吾輩は北山雫である。   作:風早 海月

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私は、お母さんを超える。前編

試合開始のブザーと同時にCADのボタンを押す。

 

左手首の汎用型で温度耐性に注力した情報強化をかける。

そして、共振破壊。深雪も氷炎地獄(インフェルノ)

 

まずは両者ともに通常の札。

 

深雪の振動を抑えるエリア魔法で共振の前に振動が止まる。

私の情報強化でインフェルノでは氷柱の温度は上がらない。

 

対抗魔法でない魔法同士が同じ対象物に魔法をかける場合は、干渉力が少しでも上回ればいいが、対抗魔法(情報強化や領域干渉)を抜くには明確な差の干渉力が必要になる。

 

でも、情報強化をかけていても、じわりじわりと周囲の熱で氷柱が溶けだすだろう。

対してこちらの共振破壊は届いていない。

 

“見せ札”と行きましょう。

 

左手を右の袖に突っ込み、特化型拳銃形態のCADを抜く。

 

(2個持ち!?)

(なんだあのCADは!)

(司波達也…一体何者なんだ!?)

(アイツはこのハイレベルな戦いで選手が使いこなせる自信があって持たせているのか!?)

(パラレルキャストか…!有り得ん!)

(えっ!?本当に!?)

 

会場がどよめく中、私はCADにサイオンを流しながら引き金を引く。

 

距離、出力、確認して。発動。

 

(フォノンメーザーっ!?)

 

抜けた。

 

『今大会初めて司波選手の氷に魔法がヒットしました!北山選手のフォノンメーザーです!破壊判定!北山選手、先制!今大会初めて司波選手が氷柱を失いました!』

 

今のフォノンメーザーの出力で1本抜けるくらいの防御か…“つまらないね”。

 

『なんと、フォノンメーザーとは!』

『司波選手のインフェルノも凄いですが、こちらもやりますな!しかも短時間でインフェルノのかかっていた氷柱を抜くとは…!』

 

(すごい…)

(マジで…!?)

 

ザワザワとした観客席の一高の集まってるブースには、目を見張る達也さんの顔と、競技が終わったばかりでバトル・ボードのユニフォームにジャージを羽織っただけのほのかの祈るような顔、エイミィの興奮した顔、他にもこの試合を楽しんでくれていると同時にどんな札が出るのかと期待する目がこの会場を埋めつくしていた。

 

そう。これを望んでいたんだ。

 

“この環境を”!

 

深雪、まだまだ私と踊ってもらうよ!

 

 

2本目の氷柱にフォノンメーザーを撃ち、抜きかけたところで、深雪が魔法を切り替えた。

 

来たね、振動減速系広域冷却魔法“ニブルヘイム”。

 

(フォノンメーザーを中止したのか?)

(いや違う…これは…!)

 

『フォノンメーザーの熱を超える冷却!広域冷却魔法ニブルヘイムです!』

 

(ウソだろ!?)

(ありえねぇ!?)

 

これすらも私の予測範囲だよ、深雪。

 

情報強化を硬化魔法に密かに息継ぎの瞬間に切り替え。

 

 

そして、来る、インフェルノ。

 

 

その熱でも、分子間の距離を保つ私の硬化魔法には届かない。

 

『なんと!ニブルヘイムで作った液体窒素の気化の際の膨張を攻撃に利用!しかしながら、北山選手の氷柱は無事です!』

 

“なんでっ…!?”という思念が流れてきそうな程のはてなマークが観客席や深雪から飛んでくる。

少し違うのは、深雪の“どうやってあれを防いだの!?”という目と達也さんの“なるほど。”という目と、ほのかとエイミィのほっとした目だけである。

 

『判明しました!北山選手はニブルヘイムの際に情報強化の息継ぎのタイミングで分子間の距離を一定に保つ硬化魔法に切り替えて、今の攻撃の後、情報強化に戻した様です!』

 

(ウソだろ!?予測してたってのか!?あの液体窒素を!)

(今年の女子新人戦棒倒しは本戦よりもハードだぞ!?)

(魔法師としてって言うより、こいつら化け物だろ!?)

 

さて、ニブルヘイムで消されるフォノンメーザーは潰された。どうするのか?と玄人なら思うところだろう。

実際、深雪もまだ余裕な顔だ。

 

 

 

私の切り札、解放だよ。

 

『おおっと!?インフェルノで温度が下がっていた司波選手の陣地の氷柱の温度が上がっていきます!サーモグラフィーで確認できます!』

 

(何が起こっているんだ?)

