DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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お待たせしました、第30話Aです。

今後、話数の横にアルファベットが付きそうです。
次々話あたりで、章のタイトルが変更となります。
そこで今回の物語のヒロインが判明するという仕組みです。
もうすでに誰がヒロイン化が分かっている人がかなりだと思いますが(汗)

それでは、どうぞ


第30話A 暗示

「っち、やっかいな」

「どっちだ!」

 

飛び出してすぐに通り道に出た。

その道を右に逃げたのか、それとも左に逃げたのかは私たちには視認することができなかった。

 

(あの男はやはり、同胞だな)

 

人間では到底不可能なその素早い速さに、私は確信した。

吸血鬼ならば、あの弾丸を躱すことも、私たちの目から逃れるように逃げることも可能だ。

 

(とはいえ、早く見つけなければ)

 

「佑斗、お前は左を。私は右を探す!」

「分かった」

 

私の言葉を聞いた佑斗君は真剣な面持ちで頷きながら、素早い動きで左側に向かって走っていく。

 

(早いな……だが、この私には勝らないがな)

 

尤も高野を確保できれば、速い遅いは関係ない。

だが、これでも先輩吸血鬼としてのプライドもあるのだ。

 

「だからこそ、私は全力で追いかけないとなっ」

 

そう言い切った私は、一度バックステップで後方に下がりながら地面を蹴る。

その瞬間、私は風になった。

それは決して比喩ではない。

凄まじい速度で私は道を駆ける。

上半身を低くし、空気抵抗を限りなく少なし、両腕を後方に伸ばす体制で、私は駆けていく。

 

(よし、絶好調だ。とにかく走るぞ)

 

私が本気を出せば自動車など目ではない。

それほど、私は速いのだ。

とはいえいつもは疲れるために、ここまでの速度で走ることはないわけだが。

 

(感じる。奴の……高野の吸血鬼としての力の余韻を感じる)

 

私は、一度会ったことのある吸血鬼であれば無意識に放つ”力”のようなものの余韻を感じ取り、そいつのいる場所まで辿ることができる。

だが厄介なことに、余韻というのはすぐに消滅してしまう。

そのため時間が経てばたつほど、余韻は感じにくくなる。

実際、私が感じ取っていた余韻も、感知できるぎりぎりのものであった。

だが、それは私が追っているこの方向こそが高野が逃げている正しいものだということを、示していた。

 

「あと少しで背中が見えるはずだ」

 

こちらもかなりの速さで走っている。

そして余韻の濃さも徐々に大きくなっている。

あと少し。

あと少しで奴に追いつく。

そう思っていた時だった。

 

「うわぁぁぁ!!!」

「この声……っく!」

 

前方から聞こえてきた声の正体に気づくよりも前に、私はさらに足を速める。

できれば当たってほしくない予感を抱きながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりかっ!」

 

少し走った先にいたのは、立ち止まっている高野の姿だった。

それならば問題はないだろう。

問題なのは……

 

「浩介。これはいったいどういうことなんだよ?」

 

奴が人質を取っていることだ。

しかも、相手は佑斗の友人の倉端直太だ。

 

「なんだ、友達か?」

「………そいつを人質にして、逃げられるとでも?」

 

口元をゆるめて不敵な笑みを浮かべる高野の言葉に答えずに、投降を呼びかける。

 

「ちょっと、これはどういうことなんだよ!?」

 

私の言葉に頷く高野に、倉端が声を荒げる。

 

「うるさい、黙れ」

「はい、黙ります。なので銃口をぐりぐりしないでください」

 

その倉端を、高野は銃口をこめかみに押し付けながら脅すことで沈めた。

 

「たしかに、人質一人では逃げ切るのは難しいな」

 

私の問いかけに、頷きながら答える高野だが不敵な笑みを浮かべ続けていた。

 

「だが、こうすればどうだ?」

 

高野はそういうや否や、にやりとほくそ笑む。

口の端に牙のようなものが見えた。

 

「おい、やめ――――」

「いつッ!?」

 

