刻印虫(ガストレア) 作:ワカメ#たまごすーぷ
やっぱそんな面白くなかったよね、すまぬ。でも次の登場くらいで死ぬ予定だからお披露目したかったんだ。すまない。
今回はジジイ出るよ!最後らへんだけどね!
ゲームのセリフは次に持ち越し。とりあえず映画のセリフをぶっこんだ。
✳︎話を進めるにあたって設定を変更しました。詳しくは一話の冒頭をどうぞ。
要約:成りかわるのが得意なフレンズなんだね!すごーい!
青年は運が良かった。
ここは外周区近く。「呪われた子供たち」を散々食い物にしてきた青年にとって、通い慣れた道筋だ。事が事だけに一睡もできなかった青年は、昂ぶった精神と性欲を混同したまま外に出る。そして少女たちを手篭めにする。割といつもの事だった。
「へへ…。動くなよ、動いたら撃つぞ」
銃口を小さな頭に押し付ける。バラニウム製の銃弾が込められている拳銃は、引き金を引けば容易く頭を弾けさせるだろう。
「ほら、歩け」
銃口で軽く頭を小突く。暗がりになっている路地裏に、少女を押し込む。先程まで東京エリア滅亡の危機だったせいか、昼すぎだというのに人通りはまばらだった。…都合がいい。もっとも、「子供たち」が襲われても、庇い立てするような奴はいない。
目の前の少女を見下ろす。落ち着いた色のワンピースとスパッツ。亜麻色の髪は、編み込みが施されている。ぱっちりとした目は無感情を表すように冷めていた。男はそれを見て、絶望していると解釈する。
「動くなよ…」
絶望して従順になったのなら、話しが早い。ニヤつく口元を引き締めて少女を壁の方に向かせる。体の前面を壁に押し付けて、後頭部に銃口をねじ込む。ここまでしてやっと警戒を解き、空いた左手で少女のスパッツを撫でた。臀部を這うように手を動かし、スパッツを脱がそうと指をかける。
ーーゴリッ
「…へ?」
骨に響くような重い音がした。
指先の感覚が、ない。痛みも、ない。それならば、目の前に滴る血は一体どういうことだーー!
背筋に走る寒気。得体の知れない恐ろしさに押されて、慌てて左手を抜こうとする。
ーー抜けない。拳銃を投げ捨て、右手も添えて全身で引っ張る。その間も、少女はピクリとも動かない。
ーー抜けない!やばい、やばいやばい!
瞬間。少女のワンピースがずるりと
ーー目を開けると、そこは地獄だった。
少女の露わになった背中に、無数の虫が蠢いている。
左手は指先のみならず手首までなくなっている。それでも痛みは感じない。切断面には沢山の尺取り虫が集っていた。もっとも、人骨を砕けるほどの歯を持つ尺取り虫がいればだが。
「ガストレアかッ!クソッ、クソォォッ!」
とにかく、早く逃げなければ。立ち上がろうとして地につけた右手はしかし、肘から先が引きちぎれた。飛び散る血潮は壁を汚し、荒い切断面は筋繊維と神経が垂れ下がっている。凄惨な絵面は、痛みがない分おぞましさが際立つ。気づいた時には既に遅く、両手を失った青年は、這いずるようにして逃走を始める。
「ヒィ!ヒィィィィ!」
みじめに地面を這いずって、元凶から一歩でも離れようとする。どこだ、どこで間違えた。途中まではいつもどおりだったのに、これじゃあ、まるで、俺が餌みたいじゃないか…!
霞む視界に、誰かが走り寄ってくるのが見える。
「た、助けてく」
ナニカを激しく嘔吐する。ビチャビチャとコンクリートの地面に跳ねる。末期の言葉は、口から溢れ出る虫に押しつぶされた。
彼は幸運だった。虫の主人の機嫌が悪ければ、容赦なく貪られていたかもしれない。痛覚がない分、他の犠牲者より彼は格段に
蓮太郎はため息を吐いた。
そうすると、目の前の背中がビクリと震える。
「本当にごめんなさい!」
「もういいから、顔を上げてくれ」
場所は間桐邸の客室。戦闘行為の跡が色濃く残る玄関から移動して、完全に誤解が解けたのはつい先ほどのことだった。
それから、紫髪の少女が土下座を行い今にいたる。
「お風呂を頂いたばかりか、朝食までご馳走になったみたいで…!」
「別にいいんだ、延珠の友達になってくれたしな」
友達。蛭子影胤によって交友関係を破壊された延寿には、早急に必要な存在だった。…そのために自身の痴態が多少犠牲になったのは納得いかないが。
なにせ連れてきた小春が目に入った瞬間、『妾の知らない女がいるぅ!』だ。これには蓮太郎も頭を抱えた。初対面の印象は最悪かと思われたが、そこはそれ。延珠の『ふぃあんせ』発言に始まる怒涛の「蓮太郎武勇伝」をワクワクした顔で聞いていた。そのおかげで小春のなかの蓮太郎は『延珠のために死すら乗り越え、キック一発で怪人仮面男を倒し、愛の力でゾディアックを倒した超人』になっている。なんだよ愛の力って。
