DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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大変お待たせしました。

今回ついに告白の話になります。

やはり、キスの描写は苦手です。
それでは、本篇をどうぞ!


第53話A 告白

懐かしい夢を見た。

そこはのどかな田園だった。

そよ風が吹くたびに、田園の作物がかさかさと心地よい音を立てて揺れている。

僕は”彼女”とその景色を見ていた。

 

「―――様。今―――――にわ――――ん」

 

”彼女”は嬉しそうにこちらを見ながら口を開く。

 

「――――」

 

そんな彼女に、僕は何かを言う。

それを聞いた彼女は、嬉しそうにはにかみながら僕の肩に頭をのせる。

それは本当に懐かしく、心の中が温かくなるような夢だった。

それはきっと、夢の中の僕が幸せだと思っているから。

何よりも大きな理由は

 

――”彼女”に似ているから―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぅ……」

 

ふと、意識がクリアになっていく。

今自分が見ているのは、何度か見てきた病室の天井だった。

 

「僕は……」

 

どうしてここにいるんだろうと、頭の中が疑問で埋め尽くされる。

 

「お目覚めはいかが? プリンセス」

「………すこぶる最悪です」

 

耳元でささやかれる声に、体中が寒気によって震えている。

 

「それは大変だ。すぐに診察(触れ合い)をしなければ」

「いえ、先生が離れてくれれば収まるので」

 

なんだか今、おかしな単語が聞こえたような気がしたが、それを勘違いだと自分に言い聞かせる。

 

「どうしてここにいるか、ちゃんと覚えているかい?」

「……ええ。しっかりと」

 

寝ぼけていたためか、最初は全く状況が呑み込めなかったが意識がはっきりしてくるにつれて状況を飲み込みつつあった。

ジダーノと交戦したこと。

そしてその時に腕を負傷したこと。

何よりも梓に告白まがいの言葉を口にしたこと。

 

「どうかしたのかい?」

 

顔が赤くなる前に頭を振って考えるのをやめようとした僕に、心配そうな表情を浮かべた扇先生が効いてくるので、僕は”大丈夫です”と簡単に答えた。

そして扇先生から告げられたのは、僕でもびっくりするような衝撃の事実だった。

僕の右腕は一歩間違えれば切断という事態にまで発展するほど、ひどい状態だったらしい。

しかも吸血鬼の体質のために薬も効かず、治療にはかなりの苦労を要したらしい。

今度扇先生にお礼の品でもプレゼントしようかと一瞬考えたが、いろいろな意味(主に貞操などが)で危ないので心の中で言うことにとどめた。

 

「それじゃ、僕はちょっと診察の準備をするからしばらく待っててね」

「あ、はい」

 

とりあえず、扇先生の診察の準備が終わるまで、僕は静かに待つことにする。

とはいっても、今の状況だと動きようもないのだが。

 

(梓、大丈夫かな)

 

一番にしないなのは梓のことだ。

ジダーノとの交戦の時にけがをしているのではないかと不安になってしまう。

 

「それじゃ、診察を始めようか」

「……はい」

 

こうして、扇先生の診察が始まるのであった。

診察自体はごく普通の物だった。

………上半身が裸であるということを除けば、だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕が目覚めて数日後、もう大丈夫だという扇先生の判断によって面会ができるようになった。

 

「元気そうだな」

「これが元気なのかどうかといわれると疑問なんだけどね」

 

面会が始まって最初に訪れたのは、梓ではなく佑斗君だった。

僕は苦笑しながら自分の両腕を見る。

切断されかけた右腕は、動かすことができないようにするために、これでもかというほど厳重に縛られている。

左腕のほうも点滴と思われるチューブなどが、いろいろとあるためにあまり動かすことができない。

まさに一気に地獄に落ちたような気分だ。

 

「悪いな。最初の面会が野郎で」

「いや、佑斗君が最初なのが嫌だって言ってないからね」

 

慌ててフォローしようとする僕に、佑斗君はいたずらが成功した子供のような表情で笑いながら”冗談だ”と口にする。

 

「ところで、ジダーノはその後どうなったんだ?」

「あ、それなんだがな」

 

真剣な表情に切り替わった佑斗君は、僕に見えるように数枚の写真をテーブルの上に置いた。

 

