美竹さんはこんなに可愛いんだよ?   作:┌┤´д`├┐

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なんだかんだ戻ってきました。

更新の予定は未定です。


RTAものが流行ってるらしいですが知ったことではありません。作品完結RTAでもやれバカタレ。


待ってる人は居ないでしょうが、新規さんいらっしゃいということで〜

みなさまのために〜〜カラカラ



何も用意してませんさっさと本編イクゾー!





お花弄り

 

 自宅の冷蔵庫に入っていためちゃくちゃに甘いペットボトルのミルクティーを流し込みながら、曇り空の下を歩いている。

 宛もなく散歩をするのは好きじゃないけど、別に暇な時はいつもそんな事をしてる程、高校生は自由な時間がある訳でもないし。

 

 では目的地は何処かと言えば、いつものライブハウス『CiRCLE』では無かった。

 

 自分のマンションから15〜20分くらい歩いたところに。

 現代の日本ではなかなか見ることが無いであろう──まるで武家屋敷のような──いかにも和風な感じの建物が姿を現した。

 

 家の外周はブロック塀……ではなくこれまた昔を感じさせる白壁で、僅かな隙間なく四方を囲んでいる。敷地内への入口は2つあるが、片方は限られた時にしか使用しないものなので実質入口は正面の1つになる。

 その門も例に漏れず、俺の身の丈を優に超える大きな両開き木扉と横に設置されている一般的家庭でよく見る大きさのドア。

 

 これは……、いつ見ても圧倒されるなぁ……

 

 体感1分ほど、小さなドアの横に設置してある時代錯誤なインターフォンを押すのを躊躇っていると

 

「あ、響介」

 

「ぅへぇ!?」

 

 近くにあるスーパーのレジ袋と、高そうなお店の柄のついた紙袋を持っている、この家の住人である蘭がそこに居た。

 

 ──にしても、なぁにが「ぅへぇ!?」だよビビりすぎだっての恥ずかしいわ。

 

「ぷっふふ! 何その声……!」

 

 案の定、蘭はさっきの俺の情けない声に吹き出していた。なかなか笑う事が少ない蘭が笑ってくれたのは嬉しいけど、ちょっと複雑。

 

「ち、ちょっとビックリしただけだろ! それに加えて、改めてこの家の大きさにビビってた」

 

「確かにうち、周りの家よりも大きいからね。主に庭が」

 

「ま、積もる話はまた後々。まずは蘭パパさんに呼ばれてるから、そっち行かないと」

 

 とりあえずこの軒先でのお話はこれでお終い。

 今日ここに来た理由は、我慢できずに蘭に会いに来た……っていうのも当然あるけど、残念ながら今回はそっちの方がおまけ。

 

 本題は蘭のお父さんにある。

 

 

 

 ──2年前に出来た借りは、未だに返せそうにもないのだ。

 

 

 

「あ……、今日だったっけ?」

 

「そ、今日。だからちょっと待ってて、終わったら部屋行くから」

 

「……あんまり根詰め過ぎないでよ?」

 

「大変な事なんかじゃないんだし大げさな……。じゃ、そういう事だから」

 

「うん……、また後で」

 

 蘭が少し申し訳なさそうな顔を向けてくるけど、こっちが勝手にやってる事だからなんだか変な感じだ。

 

「いつものお菓子と飲み物、間違えないでよ?」

 

「分かってるって。ほら……行ってきなよ」

 

「うん、行ってくるよ」

 

 

 蘭と別れてから、向かう先はと言えば当然蘭のお父さんのお部屋。

 

 大抵いつもこの時間は、そこに居る。何をしているのかは日によってまちまちだけど、本を読んでたりするしテレビを見ている事だってある……らしい。

 らしいというのは、俺がまだその光景をこの目で見たことが無いのだ。あまり想像がつかない光景だし、まだラジオとかの方が聴いてそうではある。

まぁラジオも最近のやつは聴かなそうだけど。

 

「……失礼します」

 

「うむ、入ってくれ」

 

 襖だけど、一応ノックをして入る。

 

 机を挟んで向かいに用意されている座布団に正座をする。

 

 ──今日は小説を読んでいたみたいだ。机の端には有名なミステリー小説が2冊。

 手前側にはラッパ型の花器が置かれている。前にこれを使ったのはいつだったかよく覚えてはいないが、この器を使って生けるのは個人的にあまり得意ではないという事は、しっかりと記憶に残っている。

 

 

「では、今日も来てくれてありがとう。蘭が待っているし、始めようか」

 

「はい。今日もお願いします、弦一郎さん」

 

 これから何を始めるのかと言えば、華道というモノだ。

 ──別名、生け花とも言う。

 

 弦一郎さんも他の師範よろしく弟子を取っているが、誰も跡を継がなかったら……否。

 