高野の意図に気づき、制止の声をかけた時は既に遅かった。

 

「な、何がっ!?」

「おい、動くなよ? 下手すると死ぬぞ」

 

高野は一旦首筋から顔を上げると、そう脅して再び首筋に牙を立てた。

血を吸っている最中に、下手なことをすれば動脈を傷つけて相手を死なせてしまう可能性がある。

人質の安全を優先するのであれば、下手に動くことができない。

そんな人質の安全を最優先する私の考えを見抜いているようだった。

 

(っち、一応対策はしておくか)

 

血を吸った以上何らかの能力を使えるのは間違いがない。

ならば、何が来てもいいように準備をしておくことしか、私にできることはない。

そんな中、血を吸い終えたのか高野は不敵の笑みを浮かべながら倉端の首筋から顔を話す。

 

「行くぞっ!」

 

その時を狙っていた私は、高野と距離を詰めようと足に力を込める。

 

「待ってくれっ! 俺の話を聞いてくれ!」

「何だ命乞いか? いいだろう、聞いてやる」

 

高野の制止の言葉に、私は無駄なあがきだと思いながら耳を傾けることにした。

 

「確かに俺は悪いことをした。だが、俺だってしたくてこういうことをしているんじゃない! 生きるためには仕方がなかったんだ」

「……」

 

高野の馬鹿馬鹿しい言葉に口を挟みたくなるのを必死にこらえて、私は先の言葉を待つ。

 

「この都市には差別が存在するんだ! これは世界に対する復讐なんだっ!」

「復讐?」

 

ふと、高野の口から出た単語に私は口を開いた。

 

「そうだっ! お前だって、差別されてきたはずだ! だから分かるだろ? 俺は被害者なんだ! そんな俺を君は捕まえるのか?」

「…………」

 

高野の言葉を聞いているたびに、視界がぶれていく。

それだけでなく頭の中がかき回されるような感覚まで襲ってくる。

だが、それは一瞬のことで、感じたかと思えばすぐに変な感覚は無くなっていた。

 

(何だこの気持ち悪い感覚は? ……なるほどそういうことか)

 

一瞬で感覚が消えることで、それの正体がワタシにははっきりと把握することができた。

ならば、一興のってやるのもいいだろう。

 

「なるほど。お前の言いたいことは分かった。お前の気持ちも十分にわかる」

「そうだろう」

 

私の言葉に、高野は私に”効果”があると思っているのかほくそ笑む。

 

「わけあるかっ!」

「なにッ!?」

 

私の言葉に、ほくそ笑んでいた高野の顔が驚きに染まった。

 

「何が差別だ。そんなちっぽけで世の中に復讐するとは片腹痛いわっ!」

「お、おいよく聞けっ! お前は正気じゃないんだ。正気に戻れっ!」

 

私の言葉に、高野があわてた様子で言ってくる。

すると、またあの妙な感覚が襲ってくる。

だが、それは一瞬でなくなる。

 

(やっぱりそうか)

 

「貴様が正気ではないんだ雑種。雑種の分際でこの私に暗示か催眠かは知らぬがかけようなど、万死に値する所業だ」

「ッ! なぜそれを?!」

 

私の罵る言葉に、高野の表情が固まると驚きに満ちた表情で問い詰めてきた。

高野の能力は催眠系だ。

 

「お前の能力は、自分の言葉で、相手から正常な思考能力を奪い、言葉巧みに操る系統と言ったところか。雑種にはもってこいの下等な能力だ

「まさか、自分で暗示を振り払うとはな」

 

言葉とは裏肌に、高野の表情には危機感がなかった。

それが妙に不気味だ。

とはいえ、この私には催眠や幻術系の能力は無効だ。

そういった効果を持つ”ある物”を持っているおかげであるが、一瞬は効果が出てはしまうが、ある物によって即座に打ち消されるのだ。

 

「いくら惑わそうとしても無駄だ。貴様の能力は私には効かない」

「確かにそうだな。だが、それはどうかな?」

「何?」

 

