DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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こんばんは、TRcrantです。

半年以上投稿できず申し訳ありませんでした。
本日、ようやく最新話が完成しました。

これからもできる限り早めに投稿できるように執筆していきますので、よろしくお願いします。

今回もまた原作沿いです。
オリジナル展開になるのはかなり先になると思いますが、出来る限りオリジナルも入れていくつもりですので楽しんでいただけると幸いです。


第49話A ラッキースケベ再び

気が付くと、そこは見慣れた(威張って言うほどではないが)病室だった。

 

「ん……」

「目が覚めたんだね」

 

顔を横に移動させると、扇先生のホッとしたような顔が見えた。

 

「どこか変なところはないかい? たとえば下のほうとか下のほうとか」

「別に大丈夫ですから。というか、今扇先生の存在自体が危険な気がするんですけど」

 

変な個所を強調しながら僕のほうに迫ってくる扇先生から距離を取りながら、僕は問いかけに答えた。

 

「相変わらずつれないね。まあ、無事そうで何よりだよ」

 

一気に真面目に戻るあたり、非常に扱いずらかったりもする。

 

「それで、どうだったんだい?」

「へ?」

 

扇先生の言葉に、僕は思わず素っ頓狂な声を出してしまった。

 

「だから、本能と話をすることができたのかどうかを聞いているんだけど」

「あ、はい。何とか話をすることができました」

 

扇先生の呆れたようなまなざしに、僕は恥ずかしく思いながら答えた。

 

「それで、本能はなんて言ってたのかな?」

「えっと……」

 

どういえばいいのか頭の中で考える。

 

「自分自身で考えろ……と」

「何とも彼らしい答えだね」

 

僕の答えに、扇先生は苦笑しながらつぶやいた。

 

「そういえば、時間のほうは大丈夫なのかい?」

「え? ……あ」

 

扇先生の問いかけに、時計のほうを見てみると、そこには休憩時間が残り5分を切っている時間帯を指し示していた。

 

「す、すみません! ちょっとこれで失礼します」

「気を付けてね」

 

僕は慌てて病室を飛び出すと、そのまま病院を後にするのであった。

 

(このまま全速力で走れば何とか間に合うかな!?)

 

もはや時間は残されてはいなかった僕は、半ば混乱しながら走り続けた。

走って走ってそしてたどり着いた結果、時間は休憩時間終了の5秒前だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

「矢来先輩、お帰りなさ……何かあったんですか?」

 

全力疾走したので、少しだけ息を切らしていた僕が、共用スペースで稲妻さんに出してもらったた紅茶を飲んで落ち着かせていると、仕事に行っていた美羽さんが戻ってきた。

 

「ちょっと仕事でね……あーイライラする」

 

見るからに不機嫌な様子の美羽さんとその後ろから苦笑しながら入ってきた佑斗君の手には、大きめの段ボール箱が抱えられていた。

 

「ユート、ダメだよ。そういうことをする時はつけないと」

「ぶふっ!」

 

共有スペースで一緒にお茶を飲んでいたエリナさんの咎める言葉に、僕は思わず紅茶を噴出しそうになるが、何とかそれをこらえた。

 

「何をだよ!?」

「もー、それをエリナの口から言わせるだなんて。ユートってばエッチなんだから」

 

佑斗君のツッコミに、エリナさんは頬を赤く染めながらからかうように佑斗君に答えた。

 

「そ、そうよね。大人だもんね、それぐらい当然よね」

「エッチな話禁止っ! エリナちゃんも変なことを言ったらダメ! 美羽ちゃんも、大人だからという理由で納得しないっ!」

 

不機嫌だからだろうか?

