刻印虫(ガストレア) 作:ワカメ#たまごすーぷ
今回はっちゃけてます。
防衛省からの帰り道。滅多に行かない中央に出てきたため、欲張って買い物をしすぎてしまった。しかし、ワタシが手ずから買ってきたモノを与えると、彼女たちは非常に喜ぶ。それを見るのはなかなか楽しい。
背中に巨大な風呂敷包みを背負った老人が歩く。ここが外周区近くでなければ、騒ぎになりそうな大きさだ。なるべく人目と日光を避けて移動したため、予想外に時間がかかる。ほてほてと、月明かりに照らされながら家路を急ぐ。あと少し、曲がり角を出た瞬間、
ーーー黒刃が煌めいた。
「な、にーーーー!!」
慌てて両手を前に出すが、 なんの遅延にもならず。老人の両手もろとも首を切り飛ばした。
とさり、と首が転がる。下手人はもはや目もくれず、死体に背を向け父親に声をかける。
「ぱぱぁ、こいつよわっちぃ」
「依頼主に頼まれてね。警戒しろとは言われたけど、やはりただの老人か。さ、小比奈。蓮太郎くんたちを迎えに行こうーーーー!
ーーー老人の死体があるべき場所。月明かりに照らされたそこには、なにもなく。かわりに、影のなかで無数の赤が光っている。
蛭子影胤は直感する。これは、こいつは目だ。無数の目玉が、こちらを無機質に観察しているーーー
「小比奈ぁっ!!」
「……へ?」
直後、大量の蟲が飛びかかり、少女の姿は見えなくなった。中にいる小比奈に被弾することを恐れて、影胤にはどうすることもできない。
時間にして数秒。離れたところに移った蟲は固まると、みるみるうちに老人となった。
「うむ。なるほど、なかなか甘美な味であった」
老人はカカ、と笑う。まるで、先程の惨劇がなかったかの様に健在だ。対する小比奈は、仰向けで倒れている。
走りよった影胤は、娘の体調を確認する。多量の発汗で髪は額に張り付き、頬は紅潮して体全体が熱を持っている。忙しげに呼吸し、放り出された肢体をせつなげに震わせていた。
「…なにを盛った」
「はて。何故教えてやらねばならぬのか」
蛭子影胤は銃を抜く。放たれる殺気。されど老人はおかしげに体を震わせるだけだ。
「聞いたぞ、わしを襲ったのは本意ではないと。現状わしを殺す手段がないのであれば、ここは引くのが得策であろう。
ーーーーそこな小娘。手遅れになるぞ」
と。憎々しげに睨み付けると、影胤は小比奈を背負って立ち上がる。
「…このバケモノが」
「おぬしは、人類の敵じゃろうに」
カカ、と笑う。背を向け走り出した影胤の耳には、老人の哄笑がいつまでもこびりついていた。
正直、礼装の蟲がかっこよくてこの話を書いたまである。
原作既読タグつけるので、原作描写は薄めでいこうと思った。