青春ブタ野郎は灰色の果樹園の夢を見ない   作:たなとすさん

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⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎システムによる監視対象No.11:梓川 咲太





#04 青春ブタ野郎は人見知り後輩と仲良く遊ぶ

「いたたた……」

 

「いやー、ごめんね? 痛がってるフリだと思ったら、私が思いの(ほか)強く握ってて本気で痛がってたんだね」

 

「あー、指が五本になっちゃったかも」

 

「えぇ!? って指はもともと五本じゃん!!」

 

 子連れの主婦だと思ってた天音さんは、自称ピッチピチ(死語)の学生らしい。

 そして更に意外なことに、マキナも天音さんと同じ学校に通っているとのこと。

 ということは、このピッチピチ(笑)と幼女の年齢差が一桁前半くらいのはず……。

 

「ふむ……」

 

 片やむちむちで露出が激しく女の色気を振りまいている成人女性風。

 片やつるぺったんでろりろりで甘いミルクの匂いがしそうな幼女風。

 

 なるほど、謎は全て解けた。

 ズバリ、片方の留年ともう片方の飛び級によって同じ学校の生徒でも年齢差が大変なことになっていると見た!

 

「ふむふむ」とひとり納得していると、

 

「なーんか失礼なこと考えてない?」

 

 と天音さんが目を半眼にして疑ってきた。

 

「黙秘権を行使します」

 

「その黙秘は自白と同義だよ」

 

「しまった!?」

 

「じゃあ、罰として行く方向が同じ間は荷物持ちね」

 

「……イエスマム」

 

 荷物を持っていなかった右手に、天音さんの分の買い物袋(エコバッグ)が装備される。

 

「ぐっ、ぐああああっ!!」

 

 やられっぱなしは何なので、袋を手渡された瞬間にすごい負荷がかかったフリをする。

 

「ど、どうしたサっくん!? また天姉(あまねぇ)にどこかしらを握り潰されたのか!?」

 

「ああ、マキナ……。僕の右手は完全にダメになっちまったよ……。あとは、頼んだ……」

 

「おい、目を開けろ! サっくん! サっくーーーんっ!!」

 

 

 

 

 

「……で、私はいつまでこの三文芝居を眺めていればいいのかしら?」

 

 僕とマキナはピタッと静止した後、普通に歩き出す。

 

「さてそろそろ行こうか。マキナ、さっきの飴まだいる?」

 

「いるぅ! いるいる、めっちゃ欲しいのよさ!」

 

「んじゃ、ほれ。あと三個あげるから計画的に舐めるように」

 

「計画的……、今と、夕飯の前と、後と……。うーん、今日だけでなくなっちゃうのよ」

 

「ははは、マキナはその飴が気に入ったみたいだな」

 

「そうなのよさ!」

 

 突然普通に談笑しながら歩き出した僕らを見た天音さんは、

 

「え、えぇ〜? 切り替え早すぎじゃない?」

 

 とぼやいたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで咲太」

 

「おや、さっきまで『梓川君』と呼んでいた綺麗な天音さんはどこへ?」

 

「咲太なんて『咲太』呼びで十分よ。それよりも、咲太の家はホントにこっち? この先は美浜(みはま)学園しかないけど」

 

「それはこちらのセリフでもあるのですが……。もしかして、天音さんたちも美浜学園の生徒なんですか?」

 

「そうだけど……『も』? てことはーーー」

 

「ええ、まあ。授業を受けるのは明日からですが、入寮は今日からの梓川兄妹の兄の方です」

 

「あー、名前聞いてなかったから分かんなかったわ。えーっと、学園の生徒としての自己紹介は後でみんなと一緒にするから、とりあえずスーパーで出会った綺麗なお姉さんということでよろしくね!」

 

「あたしは見た目は幼女、頭脳も幼女、目的地なしの迷い人。迷子(ふだ)は、いつもひとつ!」

 

「迷幼女マキナ、近日公開!」

 

「全米が迷った迷作、ついに来日!」

 

「「お楽しみに!!」」

 

「しぃーーるぅーーかぁーーー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トコトコと、三人で並んで歩いて十数分。

 美浜学園前まで戻ってきたところで、校門前に不審人物がいた。

 その人物は、えっと、なんだろう……、なんとも言葉で表現できない感じで、強いて言うならば

         『普通』

 全日本人の平均をそのまま顔にしてみました的な造形をしている。

 

「……あの人、美浜の人ですか?」

 

 こっそりと隣の天音さんに呟く。しかし、

 

「え? あの人って、だれ?」

 

 同じ方向を見ていたはずの天音さんには、なぜかその人が見えていなかった。

 驚いてマキナを見るが、こちらもわけが分からない様子。

 

(なんだ? 異常なのは僕なのか? また思春期症候群だとでもいうのか?)