いつにもまして大胆なことを言っているような気がするのは。

 

「それで、一体何があったの?」

「なんか本土のほうから来た奴らが少し態度が悪くて」

 

僕と一緒に共有スペースにいた梓と美羽さんたちのやり取りをしり目に佑斗君に尋ねると、佑斗君は頬を掻きながら何とも言えない表情で教えてくれた。

 

「なんだか吸血鬼のことを敵だと思ってるみたい…………布良さん、もしかしてあいつらって」

 

どうやら美羽さんたちのほうは落ち着いたようで、佑斗君の説明を引き継ぐように話に加わってきた美羽さんだったが、途中で何かに気付いたのか神妙な面持ちで梓に尋ねる。

布良さんはそれに対して無言で首を上下に動かすことで頷いた。

 

「そう……下手に触れなくて正解だったわ」

 

そう言えば、美羽さんは梓の素性について知っているんだった。

 

「そいつらが俺たち……というより吸血鬼自体を敵のように思っているみたいなんだ」

「……」

 

佑斗君の説明と美羽さんたちの反応で、それが誰のことを指しているのかが分かってしまった。

 

「まったく、同じ目的のはずなのに敵同士っていうのがな」

 

怒っているようでどこか呆れた感じの雰囲気を纏いながら佑斗君はぽつりと漏らした。

 

「それで、この段ボールは何なの?」

「あいつらに押し付けられた仕事。私たちはこれをやってろって言われてね」

 

美羽さんはさらに不快さを強め”島の内情も知らないくせに”と漏らした。

 

「それじゃ、二人が追っていたスリのほうは?」

 

僕はふと思い出したことを佑斗君に尋ねる。

佑斗君たちがスリを追っているということを少し前に聞いていた僕は、それがどうなったのかが気になったのだ。

 

「あれだったら………中止になった」

 

佑斗君は顔をしかめながら口を開く。

 

「なんでも”コソ泥はなんか放っておけ”っていうことらしいけど」

「………」

 

僕から視線を逸らしながらつぶやく佑斗君の表情は口惜しさと怒りのようなものが入り混じっているようだった。

そんな彼に、僕はどう声をかければいいのかがわからなかった。

そんな中、美羽さんは段ボールのガムテープを一気に剥がすと箱のふたを開け――

 

「にょわ~~~!! 開けちゃダメっ!!」

 

ようとしたところで、梓は叫び声をあげながらダンボールに覆いかぶさった。

だが、梓の反応を見ているだけで中身が何なのかが大体想像がついてしまった。

 

「もしかして、あれ?」

「ああ。”あれ”だ」

 

もはや”あれ”だけでやり取りができるほど、定番の代物と化しているものが入っていたようだった。

 

「……ごめんなさい。イライラしていて忘れてたわ」

「……」

 

申し訳なさそうに謝る美羽さんだが、なんとなく今のはわざとやったように感じるのはきっと僕の気のせいに違いない。

 

「布良先輩、どうかしたんですか?」

「な、何でもないよっ。ちょっとした捜査資料だよ!」

 

首を傾げて疑問を投げかける稲村さんに、頬を赤く染めながら応える梓だが、それでは余計に興味を持たれてしまうと思うのだが。

 

「そうなんですか? それじゃ、私は部屋に戻っていますね」

「私も」

 

稲村さんは柔らかい表情を浮かべながら答えると、そのまま共有スペースを後にする。

そんな彼女に、梓は”ごめんね”と申し訳なさそうに謝罪の言葉を投げかける。

 

「とりあえず、それは佑斗か浩介の部屋に持っていってもらえない?」

「まあ、そうなるよな」

 

二人が去ったのを見計らって美羽さんから出された提案に、佑斗君はおおよその想像ができていたようで納得した様子で相槌を打つ。

さすがにあれを梓の部屋に置くのはかわいそうすぎる。

 

「それじゃ、これは僕の部屋に持っていくよ」

「浩介?」

 

僕が名乗りを上げたことがよっぽど意外だったのか、佑斗君は驚いた様子で僕のほうを見る。

 

「僕だってこれくらいの仕事は出来るし……それにこれを佑斗君の部屋に置きでもしたら美羽さんがね」

 

僕は苦笑しながら理由を話す。

後半のほうは佑斗君にしか聞こえないようにした。

ちらりと美羽さんのほうを視線を向けてみると、非常にピリピリした雰囲気を纏っていた。

それは、仕事のことだけが理由というには思えなかった。

 

