刻印虫(ガストレア)   作:ワカメ#たまごすーぷ

11 / 12
原作に沿っていくので、本持ってれば今どこくらいか分かるようにします。あとサブタイカッコつけたかった。丸パクリですが。

原作買って♡

今回ジジイがほのぼのしてるだけ。


炎による世界の破滅 chapter0

天気は快晴。

駒を動かすパチパチという音に、子供の笑い声が混じる。

外周区の青空教室。その昼休みを使って、大人二人は将棋にいそしんでいた。

固い地面にシートを引いて、盤上でマグネット付きの駒を取り合う。屋外だというのに、春の陽気は微塵も寒さを感じさせず、むしろ暑いほど。

 

「どうぞ」

「うむ」

 

自分の駒を動かして、言葉少なに手番を回す。返事をした相手はすぐさま熟考にはいった。

知らず知らずのうちに熱中していたらしい。少し面映ゆく思いながら、汗を掻き始めた胸元を寛げて、対戦者を見る。松崎の丸メガネ越しの視界には、一人の老人がうつっていた。

間桐臓硯。今時見ない和装に、かなりの年齢を感じさせる曲がった腰。関係性は、教師とその生徒の保護者という簡素なもの。それなのにここまで交友が深いのは、ひとえに生徒たちが関係していた。

体内にガストレアウイルスを保菌し、いつ形象崩壊するともしれない『呪われた子供たち』。松崎ひとりで運営している青空教室は、生徒のほぼすべてが『子供たち』で構成されていた。

ガストレア戦争を経験した『奪われた世代』にとって、『子供たち』は忌むべきものだ。無論それは、松崎自身にもあてはまる。それでも彼は、いくら『子供たち』だからといって、無垢で、なぜ害されるのかわからぬまま迫害される彼女たちに、憎悪を向けることなどできなかった。

彼女たちの助けになればと、一人で始めた学校経営。知人友人は軒並み『奪われた世代』だ。誰にも相談できず、当時いっぱいいっぱいだった自分に、梅と小春の手を引いてやってきたのが臓硯さんだった。

 

今でも思い出す。

警戒心の強い彼女たちを集めるのに奔走し、噂を聞きつけた隣人には面罵される毎日。心身ともに疲弊していた自分のところに、入学希望だと幼子二人を引き連れてやってきたのだ。

唖然として、質問したのを憶えている。なぜここを選んだのですか、と。

臓硯さんは、ただしきりに困惑する私に、好々爺然とした笑みを消して、獰猛に笑いながら言ったのだ。

 

「どこの教師も『子供たち』と聞けば尻込みし、それとなく転校を進めよる。内地の彼奴らは腑抜けばかりよ。

____ワシはのう、『子供たち』であることを、一切負い目とは思っておらん」

 

涙が出るほど、嬉しい言葉だった。

 

「おい、ぬしの番じゃ。なにを呆けておる」

 

自分の番がきていたようだ。白濁した眼球を向けてくる臓硯さんに、慌てて盤上の駒を見る。

僅かに劣勢。盤面を取り返すため、駒を漁る。

ふと、今まで聞けなかったことがこぼれた。

 

「なぜ、ここまでしてくださるんでしょうか?」

「ぬ?」

「いえ、すごく有難いんですがね。わざわざ私の休憩に付き合う理由がわからなくてですね」

 

今では多少の協力者もいるが、自身と直接会うような人物は少ない。世間体なども考えると、妥当な判断だろうなとは思う。そこに、なにも思わないわけではないが。

 

「隠居生活も退屈での。ワシの息抜きのついでじゃよ。娘たちも見れるしのう」

「そうですか」

 

ニヤリとしながら放たれた言葉に、知らず笑みがこぼれる。

 

「ワシはむしろ恨まれとるかもしれんと思っておったぞ。このケチ爺がぁ!とな」

「そんなわけ!」

 

あるはずがない。ただでさえ孤児が大半を占める学校で、毎月きちんと月謝を払う臓硯さんには助かっているし、寄付金が欲しくてこの学校をはじめたわけではない。

そう言っても、臓硯さんは首を傾げるばかり。

 

「そうかのう?」

「そうですよ、私は大変感謝しております。しかし、臓硯さんにもわからないことがあるんですね」

「ぬかしおるわい」

 

クツクツと喉で笑う。変わった人だとは思うが、変わっていなければ会うこともなかっただろう。

パチパチ、という駒の音。そして。

 

「王手じゃ」

「参りました」

 

願わくば、この穏やかな日常が続きますように。

 

 

 




(続か)ないです。(アルデバラン)

虫爺がアップを始めました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。