい事の発端となった本国の人間の口を封じることだった。

 

「そのためのコネは十分にある。ロシアの大統領という強いコネがな」

「あなた、いったいどうすればそんなことができるのよ」

「昔奴の息子と遊んだことがあった。そして暇つぶしにボディーガードを少々しただけさ」

 

ソフィーヤのあきれ果てた様子の言葉に、浩介はそう言って空を仰ぎ見る。

浩介の出した『緊急離脱プランC』とは、現在いる場所でトラブルに見舞われ中規模の混乱が発生した場合は、自らを死んだことにしてその場を離脱するというものだった。

今回の場合は、そのための方法として海へ飛び込むということに至ったのだ。

 

「さて、そろそろ時間だ。準備を」

「分かったわ」

 

浩介の指示に頷いたソフィーヤは小型船のエンジンをかけて、いつでも動けるように準備を始めた。

 

「本来であれば、こういう風にキャッチする必要はないんだけどな」

「どういう意味かしら?」

 

浩介がつぶやくように口にした言葉を耳にしたソフィーヤが、浩介に尋ねる。

 

「私の血を飲み王女となった、彼女は私の体質と同じようになっている」

「それってまさかっ!?」

 

浩介の説明で、エリナの状態を把握したソフィーヤが驚きに目を見開かせた。

 

「そのまさかだ。完全に海水に耐性がついているはずだし、何故か得てしまった半永久的な命もそのまま彼女に存在しているだろう。唯一の救いは、ライカンスロープになっていないということくらいか」

「………そのこと、エリナは?」

「知るわけがないだろ。今は話す時ではない。いずれ、私から機会を見て話すとしよう。だから、ミズ・ソフィーヤ」

 

浩介は無言ではある物の、強い意志を込めたまなざしでソフィーヤを見る。

 

「分かったわ。私からは何も言わないわ」

「感謝する」

 

浩介の言わんとすることを察したソフィーヤは、静かに頷くと浩介に一任するのであった。

 

「さあ、時間だ。ミズ・ソフィーヤ。操縦を」

「分かりました」

 

浩介の指示に、ソフィーヤは頷いた。

それを確認した浩介は、堤防のコンクリート部分に手を当てて目を閉じる。

その様子をソフィーヤはか固唾をのんで見守っていた。

その体制のまま、片方の手を前に突出し”向こうに行け”と指示を出す。

その指示に、ソフィーヤは慎重に船を進める。

そして浩介は手の動きを止めると、ソフィーヤはボートのモーターを止めた。

 

「ここでいいの?」

「ああ。この真上から飛び降りる」

 

浩介がしていたのは、コンクリートに手を当てて、人が歩いた際に発生する振動と音を頼りに、エリナが飛び降りる場所を把握することだった。

エリナの足が止まったのを感じた浩介は手をコンクリート部分から話したのだ。

 

「さて、私は眠るか。後はよろしく」

「はいはい、分かりました」

 

浩介の無茶ぶりに慣れてしまったのか、ため息をつきながら浩介に頷きかえすと、浩介は静かに目を閉じるのであった。

 

「あれ? ここは……」

 

そして目を開けた浩介が寝ぼけた様子で周囲を見渡すのと、小型船が大きく揺れるのとほぼ同時だった。

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

「あれ? ここは……」

 

気が付くと、僕は全く知らない場所にいた。

何だか体がまるで雲の上にいいるかのように、ふわふわとしている。

しかも、なぜかソフィーヤさんの姿もある。

 

「ええい!」

「うわっ!?」

 

よく聞いた声と共に、上空から降ってきた何かによって、足元が大きく揺れた。

 

「え、エリナ!?」

「コースケぇっ!!」

 

上空から降ってきたのはエリナだった。

僕の声に反応したエリナは、凄まじい勢いで僕に抱きついてきた。

 

「良かったぁ~、本当に良かったぁ~」

「な、何!? どうして泣いてるの!? いったい僕の知らないところで何が?!」

 

涙ながらに抱きついてくる彼女に、いったい彼が何をしたのかが気になってしまった。

 

「ふふ。それじゃ、行くわよ」

「え? 行くって、どこへ?! というより、ここってもしかして船の上!?」

 

この時ばかりは把握したくないのに把握できてしまう自分がとても恨めしかった。

 

「事情は、私が話すね」

 

そう名乗り出てくれたエリナの口から、事の顛末を聞いた。

その話によると、彼はこれから元凶であるロシアに向かうらしい。

そして、ソフィーヤさんがその送り届ける役割のようだった。

確かに、船の操縦免許を持っている彼女であれば適任なのかもしれない。

 

「それにしても、まさか偽装自殺をするなんて」

「そうだよっ! ワタシだって怒ってるんだからね!」

 

どうやら地雷を踏んでしまったようだ。

僕の言葉で、偽装自殺をされた時の悲しみ(と怒り)が一気にぶり返してしまったようだ。

 

(これって、僕のせいじゃないよね?)