「悪い。この件はあとでちゃんと礼をするから」

「気にしないで」

 

両手を合わせてお礼を言ってくる佑斗君に、僕はそう返すと問題の物が入った段ボールと向き合う。

 

「それじゃ、運び――「ちょっと待ってっ」――」

 

段ボールを持ち上げようとしたところで梓から待ったがかけられた。

 

「それは私の部屋に持って行ってくれる」

「「「「えぇっ!?」」」」

 

梓の言葉を聞いた瞬間、僕と佑斗君に美羽さんやエリナさんまでもが目を見開かせて驚きをあらわにした。

そういったものにはとことん体制がなく苦手だったあの梓が、その塊である段ボールを自室に運ぶように言ったのだから、その驚きは当然の物だった。

 

「ほ、ほら! 私だってこの前はちゃんと全部チェックできたんだし、浩介君や美羽ちゃんにも仕事があるんだから」

 

(チェックしたって、薄目にしたりしてなかったっけ?)

 

梓の言葉を聞きながら、そんなことを心の中でつぶやくが、実際のところ梓の目は反対しても譲らないと言わんばかりの気迫が感じられた。

 

「布良さんが大丈夫なら、それでも構わないけど」

「あと、美羽ちゃんは今日だけ違う部屋に移ってもらってもいいかな?」

 

心配そうな美羽さんに梓は申し訳なさそうな口調で頼みごとを口にする。

 

「別に私は構わないわよ」

 

美羽さんから一瞬ではあるものの、佑斗君のほうにむけられた視線にはきっと意味があるような気がしたので、僕は自室にいるときは耳栓でもしておこうかと本気で考えてしまった。

だが、護衛という任務が与えられているため、それは不可能に近かった。

 

「それじゃ、僕はこれを運ぶよ」

 

話もひと段落したところで、僕はそう言いながらブツが入っている段ボールを持ち上げると梓とともに共有スペースを後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

梓の部屋に段ボールを運び終え部屋を後にした僕は、静かに息を吐き出した。

 

(これっていい変化……なのかな?)

 

手分けするということで、押収品のいくつかを渡してもらった僕は、それを紙袋の中に詰め込みながら考えを巡らせる。

一面を見ればこれはいい変化なのかもしれないが、なんだか純情な彼女を汚してしまったような感じがしてしまうのもまた事実だ。

とりあえず、一旦考えるのをやめた僕はその場に立ち止ると

 

「部屋に行ったらダメだとは言わないけど、梓の邪魔はしないでね。エリナさん」

 

と忠告をするが、その相手は見える範囲にはいない。

だが、気配は感じる。

 

「あり? やっぱりばれてたんだ」

 

そんな僕の考えが正しいことを証明するように、エリナさんがどこからともなく姿を現した。

言葉とは裏肌に特に驚いた様子じゃないところを見ると、どうやらこうなることを予想していたようだ。

 

「そりゃ、あの時エリナさんが何も反応してなかったからちょっと不自然に感じちゃったからね。後で梓の部屋にでも強襲するつもりなのかなーってと思ったんだよ」

「おー。コースケ、まるで探偵みたいっ」

 

目を輝かせるエリナさんを見ていると咎める気持ちが一気に霧散してししまった。

 

「それじゃ、僕は戻るけど、梓の邪魔はしないでね」

「ダー」

 

念を押すように言うと、笑みを浮かべながら頷くエリナさんに、本当に大丈夫なのかと不安に思いつつも、僕は自室へと戻るのであった。

 

 

 

 

 

自室で押収品でもある違法DVDのチェックを進めていると、突然ドアがノックされた。

 

「浩介、入るぞ」

「佑斗君? どうぞ」

 

どうしたのかと思いつつ、僕は佑斗君を部屋に招き入れた。

 

「悪いな、仕事中に」

「それはいいんだけど、どうかしたの?」

 

部屋に入るなり申し訳なさそうに謝罪の言葉を口にする佑斗君に、僕は本題を尋ねる。

 

