DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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長らくお待たせしました。
第32話Aです。

前章での問題を改善できるよう頑張りたいと思います。

連日投稿ですが、現在並行して執筆している18作品のほうの執筆時間が満足に取れないことなどの理由により、今月いっぱいで終了することとなりました。
来月からは不定期更新という形にはなりますが、”執筆をやめる”わけではありませんので、ご安心ください。

本作を楽しみにしていただいている皆さんには大変申し訳ありませんが、ご理解のほうをお願いします。

追記
執筆時間が諸事情により取れなかったため、30日の投稿は見合わせます。
ご迷惑をおかけしますが、ご理解のほうをお願いします。
なお、31日はちゃんと投稿いたしますので、楽しみにしていただけると幸いです。


第32話A 暗躍する者と動き始める者

―――話をしよう。

 

語るは、故郷を捨てし小鳥

語るは、最強の名を持つ狼。

接点無き者たちは、過去の因果で結びつく。

片方は極端を憎み、もう片方は平衡を好む。

小鳥と狼は出会った。

片方は敵の因果を持つ者と。

片方は好意の思いを持つ者と。

牙のない狼は、子狼と成り果てる。

子狼が狼となるときは、すぐそこかもしれない

 

―――話をしよう。

 

孤独に苛まれた狼と故郷を捨てし小鳥の物語の

 

 

 

 

 

夜の闇に一筋の光が差し込んで行く。

それは朝を告げるもの。

人間は少しずつ活動を始め、吸血鬼は眠りにつく支度をする。

そんな中、とあるビルの屋上に”それ”はいた。

黒のマントをはためかせ、黒いサングラスをかけたその人物はただただ朝日に照らされつつあるアクア・エデンを見ていた。

その人物は徐に携帯電話を取り出すと、ボタンを押して耳に押し当てる。

どうやら電話をかけているようだ。

 

『誰だ?』

「頼みがある。ジダーノ」

 

電話に出たであろう男の声に応えるように紡がれたその声色は、男のものであった。

 

『………なぜ俺の名を知っている?』

「さあ? ご想像にお任せしよう」

 

名前を言い当てられた電話口の男……ジダーノは、訝しんだ様子で男に問いただすが、男はとぼけたように答えた。

 

『頼みとは?』

「日本の海上都市、アクア・エデンを知っているか?」

『噂程度なら。何でも吸血鬼が暮らせる唯一の都市だったか』

 

男の問いかけに、応えるジダーノの言葉に男は満足げに頷く。

 

「そこで、ある事件を起こしてもらいたい」

『事件だと?』

 

男の要請に、ジダーノが声を潜める。

 

「そうだ。内容に関してはそっちが要請を受けてくれると答えてくれるまでは言えない。報酬は海上都市にいる間のお前らへの食糧提供でどうだ?」

『それをこの俺が聞くとでも思うか?』

 

男の言葉に、ジダーノは聞きかえした。

 

「ふははは!!」

『何がおかしい?』

 

突然笑い出す男にジダーノは苛立ったような声を上げる。

 

「あんたの知り合いかなんかは知らないが、アンナ・レティクルという女がここにいる」

『ッ!?』

 

男の口から出た人物の名前に、ジダーノが息をのんだ。

それを聞いた男はさらにほくそ笑むと言葉を続けた。

 

「もしかしたら、被害者は彼女になってしまうかもな。まあ、それでいいのであればどうぞ。断ってください。あなたにはその権利があるのだから」

『ック……この俺を脅す気か』

 

男の脅迫とも取れない言葉に、怒りを抑え込みながらジダーノは声を上げる。

 

「ご冗談を。脅迫ではないさ。ただの”可能性”の話をしたまで」

『………分かった。受けよう』

 

そのジダーノの返答を聞いた男は笑みを浮かべた。

 

「それでは、これからあなた方にやっていただきたいことをお話ししましょう」

 

そして、男はジダーノに向けてこれから起こす”事件”の趣旨を告げた。

 

「これで、おたくとは完全に契約は結ばれた。逃げることは許されない」

『一つ条件がある』

「言ってみな」

 

ジダーノの言葉に、男は一瞬顔をしかめるが、条件の内容を促した。

 

