DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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お待たせしました。
第6話になります。

最近気になったことといえば、登場人物の紹介って必要なのかどうかだったりします。


第6話 労働と業

学院寮に入ってから2日ほど過ぎた。

行ってきたのは、色々だ。

吸血鬼の特性について美羽さんから説明を受けたり、この島でのローカルルールの説明を受けたり等々。

特に驚いたのは、吸血鬼はアルコールや覚せい剤と言ったものが効かないこと。

美羽さんにのまされたお酒に酔うこともなく、逆に味を楽しめる余裕さえあった。

僕としては初めてのお酒だったためかなり緊張したが。

 

(地味にここで身分証でもあるIDカードが役に立つとは思っていなかった)

 

そして次が労働の義務が課されていること。

聞くところによると、エリナさんとニコラの二人はカジノで働いているようで、美羽さんと布良さんは特区管理事務局の風紀班と言うところで働いているらしい。

稲叢さんは僕が美羽さんとお酒を飲む際に向かったカフェバー『アレキサンド』で働いているようだ。

布良さんの話では、そろそろ僕の方にもそういった話が持ちかけられるようになるらしい。

そんなある意味充実した2日だった。

 

「うぅ、太陽がまぶしい」

 

カーテンの隙間から漏れ出る夕日の光に、僕は目を覆いながら体を起こす。

ここは、僕に宛がわられた一室だ。

とはいえ、まだ荷物がないため閑散としている。

 

(荷物はどうやって取り寄せるんだろう)

 

そんな疑問が浮かぶ。

 

「う……」

 

だが、疑問について考えこもうとした瞬間、まるで船酔いしたかのように視界がぼやけた。

だがそれは一瞬のことでまたすぐに元の視界へと戻っていた。

 

(寝起きに頭を使ったからかな?)

 

先ほどの現象にそんな風に思いながら、僕はベッドから出ると普段着へと着替える。

ちなみに肌着はちゃんと買ってある。

そして僕は共有スペースへと向かうのであった。

 

「あ、おはようございます。高月先輩」

「おはよう、稲叢さん」

 

二日も経てばもう慣れたもので、自然な感じにあいさつを交わす。

 

「A型で良いですか?」

「ああ。ありがとう」

 

稲叢さんに受け取ったのは合成パックと言う物だ。

これは、人の血に似せたもので吸血衝動の抑制と体調維持の効果があるため、時々(できる限り毎日がいいらしい)飲んでおく必要がある。

ちなみに味は血液型で異なるらしく、A型はリンゴ味でB型がバナナ味、O型はオレンジ味で、AB型がトマト(食塩無添加)味とのこと。

ちなみにAB型は最も人気がないらしい。

とはいえ、AB型を好き好んで飲む人もいる。

 

「お、君も生贄を口にしているんだね」

 

続いて共有スペースにやってきたニコラは僕の手にある合成パックを見るや否やそう言ってきた。

分かってるとは思うが、生贄とは合成パックのことである。

 

「稲叢君、ボクはAB型の生贄をいただこう」

「はい、ニコラ先輩どうぞ」

 

稲叢さんに手渡されたAB型の合成パックを手にするとそれに口をつける。

 

「うぅ、おいしくない……ぐすん」

 

見ているだけでつらそうな様子で合成パックを飲むニコラを見て何度も飲まなければいいのにと思うことがある。

だが、”トマトこそ吸血鬼としての王道だ”と主張しているために、これも中二病の症状の一つのようだ。

 

(そう見ると、ものすごい存在だよな)

 

マントもそうだが、オッドアイにさせるためにカラコン(度なし)をつけたり、トマトを好んだり等々。

もはや賞賛の域に達するほどだ。

そう思いながら、僕は自分の手にある合成パックを口にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、コースケお願いね」

「了解」

 

エリナさんに手渡された食器を受け取り、それを洗っていく。

調理以外ではできる限りローテーションを組むようにしており、早く慣れるという名目で今日は僕が食器洗いの当番だ。

エリナさんの食器一式が最後で、ものの数分で食器洗いを終えた僕は水を切り終えると、食器棚に戻していく。

 

「食器洗い終わったよ」

「お疲れ様―」

 

僕の報告に、寮長でもある布良さんは、労いの言葉をかけてきた。

ちなみに、彼女が寮長であることを知った時に驚いたために、ふてくされた布良さんをなだめたのは記憶に新しい。

 

「あれ、今日は誰も訪ねてくる予定はなかったんだけど、誰だろ」

「私出てきますね」

 

