DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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こんばんは、TRcrantです。
大変お待たせしました。
第41話になります。

今回からようやく恋愛要素っぽいものが登場してくるようになりました。


第41話A 恋パニック?

アンナさんが寮にやって来てからかなりの日が経った。

いまだにジダーノという人は捕まっていないらしい。

開発地区内に潜伏している可能性もあるが、一斉摘発でも見つからなかったらしいので、効果薄とされているようだ。

さすがはアンナさんと言ったところだろうか。

凄まじいカリスマ性なのかどうかは分からないが、アンナさんが寮に溶け込むのに時間は要さなかった。

毎日食事の時になればそれぞれが気づけば席についているという状態が続いている。

そんな寮の光景に、寮長である布良さんはとてもうれしそうだったのが印象的だった。

話の内容はもっぱら世間話等のレベルにとどまっている。

だが、それも最近は変化をし始めている。

各々があらかた話をし終えたところで、話の内容は僕たち吸血鬼へと変わっていったのだ。

 

「それじゃ、やはり外の吸血鬼はとても大変な状況にあるんですね」

「みな、自分の正体を隠すために衝動を抑えるのに必死のようだ」

 

島の外の吸血鬼は僕たちに比べれば過酷な状況を強いられている。

僕たちは合成血液を好きな時に好きなだけ飲むことができるし、許可さえ出れば人から吸血することもできる。

だが、島の外にいる吸血鬼は、そういったことができない。

とはいえ、それをする方歩もあることにはある。

それが、

 

「恋人を見つけるしかないですよね」

 

恋人を見つけるということだった。

 

「不本意ではあるが、我々吸血鬼のそれは人間でいうところの”特殊性癖”にあたる。そう言う性癖を持つ者を探し出せばよい」

 

そう言う人が見つかるという可能性はあるのかもしれない。

見つけたとしても、そこから先が問題だ。

気づけば皆がアンナさんの話に耳を傾けていた。

 

「我々吸血鬼は、しばしば人類の敵になることがある。それはいわば、人類が存在しなければ我々が生きることができないが人類は吸血鬼なくしても生きることができるからだ」

 

アンナさんは”そう言った意味では合成血液というのは画期的な発明だ”と続けた。

アンナさんの話は学院で教わるそれとは大きく異なっていた。

学院では、合成血液によって吸血鬼は加害者でなくなり、共存の道が開けたと教わっていた。

だが、アンナさんは合成血液によって吸血鬼は人間に対して必要以上に依存する必要がなくなり、お互いが対等な立ち位置となったという主張だった。

どこかアンナさんらしい意見だと思えてしまうのは、僕だけなのだろうか?

でも、最近はそんなアンナさんがどことなく恐ろしく感じてきたりする。

一言。

そう、たった一言で、寮の皆の考えを操作してしまうのではないかという恐怖。

さすがに僕の考えすぎだと思うけど。

恐怖を感じずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、高月先輩」

「何? 稲叢さん」

 

そんな日の朝の時間帯。

先に仕事先から戻ってきた稲叢さんが真剣な面持ちで僕に声を掛けてきた。

 

「高月先輩に聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」

「あ、うん。いいよ」

 

いつになく真剣なその表情に、僕は息をのむ。

 

「あの”でぃーぷきす”って、何ですか?」

「……………はい?」

 

稲叢さんの口から出た単語に、一瞬僕は固まってしまった。

 

「ですから、でぃーぷきすってなんですか?」

「……………何で、そんなことを聞くの?」

 

稲叢さんの口からそんな単語が出てくるはずはないので、エリナさんあたりが刷り込んだのは想像できるが、一応敬意を聞くことにした。

 

「実はひよりちゃんが、お店の通りの建物の影の方で六連先輩と矢来先輩がその、でぃーぷきすっていうのをしているって言っていたんです」

「あの二人は、一体何をやってるんだ?」

 

思わず頭を抱えたくなってしまった。

 

「それで、でぃーぷきすってなんですか?」

「えーっと………」

 

僕は稲叢さんにどう答えたものかと考えをめぐらせる。

 

(それをやっているということは、そういうことなのかな?)

