DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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お待たせしました。
第31話Aです。

序章と本章(E)と同一だった箇所は、今回で終了となります。
次話よりついにヒロインとの物語が始まります。

感想やアドバイス等がございましたら、ご遠慮なさらずご連絡いただけると幸いです。


第31話A 誤解と検診と

「あれ?」

 

気が付くと、僕はどこかの道に立っていた。

ちょうど開発地区に続く道であることは分かったが、それ以上はさっぱりだった。

きっと潜入捜査関連の理由なのはわかったのだが。

 

「で、この人は誰だろう?」

 

拘束された状態で地面に倒れている男の人に、僕は首をかしげた。

おそらくは、この人が薬の売人だろうけど、名前ぐらいは知っておきたい。

 

「高月君」

「あれ、布良さん?」

 

そんな、突然のオンパレードに、混乱しかけていると背後から布良さんが声をかけてきた。

 

「どうしたの?」

 

布良さんの表情が曇っているため、僕はそう尋ねた。

 

「私ね、高月君のことを大事な友達だと思ってるよ」

「あ、ありがとう」

 

いきなりの告白に、感動よりも疑問の方が勝っていた。

 

(どうして今そんなことを言うんだろう?)

 

「道を踏み外そうとしているのを止めるのも、友達の役目だと思うの」

「うん、僕もそう思うよ」

 

友人が間違いを犯そうとしているのを止めることはとても大事なことだと思う。

思うのだが、そろそろどうしてそのような話を始めたのかを説明してほしいと思ったり。

 

「だから、ロリコンなんて言う間違った道に進んでいる高月君を正しい道に戻さないといけないの。だから、大人しく検挙されてくれるかな?」

「いきなり何っ!?」

 

突っ込みどころ満載すぎて、それしか口にすることができなかった。

 

「どうして、いきなり僕がロリコン扱いに!?」

「さっき言ってたじゃない。そのろ、ろろろ”ロリコン最高”とかむ、むむむ”胸は膨らみかけがいい”とか」

 

僕が言ったであろう言葉を口にするたびに、顔を赤くする布良さんはかわいらしく思えたが、当事者である僕として、そんなことを思う余裕はなかった。

当然だが、僕にはそんなことを言った記憶がなかった。

 

「そんなことを言った記憶がないんだけど? いや、本当に」

「……」

 

疑いのまなざしを向けてくる布良さんに、僕はどうすればいいかを考えた。

 

(このままだと何を言っても信じてもらえなさそうだよね)

 

一瞬、”彼”のことを話してみようかという考えが出てきたが、すぐに却下した。

本当のことを言えば、どうなるかがわからないし、嘘のことを言ったとしても、なんとなく痛い目を向けられそうだったからだ。

 

(まあ、時々記憶がなくなることがある程度でいいか)

 

「それよりも、主任に伝らくした方がいいんじゃ……」

「あ、そうだね」

 

そう結論付けたものの、自分から進んで言うのもおかしい(というより、説明にもならない気がする)ので、最終的には誤魔化すことにするのであった。

その後、駆けつけた佑斗君たちに事情説明(僕の場合は記憶がなかったため布良さんがほとんどだが)をして、倉端君については軽く検査を受けてもらった後工作班による処置が行われることとなった。

それを告げられた時、佑斗君は少しばかり抵抗を示していたものの、主任の説明に渋々と言った様子で納得していた。

そんな佑斗君の姿を見て、僕は罪悪感のようなものに駆られてしまった。

”もし、もっとうまくしていれば倉端君は工作班の処置を受けづに済んだのではないだろうか”という後悔が。

謝ろうとしたが、倉端君の見送りをするとのことで、佑斗君が先に風紀班支部を後にしてしまったため、それは叶わなかった。

 

(次あったら謝ろう)

 

そう自分に言い聞かせた僕は、ふと今日が定期検診の日であることを思い出したため、検診を受けるべく扇先生のいる病院へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん。怪我とかはもう大丈夫のようだね」

「そうですか」

 

一通りの検診を終え、結果を聞いた僕は一安心する。

今日はいろいろと(記憶にはないけれど)無茶をしたので、何らかの異常が出ているのではないかと思ったが、それも考えすぎだったようだ。

とはいえ、無茶はしないに限るのだが。

 

「でも、ちょっと薬を打たせてもらっていいかな? いや、心配性な医者の配慮というものでね」

「はぁ……別にかまいませんけど」

 

扇先生の問いかけに、僕は首をかしげつつ応じると扇先生は何かの薬が入った注射器を使いそれを投与した。

 

「最近調子はどうだい?」

「まあ、ぼちぼちですね。今日もなぜかロリコン扱いされましたけど」

 

扇先生の問いかけに、僕は思わず愚痴をこぼしてしまった。

これは扇先生にするような話ではない。

 

「な、なんだってぇぇ!!?」

 

だが、突然扇先生は非常に酢様じい反応を示した。

 

