DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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こんばんは、TRcrantです。
大変お待たせしました。

かなり日が空きましたが最新話の投稿となります。
ようやっと主人公(佑斗じゃない人)が主人公らしくなり始めました(汗)


第37話A 夢と聴取と対策と

(まただ)

 

僕は気が付くとまた見覚えのない場所に立っていた。

そこはこの間夢で見た畑がある田舎町のような印象を受ける場所と同じだった。

 

「待てよ!」

 

(ん?)

 

僕の耳に、誰かの呼び止める声が聞こえてきた。

その声の方に視線を向けると、そこには二人の男性が立っていた。

一人はこの前の夢で見た温厚そうな男性、もう一人はつり目をした男性だった。

 

(なんかいやだ)

 

僕は、その人の顔を見ると強烈な不快感を感じた。

 

「お前も俺の派閥に入れ。この世界は高貴なる存在が支配しなければならない」

「それが、貴殿とでも? 申し訳ありませんが、私は自分の信念を貫きます」

 

男の言葉に、男性は鼻であしらいながら背を向けた。

 

「はっ! 何が”人類との共生”だ。いいか? この世界を統治するのは我々吸血鬼だ! そして、この俺は選ばれたんだ!」

「…………………」

 

(何だか、むなしくなってきた)

 

男の言い分を聞いていた僕は、不快感どころか無性にむなしくなった。

それが何なのかは分からない。

もしかしたら男の姿が滑稽に見えただけなのかもしれない。

 

「私に言えるのは、あなたには――――の当主は向いていないということでしょう」

 

男性の声を遮るように、強い風が吹いた。

その風音に男性の声はかき消された。

そして僕の意識は再びブラックアウトしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『世界とは、常に理不尽なものだ』

 

暗闇の中で声が聞こえた。

 

『正しい者が虐げられ、間違った者が世界を動かす』

 

その声はどこか懐かしさを感じられた。

 

『ならば、私の手ですべてを変えて見せよう。この愚かな世界を』

 

憎悪に満ちた声は、僕を恐怖で震え上がらせることはなかった。

それどころか、心地よさを感じた。

 

『さあ、闇に身を任せろ。そうすれば、いずれは――――』

「ん……」

 

声に導かれるように、僕は目を開けた。

一番初めに視界に入ったのは、見慣れない天井だった。

周囲を見渡すと白色のベッドシーツに、カーテンが見えた。

 

「ここは……」

「目が覚めたようだね。プリンセス」

 

頭が半分寝ぼけている状態の僕に、これまたよく知る人物の声が掛けられた。

 

「扇先生」

「おっと、無理して起きなくてもいいよ」

 

扇先生の声に、起き上がろうとする僕を止めるように言ってきたので、僕はそれに従うことにした。

尤も、体が重く感じたので、扇先生の気遣いはある意味ありがたかった。

 

「目が覚めたようだな。高月」

「主任!? う……」

「だから起きたらダメだって」

 

突然聞こえてきた主任の声に、慌てて起き上がろうとした瞬間、視界が揺れたためそのままベッドに横になった。

 

「主任がいるのって、やっぱり」

「ああ、事情聴取だ」

 

僕の予想に主任は頷くことで肯定した。

僕は何者かに拉致されたのだ。

事情聴取を受けるのは当然のことだった。

 

「その前に、私からよろしいでしょうか? 彼に医者として説明したいことがありますので」

「ええ、もちろんです」

 

扇先生の申し出に、主任は声色を変えることなく返事を返した。

そして、扇先生が僕の下に歩み寄ってくる。

 

「血中のヴァンパイアウイルスは全くもって正常だったよ。ただ、少し疲労がたまっているみたいだから、今日一日は絶対安静だ」

「そうですか」

 

ここ最近よく眠くなったりするのも、もしかしたら疲れがたまっているからなのかもしれない。

ならば、今日一日はゆっくり体を休めよう。

僕は心中でそう決めた。

 

「僕の方から以上ですよ」

「すみません」

 

待機していた主任に声を掛けた扇先生は、僕に背を向けて歩き出す。

そして入れ替わるように主任が横に移動してきた。

 

「早速だが、事情聴取だ。当時の状況を詳しく説明してもらおう」

「分かりました」

 

主任の言葉に頷いた僕は、あの時に何が起こったのかを主任にすべて話した。

 