『アンナに連絡を取りたい』

「ほぅ……」

 

ジダーノの掲げた条件に、男は面白いとばかりに頬を吊り上げる。

 

「その程度、条件にするまでもない。公安系以外であれば、どこへ連絡を取ろうが自由だ」

『感謝する』

「それでは、期待してるぞ」

 

ジダーノのお礼に、男はそう告げると一方的に電話を切った。

 

「時は流れる」

 

携帯をしまいながら、男は静かに口を開いた。

 

「雲は流れ、水は流れ、人々が行き交い、歯車が回る」

 

そこまでつぶやいた男は、ふと言葉を区切った。

 

「だが、私は違う」

 

朝日に照らされる中、男は言葉を紡いでいく。

 

「私の時は止まってしまった。私は誰だ? 私はどこにいる?」

 

その問いかけに答える者は当然いない。

それは男もわかっているようで、ため息を漏らす。

 

「例え、これでこの私が朽ち果てようが、滅びようが構わない。だから始めよう」

 

そこで言葉を区切った瞬間、突然突風が吹き荒れた。

その風に黒いマントがはためく。

そんな中、男は再び口を開いた。

 

「―――復讐を」

 

力強く、決して揺るがない信念を感じさせるそれは、全ての始まりを告げる言葉であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕が海上都市に来てから二か月ほどが過ぎた。

ここにきた頃は色々と慣れない環境であったが、今ではもうこの吸血鬼の生活に慣れていた。

仕事の方もいろいろと変化が起こっていた。

当初は風紀班の方ではサポート役だったが、最近は捜査をしたり巡回をすることが多くなった。

ちなみにそれは佑斗君も同じであり、二種間ほど僕が先輩ではあるのだがそれを感じさせないほどの変化に僕は少しばかり頑張ろうという気持ちが芽生えていたりする。

 

「おはようございます!」

「おはよう、布良さん」

「遅かったわね布良さん」

 

僕と佑斗君は美羽さんや布良さんたちと一緒に風紀班の方に向かっていたのだが、やはり着替えの面で大きく差が出てしまったようだ。

布良さんの巫女服(周りが”服”と言っていたため戻した)は、見ただけでも着るのに時間がかかりそうな感じが漂っていた。

 

「あぅぅぅ」

「まあ、別に勝負はしてないんだけどね」

「それを言ったら、全部終わってしまうわよ」

 

僕のつぶやいた言葉に、ため息交じりに美羽さんが反応した。

とはいえ、その通りではあるが。

 

「それじゃ、私たちは先に行くわね」

「うん、行ってらっしゃい」

 

気を取り直したのか美羽さんと佑斗君は巡回へと出かけて行った。

それを僕たちは見送る。

僕たちも本来であれば巡回に行くべきなのだが、HR終了後に主任から巡回にはいかずに支部の方で待つようにと言われたために待機となっていた。

ちなみに、そのことは布良さんが来る前に話していたりする。

 

「遅くなってすまないな」

 

佑斗君たちが巡回に向かってから少し遅れて、主任が姿を現した。

 

「大丈夫ですよ、遅れてませんから」

「それで、どうかしたんですか?」

 

主任にフォローの言葉をかけると、それに続いて布良さんが用件を促した。

 

「高月と布良にはこれから東側の開発地区の方に向かってもらいたい」

「開発地区ですか? でも、どうして」

 

主任の指示に、僕は思わず疑問を口にしてしまった。

 

「この前、高月が報告したことがあっただろ。『類似店詐欺』の黒幕について」

「あ、そういえば……」

 

ふと二か月ほど前の出来事が脳裏をよぎった。

あれは確か、格安(もしくはただ)を謳った内容の実在するお店の名前によく似せたチラシを配って客を自分たちのお店に案内する手口のことだ。

実際にお店に向かうと、チラシに書かれた内容とは全く異なる法外な料金を支払うことになるぼったくりバーだ。

しかも実在するお店の名前に近いチラシを配っているため、関係のない飲食店の評判が下がってしまうという二重の被害が発生するという悪質なものだ。

その二重の被害を、偶然その場に居合わせたために食い止めることができた僕は、この詐欺のことを知ったのだ。

そして、別件で聞き込みに回っている際に例のチラシを見つけ尾行をして黒幕の経営する飲食店を突き止めるに至ったのだ。

ちなみに、そのせいで始末書を書くことになったのだが、それはどうでもいいだろう。

 

