刻印虫(ガストレア)   作:ワカメ#たまごすーぷ

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次回殺すと言ったな、アレはウソだ。
おもしろい奴(夏世)だ。殺すのは最後にしてやる。


chapter3 3回目

夜の森を、テクテク歩く。周りには誰もいなかったが、少女に気にしている様子は見えない。無論、周囲の警戒は怠っていない。

 

「これでよかったの、じっちゃん」

「うむ。これくらいが丁度よい。これ以上近づくと何をされるかわからんのでな」

 

突如口を開いた少女に、しわがれた声が応える。その声は少女の胸元からしていた。少女の身につけているタクティカルベスト。その胸ポケットに、拳大の虫が潜んでいる。

 

「商談成立と相成ったが、もとよりあやつとはソリが合わぬ。その上、所構わず辺りに噛み付く狂犬じゃ。寝首を掻かれても儂は構わぬが、娘に噛み跡が付くのはごめん被るのでのう」

「そっかー。…ありがと、じっちゃん」

 

少女は照れ臭そうにはにかむ。間桐臓硯の肉体は、端末の虫で作られている。もとより、危険地帯となる未踏査領域に核となる脳虫をもってくるはずがない。少女の安全が最優先となるのは自明の理であった。この遠征自体も調査と食料調達につられて受けたのであり、戦闘する気などさらさら無かった。

もっとも、老人に戦闘など期待されていない。間桐臓硯と室戸菫の作った侵食抑制剤は効果が高いが、値段も相応にする。こればかりはIIISOにもどうしようもなく、給付は高位序列者を優先的に年4回に限られていた。それを今回の功労者に、言うならば報酬として提供したいと政府側から打診があり、間桐臓硯はこれを快諾。代わりに未踏査領域の単独調査の許可をもぎ取った。

 

「礼はいらぬ。それより将監と離れすぎてもいかん。せっかくの馳走を掻っ攫われるのは具合が悪いのでな。よいか、付かず離れず、じゃ」

「はーい」

 

少女は明るく返事をする。引き続き将監ペアを追おうとして。

直後、ちょうど将監ペアのいた場所から衝撃と爆発音が響き渡った。

 

「いかん!なにを考えておる!」

「ッ!じっちゃん!」

轟音が轟く。前方の闇を掻き分け、伊熊将監とそれを追うガストレアが走ってくる。

奇妙なガストレアだった。ムカデの頭に円筒形の筒が載っていると言えばわかりやすいか。見上げるほどにそそり立つ頭部は、下が青色、上が赤色に光輝き、点滅していた。巨大な頭を多数の足と長い胴体でバランスを取っている。全身を彩るように腐臭を放つ花が咲き誇り、大量のハエがたかっていた。

必死に逃げているのは伊熊将監だ。イニシエーターである夏世とはどうやらはぐれてしまったらしい。よしんば協力して倒せたとしても、あの巨体では押しつぶされるかもしれない。

凄まじい形相で逃げている将監が、こちらに近づいてくる。

小春は、「呪われた子供たち」の力を解放すると、走り寄る将監の肩に飛び乗った。

 

「なッ!!」

 

驚きの声を上げる将監の肩を蹴り、さらに跳躍。距離を詰めながら、空中で両手を広げる。迎い入れるように広げた指先から、多量の粘液を散布。シャワーのように広がった雫はガストレア前面の脚を固定する。

 

「ギィィィィィィィィィィィィ!!」

 

ガストレアが咆哮する。勢いづいた体は止められず、動かない脚は地面を削りながら擦り下ろされる。そそり立つ頭部を支えきれず、体が徐々に傾いてくる。それでも下手人を押しつぶさんと、未だ空中にいる少女と正面衝突するーーーー!

ー転瞬。爪が煌めいた。

少女の指先から、半透明の爪牙が生えている。長さは10センチほど。少女はそれを、間近に迫る頭部に突き刺した。

絶叫。聞くに堪えない悲鳴を意に介さず、爪は肉を千切り、削り取りながら主人の体を減速させる。

 

「よっと」

 

降り立った小春の後ろで、地響きをあげながらガストレアが横転した。

その隙を見逃す将監ではない。旧態依然と言われながらも、戦闘職を担ってきたのだ。IP序列1000番台は、決して伊達や酔狂ではない。

ゆえに必殺。

 

「死ねやオラァァァッ!!」

 

振り下ろされた大剣が、ガストレアの頭部を叩き切った。

 

 

 

沈黙したガストレアから大剣を引き抜く。ずるりと引き出された大剣には、青色の体液がこびりついていた。見渡せば、巨大なガストレアの死体には、もう既に虫が噛り付いている。

…見渡して気づいたが、臓硯のイニシエーターしかいねぇ。くたばっちまったなら万々歳だがー

 

「儂はここじゃ」

「…生きてやがったか」

「カカ。そう簡単に死ぬ筈がなかろう。真っ先に隠れたのでのう。老人に戦闘は荷が重い」

「…そうかよ」

 

イニシエーターは臓硯に駆け寄っていく。ケッ、道具と仲良しこよしか。気色わりぃジジィだ。

…道具と言えば夏世もトランシーバーもねぇ。クソッタレが。ジジィと会ってから何も上手くいってないように思えてくる。

 

「おいクソジジィ、夏世がどこいったか知らなぇか、はぐれちまった」

「儂が知る筈もなかろう。距離を開けて歩いておったからな」

 

臓硯のイニシエーターも首を振る。さすがの将監も影胤に単独で勝てるとは思っていない。だが、トランシーバーを無くし一体どうやって合流するのか。

この際、臓硯を殺してイニシエーターを従わせるか。頭脳派だった夏世よりも戦力はある。目の前でジジィを殺して見せればーー

 

「ご歓談中失礼します。間桐臓硯様、伊熊将監様」

「ああッ!」

 

弾かれたように体を向ける。今現れた見慣れないイニシエーターに剣を向ける。

 

「お二人へ伝令です。蛭子影胤を発見しました」

「テメェどこのイニシエーターだ。プロモーターはどうした」

「お二人を連れてくるようにと使いに出されました。今、民警が何ペアか集まって奇襲をかける手筈となっています」

「…トランシーバー持ってねェか」

「私のプロモーターが持っています」

「…チッ!わかったよ、ついて行きゃあいいんだろ」

 

舌打ちをひとつして了承する。老人はというと、向けられたイニシエーターの視線に鷹揚に首を振った。

 

「儂は行かぬよ。檜舞台は未来ある若人に譲るとしよう」

「…そうですか」

 

背を向ける。伊熊将監と先導するイニシエーターがみるみる遠ざかっていく。

その背中を、老人は白濁した目で見送った。




オリ幼女の戦闘描写なんて誰得なんだ(呆れ)
言い訳させて貰うとカッチョ良く登場した1話で娘いるって言わせちゃったので「ぼくのかんがえたさいきょうのようじょ」出したくなった。
平均文字数あげようと思って頑張ったら寝落ちして書き直した経緯があって遅れました。これくらいの文字数が限界です。
バーに色ついててうれしい、うれしい。投票してくれた人ありがとうございました。読んでくれてありがとうございます。
次回は外道します。あのhf一章(にあたるpc版)の臓硯登場シーンをやるんじゃグヘヘ。(すいませんメディアさん的なのいないのでヘルシングのVSウォルターみたいなカンジになります)
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