吾輩は北山雫である。   作:風早 海月

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始まりだよ

8月8日。九校戦6日目。新人戦3日目。

 

アイス・ピラーズ・ブレイクの予選グループ決勝がそれぞれ行われた。

 

深雪は言わずもがな上がってきた。(逆に深雪に勝った人と戦いたくはない。)

エイミィは十七夜栞さんとやりあい、1本差で逆転勝利。

 

とはいえ、エイミィはサイオン切れとスタミナ切れでダウン。今のところ点滴を繋がれている。まあ、寝不足の貧血と重なってのことだろう。しかもエイミィはこの間“きてた”はずだ。貧血になる要素が重なってしまっていた。

 

「ちょっとみんな聞いてくれるかしら?」

 

“珍しく”キチンと会長としての仕事をしているらしく、大会委員会からの提案を聞いてきたらしい。

 

「新人戦女子アイス・ピラーズ・ブレイクは我が第一高校が決勝トーナメント出場枠を全て独占しました。そこで、大会委員会からの提案なのですが…戦わずに3人とも同率優勝でどうか、と仰ってくれているの。」

「あの…私は言われる前から棄権しようかと思ってました。」

「それはそうよね。」

 

エイミィの言葉に呆れを含ませながらもキレよくツッコミを入れる七草会長。

 

「じゃあみんな提案を受け入れるってことでいいかしら?」

「待ってください!」

「北山さん…」

「雫…?」

「私は深雪と戦いたいです。予選トーナメントなんかじゃ全然切り札どころか見せ札も使えてないんです。」

「「え…」」

 

私の言葉にエイミィと七草会長がドン引きするような気配を滲ませる。

 

「き、北山さんはそう言ってるけど…深雪さんはどうかしら?」

「私は雫が戦いたいと思ってくれるなら、私にそれを断る理由はありません。それに…」

「それに?」

「同年代で私を“倒そうとしてくれる”人はなかなかいないうえに、全力でぶつかることの出来る環境はそうそうありません。」

 

深雪はその事をよく知っている。魔法師の中でも特に深雪や私のような出力の高く照準精度よりも威力と速さのタイプは特に周囲への被害が大きくなりがちである。

 

だが、この九校戦の中ならば、必ず国が直してくれるし、観客席もピラーズ・ブレイクのような観客席の近い競技はA級魔法師が保護しているし、医療施設も充実している。

こんな全力でぶっぱなしていい環境はそうそうない。

 

「深雪、受けてくれてありがとう。」

「ううん、私も雫と全力で試合してみたかったわ。」

「ほんと?私、深雪と同世代で本当によかったと思ってる。どうなっても悔いはないから全力できてね。」

「ええ、もちろんよ。」

 

 

 

 

真剣勝負。

に水を差す奴が。

 

七草会長、『なになに?痴情のもつれ?ライバル関係?メンチ切っちゃう?いししし。』みたいな顔して、隣の渡辺委員長に呆れ顔されてるぞ。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

私の攻撃の札は4つ。

 

1つは共振破壊。通常札。

2つ目に、フォノンメーザー。見せ札。

3つ目が、耐久系の切り札。

最後が、とっておきでスペシャルなジョーカー。

 

ふふふ。深雪は“どこまで引き出してくれるのかな?”

 

防御はもちろん情報強化。領域干渉だと燃費悪くて切り札とジョーカーが切れない。

ジョーカーを切る時は硬化魔法に変えるのも忘れてはならない。

 

 

情報強化は対象物のエイドスを、魔法式でなぞるという関係上、特に魔法の直接攻撃に対して効果を発揮する。しかしながら、その強度も一定割合で強化される。エイドスが二重になっている以上、外からの干渉によって変化しづらくなる。

 

対して、硬化魔法は、対象物を構成するパーツとパーツの間の相対距離を一定に保つ魔法である。棒倒しで使う場合、それぞれの氷の分子H2O同士の距離を保つ魔法である。これは、硬化させるのに魔法力を割く分情報強化に比べて直接攻撃に対しては耐性が低いものの、外部からの物理的攻撃に干渉力の限り保護できる。

 

ジョーカーの威力に耐えられるのは1本でいいけどね。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

川端康成の作品の中で有名な雪国の冒頭が思い出される。

『国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。』

私の陣地を抜けると雪国であった。

 

 

 

 

アイス・ピラーズ・ブレイク新人戦女子決勝リーグ。

 

エイミィは棄権。

決勝リーグは、私と深雪の決勝戦に変わった。

 

予選トーナメントでは東方の魔理沙を始めとしたアニメなどのコスプレをしていた私だけど、決勝いや、深雪と戦う時だけは、これって決めて持ってきた衣装にする。

そう、原作で着ていた振袖である。

 

対する深雪は予選トーナメントと同じく巫女装束である。

 

CADは、

私は左手に特化型拳銃形態、左手首に汎用型腕輪形、右手の薬指に特化型指輪形態を装備して、

深雪は右手の端末形汎用型しか見えない。

 

 

『新人戦アイス・ピラーズ・ブレイク女子決勝リーグ!なんと今年は決勝リーグ出場枠を第一高校が独占!同率優勝という提案を蹴り、選手は戦うことを決めたそうです!その同校対決が始まろうとしています!決勝リーグ出場者は、明智英美選手、北山雫選手、司波深雪選手の3人です!明智選手は予選トーナメント決勝で第三高校十七夜栞選手と当たり逆転勝利を収めましたが、消耗激しく棄権!よって、優勝はこの2人の一騎打ちにより決められることになります!東側、北山雫選手!新人戦スピード・シューティング女子で優勝候補を破り優勝しました!その力はこれまで1度も抜かれていない司波選手の氷柱を崩すのか!?西側、司波深雪選手!ドクターストップのかかった渡辺摩利選手の代わりに本戦ミラージ・バットに出場します!他の上級生を差し置いてミラージに出場する実力に加え、予選トーナメントでは1度も自陣の氷柱に破壊判定が出ていません!さあ、どんな戦いになるか、楽しみです!』

 

 

実況の声も、観客の声も、私にとっては味方だ。

 

 

なぜなら…

 

 

「深雪、It's Show Timeだよ。」

 

私のショーのお客さんだからだよ。

 

 




遅くなった挙句、まだ棒倒しの深雪戦に入れなくてごめんなさい!

本当ならもっと早く書きたかったけど、ここからは物語を大きく左右する部分なので、雫についての設定を詰めておりました。
この後も少し遅めになるとは思いますが、まったりと楽しんで貰えると幸いです。


前話の「第五高校は、永久に不滅です!」の元ネタ、今の若い人は知らないんでしょうねぇ(老人風に)
ま、私も知らなかったんですけど。
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