「Nシステムが撮影したものらしいけど、見ての通り、ジダーノが映っている」

 

そこに映し出されていたのは、一台の大型トラックだった。

運転しているのは忘れもしないジダーノだ。

 

「南側の開発地区に向かって逃走しているのはつかめたんだが……」

 

言葉を濁す佑斗君の様子に疑問を抱くが、その理由はその横の写真によってすぐにわかることとなった。

 

「南側の開発地区の海岸沿いに乗り捨てられているのを発見された。警察と風紀班が駆け付けた時には中には誰もいない状態だったそうだ」

 

人のいないトラックの運転席や乗り捨てられたトラックの写真などから、ジダーノの拘束ができなかったのは明白だった。

 

「ジダーノと思われる男数人が、トラックが乗り捨てられていた場所の付近につけられていたボートに乗って、どこかに走っていったという匿名のタレコミから、ジダーノはここを出たというのが、最終的な結論だそうだ」

「そうか……」

 

ジダーノを捕まえることはできなかったが、アンナさんの身の安全は確保できたのだから、ここは素直に喜ぼう。

 

「まあ、応援の部隊も本土のほうに帰っていったし、美羽もほっとした様子だった」

「そうなんだ」

 

どうやら狩人の人たちは、全員ここを後にしたらしい。

佑斗君もどことなくほっとした様子だった。

 

「そういえば、梓は?」

「布良さんだったら、なんだかものすごい気合を入れた様子で俺たちより早く教室を出て行ったけど」

 

”まだ来てないというのはちょっと気になるな”と最後のほうで付け足す佑斗君の言葉に、僕は嫌な予感を感じずにはいられなかった。

 

(まさか何かあったのかな?)

 

ジダーノの報復か?

それとも狩人と何かあったのでは?

そんな物騒な不安が頭の中を渦巻いていく。

 

「……気持ちはわかるけど、ちょっと落ち着こうな」

「うん……ごめん」

 

今にも飛び出しそうだと思ったのか、佑斗君は必死に僕を落ち着かせる。

さすがの僕も、この状況でそんなことができないことぐらいは理解している。

……まあ、飛び出しそうになったのは確かだったけど

 

「……ねえ、佑斗君」

「なんだ? 浩介」

 

改まった様子で話しかけた僕の言葉の続きを、真剣な面持ちで待っている佑斗君に、僕は覚悟を決めて口を開いた。

 

「吸血鬼が人間を好きになるのは、いけないことなのかな?」

「……」

 

僕の問いかけに、佑斗君は無言で先を促してきたので、僕はさらに言葉を続ける。

 

「ほら、ドラマとかでもよくあるじゃない。人じゃないものと人間の恋愛は悲しい末路になるっていう話」

 

それが真実なのか、それとも空想に過ぎないのかはわからない。

でも、もしそれが真実であるのであれば……

 

「あのさ、一つ聞いていいか」

「うん」

 

言いようのない気持ちに押しつぶされそうになる僕の施行を遮るように、佑斗君は問いかける。

 

「浩介は、布良さんのことが、一人の女性として好きなのか?」

「……好きだよ。誰かに恋をしたことなんてないから何とも言えないけど。でも梓と一緒にいると楽しいというか、温かいというか幸せな気持ちになるんだ。だから――「あー、もういいよ」――ふぇ?」

 

清水……いや、断崖絶壁から飛び降りるような覚悟で恥ずかしいのをこらえながら答える僕の言葉は、頬を掻きながら苦笑している佑斗君の言葉で遮られてしまった。

もしかしたら、僕のあのセリフを聞いて恥ずかしくなったのかもしれない。

 

「ごほんっ。とにかくだな。浩介が本気であるならばそれでいいんじゃないのか? 人だから、吸血鬼だから幸せにできないっていうのはただの甘えだと思う。仮にそれが真実でも、隙になったやつを悲しませないようにするのが男ってもんだと、俺は思うけどな」

「そう……だよね。うん、そうだよ」

 

今にして思えば、佑斗君への問いかけは、不安な気持ちからだったのかもしれない。

僕が梓と付き合って不幸にしてしまうのではないか?