「馬鹿野郎!」

「す、すみません」

 

事情を話し終えた僕に浴びせられたのは、罵声だった。

当然だと言えば当然だ。

居眠りをした挙句に、事件に巻き込まれるという失態を演じたのだから。

 

「それで、監禁されているときに何か見たり聞いたりはしなかったのか?」

「えっと……」

 

主任の問いかけに、僕は監禁されていた時の記憶を呼び起こす。

 

「あ……」

 

その時、男たちの会話を思い出した。

 

「何か思い出したのか?」

「あ、はい。監禁されているとき、犯人と思わしき人物の話声が聞こえたんです」

 

僕の方に興味深げに聞いてくる主任に頷きながら、僕は応える。

 

「なんと言っていた?」

「えっと……”アンナを処刑する”と言っていました」

 

”アンナ”という人物が誰なのかは知らないが、かなり物騒な話の内容だった。

 

「なにっ!?」

 

僕の話を聞いていた主任は目を大きく見開かせて、驚きの表情を浮かべた。

 

「高月、それは間違いないんだな?」

「は、はい。間違いないです」

 

鋭い目で僕を射抜くような視線を向けながら確認の意を込めて聞いてくる主任に、僕は自信を持って頷いた。

 

「他には何か聞いてないか?」

「えっと……犯人の数は20人と言っていました。あとジダーノという人物がリーダーと思われます」

 

まるで芋づる式に出てくる記憶に残っていることをそのまま主任に告げる。

 

「なんということだ。ただの愉快犯ではなく、テロリスト集団か」

 

よほど逼迫した状況なのか、主任の表情がさらに険しさを増す。

 

「ということは、犯人はまだ」

「そう言うことだ。これから本部に報告をしなくては。ったく、報告書の量がどんどん増えていきやがるな」

 

僕の疑問に頷くと主任は毒づくように言葉を漏らした。

 

「早く復帰しろ。仕事は山ほどあるからな」

「はい、ありがとうございます」

 

主任からの激励(たぶん)にお礼の言葉を返すと、主任はそのまま病室を後にした。

扇先生も、他の患者の診察があるためか病室を後にして行った。

出る間際とても背筋の凍るようなことを話していたような気がしたが、きっと僕の記憶違いだろう。

そんなこんなで、今の僕の状況はというと

 

「暇だ……とても」

 

手持無沙汰だった。

当然本なども持ってきていなければ、時間をつぶすものは何一つない。

そもそも、絶対安静と言われているほどなのだから、横になっていればいいだけの話だが、それでは微妙に悲しすぎるような気がした。

 

「………諦めて寝るか」

 

僕はまだ眠るには早い時間だが眠りにつくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……」

 

ふと目が覚めた。

窓から差し込む朝日で、今が朝であることがわかった。

とはいえ、まだ薄暗いレベルなのでもしかしたら夜明け間近なのかもしれないけど。

 

(何だか日付感覚が狂いそう)

 

一日絶対安静ということは、最低でもまだ12時間は寝てないといけないということになる。

これまでは朝が一日の始まりで、夜が終わりという認識だっただけに、複雑な心境だ。

 

(というより、いい加減慣れろと言う話だけど)

 

吸血鬼となって数か月。

慣れたつもりだが、まだまだそうではないところが多いようだ。

僕の左腕には何かの薬だろうか、点滴をされていた。

 

「はい?」

「失礼します」

 

ノックと共にドアを開けて入ってきたのは布良さんと主任だった。

僕は上半身を起こした。

体のけだるさはすっかりと抜けていた。

 

「布良さんに主任。どうしたんですか?」

「お見舞いだよ」

 

意外な組み合わせに驚いていると、布良さんは満面の笑みを浮かべてフルーツの盛り合わせを差し出した。

 

「あ、ありがとう」

 

微妙に豪勢なフルーツの盛り合わせに、僕は苦笑交じりでお礼を言いながらそれを受け取った。

 

「……高月は夕方頃には退院だぞ」

「えぇ!? またですか?!」

 

主任の言葉に肩を落とす布良さん。

またということは誰かに同じことをしたのだろうか?