「その黒幕の首謀者を内定している警察の方から、捜査協力が出たんだ」

「捜査協力ですか?」

 

布良さんの言葉に主任は静かに頷くと言葉を続けた。

 

「普通は警察の方だけで対処されますよね? それがどうして……」

「普通はそうだ。だが、今回は訳が違うんだ」

 

布良さんの疑問に答えるように口を開いた主任は、難しそうな表情を浮かべていた。

 

「黒幕の連中がある組織と裏取引をするという情報を入手したようでな」

「それが、今夜と言うことですか?」

 

僕の疑問に、主任は難しい顔のまま頷いて答えた。

 

「これから会うやつがどういうやつかを調べる余裕も全くない。だから念には念をということらしい。そして、今回の件を見つけたのは高月だからそれが妥当だということになった」

「なるほど」

 

主任の説明を聞いて、どうして僕たちなのかの疑問が解消された。

布良さんは……きっと先輩としてだろう。

 

「ということで、二人は大至急東側の開発地区に向かい、警察の捜査に協力しろ」

「「了解」」

 

こうして、僕たちは類似店詐欺の犯人らの裏取引の摘発という捜査協力に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「血の方は大丈夫?」

「うん。さっき吸わせてもらったから問題はないよ」

 

開発地区に向かう中、布良さんが少し心配そうな表情で訊いてきたため、僕は静かに頷きながら答えた。

 

「無理はダメだからね」

「分かってますよ、先輩」

 

真剣な面持ちで釘を刺してくる布良さんに、僕は若干演技じみた感じで相槌を打った。

 

「もう、まじめに言ってるのに」

「失礼」

 

案の定頬を膨らませた布良さんに、僕は軽く謝った。

 

「それで、そろそろ理由を聞かせてくれてもいいんじゃない?」

「え? 何のこと?」

 

話題を変えるべく、僕はかねてより聞こう聞こうと思っていた疑問を布良さんに投げかけたが、布良さんはとぼけているのかそれとも本当にわからないのか、首をかしげながら聞きかえしてきた。

 

「僕をパートナーに選んだことだよ。話によれば布良さんからそうしてほしいって言ったらしいじゃない」

「あー、それはね……憧れ、かな」

 

より具体的に伝えると、布良さんは苦笑しながら言いづらそうに口を開いた。

 

「憧れ?」

「うん。私って前まではずっと半人前のような感じで一番下のように言われてたから」

「それで、憧れていた後輩が現れたからパートナーを組んだんだ」

 

僕の言葉に、布良さんは申し訳なさそうに頷く。

確かに、気持ちは分からなくもない。

僕も同じ立場だったら間違いなくそうしていたかもしれない。

それに、後輩から”先輩”と呼ばれるというのはとても嬉しいものだ。

僕だって出来るなら呼ばれてみたいものだが、それにはまずちゃんと経験を積むことが必要だろう。

 

「それに」

 

まだ布良さんの話は終わっていなかったようで、どうでもいいことを考えている僕にさらに言葉がかけられる。

 

「高月君がロリコンだったら止めないといけないもんね」

「だから、それは誤解なんだって」

 

使命感に燃えた表情で告げる布良さんに、僕は何度目かわからない否定の言葉を上げる。

ここ一か月ほど、いまだにロリコンの疑惑が晴れる様子はない。

自分でもそのような原因を作っていると分かればまだ納得がいくのかもしれないが、僕にはその記憶がないのだ。

否定をしたくても、自信を持って違うと言えないのももしかしたらこの疑惑を晴らせられない要因の一つのなのかもしれない。

 

「大丈夫。まだ完全に決まったわけじゃないから」

「そ、そう。ありがとう?」

 

布良さんのフォローかどうかわからない言葉に首をかしげながらもお礼を述べた。

 

「まだ容疑がかかっているだけだから」

「かかってないッ」

 

僕は少しばかり強い口調で答えると、布良さんの頭をやや強引に撫でた。

 

