DRACU-RIOT!~最凶の吸血鬼~   作:TRcrant

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大変ご無沙汰しております。

何とか更新にこぎつけました。
更新を優先したため、内容が短いですが、どうぞご覧ください。


第54話A 見舞い

「ごっきげんよー!」

「「っ!?」」

 

唇を合わせていた僕たちは、突然聞こえてきたはつらつとした声に、慌てて離れた。

尤も、離れたのは梓のほうだけど。

 

「あり? 二人ともどうしたの、そんなに顔を真っ赤にして」

「べ、別ににゃんでもにゃいよ!」

 

顔を赤くして、猫の鳴き声を混ぜている時点で、何かをしていたと物語っているのだが、僕も多分墓穴を掘りそうなので無言を貫くことにした。

そんな僕たちの様子に、まるで何があったのかを悟ったのか、来訪者であるエリナさんは、何やら言いたげな目で”こちらを見ていた。

 

「ごめんね、今からヤルところだったんだね」

「するか!!」

「にゃ、にゃにを言ってるの!?」

 

やはりというべきかなんというか、からかわれる羽目になってしまった。

 

「こんにちは、高月先輩」

 

そんなエリナさんの後に続くようにして病室に入ってきたのは、稲村さんに大房さんだった。

 

「腕のほうは大丈夫ですか?」

「あ、うん。やっぱり絶対安静らしいけど、何とかね」

 

一瞬、僕との愛のひと時(扇先生の中ではだけど)実現のための嘘かとも思ったが、あの先生は少々変わってはいるが、そういったことをするような人ではないととすぐに否定したのは、ここだけの話だ。

……まあ、変わっている部分さえなければ、心の底からそう思えるというのも事実なのだが。

 

「良かったです……でも、もう少し自分のことを大事にしないとだめですよ」

「そうだよ、アズサなんて、毎日毎日”コウスケのことがしんぱ――「にゃぁぁぁ! エリナちゃんそれは言っちゃダメ~!」――」

 

稲村さんの戒めの言葉に続く、エリナさんの言葉を梓は先ほどよりも顔を赤くして遮る。

 

(なんとなく、わかっちゃったけどね)

 

そのことは心の奥底にとどめておこうと決め、僕は”気を付けるよ”と、返事をした。

 

(そういえば、ここって病室だけど、騒いだりしてもいいのかな?)

 

色々と大声を上げてはいるが、看護師の人が注意をしに来る気配はない。

もしかしたら、隔離病棟のような場所にいるのかもしれない。

 

「あ、そうでした。これお見舞いの品です」

 

思い出したようなそぶりで稲村さんがテーブルに置いたのは、お見舞いの定番でもあるフルーツの盛り合わせだった。

そして稲村さんに続いて、大房さんは学園の授業の写しがしたためられていると思われるノートだった。

 

「ありがとう、二人とも」

「いいえ、どういたしまして」

 

二人とも嬉しそうに相槌を打っていたが、本当にありがたいことこの上なかった。

扇先生から、食べ物は基本的にリンゴなどの消化のいいものであれば大丈夫というお墨付きももらっている。

片方の腕で、皮をむいて食べるという芸当ができればよかったのだが。

ノートも地味にありがたい。

復帰した際に、少しでも追いつけるようにしておきたいと思っていたからだ。

……まあ、これも片手でできればの話だが。

 

「それじゃあ、お待ちかねのエリナの番だねっ」

 

小悪魔のような笑みを浮かべて目の前に置かれた黒い物体。

その正体は、よく確認しようとするまでもなく判明した。

 

「あぁ、やっぱり持ってきたんですね」

 

大房さんの、どこかあきらめたような口調がこの物体の正体を物語っていた。

 

「え、エリナちゃん!? いったいにゃにを持ってきてるの?!」

「入院生活必須の、ドリームボールだよっ」

「いや、必須というほどでもないし、そもそもこんな状態でどうやって使えと?」

 

梓のようにツッコミを入れる気力もない僕は、自分の片腕をちらっと見ながら聞き返すしかなかった。

 

