刻印虫(ガストレア)   作:ワカメ#たまごすーぷ

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将監ペア視点。やっぱ臓硯は客観的に外道したほうがいい。心情なんぞ今際の際にこぼれるくらいでちょうどいいとおもいました。
あと外道します。幼女(のみ)に優しい世界。


chapter3 2回目

足元を、見る。

2人分の赤。夥しい量の血は、そよ風に反応し、さざめく。

赤い川の源には、イニシエーターとプロモーターが、折り重なるように倒れていた。

既に事切れた相貌は、驚愕に染まっている。

…当たり前だ。事は東京エリアの命運を左右する。今回を手柄やリベンジなど、自己中心的に考えられる将監(脳筋)さんは異端だ。

「…イニシエーターは殺すための道具です」

震える両手に言い聞かせるように、呟く。明晰な頭脳は、たったそれだけで切り替えを終える。構えていた銃を下ろして、相棒のプロモーターに駆け寄った。

「終わりました。将監さん」

「うっし、じゃあ行くか。なんども言ってるがーー

「はい。『弱い奴らに渡す手柄はない』『仮面野郎は一番にぶっ殺す』ですね」

「わかってんじゃねぇか」

伊熊将監はバスターソードを担ぎ直す。フェイススカーフの下で獰猛な笑みを浮かべながら、一歩を踏み出そうとしーーー

 

ーー足を、止めた。

 

「…?将監さん?」

「出てきやがれクソジジイ。そこにいるのはわかってんだよ」

 

はたして。

 

「やれやれ。敬老精神が微塵も感じられぬ。前回あった時よりも、狂犬具合に拍車がかかっておるようじゃ」

 

滲むように、闇の中から老人が現れる。羽織と袴を身につけた姿は、未踏査領域を闊歩しているという気負いをまったく感じさせない。自らのイニシエーターを引き連れて、間桐の翁が出現した。

 

「ちと、話しをせんか?」

「断る。ジジイと話すことはねぇ!いつも通り穴蔵にこもって虫でもいじってろ」

 

すぐに断る。当たり前だ。得体の知れぬジジイに構っている暇はない。むしろ殺害現場を見られたかと焦りが募る。さっさと引き離そうと決意してーー

 

「先程見た()()()()のことなんじゃが」

 

一閃。鍛え上げられた筋肉は、いつもの動きをトレースする。考えるより先に体が動く、右斜め上からの振り下ろし。バラニウムで出来た漆黒の大剣は、吸い込まれるように老人の肩口に消えーーー

 

ーーー首の皮一歩手前で止まった。

自主的に止めたワケではない。見られたからには殺すと、その瞳が語っている。実際に将監の筋肉は緊張し、ありったけの力を込められた大剣は、震えながらその刃を進めようとしている。

 

ーーー雫が光る。白濁した粘液が、将監の体の至るところについていた。

絡みついた粘液は空気に触れるとたちまち硬くなり、その場に将監を固定する。大剣を握った手も間接も、水飴によって固められたような有様だ。

下手人は臓硯のイニシエーター。両手の指先から粘性の高い液体を放出したせいか、僅かに指先がテカっている。

 

「クソっ!!」

「血の気が多いのう。儂は取引に来たというのに」

「取引だぁっ?」

 

相棒のイニシエーターに粘液を剥がして貰い、将監は疑惑の声を上げる。

構え直された大剣は、油断なく臓硯を指し示している。

 

「そうじゃ。ぬしが殺した民警ペア、そのままでは畜生共に喰われただ朽ち果てるのみ。それはあまりに酷かろう。まして、大剣による斬殺痕など見られて困るものでしかあるまい。

ーーならば、儂に譲ってはくれぬか」

 

場に静寂が満ちる。さすがの将監も困惑する。動転したのか司令塔のイニシエーターを振り返るが、その夏世(イニシエーター)さえ困惑している。納得するは間桐一行のみ。

 

「…それで、死体をどーすんだよ」

「こうする」

 

木々が、ざわめく。ボトリ、ボトリと掌ほどの尺取り虫が落ちる。血の海を掻き分け、ご馳走にあずかろうと歯を鳴らす。

ーーーキチ、キチキチ。

 

「なに。決して益になることしかやらんよ。お互いにとってのう」

 

瞬く間に虫食いだらけになった死体を前に、老人は商談を持ちかけた。




夏世ちゃん死にます。(次回予告)
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