(さっぱりわからん。)

(へぇ…)

 

『これは、電子レンジです!家庭用電子レンジよりも氷に波長が合うように設定した電磁波を、空中から放射しています!しかも、新しく作っている訳ではなく、様々な空中の電磁波を増幅しているだけなので、消耗も抑えられています!』

 

振動加速増幅系電磁波加熱魔法“ウェーブヒーター”。

共振破壊と同じく、極性分子が振動する波長があるため、波長や振幅などを変数として設定している魔法。

 

これで、条件は少しだけこちらに向く。

 

こちらはインフェルノで少しづつ温度が上昇していて、あちらもウェーブヒーターで加熱されている。

ただ、まだこちらが不利だ。インフェルノはウェーブヒーターの熱も奪っていく。

だが、まだ耐える時。インフェルノを切る時が必ず来る。その時が攻め時。

 

ウェーブヒーターを1度切り、フォノンメーザーに切り替える。

深雪の氷柱2本目を完全に破壊する。

 

『再びフォノンメーザーです!現在10対12で北山選手がリード!しかしながら温度は今のところ北山選手の陣地が少しづつ溶け始めています!制限時間は残りは4分ほどです!このままでは北山選手の氷柱は破壊判定が出てしまいます!』

 

ある程度の魔法に対する理解のある人なら、私の敗北が予期出来ると思う。

でも、まだまだ。これからだよ!

 

フォノンメーザーを溜めを作ってから出力を上げて撃つ。

 

『おおっと!司波選手の氷柱3本一気に抜いた!?出力が段違いだ!』

 

(力を温存してたのか!?)

(おいおい…なんなんだ、今年の新人戦は!)

(司波達也…凄まじい技術者だな。)

 

初めて深雪が怯む。

ちょっと無茶をしたかいがあるね。

 

深雪は再びニブルヘイムに切り替えて防御に徹しつつ、直接私の氷柱に振動魔法をかけ始める。

 

この時を演出するために私はずっと待っていた上に少し無茶をした。

 

実は、ジョーカーを使う指輪形態のCADこの決勝では達也さんにも触らせていないどころか、存在すら知らないだろう。

私の自力で調整した起動式にOSを搭載している。

(ちなみに起動式を書いたのは、お父さんの会社経由で依頼した達也さん(シルバー)だ。)

 

だから、達也さんも私のジョーカーは知らないのである。

 

キラキラした目でこちらを見る達也さん。意外と好奇心旺盛な人だ。“感情を失ってる”って本当は嘘なんじゃない?あれ、好奇心は強い情動じゃないのかな?まあいいか。

 

 

 

 

 

 

おいで、私のジョーカー。唯一指輪形態のCADに込められた、起動式を読み込む。

 

硬化魔法をたった1本のみにかけ、他は防御しない。

 

深雪の振動魔法でどんどん破壊される。

 

でも、その時だけは、深雪も油断する。

 

 

 

 

 

 

 

加速加重振動収束発散五系統複合魔法“深淵鉄槌(アビス・ハンマー)

 

 

余剰次元の大きさを加重振動の工程により元の大きさに強制的に戻した反動のエネルギーをマイクロブラックホール化する前に汲み取り、加速収束発散で純粋なエネルギーとして標的に向かって放射する魔法。

 

元々、私が戦略級魔法を使うために考えた魔法で、出力をいっぱいに(防御も何も考えなければ)すれば戦略級となるだけの威力となるだろうと予測している。

 

 

ちなみに、私が余剰次元だとかM理論だとかを知っているのはヤマトのリメイクアニメからだ。

 

実際に魔法科の原作でも灼熱のハロウィンの後にUSNAで“余剰次元理論に基づく極小ブラックホール生成・蒸発実験”とやらが行われていることから再現可能と踏んだのだが…

 

 

 

『た、ただいま、司波選手の氷柱の全壊、北山選手の氷柱1本の生存を確認しました!優勝は第一高校、北山雫選手!』

 

 

“上手く調整出来てよかった。私や深雪も巻き込まれかねない魔法だったからね。”

 

 

 




お気に入り、評価、感想、ありがとうございます。


ちなみに、雫の深淵鉄槌はエネルギーのみを取り出すという面倒な手続きを踏んでいるので大丈夫ですが、マイクロブラックホール化した後にホーキング輻射をエネルギー化した場合は例の実験の如くこの世ならざるものがいらっしゃいます。
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