そんな時に鳴り響いたチャイムに首をかしげる布良さんに、来客者を迎え入れに向かった稲叢さんだったが僕は無性に嫌な予感を感じた。

 

「さびしかったよー、高月くーーん!」

「でたぁぁっ!!?」

 

予感は見事に的中し、僕に向かってかけてくる扇先生に、僕は何を考えたのか全力で飛び上がると天井に張り付いた。

 

「き、消えたっ!?」

「ちょっと、何をしてるの!!」

 

突然のことに驚く美羽さんに、天井に張り付いたことに怒る布良さん。

 

「すごい、これが日本のニンジャなんだね」

 

そして少し軸がずれた驚き方をするエリナさん。

 

「まったく、そうまでして照れなくてもいいのに」

「照れてません!」

「とにかく、そこから降りてきたらどう?」

 

ニコラが促してくるが、僕は根本的な問題に気付いた。

 

「降りられないんだ」

「はいぃ?」

 

上がって張り付いたのはいいが、今度は降りられなくなった。

と言うかどうやって僕は張り付いているんだろう?

 

「は、はしごを持ってきます!」

「いや、できればちょっと離れて」

 

慌てて梯子を取りに向かおうとする稲叢さんに、僕はそう頼むと全員が一二歩ほど後ろに下がった。

それを確認して僕は下に降りる。

 

「いつっ!?」

「た、高月君大丈夫?!」

 

着地しようとしたが失敗してしりもちをつく形になった僕に、布良さんが声をかけてくる。

 

「大丈夫。ちょっとお尻が痛い」

 

そんな彼女に、僕はそう答えるのであった。

 

 

 

 

 

「それで、いったい何の用ですか?」

 

いったん落ち着いた僕は、目の前にいる扇先生に用件を尋ねる。

 

「ずいぶんと冷たいね。愛する君の裸を見に来たというのに」

「は、はははは裸!? 高月君と扇先生はそういう―――」

 

扇先生の言葉に誤解した布良さんが顔を赤くしながら叫ぶ。

 

「僕の裸だって見たくせに……ポッ」

「”ポッ”じゃないです! あれはあなたが勝手に見せたんでしょ!!」

 

わざとらしく顔を赤らめる扇先生に僕はツッコむ。

 

「ふ、ふふ二人がそんな関係だったなんて。エッチだよ破廉恥だよBLだよっ!」

「それで、コースケは攻めなの?」

「はい?」

 

布良さんに弁解しようとするが、それはエリナさんの問いかけに遮られた。

 

「ああ、ごめんね。コースケは受けだよね。分かりきったことを聞いてごめんね」

「一般常識みたいに言われた!? 違うよ、そういうことじゃないよ!」

 

勝手に僕が受けであるとされたことに驚きながらもBLであることを否定する。

 

「えぇ!? コースケが攻めなの?! 意外だよ、てっきりコースケが受けだと思ったのに」

「受けか攻めかの話じゃないよ!? 扇先生との関係のことっ!」

 

何だか路線がずれていっているような気が……

 

「と言うことは、ノンケ受け?」

「あくまでも僕をBLにしたいようだねっ!」

 

願わくば僕がノーマルであるという結論にたどり着いてほしかったのだけれど。

 

「そうなんですか、高月先輩はノンケ受け何ですね」

「いっ!?」

 

今まで無言だった稲叢さんがなるほどと言った様子で口を開いた。

何だかすごいところに飛び火した。

 

「ところで、”ノンケ受け”ってなんですか?」

「意味を知らないで納得してたの!?」

 

首をかしげて疑問を口にする稲叢さんに思わず叫んでしまった。

今日はツッコム回数が多いなと心の片隅で思っていたりもする。

 

「ノンケ受けっていうのはね、女子にしか興味がない男の人が―――」

「それであんたは説明する――――うっ!?」

 

稲叢さんの疑問に答える形で説明を始めるエリナさんに僕はツッコミながら口をふさごうとするが動こうとした瞬間、再び視界がぼやけた。

しかもツッコンでいたためか朝よりもひどく、思わず床に座り込んでしまった。

 

「だ、大丈夫コースケ?」

「大丈夫。ちょっとめまい」

 

心配した様子で声をかけてくるエリナさんにそう答えた僕はゆっくりと立ち上がった。

視界のぼやける現象はほんの数秒で収まっていた。

 

「それで、本題に移ってください。こんなところに頓珍漢なことを言いに来るために来たわけではないですよね?」

「用件は二つ。まず一つは君の健康状態を確認するために定期的に病院に診察を受けに来てほしい。受けに行く日はこちらから指定するから」

「分かりました」

 

自分はかなり特異な例で吸血鬼になったのだ。

そういったものはつきものであることは覚悟のうちだった。

 

「そして、これが最後。一番重要な用件だ」

 

そう告げて扇先生は眼鏡を軽く持ち上げる。

その様子に、僕は息をのむ。

 

「君には吸血鬼として、避けられない業を背負ってもらうことになる」

 

業とはなんだろう?

