DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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こんばんは、TRcrantです。
大変お待たせしました。

今回、ついにあの人物が登場します。
しばらくは原作通りの展開となりますが終盤は全く別の展開となりますので、楽しみにしていただけると幸いです。


第46話A 悪意

あれから数日ほど経過したある日。

いつもの休憩時間を迎えた僕と梓とで、外に出ていた。

 

「~~~♪」

「な、なんだか今日はやけに機嫌がいいよね」

 

いつにも増して機嫌がいい梓に、僕は声を掛けた。

 

「だって嬉しいんだもん! ありがとう、浩介君」

「僕は何もしてないよ。これは梓の努力の成果だと思うよ?」

 

理由は開発地区で出会った、カリーナさんという女性のIDが発行されるのに必要な書類が届いたからだった。

どうやら永住権の申請をアンナさんがしていたらしい。

僕は何もしておらず、梓の努力が報われたのだと僕は思っている。

 

「ううん。浩介君がアンナさんにお願いしてくれたからだよ」

 

(僕、そんなこと話したっけ?)

 

梓の言葉に、僕は記憶を辿るが、どれほど思い出そうとしてみてもそんなことを言った覚えは全くなかった。

 

「ほら、浩介君、早く届けに行こうよ!」

「ッて、待って! 走らないで! 引っ張らないで!」

 

僕は梓に引きずられながら開発地区にいるカリーナさんたちの下へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございます………ありがとうございます」

「頭を上げてください。カリーナさん」

 

開発地区にいるカリーナさんに申請用の書類を渡した梓は、何度も何度も頭を下げるカリーナさんに戸惑ったような表情を浮かべながら促していた。

時折こちらの方に救いを求めるような目を向けてくるが、僕には到底無理なので見なかったことにしていた。

しかし、それほどに彼女たちはその日を待ち焦がれていたのかもしれない。

最初からIDを手にしている僕たちが特殊なのかもしれない。

 

「お姉ちゃん!」

「あ、あきらちゃん」

 

梓に抱きついてきた子供が”あきらちゃん”なのだろう。

すっかり懐いている様子だった。

これはきっと、梓だからこそなせることだろう。

 

「そう言えば、最近ねとっても怖い風紀班の人がいるの」

「怖い?」

「もしかしたら増援かもしれないね」

 

あきらちゃんと呼ばれた子供の言葉に、いつの日か美羽さんたちが話していたことを思い出した。

 

「なんだかまるで僕たちを怖い顔で睨むんだよ」

「…………」

 

その言葉に、梓の表情が曇る。

 

(きっと、色々とナーバスになってるのかも)

 

「僕、早くお姉ちゃんたちに戻ってきてほしい」

「うん、事件が解決したらね」

 

どこか影のある笑みを浮かべながら、梓は明ちゃんの頭を優しくなでるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

「……」

 

開発地区を後にして噴水近くの歩道を歩いている僕たちの間に会話はなかった。

つい少し前まではテンション高い状態だったのに。

 

「どうしたの?」

「え?」

 

突然疑問を投げかけてくる僕に、梓は驚いた様子でこちらを見上げてきた。

 

「さっきから浮かない顔をしているから。重荷を降ろせたはずなのに」

「でもそれって、カリーナさんだけだから」

 

梓の言葉も尤もだった。

今現在、僕たちのようにIDを受け取ってここに永住する権利を有していない吸血鬼はまだ多い。

 

「そう言えば、アンナさんはまだ芽が出たばかりで、それは成長段階にあるって言ってたっけ」

「芽……そうだよね。まだ始めたばかりだもんね」

 

アンナさんの言葉に、励まされたのか作り笑いではあるが梓の顔に笑みが戻った。

何となくではあるが、梓にとって人間と吸血鬼の壁はそれほどないようにも思える。

だからこそ僕はこうしていられるわけだし、カリーナさんのような吸血鬼とも交流があるのかもしれない。

 

「あ、これチョコバナナ」

「買ってたんだ」

 

先ほど買っておいたチョコバナナ一本を梓の方に差し出すと、少しだけ驚いたような表情を浮かべた。

 

「でも、いいの?」

「一人で二本はさすがにきついから」

「それじゃ……」

 

最初は控えめだった梓だったが、僕の答えを聞いて差し出していたチョコバナナを手にした。

 

「ありがと。浩介君」

 

お礼を言いながらチョコバナナを頬張る梓は、何となく年下のような印象にも見える。

とはいえ、これを本人に言ったら怒ること間違いなしだが。

そこでふと気になった。

梓はどうしてここアクア・エデンにやってきたのか。

どうして風紀班に入ろうとしたのか。

それが気になって仕方がなかった。

いや、もしかしたらそれは建前で、僕は梓のことが知りたいだけなのかもしれない。

 

