美竹さんはこんなに可愛いんだよ?   作:┌┤´д`├┐

8 / 12
赤評価ありがたいっす。


いや、ホントに。こんな汚ない文章を読んでいただきありがとうございます…。







リターン

 俺的には雨というのはそこまで疎ましいものでは無い。さすがに頻繁に降られるのは勘弁してもらいたいところだが、偶にならば自分に染み付いている穢れを落としてくれるような気がするので、割と好きな方なのだ。

 

 「ほんと、なんで雨って降るんだろう……」

 

 「いや、今梅雨だしさ。仕方ないじゃん」

 

 「うん、それは分かってるけど。これ、どうやって帰るの?」

 

  「それは……。ホント、どうしよっか……」

 

 ただ、梅雨の時期は最悪だ。ほぼ永遠に雨は降り続くし、時間が過ぎればだんだんとジメジメし始めるし、何処からか靴の中に水が浸水してくるしで、世間の大半の人々が忌み嫌うものだろう。

 

 無論、俺は嫌いだ。そして、隣で愚痴をこぼしている蘭も恐らく同じだと思う。

 

 長く苦しかった学校を今日も無事に乗りきった俺は、部活動も無いのでさっさと帰ろうと思っていた。――いやまぁ、部活も何も入ってないんだけどね。

 家を出る前に確認して来た天気予報には、終日晴れだと宣っていたので割と嵩張る折り畳み傘は持ってきていなかったのだが。

 

 「まじどうしよ、全く止む気配無いし……」

 

 「あ、父さんが迎え来てくれるって」

 

 「ホント?やったじゃん」

 

 「隣に響介が居るって言ったら、一緒に乗っけて行ってくれるって」

 

 「マジか…!蘭パパあざっす!」

 

 「…そのまま泊まっていけ、とも言ってるけど……」

 

 「……はぁ…?」

 

 隣で一緒にこれからの事について悩んでいた蘭が、助け舟を用意してくれたので、遠慮なくそれに乗っかろうとした。が、何だか求めてもいないオプションパーツが付属している事を知らされる。純粋に泊まりに行けるのは嬉しいんだけどね……。

 ――うん、別に望んでいない訳じゃないけど、そういう時って必ず蘭パパとの対談が待ってるんだよなぁ……。

 

 「どうする?」

 

 「……選択の余地は、無いよなぁ…。折角のご好意だし」

 

 「決まりだね、今向かってるって」

 

 「あいよ」

 

 

 そうして数分後には、蘭パパの車の中で揺られていた。全く関係はないのだが、和服を着ていながら文明の利器である車を運転している姿は、正直にクスッと笑える。

 

 途中、俺の家の前で止めてもらって、着替えとかいろいろ荷物を持って来てから、再び車が動き出す。

 

 俺の肩には疲れて眠ってしまった蘭の顔が乗っかっている。そんな蘭に俺は、車に乗るまで着ていたブレザーを掛けてやる。

 蘭パパも気を遣って速度は落とし目にしてくれている。無防備に寝ている顔は、自然と俺の顔を綻ばせる程の力を持っていた。ただ、出来ることならば家に着くまでは起きていて欲しかった……。

 

 「最近の、学校での蘭はどうだね?」

 

 「えっと、そうですね…。最近はさらに笑顔が増えたと思います」

 

 「それは響介君の前でだけかね?それとも普段からなのかな?」

 

 「どっちもですね。この前のライブも、クラスの連中がこぞって見に行ってたみたいですし…。無論僕もですけど」

 

 「そうか、……やはり君には頭が上がらないよ…。本当にありがとう…!」

 

 さすがに運転中なので振り返りはしなかったが、誠意のこもったお礼を伝えられる。蘭の性格を一番よく知っているだろう蘭のお父さんは、大事な愛娘の事がとても心配だったみたいだ。心配にならない親なんて、普通いないだろうけどさ。

 

 「そんな……!自分は何も…」

 

 「私はね、君が中学二年の時に蘭と知り合ってくれて、沢山気に掛けてくれていた事を知っているんだ……。そこから蘭は、少しずつでも変わり始めていたんだ」

 

 そこには、普段厳しい言葉を娘に投げ掛けながらも、誰よりも一番に気に掛けていた…。親も親なら子も子という言葉が示しているように、素直じゃないけれど、子煩悩な父親の姿が映っていた。

 

 「………。」

 

 「変えてくれたのは……君なんだよ、響介君。だから、ありがとう…」

 

 「……ええっと…。じゃあ、これからも任せてください…!」

 

 「ああ、是非とも!君ならば安心して蘭を預けられるよ…!」

 