 

「それに関連して矢来君に布良君」

「はい?」

「なんでしょう?」

 

そんな僕の疑問などどこ吹く風、扇先生は美羽さんと布良さんに声をかける。

 

「君たちにもちょっと仕事を頼みたいから、一緒に来てほしいんだ」

 

その扇先生の問いかけに、二人は二つ返事で承諾するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

向かった先は病院だった。

 

「はい、もういいよ」

「それで、結果はどうですか?」

 

診察を終えた僕は、結果を尋ねる。

 

「うん、良好だよ。矢来君とほぼ同じほどにまで安定しているし、これなら日光を浴びてもさして問題はないと思うよ」

「そうですか。よかった」

 

どうやら結果は上々のようなので、僕は胸をなでおろした。

体はどうやら完全に吸血鬼に順応しているようだ。

 

「あの、扇先生。人間に戻る方法の方はまだ……」

「うん。算段がたっていないのが現状だ」

 

そんな中、布良さんの問いかけに扇先生が答えると、重苦しい雰囲気に包まれた。

 

「えっと、そんなに思いつめないでください。すぐに戻りたいなんて思ってませんから」

「そうかい」

 

なんだかんだ言っても、吸血鬼状態で不便を感じたことは日は短いがあまりないため、これでもいいのではないかと思う僕もここにいたりする。

いったい僕は、どうしていきたいのだろうか?

 

「そういえば、荷物って本土から持ってくることはできますか?」

「もちろんできるよ。とはいえ、政府による検査の後だけど優先的に行わせることはできる」

 

これまでどうしようと思っていた本土にある荷物の件は、どうにかなりそうだ。

 

「後、働きたいんですけど」

「君には見舞金が支払われているはずだけど」

 

確かに、少し前に見舞金としていくらかお金が支給された。

でも

 

「さすがにその上に胡坐をかくわけにもいかないですし、それに今までアルバイトとかで働いていたので、そういうのをしていないとどうも落ち着かなくて」

 

人間の時の名残か、学院が始まって授業が終わってすぐ帰るというのは、自分ではあまり考えられなかった。

 

「まあ、君は働いても問題ない状態であると僕が太鼓判を押すけど、働くにあたって問題があるんだ」

「問題って、なんですか?」

「前に説明したと思うけど、この都市の吸血鬼さんの仕事は特区管理事務局があっせんする形になってるの」

 

僕の疑問に答える布良さんに、数日前に説明されたことを思い起こす。

ここ、海上都市では特区管理事務局が仕事をあっせんするらしい。

通常の場合、3~5か所ほどあっせん先の候補が紹介される。

 

「問題はそこなんだ。高月君の場合は人間から吸血鬼になった。風紀班は知っていると思うけどこのことは秘密にする必要がある」

「確かに、ちょっとやりづらいですね」

 

秘密にしながら働くというのはよほど器用でなければできないことだ。

特に僕はそれほど器用なタイプではない。

 

「だから、働ける場所も限られるんだ」

「具体的にはどこですか?」

「上の方と相談してみたんだけど、やはり陰陽局ぐらいしかないね」

 

僕の問いかけに返ってきた言葉に、僕は首をかしげる。

 

「陰陽局?」

「特区管理事務局のことだよ。ちょっと長いからそう呼ばれてるんだよ」

「特区管理事務局……陰陽局は簡単に説明するとこの都市を管理監督する、政府直轄の組織よ」

 

本土でいうところの自衛隊みたいなものだろうか?