 

佑斗君と美羽さんの雰囲気が若干変だったし、よく考えてみればそう言うことなのかもしれない。

 

「好きな人同士がする、愛情表現の一種……かな?」

「そうだったんですか。それじゃ、六連先輩と矢来先輩は、とても仲がいいんですね」

「そうだね」

 

微妙に間違えた解釈をしているような気もするが、それを訂正することもないだろうと思い、僕も頷きながら相槌を打った。

その後帰ってきた佑斗君は、どこか心ここに非ずと言った様子だった。

それと対照的に、美羽さんはいつも通りだった。

尤も、若干頬が赤かったけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します」

 

食事も終わり、僕はアンナさんに用があると呼ばれたためアンナさんの部屋(もともとは美羽さんの部屋だが)を訪れていた。

美羽さんが寮にいるため今回は明りをつけている。

 

「それにしても、本当に荷物は少ないですよね」

「そうかね? まあ、ここにいるのも事件が解決するまでの避難的措置のようなものだからね。必然と荷物も少なくなるさ」

 

僕が漏らした言葉に、首をかしげながらアンナさんは応えた。

 

「それで、最近はどうだ? 吸血鬼としての生活に慣れてきたかな?」

「えっと……ぼちぼちですね。まだ人間だったころの癖が出たりしますけど、何とか」

 

どうやら、これがアンナさんの要件だったようだ。

いまだに慣れていないというのはかなり恥ずかしいが、少しずつ慣れ始めている……ような気がする。

 

「それならばよかった。しかし、布良さんは本当に面白い子だ」

「面白い?」

 

アンナさんの突然の話題転換に、僕は首をかしげることしかできなかった。

 

「人間で、あそこまで吸血鬼と分け隔たりなく接することができるのは、彼女の素質なのか……」

「ええ。でもそれは枡形主任もそうですよ」

 

布良さんもそうだが、主任も分け隔てなく接してくれている。

少なくとも、吸血鬼だからと言って変な扱いをされたことはない。

 

「そうだね。そこは私も感謝しているが、少し性質は異なるかもしれない」

 

アンナさんの言葉の意味は、なんとなく分かるような気がした。

主任はあくまでも仕事上としてのような気がする。

それはあくまでも、裏があるという意味ではない。

でも、布良さんとは何かが異なっているような気もする。

それが何なのかは、今の僕に説明するのは無理だった。

 

「彼女は、開発区の吸血鬼とも仲がいいと枡形主任が言っていたよ」

「布良さんは相手が吸血鬼でも関係なく普通に接することができる人ですから。だから、彼女ほどこの仕事に向いていると思う人はいないと僕は思います」

 

ただ、それだけは胸を張って言えた。

考えれば僕のことを言っているわけではないのに、なぜか口に出てしまった。

そんな僕に、アンナさんは声を上げて笑い出した。

 

「失礼。君も十分に面白い」

 

ひとしきり笑うと、アンナさんはそう言って笑うのをやめた。

 

「周りにはあんなに美人な女吸血鬼がいるのに、わざわざ人間を好きになるなんてね」

「え? 好き? ………な、何を言ってるんですか!」

 

アンナさんの言葉に、一瞬意味を飲み込めなかったが、意味を知った僕は慌てて叫んだ。

 

「それじゃ、嫌いなのかな?」

「その二択を出すのは卑怯です。それならばすきを取るに決まってるじゃないですか」

 

アンナさんの提示した二択に、僕は抗議をしながらも答えた。

 

「やはり、似た者同士は惹かれあうものか」

「僕と、布良さんが似てる?」

 

アンナさんの言葉に、僕はどこか引っかかった。

どこかでそんな言葉を掛けられたような気がする。

 

「食事前にも布良さんと話をする機会があったのだが、君のことをほめてばかりいたよ」

「え?」

 

アンナさんの言葉に、僕は思わず聞き返してしまった。

 

「それで、さっきのように言ったら顔を真っ赤にして飛び出して行ってしまってね」

 

(それで、さっき会ったとき顔が赤かったんだ)

 

食事前、共有スペースにやってきた布良さんの顔が赤かったのを思い出した。

理由がわからなくて首をかしげていたが、今になって理由がわかった。

これはいいことなのか?

