吾輩は北山雫である。   作:風早 海月

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九校戦は誘惑いっぱい

九校戦が開幕する。

 

各校本戦新人戦メンバー最大40人が制服で整列した開会式はそれはそれは壮観であった。

否、それ以外は見どころがなかったと言うべきか。

 

陳腐な形式を踏んだ開会式の後、私はほのかとエイミィと共に開会式に出ていない達也さんやエリカたちが取っておいてくれた席に向かう。

 

「わぁ、色んなキッチンカーが出てるんだね!」

「ケバブにバーガーにクレープ…これは!フィッシュ&チップスも!……最近食べれてないし…ちょっと寄っちゃおっかなぁ…」

「色んな国のファストフードが勢揃いだよ。でも、特におすすめなのは、ナインティワンアイス。この会場限定のフレーバーがあるから。」

 

私は選手としては初めてだが、観客としては何回か来ている。

 

「さすが、毎年来てるだけあるね、雫!」

「大会中気をつけないと太っちゃいそう。」

 

と言いつつ既にフィッシュ&チップスの袋を左手に抱えている。

ちなみに、ほのかも既に右手の中にケバブがある。

 

「ほのか、ケバブにチリソースはありえない。ケバブにはヨーグルトソースが王道…!」

「いやいや、砂漠の虎じゃないんだから、普通に中辛のチリソースでいいよ。」

「2人とも!ドネルケバブにはソースは要らないわ!」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「おーい、こっちこっちー。」

 

言い方がひなたで絵を書く漫画の宮子っぽいエリカ。中の人違うはずなんだけど…

 

 

まあともかく、エリカたちのおかげで1番良い席で七草会長のスピード・シューティング、渡辺委員長のバトル・ボードを見た。

 

ただ……

 

七草会長の熱狂的なファンが男性なのは分からなくはない。あの容姿だ。とてもコケティッシュだろう。だが、魔法科高校の女子たちが、『お姉様ー!』『素敵です!』と言っていたり、

渡辺委員長のファンが女の子ばかりで、『きゃー!』『抱いてーっ♡』っておかしくない?この世界ってこんなに百合百合しい世界だったっけ?

 

「凄いね…」

「うちの先輩達には“熱狂的な”ファンがついているみたいだね。」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

2日間の日程を終え、男子クラウド・ボール以外は事前計算通りに進んでいた。

 

そして、3日目。

 

バトル・ボードの準決勝決勝、アイス・ピラーズ・ブレイクの予選後半と決勝リーグが行われる。

 

そして…女子バトル・ボード準決勝。

私は渡辺委員長に少しだけアドバイスを行った。

 

『委員長、今回だけは“足元”に注意してください。“水”が不意に動く可能性がありますから。』

『ほう?どういうことだ?』

『あくまで可能性です。第一高校を優勝させたくない奴らが最初に狙うのは三巨頭の中で1番後ろ盾の少ない委員長で、狙いやすいタイミングは去年の決勝カードとして有名であり、タイム差の小さかった七高とのレースです。』

『…頭の片隅には置いておこう。だが、大会委員会の監査のある中で外からの魔法は使えんよ。』

『大会委員会全体を丸め込めなくても、一部なら可能です。危険は頭に入れておいてください。』

『はぁ…分かった。』

 

だからこそ、彼女には勝ってほしいものだ。

 

試合開始のブザーに委員長と七高選手が高速でスタートして、その後ろを三高が追う形だ。

 

「足元に注意だよ、委員長。」

 

そして―――

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「だましだまし―――か。」

「すまん、十文字。」

 

七高選手のボードを水ごと吹き飛ばす魔法を使用した時、バランスを崩した渡辺委員長は立て直してなんとかトップでゴール。七高選手も特に怪我はなく終わった。

 

その勢いで渡辺委員長は決勝、圧倒的な速さで優勝、したものの…

ゴールと共にボードから落ちて意識を失ったのだ。

 

肋骨にヒビが入っている状態で無理をしすぎた結果らしく、しばらくは運動禁止を言い渡されてしまった。

 

運命はどうしても深雪に本戦のミラージに出て欲しいらしい。

 

「まあとにかく大事にならなくて良かったです、渡辺先輩。」

 

深雪の言葉に、1年女子イツメンはウンウンと頷く。

 

「だが、これで本戦ミラージは優勝確率が一気に下がった。小早川は悪い選手ではないんだが…」

「特出する選手ではないな。」

 

十文字会頭と渡辺委員長の言葉に、イツメン+深雪はなんとも言えない空気になる。

 

「しかもだ。三高が思いのほか点数を伸ばしてきている。新人戦は三高が有利と言わざるを得まい。一条の跡取りに一色の令嬢、水の四十九院にリーブル・エペーの十七夜、極めつけにカーディナルジョージ。対してこちらで魔法競技を中学以前からの経験者は光井・北山のみ。」

「ロアガンだったな。道理で光井のバトル・ボードは上手いと感じたんだ。」

「私達、四十九院さんのロアガンソロを見たんですけど、ヤバいですよ、あれ。」

 

幸いにして総合ではロアガン夏の大会優勝出来たのではあるが、ソロ部門のみでの競技なら圧倒的に負けていただろう。

 

「つまり、我々一高は、私のミラージ棄権を補うだけの何らかの作戦が必要なのか。」

「そういうことになります。」

 

部屋に入ってきた市原先輩と七草会長が肯定する。

 

「私の考えとしては、新人戦をある程度犠牲にしても本戦ミラージにリソースを分けるという結論に達したわ。」

 

七草会長と作戦スタッフで練った作戦をここにいる全員に告げる。

 

「ミラージ・バットの訓練を積んでいて、摩利に匹敵する実力者―――深雪さん、あなたしかいないわ。深雪さんには摩利の代わりにミラージ・バット本戦に出てもらいます。」




評価、お気に入りありがとうございます。

週間ランキングで先程112位でした。2桁行くまでもう少しですね笑笑
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