4月24日。公開討論会翌日。
カフェ、アイネブリーゼ。
そのドアの前には立て看板が置かれていた。
『貸切』と。
☆☆☆☆☆
「「「かんぱーい!」」」
7つのグラスが合わせられる。
「よーし、今日は飲むわよー!」
「エリカちゃんったら、既に盛り上がってるね。」
「…あれ、ノンアルだよな?」
お兄様を除くE組3人のどこか抜けている会話に、私とほのかは顔を見合わせてくすくす笑った。
「私達も来てよかったのかな?」
元々E組の4人+深雪の所に交ざっているので、ほのかが遠慮気味に深雪に問う。
「もちろん!ぜひ来て欲しくて呼んだのよ。」
深雪の微笑みは美人すぎる。
「今日は賑やかだねぇ。なんの集まりなんだい?」
「お疲れ会のような…」
「達也くんのお誕生日会だよ!」
「「「「えっ!?」」」」
確かに、昨日のことがあって、だが、その前からエリカが計画していたらしい。
「エリカちゃんなんで教えてくれないの!?」
「いやー、正確な日付は知らないよ。」
「えっ?」
「どうせ4月中でしょ?誤差の範囲かなあって深雪に昨日…」
「そう、
深雪の「悪意なんてありませーん」という笑顔に、私は、「なるほど、図ったんだね。」と勘づいた。
そして、エリカも「ん?」と引っかかったらしく、達也さんに
「まさか本当に今日だった?」
「ああ、驚いたよ。ありがとう。」
という会話で、確定的になり、深雪に問い詰めるものの、深雪の方が1枚上手である。
「プレゼント用意してないよ…」
「気にすることないですよ…って私が言っていいのかわからないですけど。」
「確かにそれは達也さんの言葉だね。」
「ま、俺らも同じクラスなのに全く知らなかったわけだしな。」
「まあまあ、みんなに気を使わせたくなかったんだろう。このザッハトルテを僕ときみたちからのプレゼントということにして手を打たないか?」
「さすがマスター!」
マスターの持ってきたザッハトルテはマスター作らしく、アイネブリーゼとロゴがついていた。
「マスター、いつからパティシエに!?」
思わず口走った私に、マスターは、
「昔は魔法師だったんだが、魔法技能を失ってから専門学校に通ってね。親が喫茶店を営んでいたから、それに影響されてね。」
「へぇー。」
ザッハトルテにロウソクを挿して、私が振動系魔法でロウソクの先を熱して発火させた。
マスターを含めた全員で『ハッピーバースデー』を歌って、達也さんが「フッ」と息を吹き掛けてロウソクを消した。大きなザッハトルテに16本のロウソク。消えたロウソクが、独特な匂いを生み出した。
「おめでとー!」
「おめでとうございます!」
「おめでとう、達也!」
「おめでとう、達也さん!」
「おめでとう…!」
私達の祝福を横から深雪が嬉しそうに拍手していた。
「達也さん、実はいつかのタイミングで渡そうと思って用意はしてたんだけど、今日にはラッピングは間に合わなくて…剥き身でごめん。」
私が差し出したのは、古代ルーン文字の書き方や起動の仕方などを私がまとめたオリジナル魔導書である。
達也さんは魔導書をめくる。
「ほぅ…雫が書いたのか?」
コクリと私が頷くと、感心したように、
「凄いな…古代ルーン文字をここまで解明している人はそれほどいないと思うが。」
「私が唯一『自分の』努力で手に入れた技だから。」
そう、前世での私は結構オカルトマニアだったので、ルーン文字を専門にオカルト研究部で研究していた。
こちらに来てもルーン文字だけは日本で誰にも負けないと言うくらいに自分で研究を続けた。おかげで古式に分類されるルーンを日本で1番の理解している魔法師となってしまったが。
「ありがとう、雫。大切に使わせてもらうよ。」
「うん。」
そのやり取りを少し驚いた顔で深雪が見ていた。
☆☆☆☆☆
「やっぱり今年の九校戦の本命はウチと第三高校……」
九校戦の下馬評や前年・一昨年の結果からもやはり、総合優勝は第一高校と第三高校が有力だ。
首都圏の人口比率の影響で、優秀な魔法師が多くなりやすい第一高校の優勝回数は多い。
ただ、第一高校の場合、国際基準のみの教育しかしないので、第三高校や第九高校にたまに負けてしまうことが多々ある。
第二高校は第一高校の関西版で、こちらも優勝経験がある。
「ん…ほのかから電話…」
『もしもし、雫、期末試験の勉強進んでる?私ぜんぜんでさー。』
『うっ…九校戦のことで頭がいっぱいで…忘れてた。』
『ええっ!じゃあさ、一緒に勉強会しない?エイミィも誘ってさ。』
『いいんじゃないかな。』
ふふ、エイミィか…胸は私よりも小さいけど、腕も足もキレイでロリータも似合いそうだな…赤い髪も映えそうなブラウスに…裾にモコっとしたフリル使ったミニスカに白ニーソ……ぐへへへ。
ほのかと一緒に着せ替え人形にしたいなぁ。
入学編、完結。
この話で10話ですね。文字量これくらいがピッタリかも。