学習力がないと見たほうがいいのか、ただ単に優しい人と見るべきなのか、判断に迷ってしまう。

 

「何事も上司を頼るなという教訓だ。前にも同じことを言ったが」

「そ、そうでした」

 

何となく前者の方が強いような気がするが。

 

「主任もということはただのお見舞い、というわけではないんですね?」

「そう言うことだ」

 

普通のお見舞いなら、布良さんだけが来るはずだ。

しかも主任の表情はこの前と同じ仕事の際に見せるものだったからだ。

 

「高月の供述を基に、今後の方針が決まった」

「………」

 

僕は主任の口から語られる方針を待った。

 

「アンナ・レティクル代表を学院寮にかくまうことになった」

「……はい?」

 

主任の言葉にあっけにとられた僕は、思わず聞き返してしまった。

 

「だからだな、アンナ―――」

「いえ、わかりますが。どういうことですか? そもそもどうしてその人をそこまでして匿うんでしょうか?」

 

同じことを告げようとする主任に、僕はそもそもの疑問を口にした。

 

「……………」

 

今度は主任があっけにとられる番だった。

 

「そうだったな。お前はまだ知らなかったな」

「あのね、アンナ・レティクルっていう人は、吸血鬼さんの代表みたいな存在で、吸血鬼さんの尊敬する存在みたいな人なの」

 

何だか馬鹿にされているような気がする僕に、布良さんがわかりやすい説明をしてくれた。

 

「な、なるほど。確かにそれは必要がありますね」

 

いまいち分からなかったが、副市長のような存在だろうと解釈することにした。

 

「寮の皆からは許可はもらってるから、近々来る予定だよ」

「ということはもしかしなくても、僕たちの寮ということ?」

 

僕の予想に、布良さんは無言で頷いた。

 

「それで、もう一つ高月君には大事な役目があるの」

「大事な役目? それっていったい何?」

 

僕は布良さんに大事な役目が何かを聞く。

 

「それは俺の方から説明しよう」

 

僕の疑問に答えるように前に出たのは主任だった。

 

「高月にはアンナ・レティクル代表への護衛をしてもらう」

「護衛ですか?」

 

主任に告げられた僕の役目に、目を瞬かせる。

 

「荒神市長たっての申し出だ」

「六連君と高月君のどちらかが護衛を行うってことだったんだけど、一番都合がいいのが高月君だったから」

「えっと……それはつまり、どういうこと?」

 

補足説明をしてくれた布良さんには申し訳ないが、全く訳が分からなかった僕は詳しく主任に訊くことにした。

 

「アンナ・レティクル代表は往診を受ける必要があり担当の医師が出入りをする。そして護衛ということは誰かがその場にとどまる必要があるが、長期間留まり続けるのは不自然だ」

「それと僕が選ばれる理由に、どういう関係が?」

 

理屈は分かったが関係性がわからなかったため、僕はさらに詳しく訪ねることにした。

 

「それはね、高月君は今入院しているでしょ? だからそれを利用して往診と護衛を普通にできるようにするっていうことなの」

「なるほど」

 

布良さんの説明で、ようやく僕はすべてを理解することができた。

要するにこういうことだ。

不法滞在者に狙われるアンナ・レティクルという人物を護衛する必要がある。

ただし、相手の数が多いため護衛を増やしても、危険は回避できない。

護衛対象の自宅も同理由で不可能。

ならば、対象と関係のない住居に匿えばいい。

そこで白羽の矢が立ったのが僕たちが住む学院寮。

でも、護衛の者がいれば、その建物に対象がいることを伝えてしまうことになるだろう。

そこで、僕の出番ということだ。

僕ならば入院していたことで療養中ということにできる。

そして、どうやら護衛対象は往診の必要があるが、それも僕への経過観察にすればいいらしい。

 

「そう言えば、往診する医師は信頼してもいいんですか?」

「それは大丈夫だよ。往診で来るのは扇先生だから。元々アンナさんの専門医みたいなものだったらしいから」

 

どうやら問題は解決されたようだ。

 

(あの人、いい人なんだけど……)

 

あのおかしな正確でなければ僕には問題はなかったのだが、さすがにそこまでは言えない。

 

「分かりました。そういうことでしたら、不肖高月浩介。アンナ・レティクル代表の護衛任務を拝命します!」

「そうか。頼むぞ」

 

始めて告げられた重大任務。

僕はやる気に満ちていた。

こうして僕は、アンナ・レティクル代表の護衛任務を引き受けるのであった。

 

(そう言えば、アンナ・レティクル代表ってどんな人だろう?)

 

そんなことを考えながら。

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