吾輩は北山雫である。   作:風早 海月

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九校戦の正式名称。長いね。


全国魔法科高校親善魔法競技大会

途中事故に巻き込まれそうになったものの、無事九校戦会場である『富士演習場』の敷地内にある軍が所有する宿泊施設に到着した。

 

荷物も細かいもの以外は規定のパッケージで輸送済みである。

 

大きくても部活バッグくらいにしかならないはずなので、現代の旅行はとても楽ちんである。

 

「ついに来ちゃったね、九校戦!どきどきする…!」

「まずはこの後懇親会だね。」

 

懇親会という名の鞘当て会。または腹の探り合いの会。

 

私とほのかはもちろん、達也さん達技術スタッフや作戦スタッフも参加する。

 

ああ、去年まで画面の向こうか観客席からしか見れなかった九校戦を、選手として参加できるなんて…

感無量です…

 

 

さ、『私も鞘当てしてきますかね、エクレール・アイリとやらに。』

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

大きな会場に各校の登録メンバーが集まり始める。

 

9つあるテーブルに各校の生徒が固まってしまうのは仕方の無いことだが、だからこそ、『力のあるもの』だとか『注目株』などはすぐに発見されてガヤガヤとなる。

 

立食パーティー式を取り入れていて、制服着用が義務付けられている。ちなみに、達也さんは刺繍ありの制服を学校の予備から借りたそうだ。

 

そして、パーティーが始まる。

 

注目株は三校のクリムゾンプリンス『一条将輝』だ。

イケメンで家柄もいいので、他の高校の女子はきゃあきゃあとまるでアイドルに出会ったファンのような盛り上がりである。

 

そして、それを冷ややかに見る少女がいた。

 

「戦いの前だというのにお気楽なものね。懇親会を何か別のものと勘違いしてるんじゃないかしら。全く軽薄で嫌になるわ。」

「それだけ気を抜いてる者が多いということじゃ。楽勝♪」

「沓子はそうやってすぐ楽観視するの良くないわ。」

 

そして、彼女たちも有名な選手である。

一色愛梨、十七夜栞、四十九院沓子。

 

「そう。『懇親会』を辞書で引いてみることをおすすめする。」

 

私はその背後から声をかける。

 

「なんですって?」

「懇親会。組織や集団に属する人どうし、また目的を同じくする人どうしが交流し、親睦を深めるための会。つまり、鞘当ての会でも腹の探り合いの会でもない。」

「これから戦う相手に仲良くなれなんて笑えますわね。」

「九校戦は元々優秀な実戦魔法師を国に供給するためのもの。だからこそ軍が全面協力してる。」

「そんな建前なんてどうでもいいんです。だいたい、あなたはナンバーズ?何かの優勝経験でもおあり?そうでも無いなら話すだけ無駄よ。」

 

へぇ、やっぱり性格も変わってないね。

 

「ロアー&ガンナーU-16実業団2094で、ホクザングループのガンナーとして、春、夏連覇。」

 

実はロアー&ガンナーをほのかと一緒に出場していたりする。

お父さんにおねだりしたら翌日には『ホクザングループ、ロアー&ガンナーの実業団を設立!』とニュースになった。

 

「…マジか。たった1晩で実業団を作った化け物グループの?」

「マジ。」

 

一色さん、口調崩れてるよー。キャラ崩壊しないでー?

そうさせた私が言うのもなんだけど。

 

確かに知る人ぞ知る伝説だもんね、お父さんの仕事の速さ。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

来賓の挨拶が始まっても、私は飲み物片手に少しずつ『ある仕掛け』をしていた。

 

原作通りかどうかは知らないが、どうせ九島のおじちゃんがイタズラすることは分かっているのだ。今から注目してもらっても構わないだろう。

 

「老師」と呼ばれる十師族の頂点に立つ長老である。

21世紀の日本に十師族という序列を確立した人物であり、20年ほど前まで世界最強とさえ言われていた魔法師である。

 

まあ、最強なんて状況によって大きく変わるものだから、なんとも言えないけど。

ただ、地力が高いことは確かな人物だ。

 

最強の名を維持しながら第一線を退いて以来、ほとんど表舞台に立たない彼は毎年恒例でこの九校戦には顔を出すことで有名だ。

 

魔法力は確かに加齢で衰えたりそれに対して体力も必要だが、今この時点で、恐らく老師に正面切って戦える魔法師はここにいる卵たちの中では両手の指で数えるほどもいないだろう。

 

そして―――

 

 

老師の番つまり大トリで、スポットライトに出てきたのは、イブニングドレスに身を包み髪を金髪に染めた若い女性だった。

 

(しめた!)

 

と小声で叫び(器用だったなとあとから思った。)、待機させていた『弱く微かな』領域干渉と光波振動系魔法で、弱く微かな精神干渉系魔法(個人的には情動干渉系だと思うのだが)を打ち消しながら、女性の後ろに隠れる九島閣下を照らす。

 

九島閣下は驚いたように、『こちらを見た。』

 

「まずは悪ふざけに付き合わせたことを謝罪する。」

 

90位のおじいちゃんの声にしては若い。張りのある声だ。

 

「今のはちょっとした余興だ。手品に微かな魔法を忍ばせていたものだが、そのタネに気づいたものは、私の見るところ5人だった。そして、さらに私のしていることを打ち消したものが1人。微かな意識を逸らす精神干渉系魔法を同じく微かな領域干渉で破り、光波振動系魔法で私を照らした。つまり、私がもしテロリストだとすれば、それを阻めるのはたったの6人、だという事だ。魔法とは、手段であって目的ではない。その事を思い出して欲しい。重いものを魔法で動かすのと、てこで動かすのでは結果は同じだ。魔法というツールを持つ諸君らは魔法力を磨くことも大事なことだが、それ以上に魔法の使い方について学んで欲しい。魔法を学ぶ若人諸君、私は諸君らの工夫を楽しみにしている。…それと、領域干渉と光波振動系の子には絶大な賛辞を送っておこう。」

 

厚い皮膚より速い脚。かつてのドイツの名将の言葉だ。電撃戦という新しい戦法を、道具を上手く利用して開戦期のドイツを優位に持ち込んだ。

これと同じである。最も『有効』な魔法の使い方をしろ。という事だ。

 

この事は若き少年少女らには戸惑いをもたらした。

 

だが、それが『巧みな』魔法師になる第1歩であることを忘れてはならないだろう。

 

 




本当はお風呂の話まで入れたかったんだけど、文字量が中途半端になるからここまでで!

評価、お気に入りありがとうございます。UAも1万を超えて11,000超。感謝感謝です。謝謝。

昨日の時点で週間ランキング138位に載ってました!
…ランキング載ったら通知してくれたら嬉しいんだけどなぁ。
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