「そうか、高月君はロリコンだから、僕のアタックが通じなかったのかッ!」

「僕はロリコンではありません!! というより、そもそもあなたのアタックはロリコンでなくとも通じませんっ!」

 

悔しげに声を上げる扇先生に、僕は全力でツッコんだ。

 

「こうなったらロリコン矯正用の惚れ薬でも作って……」

「……それじゃ、これで失礼します」

 

ぶつぶつとつぶやく扇先生の言葉に、寒気がした僕は逃げるように病室を後にするのであった。

 

「はぁ……」

 

病院からの帰り道、思わず僕はため息を漏らしていた。

扇先生のあれもあるのだが、一番の悩みの種は意識が途切れた時のことだ。

意識が途切れ本能が前に出ているとき、僕の意識は完全にない状態だ。

つまり、その間何が起こっているのかを僕が理解することは不可能なのだ。

しかも場合によっては今回のようにあらぬ誤解を与えてしまうこともある。

 

「これは何とかしないと」

「何がだ?」

 

ため息交じりにつぶやく僕の背後から、突然声をかけられた。

 

「うわ!? 佑斗君」

「そっちは今終わったのか?」

 

慌てて後ろを振り向くと、そこには片手をあげている佑斗君の姿があった。

 

「うん」

「お前も大変だよな、扇先生にはいろいろと」

 

佑斗君の問いに答えるとなぜか同情のまなざしで言われてしまった。

 

(そういえば、佑斗君も餌食になってたりするんだっけ)

 

同じ境遇で親近感がわいているのかもしれない。

「ところで、佑斗君」

「なんだ?」

 

少し前にした決意をそのまま実行するに移す時が来た。

 

「ごめんなさいっ!」

「ち、ちょっと!?」

 

突然頭を下げて謝る僕に、佑斗君があわてたような声を上げた。

 

「佑斗君の友人を事件に巻き込んで本当に、申し訳ないと思ってる。佑斗君が気が済むのであれば土下座でもなんでもするから、許してほしい。この通り」

「………」

 

そんな佑斗君に、僕はさらに言葉を続ける。

これで許してもらえるとは僕も思っていない。

だが、少しでも佑斗君の怒りを鎮めることができるのであれば。

 

「えっとだな……とりあえず顔を上げてくれ」

「わ、わかった」

 

佑斗君の言葉に、僕は覚悟を決めて顔を上げた。

 

「直太のことについては別に起こるとかそういう感情はない。怪我とかもしてなかったらしいし、逆にそのことでお礼を言いたいぐらいだ」

 

顔を上げると佑斗君の表情は意外にも、優しい感じがした。

 

「だから、怒るとかそういうことをする必要は俺には感じられない」

「佑斗君………ありがとう」

 

佑斗君が言ってくれたその言葉は、僕の胸につかえていたものをすべて取り除いてくれるのに十分なものだった。

 

「さあ、早く入ろうか。もう夕食の時間だし」

「そうだね」

 

太陽が沈みかけ、周囲がオレンジ色のカーテンに包みこまれる中、僕と佑斗君は寮へと続く玄関の扉を開けた。

 

「「ただいま」」

 

中にいるであろう皆に声を駆けつつ共有スペースに入った僕たちを、破裂音が出迎えた。

 

「うわっ!?」

「な、なんだっ!?」

 

突然のことに驚きの声を上げる僕たちに、破裂音を立てたであろう寮の皆に大房さんを加えた皆が、笑みを浮かべていた。

 

「ユート、コースケ。入寮して一か月」

『おめでとう』

 

そしてエリナさんが口火を切るようにして、僕たちに一斉にお祝いの言葉を駆けられた。

 

「一か月? 僕たちが入寮して……」

「そのために、こんな催しをしてくれたのか?」

 

気づけばもうそんなに月日が経っていたんだなと思っている僕をよそに、佑斗君たちは話を進めていく。

 

(でも、僕の場合はここに来てから、二週間ぐらい経ってるんだけど……)

 

やはり細かいことは言わない方がいいのだろうか?

 

「後は、事件解決のお祝いという意味もあるわ」

「今日は二人とも大活躍だったもんね」

 

美羽さんに続いて布良さんも説明に加わった。

 

「あれはほとんど佑斗君のおかげだよ」

「いやいや、もっと自信を持てって。交渉している時の浩介の演技はすごかったぞ。まるで本当にそういう世界の売人かと思うほどに」

「あ、ありがとう?」

 

佑斗君の微妙に褒めているのかいないのかが微妙なフォローに、僕は思わず疑問形で返してしまった。

そもそも潜入捜査中の記憶が全くと言っていいほどないために、何が起こったのかさえ僕は知らないのだ。

できればどうしてロリコン疑惑をもたれるようになったのかの理由も知りたかったりする。

 

「本当は倉橋さんもご一緒にと思ったのですが、吸血鬼のことを知らないでしょうから」

「確かに」

 

