バレンタイン、時々チョコ
バレンタイン。2月14日。
日本において、その日はチョコを友達や好きな人に渡す習慣のある日だ。
元々は、企業の宣伝だったりなどで始まった。
そして、その習慣は2095年現在でも続いていた。
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2095年、2月13日。
私とほのかが第一高校へ向けて受験勉強をする真っ只中。
ふと、私は民放の放送に耳を傾けると明日はバレンタインだとか!
「ほのか!明日はバレンタインだよ!」
「雫…そんな場合じゃないよ!全然受かる気がしないよ!」
「うん!だからチョコ食べよ!」
「訳わかんないよ!?」
何を言う、頭を使うと糖分が必要でしょう?
「ほのか、私1回帰るね!」
「ちょ!?雫!」
私はスタコラサッサと魔法科高校のための予備校から抜け出してキャビネットに飛び乗った。
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なんで忘れていたのか!
今年もちゃんと渡す気でいたのに!
べ、別にほのかの事がどうとか、そういう訳じゃないよ!?
とりあえず、お手伝いさんの黒沢さんに来てもらう。
「黒沢さん!」
「はい。」
黒沢さんは我が家のハウスキーパーであり、女性使用人のトップでありながら色々な雑務も務める、仕事の鬼だ。ハウスメイド(一般的な意味でのメイド(女性使用人))からも尊敬と畏怖を集めている若き才女であるが、バツイチだ。
「ほのかにチョコを作りたい。」
「分かりました。」
黒沢さんは食材管理を任されている。食べ物に関しては彼女かシェフに聞くのが1番だ。
「ベルギー産のチョコはありますが、テンパリングしないと舌触りがよろしくないかと。」
「出来る?」
「…!彼女ならたしか出来たはずです。シェフに厨房の一部を借りることは話してありますから、先に待っていてください。」
「分かった。」
この人の凄いところは、私が全て喋らなくてもすぐに察してくれるところだ。さらに、彼女はこの家の使用人全員の名前と能力を把握していることだ。
ちなみにこの家の使用人は全部で16人もいる。ふふふ、メイド喫茶なんて行ってる人には羨ましがられちゃうかな?メイドさんは5人もいるんだよ。……しかも5人中4人は10代なんだよ。かわいいよ。
…残り1人の年齢はお察しください。もうすぐ還暦の凄腕おばちゃんです。
それはともかく、私が厨房に行くと、既にシェフである山城咲桜さんとキッチンメイドの野間叶恵さんが準備をしてくれていた。
…ちなみに、キッチンメイドの野間叶恵さんが凄腕おばちゃんだ。
「お嬢様!お待ちしてましたよ。もうすぐ桜夜が来ますから、それまで道具に触らないでくださいね。」
桜夜はメイド長の初瀬桜夜のことで、弱冠16歳でメイド長に就任しているほどの能力を有する。―――メイド長だからと言ってナイフを投げたり時間を止めたりは出来ない。
「お嬢様、お待たせしました。」
「桜夜、お願い。」
「かしこまりました。」
こうして、私のテンパリング講習が始まり、一日で在庫のチョコを使い切るのであった。
―――べ、別にほのかに渡すからそこまでやってるわけじゃないんだからね!
…1人でツンデレしてもあまり面白くなかった。
「そうでも無いですよ。」
「桜夜!?なんで心の中を!?」
「メイドの嗜みです。」
そこでナイフをかざさないで!それは咲夜だから!
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2095年、2月14日。
街ゆく女の子のカバンの中や手の中にはチョコが入っていることだろう。
かく言う私もそのひとりだ。
…あげる立場になって15年。まさか生前の“僕”ならこんなにドキドキすることもしなかったと思うよ。
予備校に入ると、もう試験まで1週間ないことからもバレンタインの甘いピンク色な空間を作る人は多くないようだ。
「ほのか、これ。」
私は小さな紙袋を、自習室にいたほのかに渡す。
「本当に作ったの!?雫が!?」
「去年のことは忘れてって言ったのに!」
すみません、去年は姫路ばりとは言わないけど、ポイズンクッキングしてました。本当に反省してます。
「まさか中身はヤバいの入ってる?」
「今回は桜夜に見てもらったから大丈夫。」
桜夜は本当に、時間を止めたり出来るメイドのようで本当に神出鬼没だが、それ以上にお菓子作りの腕は天下一品だ。
「じゃあ、いただきます。」
恐る恐る少しかじるほのか。
そんなに私の料理には信用が無いか。無いですよね。無いはずだよね…
「!美味しい!凄いね!桜夜さん、雫のお菓子をこれだけ美味しく作らせられるなんて…!」
「感激するところ違うよ!」
もうポイズンしないから!
舌のとろける(物理)プリンはもう作らないよ!…多分。
「とりあえず、ごちそうさま。…雫。じ、実はね、私も作ってきたんだ。…食べてくれる?」
「うん!」
満面の笑みを浮かべる私にほのかは思わずと言わんばかりの顔と勢いで私の頭を撫でる。多分受験勉強によるストレスを私をもふもふすることで消化しているのだと思う。
いいよ。好きなだけ。
ほのかのなでなで気持ちいい。
予備校の先生から外でやれと言われるまでイチャイチャしていた私たちだった。
「お嬢様、上手くいったかしら?…時を止めて○○の惚れ薬を入れてほのかお嬢様との仲を進展するように仕向けたのだけれど…」
バレンタインSSです!
入学編の前、受験の頃の話です。
受験日程についてなど独自設定があります。
ちなみに、雫の家は総資産8000億円程度で、資産運用だけでも莫大な利益を産んでいます。その割には小さめな豪邸なので使用人も16人ほどしかいません。
ちなみに、第一高校の1年C組には雫の侍女候補も北山家の出資で入学しています。のちのちの出演をお楽しみに。