 ここで『どういたしまして』と返すのは何か違う気がしたので、『これからも』という継続の意志を伝える。すると蘭のお父さんは鏡を通して笑みを浮かべながら、そう言葉を漏らした。

 

 

 美竹家に着いた頃には雨は上がっていたが、空はまだまだ黒みがかった雲が支配していた。この調子ではいつまた降ってくるか分からないな…。そんな事を考えながら、足を美竹家へと運んでいく。その背中に気持ち良さそうに眠りこけている蘭を背負いながら。

 

 正直気が気じゃなかった……。というのも、ほら……、分かるでしょ?蘭の寝息がちょうど耳にかかってくるし、時々普段からは想像出来ないような色っぽい吐息が吹きかかってくるのだ。

 それに加えて俺の背中に密着した蘭の胸がマズイのだ。蘭の幼なじみであるピンクの髪の女の子程では無いが、平均的な女性のレベルを持ったそれは俺の理性をガリガリ削っていく。もう一声とばかりに伝わってくる蘭の心臓の鼓動が、俺の心臓を刺激していく。

 

 「響介君、蘭の部屋は分かるかな?」

 

 「へぁ!?は、はいっ!分かりますとも!」

 

 「そうか…。なら案内は必要無いか。蘭を連れて行ってやってくれ」

 

 「は、はい。では失礼します」

 

 蘭を背中におぶったまま、工夫して頭を下げる。まもなく蘭パパはスタスタと居間の方へと向かって行った。なので、俺もさっさと蘭の部屋へと向かわないと。そろそろ……、足が限界…!足だけじゃない……、俺の理性もヤバいから!

 

 階段を登りきって、曲がり角を曲がってから引き戸を2枚程開け放つ。すると、言うほど女子の部屋らしくはないが、それなりに可愛らしい部屋が現れる。

 

 ベッドに背負っていた蘭を寝かせようと、しゃがみこむ。そうして、未だに眠っている蘭に対して囁いた。

 

 

 「蘭、お前……。さっきから起きてただろ」

 

 「……あれ、バレてた…?」

 

 「……カマをかけたつもりだったのに…。いつから起きてたの?」

 

 「家に着いたくらいからかな」

 

 「なら自分で歩いて欲しかったんですけど…」

 

 「いいじゃん、ちょっとくらい甘えたってさ……」

 

 「はぁ……、それならせめてちゃんと口で頼んで欲しかったです…!」

 

 「それは…、さすがに恥ずかしい……」

 

 ほんと、普段学校でしている顔ってなんなの?ってくらいに蕩けたお顔を見せてくれる蘭。んんー…、愛いやつめぇ……。

 

 しっかし、蘭の部屋に来るのも随分と久し振りだなぁ…。と言っても、一人で来たのは今回が初めてだったけどさ。その時も蘭の部屋に通されてたけど、その時には無かったものが一つ。

 

 「花、飾ってるんだね」

 

 「うん。華道にもちゃんと向き合うって決めたから」

 

 「そっか……、いい変化じゃん」

 

 「華道に向き合わせてくれたのは、響介だよ?」

 

 「……、確かに誘導はしたかもしれないけど、最後に決めたのは蘭だよ」

 

 「まぁ、それはそうだけど。でも、響介も手伝ってくれるようになった事は、素直に嬉しい」

 

 「あー、それは…。まぁなし崩し的な感じだったけどね〜」

 

 それからも色々な事を、学校の事だったりとかバンドの事だったりを話していると、部屋の引き戸が2回ノックされて、外から蘭パパの声が聞こえた。

 どうやら、夕食の時間らしい。わざわざ呼びに来てくれたみたいだった。

 

 「あら〜!久し振りねー!元気にしてた?」

 

 「あ、あぁはい…。お陰様で……」

 

 「あら?どうしたのかしら、元気が無いみたいよ?」

 

 「母さんが元気すぎるんだって……」

 

 蘭の呆れたようなツッコミを受けた蘭ママは、再び食器の配膳に戻って行った。いや、ホントに親子かってくらいに性格が正反対過ぎるでしょ?だから、蘭はお父さん似の性格なんだのっていうの事が一瞬で分かる仕様となっております。

 

 すっごい快活なお母さんに、厳格で静かそうなお父さん。

 

 良い家族だな、ってここに来る度に何度も思っている。この二人は事ある毎に俺に良くしてくれる。たかだか少しばかり蘭と濃い付き合いをしてるってだけでさ。だから、この二人には頭が上がらないや…。

 

 だから、少し…、ホントに少しだけ羨ましいなって……。

 

 

 ――そう思ってしまうんだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




完璧な人間なんて、この世には居ないものだ。





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