「お風呂あがったから入ったらどうだって言おうと思ってな。アンナさんの護衛だったら俺のほうで少し変わるから」

「そうだね。それじゃ、お言葉に甘えて」

 

一応部屋にもお風呂はあるのだが、やはり大きめのお風呂場に入るのが一番だというのはこの寮内での共通認識なのかもしれない。

現に、よほどのことがない限り、共同浴場を利用している人が大半だし。

そんなこんなで佑斗君にしばらくの間アンナさんの護衛を代ってもらった僕は、お風呂に入るべく脱衣場へと向かう。

 

「誰かいますか?」

 

脱衣場に入る前に、一度ドアをノックしてなかに誰かいるかを確かめる。

少し前の佑斗君の一件を受けての事故対策だ。

もしラッキースケベと言われるものに遭遇しようものなら、確実にハチの巣にでもされかねない。

 

(返事はないから、誰もいないな)

 

中から返事が返ってこないのでそう結論付けた僕は、ドアを開けると脱衣場に足を踏み入れる。

脱衣場内も浴室内もひとの姿はないので、一安心だ。

胸をなでおろした僕は、ドアを閉めると服を脱いでく。

洗濯物はネットに入れて洗濯機に投入しておいた。

 

(こうしてのんびりとお風呂にはいれるのはいつ以来だろう)

 

そんなことを考えながら、軽く体を拭くためのタオルを手に浴室内に足を踏み入れた時だった。

 

「ガラガラガラ」

 

ドアが開く音を声に出しながら入ってくる人物の声が聞こえた。

しかもその声は梓のようにも聞こえたため、僕は声がした脱衣場のほうへと振り返って入ってきた人物を確認すると、やはり梓だった。

 

「「……」」

 

そして浴室にいる僕と目が合った。

人間、ショックが強すぎると身動きすらできなくなるというが、これは本当のようだ。

 

「ぎにゃあああ!!?」

「……っ」

 

それを打ち破ったのは梓の悲鳴だった。

その悲鳴に驚いた僕は、飛び上がりそうになるのを何とか抑えた。

 

「なんでどうして浩介君!? こ、これっは幻影!? イリュージョン?!」

「あの……」

 

錯乱しているのか、わけのわからないことを叫び始めている梓に僕は控えめに声をかけるが、当の本人は正気に戻ることはなかった。

 

「し、しかも、お尻ーーっ」

 

そういえば隠すのを忘れていたというのを今更思い出した。

 

「早くここから離れないといけないのに足が動かないっ。どうしちゃったの私の足っ!」

「えっと……」

 

下手すると錯乱状態なのではないかと思うほどの絶叫ぶりに、僕はなんと声を掛ければいいのかがわからず口を開けては閉じを繰り返していた。

もしこの状況を第三者が見れば、相当滑稽な光景に映っていただろう。

 

「浩介君に気付かれる前に逃げないといけないのにーっ!」

「いや、もう気づいてるから」

 

ここまで大きな声で叫び続けて気づかないのだとすれば、護衛をする者としては大問題になるため、思わずツッコミを入れてしまった。

 

「きゃあーー。ばれてたっ! 見つかってたぁ!」

 

よりによってかけた言葉がツッコミと言うのはあれだなと思う間もなく、梓はさらに錯乱し始めてしまった。

もしかしなくても僕の一言は逆効果だったようだ。

 

「べ、別に何も見てないからねっ。湯煙越しのヘブンだとか思っていないからねっ」

「ヘブン?」

 

混乱しているのか、ものすごく不思議な単語を口走る梓に僕はどう反応をすればいいのかがわからなくなってしまう。

 

「ぎゃああ!!? 何を言ってるんだろう、私はッ! とにかく、ごめんなさいぃぃっ!!」

「あ、ちょっと……」

 

自分の発言に耳まで赤くした梓はまくしたてるように謝るとそのまま脱衣場を飛び出していった。

 

「………」

 

残された僕はただその場に立ち尽くすことしかできなかった。

 

(女性にもラッキースケベってあるんだ)

 

ただそのことがふと頭の中に浮かんできた僕もまた、ある意味おかしいのかもしれない。




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