「爺さんはまだ帰ってないのか」
「はい。帰ってくるついでに、パトロールをしているみたいで。…最近、『子供たち』の姿が見えないから」
「すげえな」
思っていてもそうそう実践できることではない。
間桐臓硯は積極的な『子供たち』擁護派らしい。聞けば、松崎さんとも懇意にしているようだった。
「…このことは、お爺様に私からいっておきます。使ってしまった装備代もばかにならないでしょう」
「怒られるんじゃねえか、ソレ」
「早とちりした私が悪いんです、本当にごめんなさい!」
繰り返される謝罪。どうやら卑屈になっているようだ。これ以上ここにいるのも気が引ける。時刻をみればちょうど昼過ぎ。延珠も起きてくる頃合いだ。途中で食材を買いがてら、家に帰るとしよう。
報酬の金銭は後日天童民間警備会社に振り込まれる。「浸食抑制剤」は、
梅に暇を告げる。玄関先で見送ってくれた彼女は、いつまでも頭を下げ続けていた。
「よし」
自転車の籠に、見慣れたスーパーの袋が入っている。外周区近くの店に寄ったせいか、少し野菜の値段が安い。おかげで、他の食材を買う余裕ができた。時刻は三時半。自転車に乗ろうとして、ポケットの携帯が鳴りひびく。
着信は天童民間警備会社から。やっべー、すっかり忘れてた。
「あーもしもし」
「もしもし、ではないぞ蓮太郎。起きたら小春ちゃんもいないし、妾をおいてどこへいっておるのだ!」
「わりぃ、小春を家に送るついでに買い物してたら遅くなっちまった。安く買えたから、今夜はハンバーグだ」
「本当か!本当なのか蓮太郎!嘘だったら妾は恨むぞ!」
「…嘘はつかねーよ」
怒った声音をコロリと反転させて、ハンバーグ!ハンバーグ!と喜ぶ延寿の声が聞こえる。どうやら話はそらせたらしい。
ちなみに、延珠は豆腐ハンバーグの存在を知らない。教えるつもりもない。
そんな策士蓮太郎。じゃあ今から帰るな、と電話を切ろうとして、不審な男が目に入った。
シャッターの閉じられた商店街。だれも寄り付かない路地裏に一人の少女が連れ込まれようとしていた。
所々に金が混じった亜麻色の髪は、側頭部に編み込みが施されていて。
身に着けているのはワンピースとスパッツ。凪のような瞳を最後に見たのはいつだったか。
ーー千寿夏世だった。見た目だけなら間違いなく。
咄嗟に走り出す。自転車もその場に放置。電話口の延珠の声も無視してポケットに携帯をねじ込む。
ーーありえない。千寿夏世は俺が殺した。硝煙の匂いも、託された思いも、脳裏にしっかりと刻み込まれている。
否定材料なら湯水の如く湧き出てくる。それでも、夏世を殺したのがなにかの間違いで、自分の見ていたものは全部夢で、あの夏世を連れ込んでいる男を倒せば、延珠と一緒に三人で暮らせるーー
なんて、儚い希望に押されるように飛び込んだ路地裏は、端的にいって地獄だった。
目についたのは、赤。
夥しい量の赤のペンキが、路地裏にある室外機やごみ箱を一色に染め上げている。
ペンキを供給しているのは、成人男性ほどもある肉塊。
両手にあたる部位のないソレは、吐しゃ物をまき散らしたあと動かなくなった。
鉄さびと酸っぱい臭いが鼻につく。肉塊から伸びる血の跡をなぞるようにして、目線を動かす。赤く伸びるヴァージンロードは、夏世の背中につながっていた。
「…夏…世?」
思わず出た声は、自分のものとは思えないほどひびわれていた。
ーー背中には、底なしの穴が広がっている。穴の
夏世のようなものはピクリとも動かない。ただ、その背中から蟲を溢れさせるだけ。蓮太郎といえば、XD拳銃を構えたまま、友の変わり果てた姿に凍り付いた。
「ふむ。隠しておきたかったのだがしかたあるまい。畜生の処理は早めに済ませるに限る」
その声は、眼前の少女の口から発せられた。
「誰だよテメェ…!」
「これは異なことを。今朝がた依頼をしたばかりではないか」
少女が溶ける。異音を立てて、少女が内側から貪られる。若々しい肌がしなびて老人のそれになり、小柄な体は猫背に矯正される。負荷に耐えきれない皮膚がさけ、出来た裂け目から蟲が顔を覗かせ修繕する。
瞬く間に、化生の老人が姿を表した。
間桐臓硯。小春と梅の保護者にしてプロモーター。積極的な『子供たち』擁護派。そしてーー
「このッバケモノがァッ!!」
「
まごうことなき、
とりあえずキリがいいのでここまで。
↑こいついっつもキリがイイって言ってんな。
作者が文章書くのに慣れてないせいなんだ。更新不定期だから!(予防線)
次で一巻分ラスト。
なるはやって言って焦ったんで、今回は遅くなると宣言しておきます。
✳︎誤字報告ありがとうございます。誰だよ延寿って…