吾輩は北山雫である。   作:風早 海月

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更新遅くなりすみません!

前半は理論的な魔法の話、後半はイチャイチャだけです。
筆が乗らなくて話が進まない…


そうだ、海に行こう。2日目

 

 

実はこの旅行は準備期間の短さもあり、1泊3日の予定なのだ。

 

1日目から2日目は別荘に宿泊。

2日目の深夜にクルーザーで出発して3日目早朝に東京に戻る。

 

つまり、今日帰ることになる。

 

 

昨日の海岸線近くでの水流のぶつけ合いなどをはじめとして、かなり遊び尽くしていたので、今日はヨットで沖に出る予定だった。もちろん発動機付きだが。

 

「じゃあ行きますよ。」

 

黒沢さんがヨットで待っていた。が、その横には見たことも無い不思議な透明な物体―いや、それは嘘だ。ペットボトルのような物をすごく大型化したような物が置いてあった。

 

「海中散歩をするために昨日作っておいたんだ。」

 

実は、達也さんは昨日の夜作っていたのは、プラスチックの板を継ぎ接ぎして作ったプラスチック潜水艦だった。

 

しかも、恐らく分解と再生と精霊の眼をポリマー(巨大分子)の構造に使って板を曲げたり継ぎ接ぎ部分の凹凸をなくしたりしていたのだろう。今みると1枚板にしか見えない。

……無駄なことに分解と再生使ってるなぁ…

 

「どうやって潜るの?」

「移動加速加重の3系統複合魔法だ。干渉力的にさすがにそのままでは深く潜れないから水を入れる。蓋の部分にCAD兼舵輪を用意してある。」

 

どうやらバラストに水を半分くらい入れて潜ることを容易にしたらしい。よく見るとゲームのジョイスティックのような握りが用意されている。

 

「あとは、酸素は二酸化炭素を“分離”すればいいだろう。」

 

CO2からCを分離して容器に保存すれば酸素を作り出すことは出来る。

 

「私でも動かせる?」

「計算上なら雫でも深度100は潜れるな。」

 

全力発揮時なら深雪とほぼ同格の私の魔法力なので、深雪はそれ以上に潜れるかもしれない。

 

「あれ?水圧に対しての防御は?加重系で他に作るの?」

 

使えると聞いた私がジョイスティックにサイオンを流して起動式を取り込むと、その感覚から船体強化の魔法は使われていなかった。

 

「いや、レオの硬化魔法で耐えるつもりだ。どうせ100m以上潜ることは無いから軽くで十分だし息切れを起こすことも無いだろう。」

 

どうやらこのジョイスティック型CADは例の飛行魔法のためのCADを改造したものらしく、滑らかな航行が出来るらしい。

ちなみに、今までも加重系飛行魔法は擬似的に再現されていた。常駐型特有の息継ぎを取り入れて一つ一つの魔法を息継ぎごとに完結させることで即応性は伴わないものの空を飛ぶことは出来ていた。(ミラージ・バットでよく使われた戦術だったが、跳躍を使う選手の方に妨害されることが多く最近の主流では無い)

 

閑話休題。

 

みんなが乗り込んだことを確認して達也さんが飛行魔法を蓋に掛けて閉じた。

 

「深雪、頼む。」

「はい!お兄様!」

 

達也さんから頼まれたことが嬉しいのか満面の笑みでジョイスティックにサイオンを流し込み、卓越した魔法力を使って一気に潜った。

 

 

「美しい…」

「きれい……」

「Beautiful……」

「Schön…」

「красивый…」

「雫、それはふざけすぎだよ…」

 

光景に心奪われながらもツッコミは的確なエイミィ。

え?ドイツ語?もちろんレオの言葉だよ。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

楽しい時間というのはあっという間に過ぎていく。

 

既に帰りのクルーザーは出港準備に入っている。

 

 

「雫!」

「?…どうかしたの?」

「ちょっと来て!」

 

ほのかが建物の陰に誘う。

 

「雫…ごめんね。」

 

それだけ言うと、ほのかは唇を私の唇に押し付けた。

そして、そのまま私の下唇を吸う。

 

「――――っはぁ…どうしたの?いきなり。」

「…せっかく通じ合えたのに恋人らしい“青春”って言えばいいのかな、が出来てなくて…物陰でいきなりキスって青春っぽくない?」

「それはBLとか少女漫画の読みすぎじゃない?」

「…雫は嫌だった?」

「べ、別に嫌じゃないけど…」

「じゃあいいよね。」

 

再びほのかは顔を近づけた。

 

…チュ、ニチュ……

 

そんな音が聞こえてきそうなディープキスだ。いや、実際に聞こえている。

ほのかの舌が私の口内を掻き回す。

キスは好きだけど、キスがなんで気持ちいいのかなんて知らないし、この気持ちいいという感覚はどこがどう気持ちいいのかは分からない。ただふわふわした白い雲のような感覚だ。

 

「………ん、はぁ…」

「…はぁ、雫…もっと…」

 

三度、ほのかの顔が近づこうとした時、ガサッと陰から音がした。

 

「あ…ご、ごめんなさい!お、落し物探してて!」

 

顔を真っ赤にしてアワアワしていたのは美月だった。

 

「つ、続きどうぞ!船の時間までにお、終わらしてくだしゃい!し、失礼します!」

 

そう言うと、美月は踵を返して走っていった。

 

「あ…ど、どうする?」

「どうしよっか…」

 

私も今まで―というか、今日までは押せ押せだったので(いわゆるタチ?)、グイグイ来られるとどうすればいいか意外と分からない。

 

「とりあえず、戻ろう?」

「うん…」

 

ほのかはそう言うと、建物の陰から船に向かって歩き出した。

 

が、少し歩いてから振り返って、口先に短く唇を落として、耳元で、「今夜は私が寝かさないからね。」と囁いて、さっきよりも速度を上げて歩き出した。きっと慣れない事をして恥ずかしいのだろう。私の顔も真っ赤にゆで上がっているのだから、きっとそうである。

 

 

 

 




次回から横浜騒乱編です。

雫視点なため、だいぶカットする部分がありますがご容赦ください。

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