私の呼びかけに不敵な笑みを浮かべながら答える高野に、私は顔をしかめる。

 

「高月君!!」

「ッ!?」

 

そんな時、後方から布良さんの声が聞こえた。

どうやら援護に来てくれたようだ。

 

「どうやらお前もここまでのようだな。貴様の下等能力はあいつにも効果がないのだからな。さあ、人質を解放しな」

 

布良さんには私と同じく、幻術や催眠系の能力は効かない。

これで私の優勢は確定した。

 

「おい、聞いてくれっ! 俺は悪くない! 悪いのはあいつだ。あいつが罪をなすりつけきたんだっ!」

「何、洒落ごとを」

 

無駄なあがきを始めた高野に、私は呆れ果ててため息を漏らす。

 

「お前友達だろっ! 命を懸けてでもあいつを止めるんだっ!!」

「そうだな………俺が止めないと」

 

高野の言葉に惑わされた倉端が私の腰にしがみついてくる。

 

「って、離せっ! というかどこをつかんでいやがるっ!!」

 

無理やり引きはがそうとするが、怪我をさせてはいけないということを考えると、あまり力を籠められない。

それに、もしかしたら命をかけてでも本当に止めてくるかもしれない。

 

(こうなったら布良さんに託すか)

 

「信じられないよそんなの……高月君が罪をなすりつけるだなんて」

 

布良さんは高野の言葉が信じられないようだ。

 

(やはり、無効化されてるな)

 

倉端の対処法はあるので、あとは布良さんが捕まえるだけ。

少々筋書きは違うが、こういう感じでいいだろう。

 

「本当なんだっ! あの男はクスリを常用しているんだ! 捕まえるのは俺じゃなくてあいつなんだよっ! あいつは差別を受けて、それを恨んで復讐をしようとしているんだ!!」

「もういい、それ以上口を開くな雑種。さあ、この喜劇に幕を引くとしよう。布良さん、その男を捕まえるんだ」

 

これ以上茶番には付き合い切れないと感じた私は、高野を黙らせると布良さんに指示を出した。

 

「そんな……高月君が復讐をするなんて……」

「布良さん?」

 

布良さんの様子がおかしいのに気付いた私は、首をかしげながら声をかける。

当の布良さんは目を閉じていて様子がわからない。

 

「そうだね。高月君を捕まえないと」

「どうしたんだ? 私ではなくそっちの男だ」

「何を言ってるの? あんなかわいそうな人を捕まえられるわけがないじゃない」

 

私の言葉に、布良さんは否定の言葉を返してきた。

 

(目に光がない……ということは催眠状態!?)

 

ようやく私は、布良さんが催眠状態にかかっていることを知った。

 

(しかしどうしてだ? あれを持っている以上、効果が出ないはず………まさか、効果切れ!?)

 

自分で導き出した結論に、私は頭が痛くなった。

何でこうも間が悪いのだろうか?

 

「無駄さ。あんたの言葉なんて、もう届くわけがない。それじゃ、俺はさっさと退散とさせてもらおうか」

「待てっ!」

 

不敵な笑みを浮かべた高野が私に背を向けるのを見て、慌てて引き止める。

 

「大人しく友人につかまったらどうだ? 怪我をさせたくはないだろ?」

「……ック」

 

完全に私の考えていることは見透かされていた。

この二人にはけがを負わせたくはないという私の考えが。

それだけに、悔しかった。

 

「……いいだろう。だったらその眼で見ておけ。けがを負わせずに貴様を捕まえてやる」

 

だが、この私がすんなりと諦めるわけがない。

 

「そんなのできるわけが―――」

 

私の宣言に、高野は無理だと断言した。

だが、可能なのだ。

催眠状態に陥ってはいるものの、それは心の隙間を利用して、無理やり第三者の意思を混入させているだけ。

ならば、心の状態を不安定にさせてやればいいだけだ。

そうすれば、あの雑種の能力も、それにつられて不安定になる。

不安定にさえなれば催眠は一瞬で解けてしまう。

倉端に関しては意識を奪うくらいで十分だ。

 

