DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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大変お待たせしました。

第34話になります。
当初は鑑賞会と銘打って書いていましたが、途中からただの丸写しであることに気づき、すべて削除して一から書き直しました。
先の分からない展開にできていればいいのですが、おそらくこれを読んでいる方の中には先の展開が見えているのではと思えてなりません。(汗)

それでは、どうぞ


第34話A 事件の始まり

それは私にとっては唐突な出来事だった。

 

『悪いが、お前には協力できない』

 

突然の連絡で、ジダーノから告げられたのはたったそれだけだった。

 

「そうか。まあ良い。お前はそこで指をかじっているといい。変革と時をな」

 

私が言い返したのは、たったそれだけだった。

 

「心配するな。腹いせに彼女に危害を加えるとかそういう大人げないことはしないことを約束しよう」

『そうか』

 

私の言葉に、ジダーノはただそれだけ告げて電話を切った。

こうしてジダーノは、私の計画を反故にした。

これで私は、あの計画を実行するのに必要な協力者を失ったことになる。

なら、計画をやめるか?

それは否だ。

ジダーノがだめになろうとも、協力者の替えなど探そうと思えばいくらでもいるのだ。

私は即座に携帯で、ある番号に電話をかける。

相手は数課コールしてからすぐに出た。

 

『はい、私です』

「お前に頼みたいことがある」

 

電話口に出た男に、私は開口一番でそう告げた。

 

『何なりとお申し付けください。我が御心は主の下にあります』

「分かった。……では」

 

電話口の男は、頼みごとが何であるかを効く前に即答で協力を申し出てくれた。

そのことに心の中で感謝の言葉を告げると、私はこれからしてもらいたいことを電話口の男へと告げるのであった。

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

「ふぅ、やっと一日終わった~」

 

一日の授業とHRを終えた僕は、思わず机に突っ伏してしまった。

 

「ずいぶんとお疲れの様子だな、浩介」

「あ、佑斗君」

 

そんな僕に声をかけてきたのは、苦笑しながら僕を見ている佑斗君だった。

 

「まぁね。残業の方がハードなのと、ちょっとした予期せぬ珍客がね」

「あー、なるほど」

 

たった一言だけで何のことかを察してくれた佑斗君は、ある意味すごいと思う。

 

「僕、先に支部の方に行ってるから、布良さんに伝言をお願いしてもいい?」

「分かった。俺たちも後から行くから。また後で」

 

佑斗君の返事を聞いた僕は、鞄を片手にふらつきながらも教室を後にすると、支部へと一人で向かうのであった。

 

(そう言えば、支部に一人で行くのは初めてだったっけ)

 

今まではどこへ行くのも布良さんなり佑斗君や、美羽さんと一緒だったような気がする。

そう考えると僕たちはある意味充実した毎日を送っているのかもしれない。

 

(吸血鬼になって、昼夜逆転はしたけどこういうところは人間とは変わらない……考えてみれば不思議なものだな)

 

ただ血を吸って人より力が強いというだけで、普通の人間とは区別される。

それが僕にはとても不思議でならなかった。

 

(まあ、まだ吸血鬼になって間もないからだと思うけど)

 

そんなことを思いながら、校門のところまで歩いた時だった。

 

「うーん、やっぱり寝不足かな。体がふらふらする」

 

先ほどから妙に視界がふらつくので、きっと体がふらふらしているのかもしれない。

まるで波に揺られる船の上にいるような感じだ。

……まあ、船に乗ったことは今の今までないんだけど。

 

「それになんだか眠い……」

 

(いやいや、こんなところで寝るのはさすがにまずい!)

 

場所のことを考えた僕は、必死に眠気に抗おうとした。

だが、結局は僕は眠気に抗えずに人が大勢通る場所なのにもかかわらず、近くの壁に寄り掛かると目を閉じた。

僕の意識が途切れたのは、それからすぐ後のことだった。

 

(あれ?)