「うわぁ、頭をくしゃくしゃにしないでー」

「くしゃくしゃにしてるんじゃなくて、僕の強い抗議を現して出ているだけ!」

 

突然のことに、驚く布良さんに、僕はそう返した。

 

「それは撫でてるって言わないよ~」

 

布良さんが、僕にそう反論してきた。

そんなこんなのやり取りを繰り返しながら、僕たちは東側の開発地区へとたどり着いた。

 

「あ、カリーナさん。こんにちは」

 

そんな中、近くを通りかかっていた女性の方に声をかけに行くと、布良さんとカリーナさんと呼ばれた女性は親しげに話していた。

 

「お待たせ―」

「現地協力者の人?」

 

話を終えてとてとてと駆け寄ってくる布良さんに、先ほどの女性のことを尋ねてみた。

 

「うーん、そんなところかな」

「ということは人間?」

「ううん。違うよ」

 

歯切れの悪い布良さんの態度に疑問を感じながらも、疑問の声を上げると首を横に振って応えてくれた。

 

「ということはお仲間か……それにしても、ここでチョコバナナを販売してるけど、売れるのかな?」

「近所の子供たちはちょくちょく買っているらしいよ。表側の方は細かい縄張りとかがあるから」

 

何とも難しい世の中だなと、布良さんの説明に思ってしまった。

そんなこんなで歩いていると、ある倉庫を見ているスーツ姿の男性が数人ほどいた。

 

「お疲れ様です。特区管理事務局、風紀班です」

「これは、風紀班の……やっぱり仕事が早いね」

 

男性たちのそばに向かうと、布良さんが声を静めて男性の人に名乗った。

今僕たちの前にいる男性たちは警察の人だ。

 

「ご協力感謝します」

「それはこっちのほうだよ。君たちのおかげで、詐欺事案も解決できてこんなものも釣れたんだからね」

 

協力とは言っても立ち会うだけなのだが、それも気にしていないのか警官たちは優しい笑みを浮かべながら倉庫の方を親指で指し示しながら答えた。

 

「ということは、あそこに?」

 

布良さんの言葉に警官たちは頷くことで答えた。

 

「それにしても、こうしてみるとまるで仕事のパートナーと言うより恋人同士に見えてくるな」

「はいっ!?」

「え!?」

 

僕たちの姿を見た警官の一人が漏らした言葉に、布良さんは目を丸くさせながら驚きの声を上げた。

たぶん、それは僕も同じだと思うけど。

 

「ち、ちちち違いますからっ」

「そうですよ! このままだとロリコンの容疑がさらに濃厚に」

 

否定する布良さんに乗じるようにして、僕も否定の言葉を上げる。

”ロリコン”の部分に関しては、声のトーンを落としたけど。

 

「ちょっと、それどういう意味っ!?」

 

だが、布良さんには十分聞こえていたようで、言葉の真意を問いただしてきた。

 

「あ、来たみたいですよ」

 

そんな時、タイミングよくやってきたジュラルミンケースを手にする男性が被疑者がいるであろう倉庫に向かっていくのを見た僕は、そう告げた。

 

「あ、本当だ。行くよ、高月君」

「了解」

 

取引の相手と思わしき男の姿を確認した布良さんの言葉に押されるように、僕たちは倉庫のドアに手をかけるとそれを一気にあけた。

 

「風紀班です! おとなしくしてください!」

「げっ!」

「くそッ! 見つかってるじゃねえか!!」

 

僕たちの登場に、動揺を隠せない男たちに布良さんは銃を突き付けて投降を呼びかける。

 

「何だよ、よく見た相手はチビじゃねえか。怯むことはな、やっちまえ」

 

だが、一人の男の人がそう口にしたのがすべてのきっかけだった。

 

「体系のことは言わないでっ!!」

「「「「げぶぁ!?」」」」

 

先ほどまで、体系のことを示唆する内容を言っていたためか、布良さんはいつにもまして素早い射撃で犯人たちを制圧していくのであった。

 

(あまり布良さんを怒らせるのはやめておこう)

 

僕はその光景を見ながらも、しぶとく抵抗を続ける犯人の一人を昏倒させながらそう誓うのであった。

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