スピード・シューティング女子新人戦準々決勝。
予選A~Dグループまでの上位2名が出場できる決勝トーナメントの初戦だ。
一高からは3人全員が予選を突破している。
一応、同じ高校の3人が早くに当たらないように、予選グループをずらしたり、決勝トーナメントでもなるべく当たらないようにトーナメントが組まれる。
準々決勝は既に2試合を終えて、エイミィと和美が突破し、準決勝で同校対決が決定。
もうひとつの準決勝進出者を決めるための戦いが幕を開ける。
負けられない戦いがそこにある。
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(私達の作戦は―全て十七夜栞を倒すための作戦。だから、)
「踏み台になってもらうよ。」
相手は四高の選手。
決勝トーナメントでは赤白のクレーを、自分の色のクレーを撃ち抜かなければならない。
そのために“替えたCAD”を悟られるわけにはいかないのである。
『予選Aグループ、一位通過の一高北山選手!アクティブエアーマインで魅せてくれた選手だが、対戦形式では相手クレーも巻き込んでしまう諸刃の剣だろう!どう見せてくれるのか楽しみです!対して予選Dグループ、二位通過の四高梶木選手!オーソドックスな移動系相殺作戦を取ります!下馬評では不利ではありますが、それを覆し得点圏に進めるのか!?』
今、準々決勝が始まる―――!
☆☆☆☆☆
私の使う
プレーエリアの空間を仕切るためである。
CADに直結されたHMDはクレーがどこに入ってきたかをCADの照準補助から確認している。
つまり、CADとHMDの誤差があるかどうかを確認しつつ引き金を引くだけでクレーを破壊できた。
だが、今度は対戦形式。戦い方を変更する。
大きな意味での収束魔法を使う。
マクロ的に見た『自分の色のクレーの密度』を中心部に近づくほど高くなるという空間を作り出す魔法で中央部に集めたクレーが各自で押し合い潰れるのである。
だが、次の試合のためには出力規模を『9つ』と思わせておく必要がある。
この特別なCADには起動式はたくさん入るが、9つの起動式だけで準々決勝を突破しなければ、切り札を切らねばならなくなる。
切り札は深雪と戦う棒倒しまで取っておきたい。
結果は言うまでもなく、98/100対85/100で勝利した。
☆☆☆☆☆
準々決勝最終戦の前。
私が勝利して控え室に戻る前に、十七夜栞が声をかけてきた。
「第三高校の十七夜栞です。試合、拝見しました。あなたと“準決勝”で相対することを楽しみにしています。」
十七夜栞はそれだけ言うと、隣にいた一色愛梨を連れて試合に向かっていった。
「次の試合は当然勝つ自信があるってことだね…わかった。私も準決勝楽しみにしてるよ。」
私は彼女の背中にそう呟いた。
☆☆☆☆☆
『新人戦女子スピード・シューティングは決勝トーナメント、早くも準決勝を迎えます!予選では超高校級の魔法に度肝を抜かれ、準々決勝でも選手達の熱い戦いに手に汗を握りました!その戦いもついに4強まで絞られ、残っている選手は全てが得点圏入賞が確定しています!いずれも有力選手です!』
私の画像が映る。
『準決勝第1試合は注目カード!予選では新魔法“アクティブエアーマイン”で会場を興奮の渦に巻き込んだクールビューティ!予選ではパーフェクト!準決勝でも圧倒的な魔法力でライバルを制圧するのか!?第一高校、北山雫選手!』
そして、十七夜さんに画像が移る。
『なんと本大会パーフェクトを2度記録!その正確無比な軌道予測に並ぶ者なし!連鎖を奏でる重奏曲“アリスマティックチェイン”は準決勝でも炸裂するのか!?第三高校、十七夜栞選手!』
簡単でない相手だが、負ける気はない。
『とうとうこの2人がぶつかります!両選手の活躍をどうぞお楽しみください!』
実況中継が一旦切れる。
私はシューティングレンジに向かう。
その廊下で、相手、十七夜さんと会った。