 

そして気が付くと、僕は見知らぬ場所に立っていた。

周囲には畑がある田舎町のような印象を受ける場所だった。

風にそよぐ稲穂が、どこか懐かしく感じられる。

 

「――――――――――――」

 

そんな僕の耳に、何かが聞こえたような気がした。

それは誰かの声のような気がした。

僕はその方向に視線を向けてみる。

そこには温厚そうな顔をした、男の人の姿があった。

その横にはもう一人の男性が、温厚そうな顔の男の人と向かい合うようにして立っている。

どうやら二人で何かを話しているようだ。

だが、僕の立っている場所からは、吹き抜ける風の音が邪魔をしてその内容が何なのかを知ることはできない。

もう少し近づいてみようかと思ったが、どうしてか体が動かない。

 

(いや、そもそもここって現実なのか?)

 

俺はここにきて、至極当然な疑問を抱いた。

今いる場所に立っていることが当たり前のような感じがして気づくのが遅れたのだ。

俺は先ほどまで月長学院の前にいたはずだ。

それが気づけばこのような知らない場所にいるというのは、どう考えても不自然だった。

 

(でも、どうしてだろう)

 

ここの景色がどこか懐かしく感じてしまうのは。

そんな僕の疑問を消し去るようにけたたましく鳴り響くのは、携帯電話の着信音だった。

 

 

 

 

 

「……ん」

 

まるで携帯の着信音に引き戻されるように意識を取り戻した。

 

「あれ?」

 

気が付くと、そこは色々なお店が立ち並ぶ通りだった。

 

「ッと、電話電話」

 

疑問を抱くよりも早く、僕はなり続ける携帯電話を取り出し通話ボタンを押して耳にあてた。

 

「もしもし」

『高月君! 今どこにいるの!!』

 

電話口から布良さんの怒鳴り声が聞こえてきた。

その声の大きさに、僕は思わず形態を耳から話してしまった。

 

「どこって、歓楽街の中だけど」

『分かった! ちょうどいまそっちに向かってるから、動かないで待ってて!』

 

少しだけ電話と耳の間を開けて答えた僕に、いつにも増して鬼気迫る感じで言い切った布良さんは、僕が何かを言うよりも早くに電話を切った。

 

(な、何かあったのかな?)

 

「退けっ!!」

「うわっ!?」

 

頭を傾げているところに、男の物と思われる声と共に、黒い服装の男たちが数人ほど凄まじい速さですり抜けていった。

 

「危ないな」

 

僕は男たちが走り去っていった方向を見ながら文句を漏らした。

 

「………………何だか嫌な予感が」

 

ふとこみあげてきたそんな感じに、僕は先ほどのことを覚えておくことにした。

 

 

 

 

 

「高月君!」

「布良さん……って、その様子だとただの巡回じゃないよね。何かあったの?」

 

少しして走ってきた布良さんの焦っている様子に、僕は尋常ではない何かを感じ取り、布良さんに何があったのかを尋ねた。

 

「吸着事件が起こってその被疑者を追っているの!」

「追っているって、その被疑者はこっちに向かったってこと?」

 

僕の疑問に、布良さんは無言で頷いて答えた。

 

(吸着ということは、被疑者は吸血鬼ということか)

 

吸着というのは”吸血”を指す隠語である。

観光客が多いため、パニックを引き起こさないようにするための物だ。

他の理由として吸血鬼の存在を隠すためというものあるが。

 

「今美羽ちゃんたちも違う場所を探してくれているから私たちはこの辺を探すことになったんだけど……変な人とか似合わなかった?」

 

布良さんの問いかけに、真っ先に思い浮かんだのは、歓楽街をかけていく数人の怪しい人たちの姿だった。

 

「変な人……それだったら、あっちに向かって走っていく数人とすれ違ったけど……………」

「………」

 

僕の言葉に、布良さんが少しの間目を瞬かせる。

 

「すぐに追いかけるよ!」

「り、了解!」

 

布良さんの指示に僕は即座に頷くと、僕たちは数人の人たちが駆けていった方向に向かって捜索を開始した。

だが見かけてからかなりの時間が経っていたため、逃げていく被疑者の姿を見つけることはできなかった。

目撃者情報も歓楽街と言うだけあって僕以外にも多数集まったが、出口付近を最後にそれが途絶えた。

 

「もしかしたら、ばらばらに逃げて行ったのかもしれないね」

「そうかも。僕があの時追いかけていれば……っく!」

 

よく考えれば、あのような場所を全速力に近い速さで走っていくのは、どう考えても怪しすぎる。

 