そういったことに対する。

でも、佑斗君のおかげで僕の不安はとても軽くなった。

まだまだ不安はあるけれど、それでも僕は自分の気持ちに正直になることを選んだのだ。

 

「ありがとう、佑斗君」

「別に礼を言われるようなことじゃないって。それじゃ、俺はそろそろ帰るな」

 

僕は病室を後にする佑斗君の背中にもう一度お礼の言葉をかける。

佑斗君は、僕の言葉に片手を振って答えながら病室を去っていった。

 

(よしっ! もし梓が来たら告白するぞっ!)

 

そんな風に自分を奮い立たせていた時だった。

 

「はい、どうぞ」

 

少しだけ控えめなノック音が聞こえてきたので、僕は外にいるであろうお見舞いに来てくれた誰かに声をかける。

それにこたえるように入ってきたのは

 

「あ、梓」

「浩介君」

 

先ほどまで話題に上がっていた梓だった。

 

「「………」」

 

ドアが閉まる音がする中、僕たちはただただ無言で見合っていた。

久しぶりに見る梓はどこもケガをしてはいなかったようだ。

……顔は少し赤くなっているけど。

 

「た、体調とかはどう?」

「ふに!? ぜ、全然だいじょうぶだよ」

 

お互いにぎこちなく声を掛け合う僕たちは、どこからどう見ても不自然だった。

 

(覚悟を決めろ。ここでこそ男を示すんだ)

 

「ねえ、浩介君」

「な、なに!?」

 

僕の必死の決意も一瞬のうちに儚く散っていく。

 

「私もね、考えてみたの。浩介君のことが好きな理由を」

「……見つかったの?」

 

僕のその問いかけに帰ってきたのは首を横に振る仕草だった。

 

「でもね、私を守ってくれたあの時の浩介君、とてもかっこよかったよ」

「……」

 

柔らかな笑みを浮かべて行ってくる梓の言葉に、僕は一気に顔がほてってきたように感じる。

きっとこれは、照れているのかもしれない。

 

「いつもと目が違っていたんだもん」

「……獣みたいな目だったでしょ?」

 

あの時のことは正直よく覚えていない。

ただ、梓を守るということだけしか考えてはいなかったのだ。

もしかしたら梓のトラウマにでもなっているのではないかと不安になってきた。

 

「ううん。うまく言えないけど、とてもかっこよかったよ」

「……そんなこと言われると照れるんだけど」

「えへへ。いつもの仕返しだよ」

 

あぁ。

やっぱり僕は梓のことが好きで仕方がないんだ。

理由とか、理屈とか関係なしに。

梓の笑っている姿を見ていた僕は、再びそのことを認識させられた。

 

「ねえ梓」

「なぁに、浩介君」

 

だからこそ

 

「大事な話が、あるんだ」

 

僕は覚悟を決めた。

 

「僕、梓のことが……」

「うん」

 

梓は照れたように顔を赤くしながらも、僕の口から出る言葉を静かに待っていた。

 

「一人の女性として、好きなんだ」

「―――っ!!」

 

今世紀一番といっても過言ではないほどの勇気を振り絞った僕の告白に、梓はまるで声にもならない悲鳴を上げたように息をのんだ。

 

(い、言った。ついに言ってしまった)

 

もう後悔はない。

たとえ玉砕しても、後悔など微塵もない。

……たぶん。

僕の渾身の告白を受けた梓は、最初は驚いていたが、落ち着きを取り戻したのか、静かに口を開いた。

 

「―――るい」

「え? んむ!?」

 

僕は一瞬の出来事に何が起こっているのか理解できなかった。

梓が何かをポツリとつぶやいた次の瞬間、梓の唇が僕の唇に触れていたのだ。

 

「……ぷは」

 

唇が合わさっていたのは、ほんの数秒だったのかもしれないが、僕はその何十倍の時間にも感じられた。

 

「な、なななな!?」

 

突然の出来事に、僕はうまく舌が回らなかった。

 

「ずるいよ、二回も告白するんだもん。そんなにいっぱい好きって言われたら照れちゃうよ」

 

柔らかい笑みを浮かべている梓のその表情はどこか色っぽさに、ドキッとした。

 

「それで、その……返事を聞いてもいい……かな?」

 

ようやく、落ち着きを取り戻した僕が言えたのは、それだけだった。

頬を赤らめながら、柔らかい表情を浮かべた彼女は

 

「私も、大好き」

 

そう呟くようにして、再び僕の唇に自分の唇を合わせるのであった。

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