「それはもちろん、看護師の人に」

「僕はそこまで外道じゃない!」

 

いや、ツッコむところはそこじゃないだろと気づいた時にはもう遅かった。

そもそも使う気など毛頭ないのだから、それを言って持って帰ってもらうように言えばよかっただけだ。

 

「あ、だったらもっといい人が――――」

「いいからそれを早く持って帰ってー!!」

 

そんな梓の怒りの混じった叫び声が病室内に響き渡ることを回避するためには。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらくして、お見舞いに来てくれた三人は仕事の時間らしく、各々病室を後にしていった。

むろん、一部ふさわしくない物体は本人に返却した。

別に後悔なんてしていないぞ。

 

(って、僕は誰に言ってるんだろ)

 

「浩介君、どうしたの?」

「あ、いや。何でもない」

 

そう答えたところで、僕は彼女が先ほどから何かをしていることが気になったため、何をしているのかを聞くと

 

「リンゴを剥いてるの。浩介君、さっき食べたそうにしていたから」

「あはは……ありがとう」

 

そんなに物欲しそうに見てたんだ、と自分の食い意地恥ずかしさを感じながら、ここは素直に彼女の好意を受け取ることにした。

まあ、食べたいと思ったのは本当なんだけど。

 

「できたっ」

「おぉ~」

 

梓の剥いたリンゴを見て、僕は思わず感嘆の声を上げてしまった。

きれいに剥かれ、食べやすいサイズに切られたリンゴは、僕の食欲を促すのに十分だった。

それではさっそくと、リンゴに刺さっているフォークに手を伸ばそうとすると、

 

「か、片手じゃ食べられないよね」

 

と、赤い顔をしながら聞いてくる梓に、僕はその動きを止める。

そんな僕をよそに、意を決したように、梓はフォークを持つと

 

「こ、浩介君。あーん」

 

と、僕に向けてリンゴを差し出してきた。

 

(こ、これがよく言われる”はい、あーん”かっ!)

 

悲しいことに、今まで一度もそれをしてもらえるような相手も、機会もなかった僕にはまるで夢を見ているかのような感覚だった。

 

「あ、あーん」

 

僕は、梓に食べさせてもらったリンゴの味を噛みしめるように、味わう。

 

「ど、どう?」

「うん。おいしい」

 

恥ずかしさで頬を赤く染めつつ、どこか不安な気持ちを秘めているような表情を浮かべながらの問いかけに答えると、その不安そうな表情は一変し、にっこりと嬉しそうな笑みへと変わった。

これが、持つもの持たざる者……リア充とそうでないものとの違いなのかもしれない。

 

(あー、幸せ)

 

僕は、この幸せな時間をじっくりと噛みしめるのであった。

 

 

 

ちなみに、これは余談だがどういった経緯か、このやり取りが扇先生の耳に入ったようで、『さあ、僕の愛の結晶(リンゴ)を受け取ってくれ』と迫られた。

むろん、全力で拒否したが。




気が付けば最後の投稿からすでに一年が経っていました。

その間も、本作を読んでいただけただけではなく、お気に入り登録までしていただけて、大変嬉しく思います。
皆様のご期待にできるだけ沿えるよう、これからも執筆のほうを続けていく所存です。

決意表明のついでではありますが、本作の展開についてお知らせいたします。
これまで本作は原作でのストーリを『忠実』になぞる形の展開をしておりましたが、更新再開の今回をきっかけに、変更しようと思います。
今後は、原作の『主要な』イベントをなぞる形の展開となります。
これに伴いまして、原作でのイベントがいくつか抜けたり、ストーリーが大幅に進んだりすることがございますので、ご了承のほうをお願いします。

理由としましては、今までのやり方ですと、次の更新にあと1年かかりそうな予感がすることと、原作に忠実すぎるのは、読者からすれば物足りない気持ちになってしまうのではと思った次第です。


ふがいない作者ですが、これからも、よろしくお願いします。
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