それ往け!僕らの空戦道!   作:まんまみーや

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少女、決意する

おはようございます! 西住みほです!

 

って、誰にあいさつしているんだろう……。

とにかくです! 今日はすっきりと目が覚めて清々しい一日が始まる予感。それもこれも、お兄ちゃんに再会したおかげかな?

 

寺古翔さん。

 

私は「お兄ちゃん」と呼ぶけど私たちは別に血の繋がった兄妹という訳ではない。正確には年上の幼馴染で、小さいころによく一緒に遊んでいてよくお世話になった人。

 

でも、お兄ちゃんが中学に上がると同時に遠くに引っ越してしまった。初めはずっと一緒にいた人がいなくなることを悲しいと思っていたけど、それでも律義に連絡をくれたり、お互いが携帯を持つようになると毎日のように電話をしてくれたこともあった。ただ、その所為で携帯料金が馬鹿にならないほどになってしまい、お姉ちゃんと一緒にお母さんに怒られたのはいい思い出。

 

「み~ぽりん♪ お昼しよ~!」

「食堂混んでますかね?」

「あ、沙織さん、華さん。今行きます」

 

時間は昼休み。自分の席で教科書の整理をしているとつい最近友達になった沙織さんと華さんがお昼に誘ってくれた。

 

昨日も戦車道の復活やらで情緒不安定だった私を心配してくれて、放課後もお兄ちゃんと二人で会うことを心配して付いて来てくれた私にはもったいない友達。

 

正直、昨日の時点まで私はお兄ちゃんのことを避けて来ていた。

 

小さいころから知っているお兄ちゃん。でも、そのお兄ちゃんはどちらかと言うとお姉ちゃんとの方が仲が良かったりする。だから、私が戦車道を辞めてこの大洗学園に来たことをなんて言うか不安だった。もしかしたら、お姉ちゃんと一緒で私に酷いことを言うんじゃないのかって。

 

でも、実際に話をしてみるとお兄ちゃんは私が大洗に来たことを歓迎してくれた。それどころか、私が戦車道を辞めたことを咎めることもせず、戦車道を履修するように言って来た生徒会を何とかしてくれるとまで言ってくれた。

 

嬉しかった。本当に嬉しかった。

 

ここでなら、私は戦車道とは無関係な生活を送れるって思うと、なんだか憑き物が取れたかのように気が楽になる。

 

「それよりみぽりん」

「はい?」

「先輩って彼女いるのかな?」

「え、ええええぇぇぇぇ!?!?」

 

あまりの衝撃的な質問に声を上げて驚いてしまった。

 

「な、なんで!?」

「いや~昨日話しただけだけどさぁ~。色々と気遣い出来る人って結構重要だと思うんだよね。その点あの先輩なら問題ナシ! いきなり着いて行った私たちを邪険に扱うこともしないで奢ってくれたりしたから。雑誌にも書いてあったよ。『男は女性に対して気遣い出来てナンボ』って」

「確かに寺古先輩はいい人ですよね。私は異性と言うよりはああいった兄がいればなぁ~っと思ってしまいました」

「そ、そうなんだ………」

 

まさかの二人が抱くお兄ちゃんに対する印象に私は驚いてしまう。

 

「えっと…ちょっとわかんない、かな?」

「そうなの?」

「うん、再会するまであんまり連絡はしてなかったから」

 

正確には去年の戦車道全国大会からだけど。優勝を逃した責任、罵倒、その他諸々が私を押しつぶしに来ていた。西住の家で逃げると言うことはしない。そんな教えもあって、私はそれを一身で受け止めようとしていた。それにお兄ちゃんを巻き込むと言うのは違う、なんて思っていたけど、結局受け止めきれずに私は潰れちゃった。

 

大洗に来たのも無意識的にお兄ちゃんに助けを求めてしまったのかもしれない。甘えてばかりいられないと思いつつも、どうしても甘えてしまう。私は、卑怯だ………。

 

「亮く~ん! 時間だぞ~!」

「寺古先輩のところに集合~」

「おー! 今行くー!」

 

え? お兄ちゃんの名前?

 

「ちゃんと書いて来た?」

「おう」

「んじゃ、行くべー」

 

食堂に向かおうとして、教室を出たちょうどその時。入れ違いで顔の一緒の男子、双子かな? そんな男子が教室内に向かって、誰かに呼び掛けていた。普段なら気にしないけど、その双子の一人がお兄ちゃんの名前を出していたので足を止めてしまった。

 

「みぽりん?」

「え? あ、うん」

 

沙織さんが私に声を掛けてくる。それに対して空返事をしてしまうが、それよりもさっきの男子達の方が気になる。

 

双子の男子は知らないけど、一人は私と同じクラスの島田亮平君。まだ、話したことがないけど転入初日に自己紹介されたので覚えていた。

 

そして、男子三人で食堂とは別の方向に向かって歩き出す。

 

「え!? ちょっと!」

 

どうしてか、私はその三人の後を追いかけて歩き出していた。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

三人の後を追いかけてやって来たのは生徒会室だった。

途中、お兄ちゃんとそのお友達らしき人と島田君たちが合流して、生徒会室の中へと入って行ってしまった。

 

「先輩、早速生徒会にみほさんのことを話に行ったのでしょうか?」

 

食堂に向かわず、私について来てくれた沙織さんと華さん。お兄ちゃんたちが生徒会室に入って行ったのを見て、私たちも生徒会室の前に並ぶ。

 

「きっとそうだよ」

「でしたらなんであんな大人数で?」

「うーん……武力行使?」

「さすがにそれは………」

 