 

「陰陽局と言ってもいろいろ部署があってね、カジノや風俗施設が正しく運営されているかを監視する”監督班”、吸血鬼さんの存在を一般の人に知られないようにするための”工作班”、そして私たちが働いている治安維持を主に行う”風紀班”のが主なものだよ」

「風紀班は警察と同じだけど、吸血鬼に対抗するために存在するというのが理由だね」

 

布良さんの説明によると、吸血鬼に対しての差別があるために、作られたのが風紀班であり雇用と言う形ではなくボランティアと言う形式となっているらしい。

ちなみに給料は危険手当と言う名目で支給されるとのこと。

 

「やはり、一番現実的なのは風紀班だね。そこにいれば一番矢来君や布良君のフォローが受けられやすい」

「でも、分かるとは思うけど、危険は付きまとうわよ。浩介が見たようなことはそう毎回起こりはしないけど、でも平穏とは言えない」

 

それはわかっているつもりであった。

治安を維持するには危険が付きまとう。

 

(でも、得られるものも大きい)

 

それは金銭ではない。

それ以上に素晴らしいものだ。

 

「それじゃ……風紀班でお願いします」

「高月君、軽く決めるんだね」

「考えすぎてもあれだしね。知り合いがいたほうが何かとやりやすいと思うし」

 

呆れと驚きが込められた布良さんの言葉に、僕はそう相槌を打つ。

 

「と言うだろうと思って、すでに手続きは済まされているんだ。あと数日すれば仕事場に向かうように指示が出ると思うよ」

「前々から思ってたんですが、編入にしろ働き口にしろ、何だか手際が良すぎませんか?」

 

僕は今まで感じていた疑問を、扇先生にぶつけることにした。

特異例だとしても、手際が良すぎる。

 

「僕に聞かれてもわからないとしか言いようがないよ。すべて上で決められていることだし」

「そうですよね」

 

よくよく考えれば聞く相手が違うため、僕は素直に下がることにした。

 

「それで、先生。結局私たちはどうして呼ばれたのでしょうか?」

「おっと、そうだったね。重要な要件を忘れるところだった。布良君」

 

美羽さんの問いかけに、扇先生は布良さんに声をかける。

 

「は、はい。なんでしょうかな?」

「とりあえず上着を脱いでくれるかい」

「はい、わかりました。って、えええええ!!?」

 

一度は頷いて布良さんだったが、当然のごとく叫び声をあげた。

 

「どどどどういうことですかっ!? 私の裸目的のセクハラですかっ!? 悲しいような、でもちょっとうれしいような」

「失敬な! 僕は医者だよ! 女の子の裸興奮なんてするはずがないじゃないかっ!」

 

顔を赤くしながら叫ぶ布良さんに扇先生は大きな声で反論する。

 

(ここって、病院なんだけど騒いでもいいのかな?)

 

僕はそんな関係ないことを思っていた。

 

「僕が興味があるのは男の裸だけだよっ!」

「だから、そういうことを自慢げに言わないでくださいっ!!」

 

扇先生の言葉に、僕は大きな声でツッコミを入れた。

 

「悪かった、言い換えよう。首元をさらす程度に上着を脱いでほしい」

「先生、それって」

 

扇先生の指示にその意味を理解した美羽さんは、何をしようとしているのかがわかったのか表情をこわばらせる。

 

「医者の立場からも体を安定させるためには一度経験しておいた方がいいんだ。君の体は安定しているとは言うが、それでも”ほぼ”なんだ。いつまた不安定になるかがわからない状態なんだ」

「………」

 

扇先生の言葉に、美羽さんは押し黙った。

たしかに言われてみれば”ほぼ”という言い方だとまだ安定しきれていない状態だと想像はつく。

それに今朝のめまいも気になる。

 

「布良君はどうかな? もちろん許可についてはしっかりと貰っているからそこの方は心配しなくてもいい」

「分かりました……私も重要だと思います」

 

扇先生の問いかけに、しばらく考えたのちに布良さんは頷きながら答えた。

 

「それじゃ、あとは任せるよ。後で許可証の書類を届けるからちょっと待っていてほしい」

 

そう言い残して病室を後にする扇先生だったがふと足を止めると僕たちの方へ振り返る。

 

「高月君。抵抗はあるとは思うが、これは吸血鬼として避けては通れないことなんだ。それだけはわかってほしい」

 

そう言い残して扇先生は病室を後にした。

 

「……」

「書類をもらったら場所を変えましょう。話自体はここで大丈夫だけどそのあとのことを考えると広い場所の方がいいと思うから」

 

扇先生の言葉に何も言えない僕を見た美羽さんが、移動するように促してくる。

 

「だったら、学院の施設はどうかな?」

 

そんな布良さんの提案に、美羽さんも賛同したため、後程届けられた許可証の書類を手に僕たちは二人に先導される形で病室を後にするのであった。

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