 誰も跡を継げるだけの能力を持ち得なかった場合、たとえ流派は途絶えずとも、美竹の家の華道はそこで打ち止めとなってしまう。それを避ける為に弟子は取れるだけ取っておいて、保険を掛けておきたいというのが弦一郎さんの考えだ。

 

 弦一郎さん直々に頼まれ、それを了承した事で生まれた師弟関係は一応保険という形ではあるが、他のお弟子さん達と同じような扱いになる。

 

 考えは分かる。

 代々受け継がれてきた歴史をこの代で止めてはならない、そういう確かな想いが弦一郎さんの生け花からひしひしと伝わってくるのだ。

 想いが乗り移るような作品を果たして自分が作れるようになるのか、いやそもそも。

 

 跡を継ぐことが果たして出来るのかすら、今は分からないが。

 

 助けてくれた恩には、何とかして報いなければならないから。せめて受けた恩と同じ分だけでも。

 生け花をしている理由はそんな個人的な、言ってしまえば不純の塊のようなものだけど。

 

「……うむ、良い出来だ」

 

 しかし、そんな理由からでも自分の作品が好評されるのは嬉しいもので。

 緊張していた事もあって、良い評価が貰えた事で自然と口元が緩んでいく……が。

 

「──だが、雑念が入ったな。選んだ花、構成自体は良くても、その状態にまでは目がいかなかったようだな?」

 

「それは、どういうことです?」

 

 目線で促され、従うように自分の作品をもう一度見つめ直してみる。

 

 ……あっ!? 

 

「うむ、その様子なら気付いたか。主軸として打ち立てられた花弁の裏が変色している、これではいかん。それにこの茎をよく見なさい、他の葉物と接触し過ぎて目に見える傷が出来ている」

 

 とまあ。

 

 詰めが甘過ぎてプラスマイナスゼロどころかマイナスまで評価が落ち込みそうではあったけれど、その後は作品全体の構成についてお褒めの言葉を頂いたりして、今日の稽古はお開き。

 

 ちょうどそのタイミングで。

 

「今日もお疲れ様、響介くん♪」

 

 労いの言葉と共に、お盆を持った蘭のお母さん──名前は由良さんというが──が部屋へと入ってくる。

 お盆の上には急須と茶碗、それと名前はわからないけどお茶菓子が載せられていた。

 急須を除きそれぞれ3つずつ、という事なので今・日・は・そういう日らしい。

 

「は、はい。ありがとうございます」

 

「すまんな」

 

「いいえ、あなたも。お疲れ様」

 

 このやり取りはかれこれ何回も見て来たけど、その度に思う事がある。

 

 蘭のお母さん、死ぬほど蘭に似ていない……! 

 昔から弦一郎さん似だろうとは思っていたけど、逆に何を引き継いだか分からないくらい由良さんと似ていないのだ。

 

 顔の特徴とかは後々出てくるかもしれないけど、性格は完全に父親譲りなのは間違いが無い。

 

 ──蘭、まさかの養子説浮上……? 

 

「あ〜、響介くんがその顔してる時は大体変な事考えてる時〜! なになに? 私を見つめてどうしたのかしら??」

 

 蘭と性格は正反対、くっそぐいぐい来んねん。めちゃくちゃ陽キャっぽい、コミュ力高い過ぎて俺が圧されてる……! 

 

 俺もそんなにコミュ力高いとは思わないけどさ。

 

「お戯れを……、今日もお綺麗だと思いまして……」

 

「うふふ♪ ありがと〜」

 

 で、こっちがこういうこと言ってもサラッと流される。

 んー、コミュ力! 

 

 さて。

 

「それで、今日は何をお話しましょうか?」

 

 お話をする、というのはもちろん蘭の事だ。両親はどうしても学校での蘭の姿を見ることは出来ない、のであればそれを知っている者から話を聞くでしか、蘭を知ることは出来ない。

 

 という事で偶に由良さんは、お茶菓子を持って華道の稽古が終わる頃に現れ、俺とのお話を楽しんで帰っていくのだ。

 

 

「……それは今日はいいんだ」

 

「?」

 

 疑問符が浮かぶ。では何故お茶菓子と一緒に由良さんが現れたのか。

 

「ちょっとね。最近蘭の事で気になることがあって〜……」

 

 由良さんが口を開く。

 ……なるほど、今回はこっちからお話をするからって訳か。

 

 

「家でも普段とあまり変わらないように見えるんだけど、何かしら……」

 

 一区切り付けてから、由良さんは

 

「──何か悩んでいるような、困ったような顔を偶にしてるの」

 

 

 と、そう言い放った。

 

 




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もしかしたら更新の予定が早まるかもしれんぞ!

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