後編も今日中に投稿します。
「美少女探偵団?」
「そう!」
赤毛の天真爛漫少女、明智英美は私とほのかにグイッと顔を寄せて言う。
「えーっ、なにそれ!?」
「だってこんなのほっとけないじゃん?」
こうなったのは、今日―勧誘週間3日目の放課後の始まりに遡る。
☆☆☆☆☆
私とほのかが腕章をつけて巡回(遠巻きに)していたところ、少し離れた生垣の根元で赤い髪の少女を見つけた。
彼女―明智英美、愛称エイミィは喧嘩の現場を覗いていた。
「エイミィ、何してるの?」
「あの人…二科生で風紀委員やってる人だけど、さっきからわざと攻撃受けてるんだ。全て回避したり打ち消したりしてるけど…」
「そんな!?」
「…(流石お兄様笑笑。この程度なら避けるよね。)」
「どうすればいいのかな…?」
「証拠がないし、現行犯なら私達の証言で通るけど…」
「だからさ…私達で証拠を押さえない?」
と、ここで冒頭に戻る。
しかし、忘れないで欲しい。
雫とほのか、さらにエイミィは成績優秀者だ。入試成績は既に公然の秘密である以上、人目に触れると勧誘される。…つまり…
「ハイポスト・バスケ部です!どうですか!?」
「女子レッグボール部です!」
「クラウド・ボール部!入部しない!?」
「射撃やってみない!?」
「山岳部!サバイバルしようぜ!」
風紀委員とSSボード・バイアスロン部でおなかいっぱいです。
ってか非魔法競技の部活がなんで私達みたいな魔法成績優秀者にたかるのかな!?
シャドウスクエア―光波振動系魔法の1つであり、指定の四角柱の内側に光波が入らないようにする障壁魔法―でほのかが勧誘組を目潰しして全速力で走って逃げた。
こういう時はほのかって便利だと思う。
工程数の多い魔法も出来るし。
隣の芝は青く見える、かな。
☆☆☆☆☆
翌日。
校舎の屋上には、SSボード・バイアスロンのユニフォーム(速攻でボード含めて買った)姿の私とほのか、狩猟部の練習着姿のエイミィの影があった。
「何も近くで見ている必要は無いのよ。遠くからの方がよく分かることだってあるしね。」
「それに、クラブのユニフォームを着ていればしつこく勧誘されることもないしね。」
この会話を聞いている時、私はマルタイのお兄様の監視ではなく、襲撃者の捜索でもなく、隣のほのかの姿を愛でつつ鼻血を垂らしていた。
仕方ないじゃないか、こんなにほのかの色っぽい太ももを晒す短いスパッツに肘に長袖インナーにクラブTシャツと肘膝のプロテクター…色っぽすぎる!
ほのかのスタイルはそれこそ個人的には深雪より健康的でいいと思う。深雪は若干完璧過ぎると私は思ってしまう。
―――簡単に言えば、色気のない絶世の美少女というのが正解だろうか。確かに色気がない訳ではないのだが、どちらかと言うと手を出せない雰囲気を醸し出す容姿なのだ。
ほのかの場合、手を出したくなるような容姿なのだ。そういう意味ではほのかの方が美少女だと私は思う。
「し、雫!?大丈夫!?鼻血出てるけど!?」
「あ、安宿先生呼んでこようか!?」
「大丈夫。問題ない。」
ティッシュを鼻に詰めて、監視に戻る。
「来た!」
達也の進行方向に魔法の兆候が出た。
そこから十数メートル離れたところにCADを持っている男子生徒を見つけた。
「見つけた!右の方!」
「ほんとだ!」
魔法が発動する直前にかき消された。
「今の…キャストジャミング…?」
「間違いないの?」
「雫のボディーガードさんが使ってたやつと同じ…」
「でも、『お兄様』がアンティナイトを持っているようには見えないよ。」
「深雪に怒られるよ?」
寸劇をしていた私達にエイミィが叫ぶ。
「あっ!逃げた!」
こんな時のために……
「特化型!?」
拳銃タイプの銃身が長く照準補正の付いた特化型で襲撃者をロックする。
使った魔法はドライミーティア。発射したドライアイス弾を命中前に昇華してその衝撃で攻撃するもの。
「…外した。」
「照準難しいよね〜。」
魔法は厳密な座標指定をしなければならない。
だからこそ、射撃系魔法は自身の近くで魔法を発動する。魔法の発動座標が近ければ近いほど感覚的な照準が早くなるのである。
簡単に言えば、魔法の座標指定で遠くの敵の近くに魔法を発動させるより、近くで発動してその効果が相手の方向に飛ばす方が早いのである。
「顔、見えた?」
ほのかに首を横に振って見えなかったと伝えるが―
「見たよ!バッチリ!あれは男子剣道部のキャプテンだったと思う。」
「えっ、ほんと!?」
「写真かなにかで確かめてみなきゃだけど、多分間違いないよ。」
「写真…」
「生徒会ならありそう。風紀委員として必要だからって言ってみようかな。」
☆☆☆☆☆
「個人情報になるから、ひととなりだとかは持ち出しは出来ないわね…生徒会室に来てくれれば見せられるけど…あっでも、写真と競技成績くらいなら、部活連の広報部の学内ページに掲載されていたと思うけど…」
「学内ページ?」
「…?」
「ふたりとも知らなかったのね。」
「!」
「こんなのあったんだ…」
「授業中はロックされていて見られなくなっているから、気づかないかもしれないわね。初期画面から見せるから見ててね。」
「うん、ありがとう!」
☆☆☆☆☆
「うん!あの時逃げてったのコイツだよ!間違いない!3年F組司甲か…動機はなんだろ…嫉妬?」
「その人は二科生だから単純に嫉妬ではないと思う。」
「あっ、F組か。…でも、『同じ二科生なのになんであいつだけ!』ってならありえなくはなさそうだよね。」
「だけど、私達が見たのは一科生のグループばかりだった。」
「こんなこと言いたくないけど…一科生と二科生が下級生に嫌がらせをするためだけに日頃の対立を棚上げにして手を組むなんて考えにくいよね。」
「対立っていうより、無意識の差別…もぶざ…森崎くんたちは実際に対立してたけど。」
「はたからみると私達もそうだったね…」
「ええっと、手を組めないなら、つまり複数グループが、狙ってるってことかな?」
はあ~とため息を吐く私達にエイミィはトドメをさした。
それにしても、何が出来るか…
「あ、」
「なに?ほのか。」
「襲撃現場の写真を撮るっていうのはどうかな!」
「写真!?」
「そこまですると、本格的にストーカーなんじゃ…」
「ち、違うよ!証拠を集めるだけなんだから!」
「でも、写真を届けるとしたら生徒会でしょ?大変なことになるって話だったじゃん。」
「確か匿名の通報システムがあったと…」
「公益通報システムの学内版だね。」
「そうそれっ!」
「でもね…」
私が渋ると、ほのかとエイミィが『ん?』という顔でこちらを見る。
「そもそも、専用のカメラじゃないと写真には余剰サイオン光も魔法式も起動式も映らないし、エアブリッドも映らない。ドライアイス弾も魔法で出来たものだから消えやすいし。専用のカメラは軍とか警察じゃないと発注すら出来ないから…」
「「確かに。」」
つまり、八方塞がりなのであった。
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