とんでもないことを言い始める沙織さん。それに華さんが呆れたようになっていたが、内心私もそうじゃないかと思えてしまった。話をするだけならあんな人数いらない。それが必要となると、乱暴な手段を取ろうとしているのではないかと思ってしまう。

 

もちろん、お兄ちゃんに限ってそんなことをするはずがない。するはずがないんだけど……不安に思ってしまう。

 

『西住みほの件で来た』

 

中から声が聞こえた。お兄ちゃんの声だ。

 

『ふ~ん……いいよ聞こうか』

『まず、西住みほは諦めてくれ』

 

相手はたぶん、あの生徒会長さんだと思う。中で行われている会話は私についてのことだった。

 

「やっぱり、みほさんのことについてでしたね」

「当然と言えば当然か」

「うん………」

 

胸の当たりがチクチクする。不甲斐ない私のためにお兄ちゃんが頑張ってくれていると思うと、余計に自分が惨めに感じてしまう。

 

『代わりに俺たちが戦車道を履修する』

 

「え?」

 

その言葉を聞いて私だけではなく、沙織さんと華さんまでもが驚いた。

 

『意味がわかんない』

『ふざけているのかお前ら!!』

『寺古君。男子で戦車道はちょっと……』

『何故だ? 西住みほは戦車道経験者と言うだけで強制的な履修を迫られているんだろ?』

『だから?』

『ここにいる全員が戦車道を経験している』

『え?』

 

まさかの展開に驚きを隠しきれない。お兄ちゃんは確かに小さいころに私とお姉ちゃんと一緒に戦車を扱ったことがあった。でも、それは子供の遊びの範疇で、とても戦車道経験者とは言えない。

 

いや、それよりも私のためにお兄ちゃんが犠牲になろうとしている。私が戦車道をやりたくないと言っただけで、ここまでしてくれる意味が理解できなかった。

 

『そして彼、”島田亮平”は戦車道二大名家、島田流の長男だ』 

「ッ!?」

 

戦車道二大名家と言えば、私の家の西住流ともう一つは島田流と言われている。

 

撃てば必中、守りは固く、進む姿は乱れ無し。鉄の掟、鋼の心、それが西住流。

 

状況利用や臨機応変を得意とした、「ニンジャ戦術」の島田流。

 

西住流を侍とするならば、島田流は忍び。

 

西住流の戦い方を軍隊とするならば、島田流の戦い方はゲリラ。

 

と言った感じでどこまでも対照的な流派。

 

そんな人がクラスメイトだったなんて知りもしなかった。けど、今はそこに驚いている場合じゃない。

 

『角谷、お前のことだ。どうせみほについての調べは一通り済んでるんだろ? どうしてこの大洗に来たのかも』

『………』

『それでもお前がみほを欲する理由はなんだ?』

『それは言えない』

『言えない事情があるんだな』

『………』

『正直言っちまえば、俺はみほに戦車道をやってもらいたいって思ってる』

 

え?

 

『あんなことが起っちまって、みほ自身色んなもんに押しつぶされそうになってる。でもな、あんなになっても戦車は好きなのは変わらない。変わってなかったんだ、みほは。だから、簡単に投げ出してほしくない。俺、あいつが戦車に乗って楽しそうに笑ってる顔が好きなんだ』

 

「好き」と言う言葉に沙織さんがキャーっと嬉しそうに悶え、華さんは何故かニッコリとこちらを見てくる。ハズカシイ………。

 

『ならなんでこんなことするのさ? 君とその周りを巻き込んで。言ってることとやってることが矛盾してるよ』

『そりゃお前………今にも泣きそうな妹がいるんだ。兄貴がそれを守らなくてどうする』

『はぁ?』

『みほの問題は時間が必要なんだ。今すぐって訳ではない。心の整理が必要だ。なら、俺がその時間を作ってやるんだよ。そんで、自分で戦車道やるって言うまで待ってやる』

『…………』

『だから、代わりの島田流だ。こいつが言えばこの大洗学園に戦車道二大流派の一角がサポートに回る。戦車の手配をしよう。教官を手配しよう。練習場だって用意してやる。まぁ、用意するのは俺じゃなぇけど……』

 

一拍置いて、続ける。

 

『俺らはお前等のサポートに回るしかない、でもなんでも言ってくれ。力仕事でも雑用でも任せてくれればいい。お前等が戦車道に集中できるように他は俺たちが受け持つ。だから、どうにかみほのことは今は諦めてください!』

『『『お願いします!!』』』

 

お兄ちゃんの言葉に続いて、同じ言葉を言う男の人たちの声が聞こえてくる。

あの大会から黒森峰にいた時は私のために動いてくれる人はいなかった。けど、お兄ちゃんは私の心情を察して、ここまでしてくれる。

 

それを嬉しいと思う反面、やっぱり自分が情けないと思ってしまう。

 

私が弱いから、逃げてきただけなのに。ただ嫌だと言っただけで、ああまで体を張ってくれる人に甘えるだけなのは――――嫌だ。

 

「みほ」

「みほさん」

 

沙織さんと華さんが私の手を握ってくれた。それだけで、不安は薄れていく。

 

「ありがとう二人共。私、二人と友達になれてよかった」

 

お兄ちゃんが言ってた。今の私には時間が必要なんだって。

でも、甘えるのはおしまい。沙織さんと華さん、それからお兄ちゃんと出会って、十分な時間を貰ったよ。

 

だから、私は自分の決意を言葉にする。

 

 

「失礼します! 二年A組、西住みほ! 戦車道やります!!」




ようやく一話分です。と言いたいですが、もうちょっと続くのです!
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