 

「おっと、褒めていた内容は言えないよ。知りたければ本人に聞くんだね」

「…………は、はぁ」

 

アンナさんの釘を刺すような言葉に、僕は生返事のような感じになってしまった。

 

「彼女は良くやっている。この寮の雰囲気がいいのは布良さんが寮長としてしっかりしている事の方が大きい。特に監督者であることを意識させない手腕には私もすばらしいと思っている」

「監督者?」

 

アンナさんの口から出た単語に、僕は尋ねることにした。

 

「知らなかったのか。こういった建物は吸血鬼だけでは使用することは認められない。必ず人間が一緒に暮らす必要がある」

「そうだったんですか」

 

僕は改めて布良さんにのしかかる重責を思い知ることになった。

その後、アンナさんと二三言交わした僕は、彼女の部屋を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「あ」」

 

共有スペースに飲み物を飲もうと戻ると、布良さんと鉢合わせになった。

 

「お、おはよう」

「おはよう……あはは」

 

ぎこちない感じであいさつを交わす僕たちを見た人は、十中八九何かあったと思うだろう。

 

「「………」」

 

そして気まずい雰囲気が流れる。

 

「そ、それじゃ、私は部屋に戻ってるね!」

「あ、ああ。おやすみ」

 

そして早々に話を切り終え、逃げるように布良さんは去っていった。

そして僕もその場を後にする。

 

 

 

 

「な、なんだったんだろう」

 

自室に戻った僕は、先ほど感じた気持ちに戸惑っていた。

今までこのような気持ちを抱いたことはなかった。

これではまるで……

 

「いやいや、僕と布良さんは仕事のパートナーだったんだから、そんなことあるわけが………」

 

そこで、僕はふと違和感に気づいた。

 

「『だった』って、何を過去形にしてるの僕は?!」

 

自分で過去形にしていることに、さらに動揺を隠せなかった。

 

(も、もしかして、アンナさんにからかわれた? アンナさんの高等スキル?!)

 

どちらにせよ、僕は気を引き締める必要がありそうだった。

 

「そうだ。こういう時は、合成血液でも飲ん……で」

 

そんな時、ふと強い眠気に襲われた。

 

「また……か」

 

そして僕は再び眠りにつくのであった。

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

「似たもの同士……それは比喩か?」

 

私は問いかける。

これはあの女の言葉だ。

 

『貴方は、あのお方によく似ている』

 

それは昔、私が何度も言われてきた言葉。

その時の私は、何も知らなかった。

あの愚か者の真の姿を。

私の未熟さというものを。

それからすぐに、私はすべてを失うことになる。

自分の家、誇りすべてを。

私はそれでも生き続ける。

それは、私がまだなしていないことを成し遂げるために。

 

「本当に、似ているのかもしれないな」

 

私と布良の姫は、もしかしたら最強のコンビになれたかもしれない。

だが、今はそれは不可能に近い。

 

「味方として背中を守り合うコンビとなるか、はたまた命を課して戦う敵となるか……」

 

後者の未来は、できれば避けたいと思う自分がいる。

 

(何寝ぼけたことを言っているのだろうな)

 

私は思わず微笑してしまう。

いつの間にか、私はかなり腑抜けになってしまったようだ。

 

「私は、決して止まらない」

 

私は声に出して決意をさらに強める。

 

(私の目的は誰にも邪魔はさせない。必ずや成し遂げて見せる)

 

それが私の決意。

私がこれまで生きてきた意味だ。

 

「それには、まだ機は熟していない」

 

いまだに役者がそろっていないのだ。

 

「まずは役者がそろうのを待とう」

 

全てはそこから始まるのだから。

 

「だが、もしできるのであれば」

 

泡沫の夢でもいい。

たった一夜だけの夢でもいい。

 

「そうなりたいものだ」

 

きっと私にはそれは無理だが、彼ならばできるだろう。

 

「亡霊とは、よく言ったものだ」

 

思わず微笑が漏れる。

 

「しかし……」

 

ふと考えることがある。

 

(最近、変わりたいと思うだけですぐに変われるようになったな)

 

彼の意思を無視して私が前に出ることができるようになった。

これはいいことなのか、それとも何かの予兆なのか。

 

「まあ、いいか」

 

深く考えるのをやめた。

私は、この先のことについて再び考え始めるのであった。

それが、後に私にとって思いがけない状況を生み出すことになるとも知らずに。

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