「ねえ、梓」

「何? 浩介君」

 

そう思うといてもたってもいられなかった僕は、梓に尋ねることにした。

 

「梓はどうして――――」

 

その時だった。

不意に僕に向けて強い敵意の視線を感じた。

それはいわば殺気と言ってもいいかもしれない。

 

「誰だっ」

「え?」

 

僕の声に、梓は驚いたような表情を浮かべるが、すぐに何かを感じ取ったのか表情をこわばらせる。

そんな僕たちの前に、殺気を放っていたであろう人物が姿を現した。

 

「おや。うら若き女性に付きまとっている吸血鬼と思って出てきてみれば」

「……楓ちゃん!?」

 

青色の髪を後ろで結び、サイドポニーのような感じで結っている楓と呼ばれた少女の僕に対する視線は、どう考えても友好的なものではない。

それはまるで敵を見るような感じだ。

 

「……梓の知り合い?」

「黙れ」

 

僕の疑問の声に、かけられたのは氷のように冷たく、針のように鋭いとげのある言葉だった。

 

「ふふ……くすくす。そう言うことでしたか。あなたは、ここで吸血鬼の餌袋になるために来たのですね、梓姫」

 

笑いながら言う楓という少女の言葉に、鼓動が一瞬強くなる。

 

「……おい、楓さんだったか?」

「汚い口を開くな。化け物」

「なに?」

 

楓という人物の言葉に、心の中に自分でもわからない感情が渦巻き始める。

 

「貴女は狩人失格です。名跡を汚しましたね!」

「浩介君は、私のパートナーだよ」

 

彼女の言う言葉の意味は知らないはずなのに、なぜだか分かるような気がしたのだ。

 

「風紀班のですか? 断ってください。私は慣れ合ったりするのが大っ嫌いですから」

 

無茶ともいえる指示を飛ばす少女は、僕の顔に銃を突きつける。

 

(梓と同じ銃……こいつは増援?!)

 

今知った衝撃の事実に、僕は心の中で驚いた。

だが、それを僕は表には出せない。

できるのは目の前に人物をにらみつけることくらいだ。

 

「躾がなっていないようですね。吸血鬼を飼うならせめてしっかりと躾をしてください」

「銃を下して!!」

 

少女の言葉に、梓が強い口調で告げる。

その言葉で少女はようやく銃を下した。

だが、僕の中で渦巻く黒いものは一気にその力を増幅させていた。

それはまるで僕を飲み込むかのように。

でも、それを何とかこらえていた。

それを前に出した瞬間、とんでもないことになるような気がしたからだ。

 

「もういいです。貴女は吸血鬼の情婦がお似合いです」

 

だが、その言葉がトドメだった。

抑え込んでいたものが一気に僕を埋め尽くした。

 

「そうやたら吠えるな。醜いだけだぞ、雑種」

「何?」

「浩介……君?」

 

勝手に僕の意思とは関係なく口が開く。

しかも言葉はとてつもなく汚く、威圧感のようなものが感じられた。

 

「今なんといった?」

「吠えるな下等動物よ。先ほどから聞いていれば色々とおもしろいことをぬかしてくれる。怒りを通り越して笑えてくるわ」

 

少女の殺気が強まるが、なぜか僕には小さな子供が怒っているようなレベルにしか感じられなかった。

 

「………黙れ、化物」

「私のことを化物だとか罵倒するのは……まあいいだろう。だが、こいつへの侮辱の数々は聞き逃せない。先ほどの侮辱の言葉をすべて撤回しろ」

 

それは僕が言いたいと思っていたことだった。

 

「ぷーん!」

 

だが、その要求を無視して、少女は去っていく。

 

―――コロセ

 

ふと頭の中にそんな言葉が浮かび上がった。

 

(もし、今前に出ているのが本能だとしたら……)

 

この言葉を忠実に再現するのではないだろうか?

 

――コロセ!