「北山さん、準決勝よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしく。…宣言通り上がってきた。さすがだね。準々決勝見たよ。」
「ええ、私も。北山さんの準々決勝十分に検討しました。」
「へぇ。」
私は歩みを止めつつニヤリと笑い、吹っかけた。
「どちらも準備は万端だね。」
「ええ。お互いベストを尽くしましょう 。」
☆☆☆☆☆
ピーというブザーと共に準決勝第1試合が始まった。
私はHMDの色の識別によって自分のクレーを見定め、収束魔法で自分のクレーを集めて押しつぶす。
その反動で相手の白いクレーが逸らされる。
が、相手もそのまま連鎖を続けている。
私のパターンではここで相手が混乱して魔法の照準が甘くなるのだが、やはりこれくらいは“計算できる”。
それが引っかけだとも知らずに。
前半から中盤になろうかという時間帯、今のところミスは私の方が1枚多い。
さらに2枚落とす。
まだ焦らない。
『布石は打ってあるのだから。』
中盤を終わる頃、十七夜さんのアリスマティックチェインが“連鎖を外した。”
もちろん直ぐに持ち直して今のところミスはないが…
私は少しだけ口角を上げた。
「私の勝ち。」
そう、本当に彼女が私に勝ちたかったら、規模の大きすぎる魔法式を使うアリスマティックチェインではなく、オーソドックスにエアブリッドやドライミーティアでクレーを破壊するのが勝機はあるだろう。
終盤、連鎖が繋がらないアリスマティックチェインなどお話にならない。
96/100対92/100。
十七夜栞は終盤に8つも落として、優勝への道を私に譲ることとなった。
『試合終了!北山選手、決勝進出だー!開催前の下馬評を覆したー!』
☆☆☆☆☆
結局、準決勝第2試合はエイミィが勝った。
そして、十七夜さんと和美の3位決定戦が先に行われて、私との戦いに魔法演算領域に負荷がかかったのか、アリスマティックチェインはあまりにお粗末な連鎖となり、和美が征した。
決勝は今度こそ『汎用型CAD』の良さを引き出した私と、移動系が得意なエイミィがいい勝負をしたものの、エイミィの大雑把さが、仇となり、私がパーフェクトで新人戦女子スピード・シューティングを制覇した。
…地味にエイミィは私に似ていると思った試合だった。
得意魔法の大質量の移動系に対しての魔法力だけなら私と同等か少し下かと思うくらいだ。
「凄いじゃない!快挙よ!これは!一高が1位から3位までを独占なんて!」「選手が頑張ったからですよ。」
と、さっきからハイテンションや七草会長を、達也さんが聞き役(?)になっている。
「それもあるけど、達也さんの力が大きいってみんな分かってるよ。」
「自分がここまで来るなんて思っても見ませんでした!」
「司波くんには感謝してるよー!」
「雫の
ほのかの賞賛を滲む言葉に私もコクリと頷く。
「名声がますます高まっちゃうわね〜。」
「困るな〜、ウチの秘密兵器なのに。」
七草会長と渡辺委員長がすごくいい顔であからさまに言う。
だが…
「いえ、
「「「えっ!?」」」
おいおいという顔で渡辺委員長が、
「謙遜もいき過ぎるとイヤミだぞ。」
と、コイツは…と呆れ顔をする。
「いえ、謙遜ではありません。俺は『自分が作った魔法が自分で再現できない』という無様を晒したくないからですよ。あの魔法は北山さんの魔法力があってようやく実践レベルで使える代物です。さらにそもそものアイデアは北山さんのものですので、それを起動式に書き起こしただけですから、あながち間違いではありません。」
そう話す達也さんの顔は少しだけ残念そうだったりする。
少なくとも、私にはそう見えるのであった。
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お気に入り、評価、感想は私がこの小説をアリスマティックチェインさせる源泉なのです…笑笑
今後もよろしくお願いします。