「ハッ!」

「うっ!?」

 

そう判断した私は、腰をつかんでいる倉端の腕を手でつかむと、掛け声とともに”気”を送った。

それによって、倉端の身体はまるで糸の切れた人形のように地面に崩れ落ちる。

無論、ただ気を失っただけだ。

 

「なっ!?」

「自分の”気”というエネルギーを一気に相手にぶつけることで、相手の体にスパークを起こす。その反動で意識を強制的に沈める……一歩間違えれば危険な術だが、扱い方さえ間違わなければ鎮圧には有効だ」

 

突然のことに驚きをあらわにする高野に、私は静かに説明をした。

 

「だ、だがもう一人はどうする? 無理やり突破するか?」

「その必要はない。降参するんだからな」

 

私は降参の意思を込めて両手を上にあげた。

 

「降参だ。おとなしく捕まることにしよう」

「うん。ありがとう」

 

操られている布良さんはほっとした様子でお礼を言いながら、私に近寄ってくる。

 

(よし、いまだ)

 

「その前に布良さん。一つだけ聞いてほしいことがあるんだが、いいか?」

 

この時を待っていた私は、即座に口を開いた。

 

「うん。いいよ、何かな?」

 

操られていても、根はやさしい布良さんだ。ちゃんと相手の話を聞こうとしている。

それが、今回のようなことを招いてしまったわけだが、それでも今の私にとっては幸運だった。

 

「実は私は………」

 

そこまで言いかけて言葉が詰まった。

 

(何をビビッている? これを言わなければどうにもならないだろ)

 

言葉が詰まるのは、次の言おうとする言葉に抵抗があるからだ。

だが、このままではあの雑種を捕まえられない。

そのためには犠牲が必要だ。

 

「ロリコンなんだ!!」

「………え?」

 

私のロリコン宣言に、布良さんが一瞬反応を示した。

 

「いやぁ~、やはり、胸は大きいのではなく膨らみかけに限るなぁ!」

「な、ななななななな!!?」

 

さらに言葉を続けると、布良さんから、頬を赤くしながら目を丸くするという強烈な反応が返ってきた。

 

(よし、もう一歩)

 

「15歳を過ぎた女はもはやオバサンさ、いやもうロリ最高ッ!」

「にゃ、にゃにを言ってるの!? 犯罪だよ! 卑猥だよ! エッチだよ!!」

 

私の一言が止めとなったようで、目を回しながら叫ぶ布良さんはもはや、高野の暗示の影響は受けていないようだ。

 

「ま、まさか今のでわざと能力を不安定に!?」

「自分を犠牲にした甲斐があって何よりだっ」

 

私の一連の行動に、驚きを隠せない高野に距離を詰める。

 

「こんなくだらない方法でっ!?」

「その方法をさせたのはてめだっ!!」

「げはぁっ!!?」

 

怒鳴りながら、私は高野の身体を厨高くまで蹴り上げた。

 

「この私を変態扱いしたその罪、その身に受けよっ!!」

「ま、待て。変態扱いは自分が―――」

「死ねぇぇえっ!!!」

 

高野の言葉を遮るようにして、私は高野に地面に向けて拳を思いっきり突出した。

 

「ぎゃごっっ!?!?!?」

 

上空から地面にたたきつけられる形になった高野は、5,6回ほどバウンドしたのちに地面に倒れた。

完全にノックアウトしたようだ。

とはいえ、指が痙攣したように動いていることから死んではいないが。

 

「後はこいつを拘束して」

 

私は今後のことを思い起こしながら高野を拘束すると、静かに目を閉じた。

最後は、”彼”と変わるだけだ。

 

(まあ、最後にとんでもない大仕事が残るだろうが。まあいいか)

 

彼ならばうまくやるはずだし、私が特に何かをする必要は感じなかった。

本音を言うと、うまく誤解を解ける自信がないだけだが。

こうして私は、眠りにつくのであった。

”彼”に非常に最悪なお土産を残して。

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