美竹さんはこんなに可愛いんだよ? 作:┌┤´д`├┐
「それで…、なんで泣いてるのさ?」
「ぅっ…、みんなと…、ケンカしちゃった…。ぅぁ……」
「そっか…、大変だったな…」
新学期まではまだ時間があったので、午前中は家でぐーたら。流石に休日まで蘭が来てくれる事は滅多にない、というか来ないでもらっている。一応合鍵は渡してあるから勝手に乗り込んでくる事はたまにあるけどね。確かに、毎日来てくれるのは嬉しいことだけど、蘭に負担が掛かってしまうのはあまりよろしくは無いからね。
だから、そういう時くらいは自分で自炊するので、午後は少し夕食の買い物に出掛けてみた。簡単なものしか作れないけど何も出来ないよりかは、断然マシだと思う。
カップラーメンのような手早く飯を済ませられる食品や、和えるだけパスタソースとかには相当世話になってるかもしれない。偶にチャーハンとかハンバーグとかそこら辺は作る。カレーとかも作れるけど、面倒だし一人暮らしなのにそんな量が多いものを作っても仕方が無い。せいぜいいつもの5人がやって来た時に振る舞うくらい。
買い物袋を大量にぶら下げて家に帰ってきてみれば、なんと鍵が空いているではないか。鍵を掛けていなかったかと思ったが、よくよく考えれば合鍵で蘭が入ったという事に気づくはずなのだ。が、その時の俺は空き巣の警戒ばかりしていて買い物袋をその場に置き捨てて、慌てて部屋の中へと入っていく。
「……また、仲直りできるかな…?」
「当たり前だろ。蘭達は小さい頃からずぅっと一緒だっただろ?たかが一回の喧嘩で長年の絆が引き裂かれてしまう訳が無いって」
「そう…、かな…?」
「そうだよ。蘭がみんなの事を信じてあげられれば、きっとみんなも蘭を信じてくれる。友達ってのは、そういうもんだよ」
俺の腕の中にすっぽりと収まった蘭の頭を撫でながら、大丈夫…大丈夫って何度も諭していく。そうするとさっきまで嗚咽交じりの涙だったのが、少しずつ収まっていって涙声ではあるけど、普通に話せるくらいには落ち着いてくれた。
部屋に入って来た時は凄かったよ…、ほんとに。部屋の隅っこで、体育座りで静かに泣いてたのに、俺が来たことに気づいた瞬間、涙をぼろぼろと流しながら「きょう…、すけぇ……!」なんて言いながら抱き着いて…、というよりしがみついて来たって言った方が正しかったかな。
きっと、喧嘩しちゃってみんなと離れ離れになっちゃったから、寂しかったってのもあるんだろう。でもそれ以上に、「響介は居なくならないでいてほしい」っていう強い意志を感じたな…。そういう心が弱くなった時に頼れる人が居るって言うのはとっても大事なんだ、僕にもそういうことがあったしね。
話を聞いてみれば、バンドの練習中に些細な事から巴と口喧嘩になっちゃったらしい。蘭はあたしが悪かったの一点張りだけど、確かにそれもあるんだろう。でも少しばかり巴も悪いと思ってるだろう。だから仲直りにそんな手間は取らないはずだよ。そうやって蘭に優しく伝えてあげると――。
「ぅぅっ…、ほんと…?」
「あぁ、ほんとだよ。絶対仲直りできるって!」
「ぁぁ…よかったぁ…!」
「ほらほら、いつまでも泣いてないで。折角の可愛い顔が台無しでしょ?」
「可愛いって…、言わないでっ…!」
「言い返せるなら、もう元気だよ。ほら、ご飯できてるから、一緒に食べよ?」
「…うん、食べたい…」
今日は夕食の定番、ハンバーグ。挽肉に玉ねぎとかを練り込んで焼き上げた簡単料理――と言ってしまうと大分説明が雑に感じるだろうけど。他にはほうれん草とベーコンのソテー、それに加えて日本人の魂セットであるご飯とお味噌汁。そこそこ豪華なご飯だね。
あ、ちなみにだけど、既に蘭の家には連絡を入れてあります。ご飯をご馳走して行きますって。返事はOKだそうで、「娘をよろしく頼む」って、とてもダンディーな声で囁いてくれました。イケメンのオッサンやんか。
「「いただきます」」