 

再びあの言葉だ。

彼女の前で、そのようなことを起こすのだけは避けたかった。

だから……

 

『絶対に、ダメだっ!!!』

 

心の中で僕はそう強く叫んだ。

すると、今まで自分を蝕んでいた黒いものは、まるでなかったかのように消えていった。

 

「っ、はぁ……はぁ」

「浩介君?! 大丈夫?」

 

体も動くようになっていたようで、脱力感に襲われて蹲る僕に、梓が慌てた様子で駆け寄ってきた。

 

「だ、大丈夫」

 

僕は、それに何とか答えられた。

 

「もしかして、今別の人格の人が出てた?」

「……」

 

僕の問いかけに、梓は頷くことで答えた。

 

「ごめん。何だか怖い思いをさせて」

「ううん。こっちこそごめんね。ひどいことを言って」

 

僕の謝罪に梓は首を横に振ると関係がないのに少女の暴言の数々を謝ってきた。

 

「僕よりも、梓の方だよ」

 

何とか脱力感から抜け出した僕は、ゆっくりと立ち上がった。

僕のことは些末な問題だ。

一番の問題なのは、梓の方だった。

 

「あれが、増援って……僕は悪い夢でも見てるのかな?」

 

思わずそんな言葉を口にしてしまうのも無理はなかった。

どう解釈しても、僕たちを目の敵にしているのは間違いがない。

しかも、最悪の場合には吸血鬼狩りを始めるような雰囲気さえ感じられた。

 

(これじゃ、一体何の増援なのかがわからないよな)

 

そう心の中でつぶやく。

吸血鬼や海上都市の人たちを守る立場にある僕たちの増援が、守るべき人たちに刃を向ける。

それはある種の偽善者のような気もした。

正義という名の仮面をかぶった。

 

「ところで、さっきの人が言っていた”狩人”ってどういうこと?」

「……………」

 

ふとわいてきた疑問を投げかけると、梓は何も答えずに口を閉じた。

これはダメかと、心の中で思った時だった。

 

「ねえ浩介君」

「何?」

 

何かを決心したのか、先ほどとは違い決意のようなものが込められためでの問いかけに、僕は真正面から受けた。

 

「少しだけ、遠回りしない?」

 

それは暗に、長い話になることを指していた。

 

「僕はいいよ」

 

だからこそ、僕は頷きながらそう答えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「昔からね、秘密なんだけどそういう仕事があるの」

 

言葉通り大回りをしながら説明されたのはそんなことだった。

 

「吸血鬼を退治していく人たち……」

 

だとするならば、あの少女の僕を見る目も納得がいく。

 

「それじゃ、梓も狩人の人?」

「うーん……そこが微妙なんだよね。血筋っていうのかな……おばば様にそう教えられてきたから」

 

きっと、その”おばば様”が狩人の中で偉い人なのだろう。

 

「だから、銃があんなにうまかったんだ」

 

おそらく物心がついたころから教わっているのだろう。

だからこそ、正確な射撃ができるのかもしれない

 

(それにしても、吸血鬼に加えてそれを狩っていく狩人という存在……ますますニコラが好きそうな話だよね)

 

そんなことを考えた僕は、ふと気になったことがあったので、梓に聞いてみることにした。

 

「そう言えばこのことは、皆には?」

「美羽ちゃんにだけは伝えているよ。皆には怖くて言えなくて」

 

そう言って、梓は力なく笑った。

何となくではあるが、自分の秘密を知られたからというのではなくもっと別の何かが原因のような気がした。

でも、言いたくない理由はなんとなくわかった。

それは”私は皆さんの敵です”と言っているにも等しいこと。

言ってしまえば、周りの自分に対する態度は変わるかもしれないという不安に苛まれるのは当然だった。

 

「でも、まさか梓が吸血鬼の囮である”姫”だったなんて」

「え?!」

「何?」

 

僕がつぶやいた言葉に、梓がなぜか驚きをあらわにする。

 

「な、何でもないよ!」

「そ、そう?」

 

梓の様子が気にはなったが、深く追求するのもあれなのでツッコむことはしなかった。

 

「ねえ、もう少し突っ込んだことを聞いてもいいかな?」

「うん。いいけど……」

 

僕の問いかけに、梓は頷きはしたがどこか乗り気ではなかった。

その理由を知るべく梓の視線の先を見た僕は、

 

「ああ、なるほど」

 

その理由を悟った。

僕たちの寮まで距離がなかったからだ。

 

「とりあえず、話はあとで私の部屋でいいかな?」

「僕は構わないよ。でも、このあと扇先生の往診があるから少し時間がかかるけど」

 

布良さんの提案は非常にありがたかった。

とはいえ、この後に扇先生の往診があると思うと、少し気分がブルーだ。

念のために言うが、別に往診が嫌なわけではない。

ないのだが……

 

(この間は心エコー用のやつで必要以上に塗られたような気がするし、何より鼻息が怖かったし)

 

性格がちょっとあれなのが問題なだけだ。

 

(でも、聞いておきたいこともあるし……背に腹は代えられないか)

 

気は進まないけれど、今の状態に関して扇先生にしっかりと聞いておいた方がいいのは確かなので、僕は自分に喝を入れることで我慢をすることにした。

こうして、僕たちは寮へと戻るのであった。

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