 

 呆然としながらその平均的な人を見ていたが、その人はだんだんとボヤけていき、認識できなくなる直前、

 

 

     ‘ふぅん。貴方が、ねぇ’

 

 

 

 何か呟いたような気がしたが、声は聞こえなかった。

 なんだったんだ、いったい……。

 

「ーーー咲太っ!!」

 

「うわっ!?」

 

 いきなり耳元で大声が聞こえてビックリした。

 反射的にのけ反ると、天音さんとマキナが心配そうにこちらの様子を窺っている。

 

「どうしたのよ。いきなり変なこと言ったと思ったら、ボーッとして何の反応もしなくなるし」

 

「サっくん大丈夫? お医者さん行く?」

 

 どうやら呆けている間、二人は僕に話しかけていたらしい。

 

「いや、大丈夫です。持病の白昼夢の夢遊病なのでお気になさらず」

 

「それはそれでヤバいんじゃ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後まだ心配そうな二人をなんとか(なだ)めすかし、かえでの待つ自室に戻った。

 

「ただいまー」

 

「おかえりなさいです、お兄ちゃん」

 

 買い物袋から、さっきマキナにもあげた飴をいくつか取り出してかえでに渡す。

 

「おやつの飴玉だ。他は何もないから、夕飯までこれで我慢な」

 

「……くんくん、くんくんくんくん」

 

「うわっ!?」

 

 かえでは飴を受け取ったその手で僕の手を取り、鼻を擦り付ける勢いで猛烈に匂いを嗅いできた。

 そんな臭いものは触ってないはずなのだが。

 

「……妹臭(いもうとしゅう)がします。知らない匂いです。お兄ちゃん、さっきまで年下の女の子と一緒にいました?」

 

「あ、ああ。ここの生徒で、一年生の子といたけど……」

 

 妹臭とかいうパワーワードは初耳なのだが。

 なんだ? 妹系女子は互いを嗅ぎ分ける特有のフェロモンでも出てるのか?

 

「匂いだけで分かるこの妹力(いもうとりょく)の高さの上、かえでより年上……? こ、これはピンチなのです! お兄ちゃんの妹というかえでのポジションが危機なのです!!」

 

 今度は妹力とか、お前には妹スカウターが内蔵されてるのかよ……。

 

「ああ、夕飯の後ここの寮生と顔合わせだからな。僕もまだ全員と会ってないけど、スーパーで知り合った人が美浜学園の生徒だったから、他の寮生に声かけてくれるってさ」

 

「か、顔合わせ、ですか。どこでするんですか……?」

 

「全員が集まれる場所がランドリースペースか玄関近くの団欒スペースだけだから、そのどちらかだな」

 

「部屋から、出ないとですよね……」

 

 強張った表情をするかえでは、しかし何かを決心したようで、

 

「かえでは団欒スペースがいいと思います。この寮自体が大きな家だと思えば、外に出なければ大丈夫です、きっと」

 

 と他の寮生との対面に前向きな姿勢になった。

 

「じゃあエネルギー補給のために、うんと美味しいオムライス作ってやるから楽しみにしてな」

 

「うわーいっ!!」

 

 さっきの変な出来事で強張っていた僕の顔も、かえでの笑顔を見れば徐々に解れていくのだった。

 

 

 




⬛︎⬛︎ ⬛︎⬛︎

⬛︎⬛︎ ⬛︎⬛︎の⬛︎。⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎システムの中枢を担う。⬛︎⬛︎の⬛︎⬛︎ ⬛︎⬛︎の監視中に⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎な存在である梓川 咲太を発見し、その⬛︎⬛︎⬛︎を確認するため⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎を用いて現れた。
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