蘭と二人で食卓を囲んで、一緒に食べ始める。味噌汁を一口飲んで、ハンバーグを箸で切って、口に運ぶ。そうしてから、ご飯と一緒に食べる。この時間がたまらなく感動するんだよね。なんだか根っからの日本人みたいだけど、食べてるものは日本発祥のものじゃないんだよな。
「あ…、このソテー美味しい…!何が入ってるの?」
「塩コショウと、お醤油。そこに隠し味として味覇をちょっとだけアクセントで入れてあるんだよ」
「うん、これいけるね。ふふっ、おいひぃ…!」
「こらこら、口に食べ物入れたまま喋らないの。えっと、でも…、ありがとうね」
「あ、顔紅くなってる。もしかして、照れてる…?」
「て、照れてないし…」
「嘘だよ、絶対照れてるでしょ?」
「だって仕方ないじゃん…、蘭が素直に褒めてくれるのとか滅多にないんだからさ…!」
「あっ…!えっ、あ、あたしのせい…なの?」
蘭の珍しい攻勢を受けて、少しだけ押されたけど直ぐに持ち直して、食事に戻る。蘭もそれからは自分のご飯を平らげることに集中始めたみたいだ。そうしてからものの数分で。
「ごちそうさまでした」
「はい、お粗末さまでした。食器は流しに置いておいて、ぱぱっと洗っちゃうから」
「…あたしも手伝うよ」
「そっか、じゃあ俺が洗うから食器を拭いてもらっていい?」
「ん、分かった」
そうして二人で使った食器を片付けた後。
「ねぇ…」
「どうしたの」
「今日泊まっていったら…、だめ…?」
「……?………へぁ?」
なんとも素っ頓狂な声が出てしまった…!じゃ、じゃなくって!え、何?蘭が俺の家に泊まるだって?冗談じゃない!そんな事されたら理性が持つかどうかわからないじゃないか…!いや一緒に同じ部屋で寝たりしたいけど、それとこれとは話が別!
「あっ、父さんOKだってさ」
「親父殿ォ!?」
おい、蘭パパァ!?大丈夫かよそれ!?あんたの娘が、いくら仲がいいとはいえ男子の家に泊まるなどあってはならない事だって、絶対そうなると思ってたのに…!この状況で読み違えるとは痛いぞ…。
「響介、父さんが少し話したいって」
「あ、うん」
そういって、蘭の何も飾り付けされていないスマートフォンを受け取って、耳に当ててから返答を返す。
「おお…、久しぶりに声を聞いたな…。元気にしていたか?」
「あ、はい。お陰様で、すくすくと」
「はははは、それは良かった。さて、私から言いたいのは一つだよ」
「えっと、それは…?」
「蘭は手間が掛かるぞ?心してな…?」
「あんたは俺が何すると思ってんだっ!?」
そのままの勢いで電話を切ってしまうが、よくよく考えてみれば割と不味いことしでかしたかも、と後悔する。何もありませんように…。
いやマジでなんでや、男の部屋にあんたの可愛い娘が取り残されてるんだぞ?なぜ心配にならずに、許可が出せるのっ!?
「い、一応…、聞くけどさ。大丈夫なの?」
「何が?」
「俺の部屋に泊まるって…」
「あたしは大丈夫だよ。寝巻きは、何か貸してくれると嬉しいかな…」
「あ…、わ、分かった…。うん…」
結局、蘭はうちに泊まっていく方針で話が固まってしまった。ぶっちゃけ心臓ばっくばく、マジで理性が保てなかったら親父殿にぶっ処されちまうわ!命の危機を直に感じてしまって、急速に肝が冷えていく。これ、あれだ。SANチェックだわ。
「じ、じゃあ先お風呂入って来ていいよ!」
「え、いいよ。響介先入って来て。今日はあたしが無理言っちゃったから、大人しく待っとくから」
「そ、そう?じゃあ先に入ってくるね。喉乾いたりしたら冷蔵庫になんかしら置いてあるから、自由に飲んでいいよ。あ、蘭のコップの位置わかる?」
「うん、大丈夫。安心して」
「じゃあお先に…」
全く予期していなかった事態だけど、心の奥では割と楽しみになっている俺の心。なんてったって初めてだしな、こんな事。そりゃどきどきもするけど、何が起こるのかってちょっと楽しみです。
あ、ちゃんと一線は越えないように頑張るけどね!
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