 

人格が違うのだから、そう言えなくもない。

だが

 

(絶対に、”彼”は謝らない。確実に)

 

なんとなくそんな気がした。

それに、彼を出したのは僕の意思なのだから、僕が謝るのが筋だろう。

 

「ごめんね。もう二度とこんなことはしないから。許してください、お願いします」

 

我ながら、低姿勢すぎると思うが、こういうのは早めに解決させておくに越したことはないのだ。

 

「本当に?」

「う、うん」

 

上目遣いで聞いてくるエリナに、思わずどきっとしながら、僕は頷いて答えた。

とはいえ、彼がしないという確証もないのだが。

 

「それだったら、約束のキスをちょうだい」

「え!?」

 

エリナの要求に、僕は思わず叫んでしまった。

すると、だんだんエリナの表情に影が差しこみ始める。

 

「やっぱり、嘘なんだね」

「そ、そうじゃないけど……」

 

僕はエリナに答えながら、視線をソフィーヤさんの方へと向ける。

人に見られながらキスをするほど、僕はおかしな性癖の持ち主ではない。

 

「ダイジョーブ。ソーニャは大人だから聞こえないふりをしてくれるよ」

「はいはい。ワタシは進行方向しか見ていないし、モーターの音で何も聞こえません」

 

エリナの言葉に、補足するように言ってくれたソフィーヤさんには、頭が上がらない。

 

「というわけで、はい、チョーダイ」

「分かったよ」

 

なんとなく恥ずかしさは残るものの、僕はエリナの唇に自分の唇を合わせた。

 

「んちゅ……ちゅぅぅ……はむ……ちゅるる……ちゅ」

 

思い起こすと、かなり久しぶりのキスのような気がした。

そう思うと、いろいろと思うところもある。

 

「ぷはぁ……」

「満足した?」

 

体感にして数分にも感じた濃厚なキスを終えた僕は、エリナに尋ねた。

 

「うん、ばっちり」

 

満面の笑みでそう答えてくれたエリナに僕は、ほっと胸をなでおろした。

 

「でもぉ、今度は別のお口が切ないの。ねえ、そこにもキスをしてよ」

「ぶっ!?」

 

妖しげな笑みを浮かべながら促してくるエリナに、僕は思わず吹き出しそうになってしまった。

 

「ちょっとエリナ!? いくらなんでも限度と言うものがあるわよ!」

「にひひ、ジョーダンだよジョーダン。ロシアンジョーク」

 

さすがにソフィーヤさんでも見逃せなかったのか、エリナに注意をするソフィーヤさんに、エリナは笑顔で返した。

 

「それ、いろいろな意味で誤解を招きそうだよ」

 

久しぶりの下ネタは、とても刺激的すぎた。

 

「でも、一緒にまた戻ろう」

「そうだね。佑斗君達が待っているかもしれないしね」

 

果たして、戻った時に僕たちを受け入れてくれるかが疑問に残ってしまうが、それでも僕はもう一度アクア・エデンに帰ると心の中で誓う。

 

「ダイジョーブだよ。皆、待ってくれるって」

「そう……本当に、皆には感謝してもしきれないよ」

 

徐々に離れていく海上都市を見ながら、僕は苦笑した。

僕の帰る場所があるというのは、これほどにも嬉しいことなのだと僕は、知ることができた。

 

「エリナ」

「何?」

 

だからこそ、僕はそんな彼達の約束を破らないように、

 

「絶対に帰ろう。約束だ」

「うん♪ 約束」

 

僕とエリナは、もう一度戻ることを誓い合うのであった。

 

 

――

かくして、二人の物語は一つの終焉を迎える。

この後に訪れる未来は、地獄か天国か。

それは、誰にもわからないことだろう。

だが、はっきりしているのは、二人はこれからの未来に、笑顔が曇ることがないということ。

そして、大いなる疑問を残し、二人は人生と言う名の道を歩んでゆく。

 

さあ、もう一度物語を始めよう。

高月浩介の歩む、もう一つの道の物語を。




改めて、本作をお読みいただいてありがとうございました。

色々と問題点がございましたが、ここまで来れましたのも、読者の皆様のお力添えのおかげです。
さて、本文末にある通り、まだまだ話は続きます。
次は誰との話なのかは、まだ内緒ということで(苦笑)
ご感想やご指摘等がありましたら、感想ないしはメッセージよりご連絡いただければ幸いです。


それでは、これにて失礼します。
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