「自分を責めたらメッ、だよ。今は逃げた人の目撃情報を集めて、次からは繰り返さないようにしよう。ね?」

「……そうだね。ありがとう、布良さん」

「どういたしまして」

 

自分の不甲斐なさに唇をかみしめている僕にかけられた優しい言葉に、僕は心を入れ替えて布良さんにお礼を言った。

 

「さあ、早く捜索の方をしちゃおー!」

「了解」

 

そして僕たちは、再び逃げて行った被疑者の捜索を始めた。

その途中で佑斗君たちのチームから連絡があったが、向こうもそれらしい人物の目撃情報は集まらなかったようだ。

 

「あれ、あそこにいるのって警察の人だよね?」

「そうだね。何か急いでるみたいだけど」

 

そんな中、複数の警察の制服を身にまとった人たちがどこかに向かって走っていく姿を目にした僕に、布良さんも続く。

 

(あっちの方向って、確か開発地区方面だったよね)

 

「ちょっと、声を掛けてみよう」

「え? あ、ちょっと待ってよ!」

 

僕の直感が声を掛けた方がいいと告げていたので、僕はそれに従い警官の下に駆け出した。

僕の提案に一瞬反応が遅れた布良さんは、駆け出した僕に追いつこうと慌てた様子で引きとめながらもついてきた。

 

「あの、すみません!」

「ん? 君は確か風紀班の。そっちも事件が起こっているそうで、お互い大変だな」

 

警察官の人に声を掛けると、走るのをやめてこちらに振り向いた。

僕……というよりは後ろから走ってきた布良さんで、僕たちが風紀班のものだということに気づいたのか、労いの言葉をかけてきた。

 

「”そっちも”ということも、そちらも何か事件があったんですか?」

「いや、事件と言うほどではないさ。なんでも、不審なボートが開発地区の方に漂着しているらしくてね。それを今から確認しに行くところさ」

 

僕の疑問に答えた警官の言葉に、僕は引っかかった。

 

「ボート……確かここには港なんてなかったよね?」

「うん。海上のルートはすべて封鎖されているはずだよ」

 

このアクアエデンにはモノレールや徒歩、車などの地上ルートを使わなければ来ることはできない場所だ。

 

「あの、その案件、私たちも同行してもよろしいでしょうか?」

「別にかまわないが……そっちも仕事中だろ?」

「いえ、もしかしたらこちらの事件と関係があるかもしれないので」

 

警官の問いかけに答えた僕に、警官は了承すると僕たちについてくるように告げて走り始めた。

 

「ねえ、どういうことなの? 関係があるかもしれないって」

「逃げるにしても、現場からの人目につきにくい逃走ルートはあったはずだよね?」

 

その道中、僕に説明を求めてきた布良さんに、僕は確認の意味を含めて問いかけた。

 

「うん。あそこだったら数か所ははあったと思う」

「それなのに、歓楽街という人目に付きやすい場所を逃走ルートに選んでいるのは、不自然すぎる」

 

僕が感じた疑問点はそこだった。

”なぜ、そこを逃走ルートに選んだのか?”

犯人が犯行に及んだ際の心理は、大抵は”どうすれば捕まらずに逃げられるか”というものになる。

捕まらないで逃げ切るには人の目をかいくぐって逃げるか、変装をしてあたかも観光客のようにふるまって逃げるかのいずれかの行動を起こす必要がある。

どちらにせよそれには、人目につかないルートを選ぶことが必要となるはずだ。

それを行わなかったのは、不自然すぎる。

 

「それともう一つ。もし犯人が遊びで犯行に及ぶのだとしたら、それこそ人通りの少ない場所でやるし、逆に多い場所でやるような愉快犯だとしてもやっぱり人目に付きにくい逃走ルートにしているはず。捕まったら意味がないんだから」

「なるほどー」

 

僕の推理(と呼べるかどうかは分からないけど)に、感心した様子で声を上げた。

 

「このことから犯人は、この都市の地理情報に詳しくない吸血鬼である可能性が高い。しかもそれが数人の吸血鬼も同じ条件だと思う」

「それに該当するのは……まさかッ!?」

 

僕の口にした予想に、布良さんも僕と同じ可能性にたどり着いたのか、目を大きく開けて驚いた様子で声を上げた。

僕はそんな布良さんに、無言で頷くことで答えるのであった。

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