僕は稲叢さんの残念そうな言葉に頷いた。

いつどのようなことで吸血鬼のことがばれるかがわからない。

また、一度工作班によって催眠術をかけられている手前、もう一度それをされる可能性のあることは、倉端君のためにも僕たちのためにも控えたほうがいのかもしれない。

 

「でも、寮に住んでいない私まで参加してよかったんでしょうか?」

「ひより先輩も私たちのクラスメイトじゃないですか」

「そうそう。枯れ木も山の賑わいっていうしね」

 

大房さんの不安そうな言葉に、稲叢さんとエリナさんが反論するが、

 

「それ、何にもフォローになってないよ」

「それに、使いどころも間違っているから」

 

エリナさんの用いたことわざが間違っていることを僕と布良さんが指摘した。

なんだか、重箱の隅をつつくようであれだけど。

 

「あり? ま、まあ、大事なのは二人を祝う心だよ」

「そうだね」

 

その指摘に首をかしげながらも、口にした言葉に、ニコラも頷きながら賛同した。

 

「それじゃ、佑斗。せっかくだから、音頭でもとりなさい」

「え? 俺が?!」

 

美羽さんの促す言葉に、佑斗君が目を丸くして声を上げた。

 

「そうだよ、なんたって六連君と高月君が主役だもん」

「だったら、もう一人の主役である浩介はどうなんだ?」

「ッ!?」

 

佑斗君が僕の名前を出した瞬間に、僕は条件反射で佑斗君の背後に回ってしまった。

 

「絶対に言いそうにないから、佑斗がやりなさい」

「……分かった」

 

背後に回った僕を見て、悟ったのか美羽さんが再度促すと佑斗君は観念した様子で頷いた。

 

(ダメだよね。いつまでもこれじゃ)

 

「いや、やっぱり僕がやるよ」

「浩介?」

 

自分を変えていかなければいけない。

そういう思いが僕を動かした。

唖然とする佑斗君をしり目に、僕は一歩前に出た。

 

「皆、今日は僕たちの為にこのような催しを開いてくれてありがとう。これからもよろしくお願いします」

 

若干震える声の中、僕は言い切ると、少し間をおいて定番の単語を口にする。

 

「それじゃ、乾杯!」

『乾杯!』

 

こうして、僕たちの入寮歓迎パーティーは幕を開けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「高月君、起きてる?」

「布良さん? 起きてるけど」

 

パーティーも終わり、そろそろ寝ようとしている中、ドアをノックしてきたのは布良さんだった。

 

「ごめんね」

「いや、別にいいけど。どうかしたの?」

 

申し訳なさそうに部屋に入ってくる布良さんに、僕は用件を尋ねた。

 

「あ、うん。さっき高月君あてに荷物が届いたから」

「そうなんだ。ありがとう」

 

確かに布良さんの手にはやや小さめの箱があった。

お礼を言いながら布良さんから僕宛ての荷物を受け取る。

 

「ねえ、高月君」

「何?」

「もしかして、え、エエエエエッチなDVDじゃないよね!?」

 

まじめな表情を浮かべていた布良さんが、顔を赤くしてドモリながら問いただしてきた。

 

「違うよっ! というより、いい加減信じてよ。もし信じられないんだったら、目の前で箱を開けるけど」

「し、信じていないわけじゃないよ。ないんだけど……うぬぬー」

 

僕の反論に、慌てて返してくる布良さんだったが、しまいには難しい(ちょっとだけおかしいと言ったほうが最適かもしれない)表情で唸っていた。

 

「はぁ……高月君を信じるよ」

「あ、ありがとう」

 

果たして喜んでいいのかどうかは微妙だが、僕は信じてくれた布良さんにお礼を言った。

 

「それじゃ、お休み。高月君」

「うん、お休み。布良さん」

 

そして布良さんは部屋を後にした。

 

「さてと」

 

僕は改めて僕に届いた箱と向き合う。

差出人は『鈴木卓郎』となっているが、おそらくは偽名だろう。

なぜなら住所の方がめちゃくちゃだからだ。

海上都市内が差出人の住所になっているが、僕の記憶では記載されている住所は存在しなかったはず。

厳密には、開発地区あたりだが。

 

(わざわざ僕にこういうのを送ってくる相手に心当たりがないわけではないんだけど)

 

もしそうだとすれば、一体中身はなんなのだろうか?

 

「何だろう、なんか眠い」

 

(中身は起きてから見ればいいか)

 

潜入捜査をした疲れなのか、強烈な眠気に襲われた僕は箱の中身が何なのかを考えるよりも、眠気の方を取ることにした。

箱は机の上に置いておくことにして、ドアには鍵をかけてから明かりを消すとベッドに潜り込んだ。

 

「おやすみ」

 

誰に言うでもなく、そう呟いた僕はそれから数分と経たぬ間に眠りに落ちるのであった。

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